よもぎ/お城でゆでたまご21 のバックアップの現在との差分(No.2)
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喉の乾きに目が覚めると、道に迷った旅人が深い森でようやく見つけた灯りみたいに、
僕は真夜中の冷蔵庫へ導かれる。ドアを開ける。灯りが迷い人の僕を照らす。
「僕が用があるのは缶ビールです」単刀直入にあいさつをするが、今夜の冷蔵庫では大盛りのグリーンサラダが華やかに繰り広げられていた。僕は遠い目をして「わたしも舞踏会にいきたかった」とつぶやいてみる。
(きょうは春らしくミモザサラダでーす)「ふーん。なんでもいいや」
12時の鐘が鳴り響く。彼女はムッと顔色を変え、エプロンを外して駆けだした。呆気にとられた置いてきぼりの王子は、ガラスのサラダボウルと持て余した時間にラップをかけて、深い森の奥の冷蔵庫に閉じ込めておいたんだっけ。
そんなわけでいま僕は、真夜中の台所で開けっ放しの冷蔵庫の灯りを頼りに、卵をひとつ、ゆでる。
ジャンル
リアル、料理、夜、眠る、とってんこう?、彼女、僕
リアル、料理、夜、眠る、彼女、僕
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選評/感想
初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第25回競作「お城でゆでたまご」 / 参加作
執筆年
2003年?
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