空虹桜/ホウ素
Last-modified: Sun, 12 May 2024 23:40:46 JST (364d)
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わたしが彼について知っていることはすくない。彼は孤高の人だったので、そもそも彼について知っている人がすくない。しかし、彼は孤独ではなかったから、彼の存在自体は知られていた。
ここが難しい。日本語というより、概念が。つまり、「孤独」の中に「孤高」は含まれない。「孤高」は「孤高」であり、「孤独」は「孤独」である。そもそも、「孤独」の語自体、単語の構成として同義反復してるのだ。ひとりではないのだ。
憧れが無かったといえば、嘘になる。わたしは彼に憧れていた。恋愛感情と異なると断言できるのは、もちろん、彼が孤高だからだ。彼ひとりが誰よりも高いところにいて、彼ひとりが違うレイヤにいる。わたしは眺めることしか出来ず近づけもしない。ただ、その行為を憧れと呼ばないのなら、なんと呼べばいいのかわたしは知らない。
堅いは脆くて、堅いは遍く。
彼が死しても未だに孤高なのは、その脆さと遍きに寄る。けれど、彼がいないことを受け入れているのも、彼が孤高だからだ。違いが無いのだ。
※初稿につき、最終稿はこちら。
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