よもぎ/輝ける太陽の子

Last-modified: Thu, 26 Mar 2020 23:32:38 JST (70d)
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僕は、ひまわりの迷路に立ちすくんでいた。行きたくもない会社の慰安旅行。冷やかし半分に入ったアトラクションで迷うとは。前方を人が横切る。追いかける。見失う。また前方に人影を感じる。追いかける。見失う。白い人影。不安に襲われ彼女を追いかける。彼女?既視感。前にもこんなことがあった。あれは19の夏。気ままな一人旅で立ち寄った広大なひまわり畑。やはり迷路で僕は迷い、そして出合い頭に彼女にぶつかった。一瞬の驚きのあとの夏の太陽がはじけたような彼女の笑顔。レンズで集めた光が紙を焦がすように僕の心に彼女が焼きつけられた。僕らは風と風鈴みたいにいつもじゃれあって、金魚鉢の金魚みたいに僕らだけの世界でその夏を過ごした。夏の暑さより熱い体温に浮かされたような時間。お互いの指でシェヘラザードみたいに語りつづけた夜。なにもかもが輝いていた生涯でただ一度の『あの夏』。僕はそれを思い出しながら迷路をさまよう。目の隅を白いTシャツが横切る。振り向く。追いかける。僕は出口を探しているのか、それともあの夏の彼女を探しているのか。ひまわりが次第に色を失い、重た気に頭を垂れる。迷路が狭まる。充実した種を大地へ還すように顔をうつぶせてひまわりが倒れる。気がつけば、累々と横たわるひまわりの屍。

ジャンル Edit

一行作品向日葵?ホラー彼女

カテゴリ Edit

超短編/カ行

この話が含まれたまとめ Edit

選評/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字の心臓 / 第28回競作「輝ける太陽の子」 / 参加作

執筆年 Edit

2003年?

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