まつじ/赤裸々
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むしゃりもぶくしと聞こえる。たまにばりちき鳴る。くらいならまだしも、じげじげふたぁん、というまるで不可解なものも混じって「こりゃあとても何か食べている音とは思えないな」と考えたのが全て口からだだ漏れる。
頭の中の事をいちいち喋ってしまう体になって面倒、というのも声に出る始末
「話に脈絡がないよなあ」
これも独り言で、どうしようもない。
ぼくの隠しごとと、隠しごとにフタをするためのどこかを吸い込んだのち奇妙な音をたてつつ噛むか飲むかみたいなことをしていた目の前にいる生き物状の何かは、げえふと一息、無数の文字を煙的に吐き出し、ぼくは「なるほどこれが周囲に漂い人に触れ自分の秘密その他いらん事諸々をあたり構わず曝してまわるのだな」と納得する。
「山下さんが七股かけてたのには驚いた」
いやほんと。
「不細工なのに」
というのを聞いてか聞かずか、彼はけたけた走りたちまち消え去る。
のようなものが巷で騒がれ命名までされてるんです妖怪だなんてなんだかちょっと風情がありますねえと脳味噌からっぽで口を動かすテレビの中の女子アナの前でぼくは、それよりも外に出るとひどいことになるのでなんとかしてくれんかこれと部屋でひとりはきはき喋ってやんなる。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
超短篇・500文字の心臓 / 第71回競作「赤裸々」 / 参加作
執筆年 
2007年?