AN

Sat, 10 Aug 2019 13:32:44 JST (1723d)
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①アン(An)、アヌ(Anu)、アヌム。「天」の意である、天空神、最古の最高神。その名は、「神」(ディンギル)を意味する限定詞一時で表される(ディンギルは「*」に似た形の楔形文字で、"神格" を表す限定詞として、神名の前に付される。ただし、読み上げる際にディンギル自体は読まない)。主な信仰地はウルク(白色神殿)であるが、デール(デーリ)市でも信仰された(参考:『エラの神話』注釈)。②シュメル文明最初期において最高神だったが、やがてエンリルにその座を奪われ、ウルクにおける信仰もイナンナを中心にするものとなった。いわゆる「暇な神」(デウス・オティオースス)となってからは神々の重鎮的存在になる。『エヌマ・エリシュ』では、ティアマトに抗するが返り討ちにあい、『ギルガメシュ叙事詩』では娘イシュタルのわがままを拒み切れず要求を容れるなど、トホホな姿も散見される。一方、『ギルガメシュ叙事詩』冒頭でウルク民の訴えを聴き、アルルにエンキドゥを作らせたり、『クマルビ神話』において、主人であるアラルに反逆して玉座を簒奪したりと、活躍することもある(もっとも、後者においては臣下クマルビに陰部を食いちぎられ、やっぱりトホホ感があるが…)。『ハンムラビ「法典」碑』では、アヌムの名で表され、王権の授け手として描かれている。③カッシートやアッシリアの美術において「角冠」によって象徴されているものの、メソポタミア全史を通して "アヌの姿を描いた図像" は少ない(アヌであろうと目されているものはあるものの、確証にまで至っていない)。④配偶神について、バビロニア神話においてはアントゥとされている一方、アンソニー・グリーン『メソポタミアの神々と空想動物』では、「大地の女神ウラシュ」、後代「大地の女神キ」を妻としている。