手を繋ぎ向かったのは、見慣れたお店が立ち並ぶ街―― |
いつもと同じ風景でも、違っているのは 隣にナギさんがいるということだった。 |
ナギ | ヒメと一緒だと風景も全然違って見えるね。 |
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〇× | ふふっ、私も同じこと思ってました。 |
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ナギ | 同じことを感じるなんて、 やはり僕たちは運命で繋がっているということかもしれないよ。 |
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〇× | 繋がっている……そうですね、 同じ気持ちでいられるのは嬉しいです。 |
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〇× | ところでナギさん、ずっと道場にいたみたいですが、 もしかして稽古に参加したかったんですか? |
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ナギ | んー……参加したかったというより、 ヨミの稽古してるところしか見たことなかったなと思ってね。 |
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ナギ | だから、他の人間がどんな稽古をしているのか 興味深かったんだ。 |
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〇× | それで、稽古の様子を見てたんですね。 |
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ナギ | だけど、やっぱり僕に見られながらだと緊張するのかな? 少し動きが固い気がしたんだ。 |
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〇× | (緊張……なのかな? それもあるかもしれないけど……。) |
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ナギ | みんな気にせずやってくれていいのに……。 その辺はヨミとは違うんだろうね。 |
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〇× | ナギさんはヨミさんの稽古もよく見ているんですか? |
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ナギ | そうだね。ヨミは鍛錬を怠らないから、 僕も昔は相手をしていたんだよ。 |
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〇× | えっ! ナギさんが? |
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ナギ | ふふっ、そんなに驚くことかな。 |
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〇× | あ、いえ……。ナギさんっていつもおしとやかで柔らかい印象が あるので、ヨミさんと一緒に稽古してる姿は想像できなくて……。 |
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ナギ | それなら一度ヒメに見せてあげないとね。 |
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〇× | ふふ、楽しみにしています。 |
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〇× | マネージャーになって、はじめて格闘家の稽古を 間近でみましたけど、真剣に戦う姿って素敵ですよね。 |
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〇× | (きっとナギさんもかっこいいんだろうな……。) |
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ナギ | ……ヒメは、強い男が好き? |
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〇× | えっ? |
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〇× | (急にどうしたんだろう……真剣な顔して、 いつもの柔らかい雰囲気と違う。) |
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ナギ | やっぱり、強い男が素敵だって思うのかな。 |
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〇× | え、えっと……強い人が好きというか……。 その……弱いのがだめというわけではなくて……。 |
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〇× | (もしかして、創りたかった世界のことを 思い出したのかな……。) |
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〇× | (私が言いたいのは、そういうのじゃなくて、ええと……。) |
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ナギ | ヒメ……? |
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〇× | 私は強い人が好きというより、 そんな人たちの毎日努力している姿に、励まされるんです。 |
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ナギ | そうか……ヒメは努力をする男が好きなんだね。 |
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〇× | はい! だから、強い人が好きというだけでは―― |
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ナギ | ヒメ! わかったよ。 |
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〇× | は、はい……!? |
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ナギ | よく考えてみたら、僕は毎日何かを努力し続けたことは なかったかもしれないな。 |
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ナギ | 毎朝毎晩、稽古をする姿にヒメが惹かれてくれるというなら 僕もやるしかない。 |
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〇× | えっ……ナギさん? |
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〇× | (なんか、ナギさんの目がとてつもなくキラキラしてる……!) |
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ナギ | ヒメには今以上に僕のことを好きになってもらわないとね。 |
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ナギ | そうだ、明日からの稽古に僕も混ぜてもらえないか 京に尋ねてみよう。 |
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〇× | ふふ、ナギさんも稽古に参加したら 腕によりをかけて美味しいご飯つくりますね! |
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〇× | (ふぅ。よかった……私の早とちりだったみたい。 創りたかった世界のことじゃなかったんだ。) |
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ナギ | そうと決まれば、善は急げだね! |
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〇× | へっ? |
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ナギ | さあヒメ! 道場へ帰るよ。 |
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〇× | ええっ! もう帰るんですか!? まだ来たばかりなのに……。 ちょっとナギさん! ま、待ってくださーい! |
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