絵を描くのが好きで、スケッチブックを持ってよく外に出かけた。
ある日、道ばたで拾った象を家に持って帰ったら、母さんに「もとの場所に戻してきなさい。」と言われた。
がんばったけど、やっぱり無理だった。
母さんには勝てないもの。
隠すには大きすぎるし。
誰かともだちがもらってくれるんじゃないかと思いついて象を連れていったら、ともだちは喜んだけど、おばさんたちは喜ばなかった。
象を連れてもとの場所に行くと、それを見ていた人に、「動物を捨てちゃだめよ。」と叱られた。
どうしていいかわからなくて、わたしたちは止まった。
象によりかかったら、持っていたスケッチブックを落とした。
ぱおおん、と象がないた。
そしたら象が分裂して、小さな象がたくさんできて、
ぱおん。ぱおおん。
絵本に出てくるみたいな水色の象たちは歌いながら列をつくって、ひとつずつスケッチブックに飛びこんで、たくさんの水色の象の絵になって、わたしは急いでそれを家に持って帰った。
母さんにはもう何も言われなかった。
それからわたしはたまに、母さんにばれないように、スケッチブックから象を出していっしょに遊んでいる。