「恐竜を滅ぼした隕石って、ユカタン半島じゃなく、噴火湾に落ちたって知ってる?」
突然、耳元に降ってきた女の子の声は漣のように僕へ打ち付けたけど、不快と疑問だけが残って、それもすぐに忘れた。
というか、忘れたことすら忘れていた。記憶に無かった。
ただ、北大の修士でユカタン半島に調査へ行った時、ふと、漣が耳介で波だったのを感じたのだ。
そして震えた後ろポケットのケータイは、父が倒れたことを伝えた。
たしかに噴火湾はカルデラじゃない。だから、隕石によって生まれた可能性も0じゃない。
昆布岳から噴火湾を望むと、何時もそんなことを考える。隕石が複数だった可能性は、父が倒れずメキシコ大あたりで教授やってたり、義経が北海道から大陸に渡った可能性と同程度はあった気がする。その可能性を妄想しないと言えば嘘になる。父は毎日釣りに勤しむ。
いや、でもきっと帰ってきてたな。ここに。 気がついたらここにいた。いつからいたかなんて、サッパリわからない。覚えていない。