もうすぐパレードがやってくる時間だ。
古い建物のてっぺんにある時計の大きな振り子が催眠術をかけるみたいに揺れている下で、並んだ屋台の売り手が道ゆく人々を呼び込む威勢のいい声があちこちから飛び、綿菓子を持った子どもがもう片方の手にコンペイトウいっぱいの袋をぶらさげている様子は小さな頃描いた夢のよう、むこうでは通行止めされた通りをよけて色々な車が右へ左へわかれていってオモチャみたいだ。
しかしまあ楽しみにしていてすごく愉快なはずなのにどうにも気分が乗り切れないのはどういうわけか、生きている気がしない、なんていい年した男が思春期でもあるまいし、今朝、頭をぶつけてから調子がおかしい。あのときはホント、目の前がざらざらした。
おーい、とあっちから呑み友達が手を振るので返そうとしたら脳味噌の中の電気信号がうまく送れずへんなふうに足がねじれまたも派手にころんでガツン、ちょうど三時の鐘が鳴り響くけれどふたたび目の前がざらざらする。
あれ、ざらざらが、しろーくなって、
「あ、こりゃあいかん。」
のような言葉が外から聞こえた気がしたが、まっしろなんにもない部屋にピーヒョロパッパラ、ブンシャカブンシャカ。
ピ、ポピ、パ、ぺしゃん