「とつきとおか」の間、ずっと離さずにいてください。
そう言われてから、今日で最後になる。長いこと握ったままだから、うまくひらけるか心配だ。ほぐすように力を入れて、抜いて、掌にある感触を確かめる。
君がどんなところにいるか分からないし、どうにも僕ひとりでは辿り着けそうにないから、案内してくれる人を探すのに苦労した。
こぶしを耳に近づけて、小さく振ると、ころんころんと鳴る。
その人はまるで手品師のようで、言われるまま机の上に握りこぶしを作った僕に、手をかざして言ったのだ。
このまま、「とつきとおか」の間、ずっと離さずにいてください。
いつのまにか掌に小さく丸く冷たい感触があって、魂を宿らせるのにはそれくらいの時間かかるのです、と付け加えられた。
明日は君に会えるだろうか。
友人にはもう忘れろと言われるけれど、僕にとって君がいなくなったことは少し大袈裟な遠距離恋愛みたいなもので、そうもいかない。
これが、いつか僕がちゃんと君の傍にいくときの目印になるのだろうか。
明日になればわかることだ。
耳元でまた、ころんと鳴らす。
もう一度、ころんと鳴らす。