まつじ/降るまで28
Last-modified: Wed, 14 Apr 2021 23:21:11 JST (1486d)
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「雨が降るまででいいから」と言って、唐突に訪ねてきた小さな何かは、ぼくの机の上に居座った。
「どうして雨なの」
聞いたけれど
「なんとなく」
と言ったきり教えてくれない。
まあ、それでも特に困ることはなし、気にしないことにした。それから、他のいろいろな話をした。
雨が降ってきたのは六日後の朝だった。目が覚めるともう降っていて、はっと机の上を見たけれど、まだ、ちゃんといた。
「行くの?」
聞くと
「うーん、やっぱり、星が降るまでにする」
と言う。
「どれくらい?」
「山盛り」
答えるだけ答えると、そのまま、電気スタンドのわきにつくった小さなベッドでまた眠ってしまった。
二週間後の夜、ごはんを食べてから窓を開けてぼくたちが話していると、ものすごくたくさんの星が降った。
「もう行くの?」
聞いたけれど
「うーん、やっぱり、」
少しだけ間があいて
「ゴニョゴニョが降るまでにする」
何て言ったのかよくわからなかった。
まあいいや、聞かないことにした。
山盛りの流れ星が、山盛りきれいだった。
ぼくの机がにぎやかになって、もうすぐ一年経つ。
ゴニョゴニョはまだ降らないみたい。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第47回競作「降るまで」 / 正選王作
執筆年 
2005年?
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