まつじ/いやや11

Last-modified: Sun, 07 Aug 2022 23:53:14 JST (624d)
Top > まつじ > いやや11

読む Edit

 道中、猿を拾った。

 落ちていたのではなく、捕えたのでもない。しかし勝手に付いてきて、与えるのは私だけなのだから、拾ったといってもよいかなと思う。そのように旅人に話すと、面白いこともあるものですねとだけ言い、手元の袋から乾燥肉と、先日立ち寄った村で手に入れた芋を取り出し、鍋の上でくるくると小刀を操っては適当に切り落としていった。私は手持ちの米とニンニクを放り込み、さっと塩を入れ、今晩はいつもより豪勢な飯となった。

 飯をやると、猿は「IYAYA・IYAYA」と鳴いて満足そう、すぐに平らげて二度目をせびる際にも「IYAYA」という。あとは我々の分だと拒むと、「IYAYA……」と存外素直に引き下がり、隅で寝転んでしまう。ふて寝である。

 私たちは酒をちびりちびりと飲みながら、お互いの旅の話をした。

 翌朝目覚めると、猿がいた。どうやら仲間が迎えに来たらしかった。猿は「IYAYA!」と一度こちらを振り向き手を振ったようにも見えたが、そのまま遠くへ行ってしまった。

 私は「IYAYA」と呟き、では私たちも行きましょうかと声を掛け合いながら旅人と別れ、引き続き西へ向かっているのです。

ジャンル Edit

童話ご飯西?わたし

カテゴリ Edit

超短編/ア行

この話が含まれたまとめ Edit

すぐ読める

評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第188回競作「いやや」 / 参加作

執筆年 Edit

2022年?

その他 Edit

Counter: 178, today: 1, yesterday: 0