まつじ/ノイズレス
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ばかばかばーか。ばーかばか。
何を言っても聞こえやしない。
あほーんだーら。あほんだらーあ。
とまあ、がんばればがんばるだけむなしい気がしてくる。
ああ。しょうもな。
世間というやつはやかましいことばかり、なんもかんもを静かにしようと試みたところが失敗失敗、わたしが静かになりました。
音という音を出すことをまるきり禁じられてしまったわたしは何に干渉することもできない体、とは言え、あまりに意識がはっきりしているし化けて出られる様子もないということは息の根が止まったわけでもなさそうだ。
世の中のごちゃごちゃは変わらずわたしを不愉快にさせるのにこちらから何もできないとはなんたる不公平。けしからん。
と憤慨したところで塵ひとつ動かないのだった。
通りの真ん中で半裸で踊っても誰も気付かない。わあわあ騒いでも次第に声が出ているのかすら分からなくなって、わたしの心中もごちゃごちゃうるさく言わなくなってくる。のだけれど穏やかになったわたしはそのまま消えてしまうのではないか知らん、と思ったりする。
ま、いいか。
わたしが消えたという事実ですら、何者にも伝わらない。
人生、諦めが肝心なのです。
あーあ。
しょうもな。
ジャンル 
リアル、アイロニィ、消える、孤独、ごちゃごちゃ、オノマトペ、わたし
カテゴリ 
この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第78回競作「ノイズレス」 / 参加作
執筆年 
2008年?