まつじ/笑い坊主
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人類のほとんどは捩れて死にました。
抱腹絶倒では事足りず、けたけた声をあげ背を抱え尻を抱え捻れに捻れ息絶える様子はたいへん気持ちが悪く、ふたたびあのようなことが起こるのを恐れ人々は随分、しんとしています。
私がやりました。
わっはは笑って福を呼び、にっこり土に還りましょう、と笑土宗を説き回りました。
もちろん私は概ね真面目でしたが、妙に増える信者達が怖くなり、降って涌いたように件の病が流行り出したときには、鳩尾のあたりがごっそりどこかへ持って行かれたような心持ちになりました。
なぜ、あんなことになったのか、今もって分かりません。
それでも私が全てのはじまりのようで、以上の経緯から私の人生はたちまち転落、世間に疎まれ嫌われ石を投げられ妻を亡くし転げ転げてついに人でなくなったようです。
今年で七つになる息子が、豆つぶ大に分裂した体の一つで私を呼びます。
おれ、とうちゃんがいってたみたいに、みんながわらうほうがすきだので、いってくんね。
まるい顔のいがぐり豆がにっこりぴょんと私の口から腹に飛び込み、残りは散り散り旅立ちました。
すっかり怪異の体に馴染んだ腹の中の息子に感心し口の端緩むのを感じながら、いつまでもいじけてらんないぞ私もエイと体を分け四方八方行脚にゆきます。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第89回競作「笑い坊主」 / 参加作
執筆年 
2009年?