まつじ/夢の樹
Last-modified: Thu, 23 Mar 2023 23:31:31 JST (71d)
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やけに大きく見えたのは、私が小さいせいだろうか。
言葉を茶化してもしょうのないことと思うけれど、弄んでしまうのは知を得たつもりの者の傲りかもしんない。すなわち人心的客引きに腐心なんである。なんとも、なんとも甘いこと。
やけに大きく見えた彼はなぜか私自身かもしれんと思えるが、それは真であっても全てではないようだ。
すっかり枯れたふうな彼は、揺する葉すら少ない枝ぶり。
実らぬ夢がこの体を豊かにするのだと彼がいう言葉の端は、寂しいようでもある。
満ち足りたつもりの世界は、安らかで虚しい。なにもかもを求めるのは過ぎた願いと、人々は丸く丸くなることを選択したのだ。
ただ、私はそれを選べない。言葉を弄って、誰かの慰めになったり傷となったりしたい気持ちが捨てられん。そう自覚するほど、おや、彼の枝先の芽が膨らむように見えて。
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選評/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第150回競作「夢の樹」/ 参加作
執筆年 
2016年?
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