海音寺ジョー/おしゃべりな靴

Last-modified: Thu, 14 Apr 2022 23:41:36 JST (741d)
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上流からまた草履が流れてきた。弟がベイトリールを巧みに操ってスピナーで引っ掛けて回収する。上流に遊泳場があって、子供が油断して流してしまうのだ。色とりどりのビニール靴。ミュール。浮き輪。弟はきりがないなーという顔になってきた。魚籠の中は空。足元にはカラフルな漂着物。高価そうな靴もあった。

「エスパドリューだな」

「兄ちゃんは物知りだな」

 スニーカーも流れてきた。

「靴屋が開けそうだな」

ぼくが軽口をたたくと、弟が面白がってそのスニーカーもルアーで引っ掛けて岸に戻した。

でも全部片方しかねえよ」

「そうな。でも水木しげるの妖怪図鑑に出てきた、一本足の妖怪には売れるかもよ」

「はは、あの妖怪、何てったっけな?」

「何か良い名前が付いてたけど、ぱっと思い出せないな」


 妖怪の名を無心に検証してると、まだ竿にぶら下がってるスニーカーが「カカカカッ」と高笑いした。二人びっくりしてると、スニーカーの中からビョッと見事な大きさの鮎が跳ねた。

ジャンル Edit

妖怪数字

カテゴリ Edit

超短編/ア行

この話が含まれたまとめ Edit

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評価/感想 Edit

選評結果 正選4点・次点0点・逆選3点

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第171回競作「おしゃべりな靴」 / 逆選王

執筆年 Edit

2019年?

その他 Edit

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