世界はもうずっと前から終末に向かっていた。
いつからか何も生まれることがなくなり、ひとつひとつ、一人一人が、姿を消して、ゆっくりと数を減らしていった。
減ることだけが定められた世界は、零に向かって緩慢に進んでいた。
もはや友人も肉親も消え、昨日、飼っていた猫が突然目の前で消えた。
間もなく私も消えるのだろう。
終末の世界は想像していたよりずっと静かで、何もなかった。
目の前でまた、椅子が消えた。
電柱が消え、車が消え、雲が消え、最後に残った石ころが一つ消え、
それから宇宙は収縮し、後には何も残らないが、そのとき別の宇宙がどこかで生まれ、あなたが生まれたことを、あなたは知るよしもない。