あなたが何を見ているのだかは知らないけれど、それはもはや意思といえるだろうか、わたしには甚だ疑問だ。呼んだって、こちらに一瞥もくれはしないだろうが、本当のところ、あなたが何か見ているのかすら判別つかない。あなたは他に目をやる余裕がないのだから、わたしには無と変わらないように思えるが、形のないものに頼って生きているわたしも、実際無であるところのまぼろしと変わらない気もする。先人よ。いつかわたしもそうなるだろうか。 かわずとびこむ水の音。 瞬きも捨てたあなたはもう、此処にはいないのだろう。わたしたちを置き去りにして。