「こりゃあ聞いた話なんですがね、むかしむかしどっかの国に泣きも笑いもしねぇ男がいて、この男がまあ世間から心のない人でなしの畜生めなんて影で言われまして、ひどい話ですよ、で、ある日そこの町で、ある人が殺されちまったようだと、ところがこのお人がさあ大変くだんの男の奉公先の旦那様だ。まあ普段っから周りに良く思われていない男にお役人も目を付けるわけで、ひどい話、男は旦那からつかいを頼まれて主人が死んだことを知らねえで帰ってきたところにこのお役人だ。旦那が死んだと伝えるとまあ男は例のごとく泣きも笑いもしねえ。いや、笑うのはいけない。それが命取り、どうにも怪しいてんでハイお縄を頂戴、ところがその後本当の犯人が捕まったてありがたーい話」
「やはり貴様が下手人だな」
「いやだから違いますのでこのありがたーい話を引き合いに」
「屋敷の宝が盗まれたことに驚くでもなく、嘘の話をでっちあげてこちらを丸め込もうとするあたりますます怪しい。あ、懐から宝が見えるじゃないか。お縄頂戴」
「いやこれは違うんですよ。これもまた聞いた話なんですがね…。」