よもぎ/鈴木くんのモロヘイヤ
Last-modified: Thu, 13 May 2021 23:48:52 JST (1376d)
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独身寮のワンルーム。ボクは風邪で寝込んでいた。
同期の鈴木くんが小さな土鍋を持ってやってきた。
「具合どう?おかゆ食べる?」
鈴木くんありがとう、と、フタを開けると土鍋の中はいちめんみどりのドロドロネバネバ。なにこれ。
「やっぱ、食べたことないかぁ、モロヘイヤだよ」
風邪をひくと母さんがいつも作ってくれてたんだ、と鈴木くんは笑った。
みどりのネバネバペーストの下は真っ白いおかゆ。混ぜて食べるとほんのり塩味と優しいのどごし。ボクはあっという間にたいらげた。
「大丈夫そうだな」
おとなしく寝ろよ、と鈴木くんは自分の部屋へ帰っていった。ボクはすぐに眠りにおちた。
夢をみた。
鈴木くんが料理をしている。ストトトト、あ、モロヘイヤを刻んでいるの、と手元を見ると、鈴木くんが刻んでいるのは、自分の指先!まな板の上は血みどろ、じゃなくてみどりのネバネバ。(す、鈴木くん、それがモロヘイヤ?)それがモロヘイヤだって?ちがうよ、僕がモロヘイヤだよ、と笑う鈴木くんの髪も指も顔も緑色の葉っぱがざわざわさわさわ。うわあぁああ。
目が覚めた。
あれ以来、鈴木くんの指先をかじってみたくてしょうがない。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第128回競作「鈴木くんのモロヘイヤ」 / 参加作
執筆年 
2014年?
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