海音寺ジョー/誰かがタマネギを炒めている

Last-modified: Wed, 08 Jun 2022 23:04:54 JST (697d)
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 深夜のバルセロナ空港。エコノミー便はたいてい到着が遅くなる。日本人客がぞろぞろ移動するのに付いて行ってしまう。他国への乗り継ぎゲート。あわてて入国ゲートに引き返す。更に夜が更ける。

 ロビーでは金太が、目をぎらつかせ待っていてくれた。

日本人ツアー客を追ってギリシアに行くとこやった」

「君、油断しまくりやのう」

また言われてしまった。十代で大学選びに妥協した時。就活で飲食業に早々決めてしまった時。転職した時。彼のメキシコ修業時代に会いに行って、バスに旅券を忘れた時。

「君、油断しまくりやのう」

「まったくその通りや」

二人で大笑して、一旦ケリがつくのだった。


 漫画家のアシスタント、給料月八万まで削られて怒って辞めて、十年ぶりに金太に会いに来た。

「ホテル予約した」

「いや、泊めてくれる?」

「俺のねぐら二畳の相部屋やから無理」

「どうしよ?」

「今から探したる」

「すまん」

「とりあえず、腹ごしらえや」

 電車で移動し、中華料理屋に連れてってもらう。客席でテレビを見てた店主が、のそっと厨房に戻る。座ってると、甘い玉葱の匂いがした。彩りの良い五目焼きそばを出してくれた。カシューナッツも入ってて、本格的だなと思った。

ジャンル Edit

異国バルセロナ?中華料理?会話劇乗り物?油断?数字

カテゴリ Edit

超短編/タ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第187回競作「誰かがタマネギを炒めている」 / 参加作

執筆年 Edit

2022年?

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