#topicpath
#contents
*読む [#gdb0e03f]
>砂浜に小さな白いされこうべが打ち上げられていた。両の手にはさんで目の高さに持ち上げてみる。されこうべの二つの虚空から潮の匂いがして僕は中を覗いてみた。そこには暗い海が広がっていた。ズズ...ズズ...と波が寄せていた。どこかで聞いたその音になおも顔を近づける。ふわとぬるい感触が唇に触れた。虚空が、光を取り戻す。褪せたフィルムの逆回転。世界がみるみる色づいて深く遠くさざめく。されこうべもまたゆるゆると肉色に色づいて温かみを取り戻していく。耳が、鼻が、唇が現れて、やがて青白いまぶたがゆっくりと開かれた。青くたゆたう眼差しがズズ...ズズ...と僕を飲み込んでいく。気がつくと僕は手足を丸めて静かな波に揺られていた。遠くからの子守唄が聴こえる。ここは暗くて温かい。
*ジャンル [#kc932ce4]
[[一行作品]]、[[骨]]、[[生命]]、[[キス]]、[[色彩]]、[[オノマトペ]]、[[僕]]
*カテゴリ [#zd18c2e3]
[[超短編/その他]]
*この話が含まれたまとめ [#qff02de0]
すぐ読める
*評価／感想 [#fa1220db]
*初出／概要 [#b563edd7]
超短篇・500文字の心臓 / 特別企画・イラスト超短編 参加作
*執筆年 [#ued57d71]
[[2004年]]
*その他 [#zde71865]
#counter
