海音寺ジョー/三階建て

Last-modified: Thu, 27 May 2021 23:34:57 JST (1064d)
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二階建てだと、ずっと思ってた。まさかうちに三階があったなんて。母は(してやったり)

というニヤリ顔をする。むかつく。

「いや内緒にしとく大した理由はなかったのよ」

「じゃあなんで今さら」

「幼いあんたらに教えたら、おもちゃぶちまけとか、ふすま破りとか、とにかくぐちゃぐちゃにしちゃうじゃん。だから分別のつく歳になるまで、と考えたまでさ」


 まあ、それは分からんでもないけど、そんなに秘密にしときたかった三階って…

「見たい?」

「あたりまえよ」

「見てみる?」

「是非見たいよ」

母は、カラーボックスと壁の隙間に手を入れて、たぶん、レバーのようなのを引いた。少しおいて、こてこてと天井の一角が折れ曲がって階段が出現した。はあ、もし家出したお兄ちゃんが、このことを知ってたら喜んだろうなあ、といなくなった兄のことを思い出しながら階段を上ってみると、小ぎれいな和室があり、テーブルで兄が漫画を読んでいた。

「お兄ちゃん、家出したんじゃなかったの?」

「いや、ここに居てた」


 久々にその夜は、家族そろってすき焼きをした。

ジャンル Edit

家族ご飯階段?数字

カテゴリ Edit

超短編/サ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第181回競作「三階建て」 / 参加作

執筆年 Edit

2021年?

その他 Edit

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