私の生涯が読み物だとしたら随分と退屈だろうか。
妙な人間だとよく云われはしても暮らしはいたって平坦であったし、そういう、何もない日々によろこびを感じていたから、ひとりではいずれ苦労すると友人に忠告されても、結局、新しい家族というものをつくらないまま、すっかり骨も衰えた。
両親が先代から継いで遺したちんまい家の戸を開け、かつての私たちの足跡をたどる毎日、「白」と「青」のふたりから生まれた私に「自由」という名を渡してくれたいきさつを思い返しては、不自由な足どりで小枝を踏む音や木漏れ日に意味はなくともうれしい。
そろそろ夜は冷える。
何のスープを作ろうか、台所の様子がどんなであったか記憶をたぐる。
こんな調子で何万字何百万字もやられてはやはり退屈だろうから、さっそく筆を折ることにして、明日は何をしようと小枝を踏み踏み。