まつじ/生38

Last-modified: Mon, 17 May 2021 23:13:44 JST (1074d)
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 特にすることがなくて、怠い夏だった。

 垂れ流していたテレビでは、ラーメン特集がやっていた。

 好きだね、ラーメン

 なんて誰にともなく思ってみたりする。

 ラーメンか。

 腹が減ったな。


 中身のない冷蔵庫を開いて、生ラーメン、とプリントされた袋を手に取った。

 唐突に、生がそんなにえらいのか、と思った。

 生ラーメンとか生ソバだとか、どうしてかメン類しか出てこないけれど、うちで炊いた米だって生米(なままい)だし、野菜いためだって生野菜いため、変だけど確かに生野菜いためなのだよな、それがフツウなのだよなと、立ったままひとりで考えをめぐらせていた。

 あけっぱなしの冷蔵庫から、つめたいくうきがながれてきた。


 

 つくえの上に置いたラーメンの袋を、しばらく見ていた。

 これはほんとうに生といえるんだろうかとか考えていた。

 ボーっとしていただけかもしれなかった。

 そうやって見ていたら、袋のうえの生という字が、なぜか墓みたいに見えた。

 外で、大勢のセミがやかましく鳴くのが聞こえた。

ジャンル Edit

リアルご飯ラーメン生命

カテゴリ Edit

超短編/ナ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第51回競作「」 / 参加作

執筆年 Edit

2005年?

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