ぼくは、朝を見たことがない。
父さんが子供のときに朝はなくなってしまったのだそうだ。会ったことのないおじいちゃんは父さんと同じ発明家で、お父さんにまた朝を見せようと色々な研究や発明をしたのだけど、結局、何もできずに死んでしまって、だから次は父さんが朝を作ろうと決めたんだと、いつか父さんがぼくに教えてくれた。朝の空は青いんだということを教えてくれたのも父さんだった。
それでも、あんまり何度も失敗するから父さんに、もう諦めたらどうかと言ったことがある。
父さんはそれから何日かあとに死んでしまった。事故だった。
「いつか、おまえに朝を見せたいんだ」
と、ぼくの質問に、目を合わせないようにして答えた父さんみたいに、今はぼくがいつか、君に朝を見せたい。駄目でも駄目でも、これでもか、これでもかと、おじいちゃんや父さんと同じ口癖を言いながら、いつかぼくが朝を作る。そうして、ぼくたちは見たことのない青い空を、ふたりで並んで見上げるんだ。