まつじ/魔法4
Last-modified: Tue, 22 Dec 2020 23:28:31 JST (1193d)
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「さあてみなさんお立ち会い。」
と手品師は言った。
スポットライト。
彼は私をハトに変えると観客に恭しく宣言した。
そんなことが出来るのか。私はただの客だぞ。
そう思いながら私も手だけで観客に小さく挨拶する。
体がすっぽり入る大きな箱に身を縮めると、ゆっくりと蓋が閉じられた。
「種も仕掛けもございません。」
手品師のステッキが蓋を叩く。
3、2、1…。
「はい!」
蓋が開いて、歓声が上がった。
体が上手く動かない。
慣れない体を無理矢理動かした私は、宙を羽ばたいていた。
これはどういうことだ。私の体はどこに行ったんだ。誰か、私はここだぞ。誰か、誰か。私は、ハトなんかじゃないんだ。
会場中を飛びまわったけれど、誰も気付いてはくれない。
彼女が下の方で手を叩いて喜んでいる。
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初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第41回競作「魔法」 / 参加作
執筆年
2004年?
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