おばあちゃんはお気に入りの大きな椅子に座っていろいろなお話をしてくれた。おばあちゃんのお話はおとぎ話みたいで大好きだったのだけど、おばあちゃんは知らないうちに難しい病気になっていて、ある日父さんと母さんに病院に連れてかれてしまった。
少し疲れてるみたいでおばあちゃんはよく眠ったけど会いに行くといつもと同じに優しくて病院のベッドでぼくにお話を聞かせてくれた。それはおばあちゃんがしたおかしな冒険の話で、お話の中のおばあちゃんはまだ小さな女の子で、お気に入りの不思議な椅子に乗って退屈な町から見える海へ飛び出して途中で出会った口うるさい機械の鳥と一緒に海のあちこちを旅した。
「あんまりおかしな話ばかりしていないで下さい」
話の途中で母さんがやってくると、おばあちゃんは「そうね」と寂しそうに笑ってそれきり続きをしてくれなかった。
おばあちゃんはもう治らないと父さんと母さんが話しているのを聞いた次の日、お気に入りの椅子と一緒におばあちゃんは消えた。
今頃は海の上を大きな椅子でぷかぷか漂いながら、疲れて眠ってしまっているんだろう。
誰もぼくの話を聞いてくれないけど、おばあちゃん、いつかぼくが見つけにいくよ。