#topicpath
#contents
*読む [#l65acd42]
> 鍋の底に菜種油をのばし、ごく弱火にかけている。微塵に切られた彼らは、そこにぼろんと放り込まれてしまう。ぼろんでできた小さな山を、ヘラで平すように馴染ませてやると、やがて彼らは小さな泡をたてて、いてもたってもいられないようである。手心を加えず、じっくり構えていたら、しんなりと色を変えるのが彼らである。何かが軋む。ページを捲る音がする。何を読んでいるのかは分からない。じりじりと沸き立つ泡を背景に、また、ページを捲る音がする。そうするうちに深く深くなってくるのは立ち上る香りも同様で、熱は彼らをすっかり別のもののようにしてしまう。熱は彼らをまるで別のもののようにして、未来を知ることのない彼らの細胞は壊れていく。
> 本は閉じられる。
> 何かが軋む。
> さてと、
*ジャンル [#v21029d7]
[[料理]]、[[五感]]、[[熱]]、[[本]]、[[軋む]]、[[彼]]
*カテゴリ [#j6938a54]
[[超短編/タ行]]
*この話が含まれたまとめ [#jfd3ee34]
すぐ読める
*評価/感想 [#w26e1847]
*初出/概要 [#y64ee685]
超短篇・500文字の心臓 / 第187回競作「[[誰かがタマネギを炒めている>超短編/タ行#qaafd42f]]」 / 参加作
*執筆年 [#q46a7c08]
[[2022年]]
*その他 [#y898aa21]
#counter