素数ゼミが13年間隔でなく、12年目の今年に羽化して、ジャージャーと大声で啼き始めた。
(狂い咲きのような、一種のバグなのかな?)と思った。知り合いの学者に知らせようかと思ったが、今年大流行してる疫病のせいで忙しかろうか、と案じて、メールを打つのもおっくうになった。
蝉みたいな顔をした、トク婆のことを思い出した。去年のちょうど今頃、勤め先の施設で看取った婆だ。トク婆が、何か俺に伝えそびれたことがあって早々と地中から這い出て来たんか。近年俺は、看取りの時に「よい旅を」と言う習慣が出来て、トク婆が身罷る時も「よい旅を」と告げた記憶がある。『松尾さんがゆうてたような、よい旅なんかじゃあなかったですよ』と早朝から、がなられてるような気がした。