まつじ/K
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目覚めると彼女がいない代わりに何の暗号か、妙な書き置きがある。
未だダイヤル式の電話が鳴る。
携帯電話は持たない主義、という彼女に付き合って、僕も持たない。
受話器を取ると果たして彼女からで、いま何処にいるのか尋ねると、メモ置いたじゃないと言われる。
「ドクターKの処?」
「なんでそうなるの?」
電話の向こうで首を傾げられても困る。
「大体、ドクターはいま海外じゃない」
ああそうだったそうであった。そうであったがしかしだとすると益々心当たりがない。「K市」「K支部」「ポイントK」に「カリウム工場」思いつく限り出してみるものの
「ふざけてるの?」
これじゃあ全然分からないよと文句を言っても、電話の向こうで口なんか尖らせてもダメですと、にべもなし。それから
「そこの割と鋭角なところだよ」
さらに訳の分からない言葉が放り込まれて混乱しそうになるがイヤ待てナルホド、つまり
「この通りを上って若干M・ジャクソン的なT字路を左?」
「だから描いてあるじゃん」
お嬢さん、通りを線で描いただけじゃあサッパリですよの旨伝えると
「え。」
そのまま白を切ろうとするので顔洗って着替えて最近のお気に入りらしい喫茶店まで彼女を迎えに行く。
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選評/感想
初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第110回競作「K」 / 参加作
執筆年
2012年?