まつじ/その他多数
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頭が痛い。
なぜ私はここにいるのか、あてもなく考えても答えるものはなし、私でない誰か、という概念は分かるのに私の他の誰かはどこにもいない。この私がきちんと存在しているのかすらも不安になるが、こうして頭痛に悩んでいるからには私はここにいるのだろう。
がつん、と頭の中を蹴られたような痛みがある。
ひどい事故で記憶障害になったのと思うこともある。
頭蓋の内側で、私でない誰かのようなものたちが足を踏み鳴らす。てんでんばらばらに動く。喧嘩をする。
いつの間にか湧いて出た誰かや何かがやかましく、走る、寝る、育つ、暴れ出す。
果たしてこれらは私の望んだそうぞうの産物なのか、こちらの意志に関わらず彼らは頭の中に居座り続け、どんぱち、どんぱち、万歳、行進。
こめかみが痛む。
愛と平和の。
とにかく痛む。
なんとか彼らを減らそうとしてみるがどうにも一時凌ぎで、治る気配がない。
いっそ自分の頭に飛び込んでしまいたい。
はっぴーにゅーいやー。
ちゃりんちゃりん、がらんがらん。
ちゃりん、がらん、と頭が痛い。
ここにはいないたくさんの誰かたちが私の頭蓋のてっぺんを仰いで祈る。
脳味噌の中で、わあわあ騒いでいる。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
超短篇・500文字の心臓 / 第73回競作「その他多数」 / 参加作
執筆年 
2008年?