まつじ/小鬼の秘密5

Last-modified: Tue, 15 Nov 2022 23:55:55 JST (519d)
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 畑の作物を盗む者がある。爪痕で分かる。小鬼である。

 小鬼の触れた作物は病になるという。

 まったく迷惑な話で、罠を仕掛けるのだが、存外に頭が回るようで捕らえられない。

 辛抱強く夜の闇に紛れ込み、待つ。待つ。待つ。

 わずかに音の変化があり、影の動くのが見える。影は、複数ある。

 ばらばらに畑を移動する影が、どういうわけか、やがて一つの苗に集まる。

 銃声が轟く。

 カラスが喚きながら、数羽飛び立った。

 引き金には指を掛けたまま、ゆっくりと立ち上がり近づく自分の足音がやけに耳に残る。

 果たして、小鬼を仕留めることはできなかった。

 その場に落とされた果実は、土の上で崩れていた。

 小鬼の触れた作物は病になるという。


 少し離れた枝で羽を休めながら、相変わらず邪魔な小鬼どもめ、とカラスは思っていた。

 そのくせ、不味そうなものばかり食べるのだ。阿呆ではなかろうか。

 また畑に近づこうとするが、小鬼たちの眼がこちらを見ているようで、腹立ちまぎれにカアと鳴く。

ジャンル Edit

不穏?待つ?鳴く?オノマトペ

カテゴリ Edit

超短編/カ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第189回競作「小鬼の秘密」 / 参加作

執筆年 Edit

2022年?

その他 Edit

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