「お茶ちょうだい」
と言うと、妻は言われた通りにお茶を持ってくるけど、このお茶、出涸らしだね、ダメだよ、新しいのに替えないと。新しいお茶を煎れてね。いや、もう慣れたけど。
「お腹が減った」
と言うと、妻は何かしらの料理を作ってくれる。特にリクエストのないときは、あり合わせの食材でなんやかや作るからすごい。すごく料理が下手だったのに、随分うまくなったもんだ。
「馬は旨い」
なんてダジャレを言うと、妻は「面白いですね」と言う。顔が笑ってないよ。ちょっと前までは、どうしていいのかわからない顔くらいしたのに冷たいなあ。いや、平気よ。
「好きだよ」
と唐突に言うと、妻は「私もあなたが好きよ」と言う。僕は、そこで困ったような顔をする君が大好きだったのに、なんて無表情。そんなんじゃなかったのに。
いや、そういう顔をするように、今の君はできていないんだし、仕方がないね。もっとお金を貯めてそしたらそういう顔ができるようにしてもらってもいいね。そうしよう。でも、今はまあ仕方ない。
「君が好きだよ」
もう一度言うと、君はやっぱり「私もあなたが好きよ」と表情を変えないで答える。
いや、慣れた慣れたもう慣れるよ、もう平気、普通普通。