まつじ/お願いします
Last-modified: Wed, 18 Jan 2023 22:31:21 JST (842d)
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電話ボックス、といって通じるのかわからないが雰囲気はそれに近い。ガラス張りの密室で、ほんの一瞬、天井から光が照射されたのち奥の扉が開く。
ちなみに、登録された者以外がさきほどの光を浴びるとたちまち分解される。実際、紛れて入り込もうとした小虫が消されたらしく、申し訳程度ほんの2秒のレクイエムが流れる。何かの効果音にしか聞こえない。と、いつも思う。
願いを抱えて憔悴しきった織姫と彦星に、年末は自分も大変だろうにサンタクロースの爺さんが「ほ! ほ! ほ!」と声を掛け励まし、先輩諸氏のなかにはテーマパークのキャラクターなどもいたりして雑多壮観、八百万って感じである。
各自が義務的かつ事務的に今月分の願いを受付で説明とともに渡され、今度はまたジャンルごとに分かれた別の列にそれぞれが連なっていく。受け取りの多い者は何度も列に並ぶことになるのだが、俺はひとつで大丈夫。そりゃそうだ。猫だもの。
庭に作られた簡素な墓の前で俺を拾った一人娘が泣くのだそうだが、夫婦のことは如何ともしがたい。
つきましては、なんとかしてやってくださいの意を込めてきっと君らは見たこともないだろう偶像に向かい俺はニャアと鳴くので、この長蛇なんとかしてくれんか。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第140回競作「お願いします」 / 参加作
執筆年 
2015年?
その他 
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