まつじ/偏愛フラクタル23
Last-modified: Thu, 29 Apr 2021 23:28:32 JST (696d)
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私は数学が大嫌い。理数系は苦手だもの。
数学が好きと言う彼の気持ちはまるで理解できないけれど、眠る前、なんだったか、フラクタルという言葉について、面白いだろう、なんて語っていた彼は、私の膝で今、フラクタルの夢でも見ているのだろうか。私には、ちっともわからないけれど。
私は鏡が好き。合わせ鏡がとても好き。もしかして、彼の次くらい。あの不思議な感覚に、私の背中はぞくぞくするのだ。
鏡と鏡の間に、鏡の中に、私と、眠っている彼と、私と、彼と、私と、彼と、私と、彼と。
鏡は、光を反射して映っているのだったかしら。たしか、光にも速度があって、そうしたら、鏡に映った私達は、今よりも、一瞬に満たないくらいだけど、ほんの僅かだけ前の私達で、鏡の中の鏡の中の鏡の中の鏡の、もしかしたら、限りなく時間が止まったみたいに、私と彼は永遠に、ずうっと、二人きりでいられるのじゃないかしら、なんて考えながら、私達はどこか鏡の中、いつまでも、鏡の中、鏡の中、鏡の中、鏡の中。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第49回競作「偏愛フラクタル」 / 参加作
執筆年 
2005年?
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