よもぎ/微熱 のバックアップの現在との差分(No.1)
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なんの病いに感染したのか、抗いようもない微熱が僕を誘う。廃屋の蜘蛛の巣のような熱が纏わりついて僕の意思とはおかまいなしに身体を動かす。どこへ連れていかれるのだろう。電車の振動に心臓が煽る。改札を出るとそこは生温くて懐かしい夜の街。慣れた手つきが店のドアを開ける。
轟!と店の中を嵐が吹き荒れる。殴られる視覚と聴覚。旋盤のように渦を描いて雨と風が僕を削っていく。耳が腕が鼻が足が数百の破片に。僕は削られる痛みとぬるく流れる熱に酔い痴れながら雷鳴の中に君の姿を認める。
(やあ、ひさしぶり)
君は鮮やかに微笑んで僕の破片を拾ってくれた。微かな熱を含んで濡れた破片が君の手の中で震える。君のその白い指でひとつひとつ嵌め込まれていく夢を見ている。
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執筆年
2003年?
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超短編朗読会「てんとう虫の呪文Podcast」Season1
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