まつじ/眠りすぎないように11
Last-modified: Tue, 30 Nov 2021 23:55:47 JST (1212d)
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物理的な拠り所がないので、気を抜くと霧散しそうになる体である。
宙ぶらりんの精神は誰の視覚に捉えられることもなく、どこともいえぬ空間で揺蕩い、自我を保つことがとてもむつかしい。おらは死んじまっただ。
叱ってくれる相手もおらず、たった独りの自覚だけがある。
なにせ身体がないのだから、周囲を知覚することもできないようだ。
血流をめぐらせるように思考をめぐらせて、私というものをなんとか留めようとする。
生まれてから、独りでいる。
拠り所がないから、霧散しそうになる。
考えることが、私の血であり肉である。
思考を閉じたらきっと消えて失くなってしまう。
夢見ることもなく、不安のなかを私は揺蕩っている。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第184回競作「眠りすぎないように」 / 参加作
執筆年 
2021年?
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