胡乱舎猫支店/おしゃべりな靴
Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:42:50 JST (1187d)
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リゾートホテルに泊まるのはこの旅では初めてだ。
相部屋の宿ばかりだったので旅の終わりの贅沢と言う事もあったし崖の上と言うロケーションも良かった。全ての部屋はオーシャンビューで夕刻から夜へと変わる海の景色を堪能しながら感傷に浸れた、相棒と歩いた日々を思って。
ーー今日で終わる、そう終わらせないと。
バスタブに勢いよく湯をはりながらテレビをつけた。多少大きな音でも気にせずにいいのが安宿とは違う。見たい番組が無いのは一緒だけど。
足を伸ばして湯に浸かるのも久々だった、シャワーしか無い所も多かったし、大浴場は苦手だ。
高く昇った月が見える。聞こえるのはさざ波ばかりだ。長旅を共にした相棒をバルコニーの手摺に乗せて磨り減った靴底に触れた。
ーーありがとう、本当に楽しかった…さよなら。
海に消える迄見届けた後、部屋に戻ってベッドサイドの灯だけつけた。いい話し相手だった、何でも話せた、何でも>聞いてくれた、色々、色々…本当に。明日…いや今日からは日常に戻らないといけない。そう、もう眠らなくては。
瞼を閉じてふと思った。ーー自分の紐で絞め殺されるってどんな気分だろう。
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初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第171回競作「おしゃべりな靴」 / 参加作
執筆年 
2019年?
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