よもぎ/食23
Last-modified: Wed, 11 Nov 2020 23:49:18 JST (940d)
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少女は太陽に恋焦がれていた。夜明け前、少女は東の空を仰ぐ。紫から薔薇色に染まる空に太陽が昇る。太陽の光に照らされ少女は頬を赤らめ胸を高鳴らせる。夕暮れ、少女は西の空を見つめる。朱に焼けた空に落ちていく太陽を見つめ少女は涙を流す。少女は太陽がそこにあるだけで幸せで太陽に語りかけるだけで満たされた気持ちになった。ある日のこと。少女の太陽の前をひとつの影がよぎる。太陽によく似ているようでもあり少しも似ていないようなその影を少女は奇妙に思う。少女はいつものように太陽に語りかける。すると影が少女に語りかけた。少女は戸惑った。返事をもらったことなど今までになかったのだ。少女はもっと話しかけた。影は少女を笑わせ慰めた。太陽を背にした影はそっと腕を広げ柔らかく温かい闇の中へ少女を抱きすくめた。
少女は影の中に太陽を見ていた。そしてまた太陽の中に影を見ていた。やがて太陽と影が分かれていく。少女は影に抱かれたまま太陽から離れていく。影から解き放たれた太陽の眩しい光に少女が手をかざす。少女の手にダイヤモンドリングが光る。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第45回競作「食」 / 参加作
執筆年 
2005年?
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