サイドストーリー /1st/ロバート・ガルシア の編集 Top > サイドストーリー > 1st > ロバート・ガルシア **9話 [#story_09] #region(ネタバレ注意) |>|第五の泉へ向かう道中――| |~二階堂紅丸|大丈夫かい? ×ちゃん。&br;泉まで、俺が抱きかかえて行こうか?| |~〇×(主人公)|ありがとうございます。&br;けど、このくらい自分で歩けますから。| |~包|でも、本当に無理しないでね?&br;×お姉ちゃん、疲れてるみたいだし……。| |~〇×|ありがとう。&br;でも大丈夫だよ。昨日もゆっくり休んだし……ひゃっ!| |~ロバート・ガルシア|っと……あかんあかん。&br;転んでまうで、×ちゃん。| |~〇×|ロバートさん……!&br;すみません、手を引いてもらって……。| |~ロバート・ガルシア|足元ふらついてんで。&br;しんどい時はしんどいって言いや。な?| |~ロバート・ガルシア|包、紅丸、みんなと先行っててくれや。&br;ワイは嬢ちゃんを少し休ませてから追いかける。| |~包|わかった。&br;ロバートさん、×お姉ちゃんのこと、お願いね。| |~二階堂紅丸|ナイト役を奪われちゃったな。&br;わかった、先に行ってるよ。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、このへん座れるで。&br;ちょっと休んでいこうや。| |~〇×|すみませんロバートさん。&br;せっかくロバートさんが、泉の場所を見つけてくれたのに。| |~ロバート・ガルシア|そんなん、×ちゃんの苦労に比べたら、&br;大した手間やない。| |~〇×|いえ、そんなことないです。&br;次に進めるのも、ロバートさんのおかげで――| |~〇×|……あれ? そういえば、ロバートさんは&br;どうやって次の泉の場所が分かったんですか?| |~ロバート・ガルシア|ああ、まあワイもガルシアの人間っちゅうことで、&br;社交界には顔が利くんや。| |~〇×|(しゃ、社交界って。何だか雲の上の世界だなぁ……。)| |~ロバート・ガルシア|そんでまあ、この辺に住んどる土地持ちの連中で、&br;泉を所有しとる家を探したら、どんぴしゃりや。| |~ロバート・ガルシア|あとは、ガルシア家の名前を出せば、一発っちゅうわけ。| |~〇×|そうだったんですか。ロバートさんのお家って、&br;とても信頼されているんですね。| |~ロバート・ガルシア|信頼っちゅうか、親父や先代が築いた威光のおかげやな。&br;そんで、ワイはそれに乗っかってるだけなんやけど。| |~〇×|そんなことないですよ。&br;ロバートさん自身の人柄もあってのことだと思いますよ。| |~ロバート・ガルシア|ありがとな。けど、そうやとしても、&br;ガルシアの名前ってのは強力なんや。| |~ロバート・ガルシア|だからこそ、この際使えるもんはなんでも使うたるんや。&br;これはつまり……ノブレス・オブリージュってやつやな。| |~〇×|の、ノブレス……ええと、なんでしょう?| |~ロバート・ガルシア|『ノブレス・オブリージュ』。欧米由来の言葉で、&br;『高貴さには義務が伴う』って意味や。| |~ロバート・ガルシア|わかりやすく言うと、『社会的地位を持つ者は、その特権を&br;用いて社会に対して責任を負うべきである』って感じやな。| |~〇×|つまりその……えらい人やお金持ちは、世の中のために&br;なるようなことをしましょう……ってことですか?| |~ロバート・ガルシア|そんな感じやな。&br;だから、ワイはガルシアの名をええことに利用したるんや。| |~ロバート・ガルシア|それにひきかえ、うちのバカ親父はそれもせんと、&br;未だにナギに出資を続けとるらしいからな。| |~ロバート・ガルシア|ここは、ワイが親父の名代として、その責務を果たすまでや。&br;世界と、×ちゃんのためにな。| |~〇×|(ロバートさん、ガルシア家の人として、&br;世界をよくしようって思ってるんだ。)| |~〇×|ロバートさん、責任感が強いんですね……尊敬します。| |~ロバート・ガルシア|んー、ちょっと違うかな。&br;ワイは、自分にできることをやろうとしてるだけや。| |~ロバート・ガルシア|今朝、旅館で×ちゃんも言ってたやん、&br;『私にしかできないことなら、私がやる』って。| |~ロバート・ガルシア|あの言葉も、ノブレス・オブリージュの崇高な精神や。&br;自分の立場を受け入れて、世の中の為に動くっちゅうな。| |~〇×|そうなんでしょうか?&br;ただ、私にできることを頑張ろうって、思っただけで……。| |~ロバート・ガルシア|そうか。×ちゃんは、自然とノブレス・オブリージュの&br;精神でいられるんやろうな。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、それってめっちゃ立派なことやと思うで。| |~〇×|あ、ありがとうございます……。| |~〇×|(ノブレス・オブリージュ。&br;私は、私にできることに誇りと責任を――)| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- ページの更新 ビジュアル編集モードに切り替える &aname(top); 解放条件 #region |~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他| |1話|5|1|| |2話|19|5|| |3話|21|10|| |4話|21|15|| |5話|23|20|| |6話|24|24|| |7話|24|28|| |8話|28|32|| |9話|29|36|| |10話|33|40|| |11話|35|43|| |12話|37|46|| |13話|37|49|| |14話|37|52|| |15話|41|55|| |16話|41|58|| |17話|47|61|| |18話|51|64|| |19話|51|67|| |エピローグ||70|メインストーリー4章29話読了| |~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他| #endregion *1章 [#chapter_1] **1話 [#story_01] #region(ネタバレ注意) |>|私は、京さんたちと一緒に、格闘家のみなさんとの&br;飲み会へ向かっていた――| |~〇×(主人公)|リョウさんたちの試合、すごかったですね。&br;私、まだドキドキしてます……。| |~草薙京|なんだよ。まだそんなこと言ってんのか?| |~〇×|あんなに激しい戦いを目の前で見たら、&br;胸がいっぱいになってしまって……。| |~草薙京|ったく、そうやってぼんやり歩いて、&br;転んでも知らねえぞ。| |~二階堂紅丸|ふふ、その時は俺が×ちゃんを&br;受け止めるから、大丈夫だよ。| |~二階堂紅丸|それとも、俺が手をとってエスコートしようか?| |~〇×|い、いえ! 大丈夫です、ありがとうございます。| |~矢吹真吾|〇さん、無理はしないでいいっすからね!&br;疲れたら、いつでも言ってください!| |~〇×|うん。真吾くんもありがとう。| |~〇×|(……本当は、靴擦れしてて歩きづらいんだけど、&br;飲み会のお店までくらいなら、平気そうかな。)| |~二階堂紅丸|……なんだ? 随分センスのいい車が停まったじゃないか。| |~草薙京|オープンカーかよ。すかしてんな。| |~矢吹真吾|わー、かっこいいっすね。&br;どんな人が乗ってるんでしょう?| |~〇×|(あれ? 運転席の人がこっちに手を振ってる?)| |~〇×|あ、あの人、ロバートさんじゃないですか?| |~ロバート・ガルシア|どーも、×ちゃん。&br;さっきは控室まで来てくれて、ありがとうな。| |~ロバート・ガルシア|もしよかったら、ワイの車で一緒に行かへん?&br;特別サービスで乗せてったるで。| |~二階堂紅丸|なんだよ、ロバート。随分いい車に乗って来たと思ったら、&br;×ちゃんを、さらって行くつもりなのか?| |~矢吹真吾|そうっすよ! 〇さんだけじゃなくて、&br;おれたちも乗せてってください!| |~ロバート・ガルシア|それがな、後部座席見てくれん?| |~〇×|……あ、包くん。&br;すごく気持ちよさそうに寝てますね。| |~ロバート・ガルシア|そういうこと。&br;つまり、むっさい男たちを乗せるスペースはないわけやな。| |~ロバート・ガルシア|さ、ワイの車はレディ優先やで。&br;×ちゃん、助手席でよければ乗ってくれや。| |~〇×|で、でも……。| |~〇×|(京さんたちを置いて、&br;私だけってわけにはいかないよね。)| |~草薙京|〇、いいから乗っていけよ。| |~〇×|え? でも、私だけ乗せてもらうなんて悪いですよ。| |~二階堂紅丸|ふふ、×ちゃんは優しいんだね。&br;でも気にしないで大丈夫だよ。| |~矢吹真吾|おれもオープンカーに乗ってみたかったですけど、&br;今回は〇さんに譲ります。| |~草薙京|〇、じゃあ後でな。&br;紅丸、真吾、行くぜ。| |~〇×|(あ、京さんたち行っちゃった……。)| |~ロバート・ガルシア|ほな、×ちゃんはワイの車で決まりやな。&br;ほら、はよ乗りや。| |~〇×|は、はい。よろしくお願いします……。| |~ロバート・ガルシア|なんや、×ちゃん、京らのこと気にしとんの?| |~〇×|はい。私、みなさんのマネージャーを任されてるのに、&br;一緒に行かなくてよくなかったかなって……。| |~〇×|(本当は、靴擦れが痛いから、乗せてもらえるのは&br;嬉しいけど、やっぱりよくないよね。)| |~ロバート・ガルシア|そんなん平気やて。&br;×ちゃんは真面目な子なんやなー。| |~ロバート・ガルシア|それに、×ちゃん、足靴擦れしとるやろ。&br;そういう時は、無理せんどけばええねん。| |~〇×|え? そうですけど、なんでわかったんですか?| |~ロバート・ガルシア|歩き方を見て、靴擦れしとんのやろなって。| |~ロバート・ガルシア|京と紅丸も気付いてたんちゃうかな。&br;真吾のやつは、どうか知らんけど。| |~〇×|そうだったんですか。&br;私、飲み会のお店までなら、歩けるかと思って。| |~ロバート・ガルシア|そうは思うても、無理は禁物やで。&br;京らも、大事なマネージャーに無理させたくないやろ。| |~ロバート・ガルシア|ちょっとでもしんどい時は、いつでも言うんやで。&br;少なくとも、ワイは×ちゃんのこと、放っとかへん。| |~〇×|はい。ありがとうございます。| |~〇×|(ロバートさんとふたりで話すの初めてだけど、&br;なんだか前から知ってたような、話しやすい人だな。)| |~〇×|(……ロバートさんの車でしばらく走って来たけど、&br;ずっと歩行者の視線を感じる。)| |~女性A|ねえねえ! 信号待ちしてる車の男の人、&br;すっごくかっこいいね!| |~女性B|ほんとだ! それに乗ってる車も、すごい素敵!| |~〇×|(歩いてる女の人たちの声が聞こえてくる。&br;うん、確かにロバートさんって格好いいよね。)| |~ロバート・ガルシア|どーも。お嬢さんら、声援ありがとな。| |~女性A|手を振ってくれたー!| |~女性B|きゃー! 笑った顔も素敵ー!| |~〇×|(ロバートさん、笑顔で女の人たちに手を振ってる。&br;なんだか、こういうことも様になっちゃう人だな。)| |~ロバート・ガルシア|すまんなあ。ワイがオープンカーに乗っとると、&br;こういうことが多いんや。落ち着かんやろ。| |~〇×|い、いえ、ちょっとびっくりしちゃうけど、&br;大丈夫ですよ。| |~〇×|(ロバートさん格好いいし、こういう車に乗ってると、&br;すごく目立つんだろうな。)| |~ロバート・ガルシア|ほなよかった。&br;飲み会の店に着くまで、もうちょい寛いでってや。| |~ロバート・ガルシア|あ、そや。今乗っとるこの車、実は日本で借りたもんなんや。&br;ワイの愛車は、国に置いてきてしもうてな。| |~ロバート・ガルシア|ワイの車、めっちゃ格好ええんやで。&br;×ちゃんに見せたかったわ。| |~〇×|(この車でも周りの注目を集めてるのに、&br;愛車だったら、ロバートさんもっと目立っちゃうのかな?)| |~女性C|――ねえねえ。あの車の男の人、すっごいかっこよくない!?| |~〇×|(信号待ちで、また黄色い声が聞こえてきた。&br;私が見られてるんじゃないのに、緊張しちゃうなあ……。)| |~ロバート・ガルシア|――あ~、そうや、×ちゃん。&br;あんた、いろいろ大変やったみたいやなあ。| |~〇×|え? 私ですか?&br;えっと……なんのことでしょう。| |~ロバート・ガルシア|務めてた会社が、倒産してもうたんやろ?| |~ロバート・ガルシア|紅丸がSNSで、新しいマネージャーのこと呟いててな。&br;それで×ちゃんのことを知ったんや。| |~〇×|そうだったんですね。&br;はい、そうなんです。突然倒産してしまって……。| |~ロバート・ガルシア|そうなんか。上の連中もいろいろあったんやろうけど、&br;社員の再就職もサポートせんと、冷たい会社やなあ。| |~ロバート・ガルシア|ワイがその会社の社長やったら、&br;社員に絶対そんな苦労はさせへんのに……。| |~〇×|ありがとうございます、ロバートさん。&br;でも、私もう大丈夫ですよ。| |~〇×|(……とはいっても、やっぱり時々、&br;前の会社のこと、考えちゃうこともあるかな。)| |~ロバート・ガルシア|ま、元気だしぃや。&br;女の子は笑顔でいるんが一番やで!| |~〇×|はい。ありがとうございま……きゃっ!| |~〇×|(きゅ、急にすごいスピードに! びっくりした!)| |~包|ちょ、ちょっと、どうしたの!?&br;急にすごく揺れたけど!| |~〇×|あ、包くん起きちゃったね。&br;今、ロバートさんが急にスピードを出したの。| |~ロバート・ガルシア|ははは、どや? びっくりしたやろ。べおもろかったんちゃう?| |~包|え、ええ? すごくびっくりはしたけど、&br;突然どうしたの?| |~ロバート・ガルシア|ははは、すまんすまん、ちょっとした気まぐれってやつや。| |~〇×|(ロバートさん、私を笑わせようとしてくれたんだな。&br;うん、なんだか楽しくなってきたかも。)| |>|すっかり起きてしまった包くん、ロバートさんと会話を弾ませつつ、&br;目的地の居酒屋へ向かっていった――| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *2章 [#chapter_2] **2話 [#story_02] #region(ネタバレ注意) |>|私の力のことも、黒いモヤのことも、&br;わからないまま朝を迎えた――| |~〇×(主人公)|(なんだかあんまり眠れなかったけど、&br;早く朝ご飯の支度をしに行かなくちゃ。))| |~〇×|(あれ? 道場の方から誰かの声がする。&br;誰かトレーニングしてるのかな?)| |~矢吹真吾|てやっ!このっ!| |~ロバート・ガルシア|ハッ! ハッ! トリャッ!| |~〇×|(ロバートさんと、真吾くん。&br;ふたりとも、こんな早い時間から手合わせしてるんだ。)| |~矢吹真吾|隙あり!&br;真吾キィィィック!!| |~ロバート・ガルシア|残念、そっちこそ隙だらけや!&br;とりゃ! とりゃ! とりゃ!| |~矢吹真吾|くぁっ!&br;くっ! まだまだっ!| |~ロバート・ガルシア|お、まだ起き上がるん?&br;ほんなら、これはどないや!| |~矢吹真吾|ひぃっ! 容赦なさすぎっす!| |~〇×|(ロバートさん、流れるようなキックの連続。&br;真吾くん、防ぐだけで精一杯みたい。)| |~ロバート・ガルシア|――ふう。&br;まあこんなもんかな。お疲れさん。| |~矢吹真吾|はあ、はあ……。&br;あ、ありがとうございました……。| |~ロバート・ガルシア|朝からええ運動になったで。&br;こっちこそありがとな。| |~矢吹真吾|い、いい運動って……おれはもう限界っす。&br;さすがは極限流師範代、強すぎですよー。| |~ロバート・ガルシア|いやいや、真吾もなかなか強かったで。&br;なんなら、極限流の門下生にならんか?| |~矢吹真吾|え? 何言ってるんですか!&br;おれの師匠は、草薙さんだけっすよ!| |~ロバート・ガルシア|ははは、わかっとるって。&br;冗談や、冗談。| |~ロバート・ガルシア|ほんで、×ちゃんはどやった?&br;ワイの技、かっこよかったやろ?| |~矢吹真吾|へ? 〇さん?&br;いつの間に……!| |~〇×|ふたりの手合わせの途中から、お邪魔してました。| |~矢吹真吾|ひどいっすよー。声かけてくれれば、&br;もうちょっと格好いいとこ見せたのに。| |~ロバート・ガルシア|真吾、残念やけど、×ちゃんは&br;ワイに見惚れてたみたいやで?| |~ロバート・ガルシア|な? そやろ?&br;×ちゃんの熱視線、感じたで。| |~〇×|えっ! い、いえいえ! そんなことは……!| |~ロバート・ガルシア|ははっ。そないに全力で否定することないやん。&br;ウブやなぁ。| |~ロバート・ガルシア|あんときは、正気じゃなかったとはいえ、&br;こんな可愛らしい子を、恐ろしい目に合わせてもうたんやな。| |~ロバート・ガルシア|嬢ちゃん。ほんま、あんときはおおきにな。| |~〇×|そんな、気にしないでください……え?| |~〇×|(ひゃっ! ロバートさんが手を……。)| |~矢吹真吾|ちょ、ロバートさん、何してるんですか!| |~〇×|あ、あの、ロバートさん? どうしたんですか?| |~ロバート・ガルシア|ほんま、女神様みたいな綺麗な手やなあと思ってな。&br;この手がワイらを救ってくれたんやな。| |~〇×|女神様だなんて。まだ私の能力が何かわかりませんし、&br;それに、あのときはただ必死だっただけですから。| |~ロバート・ガルシア|その必死な気持ちが、ワイとリョウを救ったんやろ。| |~ロバート・ガルシア|ほんまおおきに。&br;×ちゃんは、ワイらの命の恩人や。| |~〇×|そんな、ロバートさんだって、&br;私を逃がすために、戦ってくれたじゃないですか。| |~ロバート・ガルシア|そりゃそうや。命の恩人を守るのは当然やで。| |~ロバート・ガルシア|これからは、ワイとリョウが、あんたを助ける。&br;今ここで、誓わせてくれや。| |~〇×|は、はい。&br;ロバートさん、ありがとうございます。| |~〇×|(ロバートさん、真剣な目で、誓ってくれた。&br;――私も、何かロバートさんの助けになりたいな。)| |~ロバート・ガルシア|そう言ってもらえてよかったわ。&br;これから、改めてよろしゅうな。| |~矢吹真吾|ちょっと、ロバートさん、&br;いつまで〇さんの手を握ってるんですか?| |~ロバート・ガルシア|お、そういえばワイ、手合わせで汗かいたんやった。&br;いつまでも×ちゃんに引っ付いてたら悪いわ。| |~ロバート・ガルシア|ほんなら、シャワーでも行ってくるわ。&br;おふたりさん、また後でな。| |~矢吹真吾|ロバートさん、行っちゃいましたね。&br;おれ、ロバートさんに全然歯が立たなかったっす。| |~〇×|そういえば、手合わせのあと、ロバートさんのこと&br;『極限流師範代』って言ってたけど、それって……?| |~矢吹真吾|あれ? 〇さん、知らないんすか?&br;ロバートさんは『極限流』って流派の師範代なんですよ?| |~矢吹真吾|極限流は、リョウさんが師範で、ロバートさんが師範代で、&br;ふたりは『無敵の龍』『最強の虎』って呼ばれてるんですよ!| |~〇×|『無敵の龍』に『最強の虎』って、&br;なんだかすごく強そうだね。| |~矢吹真吾|ですよね! しかも、そう呼ばれるのが納得できるくらい、&br;ふたりはめちゃくちゃ強いんです!| |~〇×|(ロバートさん、武術の流派の師範代だったなんて、&br;普段の雰囲気からはイメージできない……不思議な人だな。)| |~ロバート・ガルシア|(×ちゃん、顔赤くして可愛かったなあ。&br;あんなウブな子見たんは、久しぶりや。)| |~ロバート・ガルシア|(と、あかんあかん。&br;にやけてる場合ちゃう、気い引き締めな。)| |~ロバート・ガルシア|……さて。かけなおしとくか。| |~ロバート・ガルシア|――ロバートや。悪いな、カーマン。&br;ずっと電話に出れんかった。| |~ロバート・ガルシア|そうや、ちぃと憂き目を見る羽目になってもうたが、&br;もう大丈夫や。こっちには女神様がついとる。| |~ロバート・ガルシア|それより、今回のKOFの主催は、ほんまヤバいで。| |~ロバート・ガルシア|――大会スポンサーをだまくらかしてくれたこと、&br;よくよく後悔させなあかんようや。| #endregion //---------- **3話 [#story_03] #region(ネタバレ注意) |>|伊勢へ向かうための買い出し中――| |~包|×お姉ちゃん、まずはどこのお店に行く?| |~〇×(主人公)|うーん。どのくらい伊勢にいるかわからないし、&br;着替えとか日用品とか、あとはもしもの時の薬とか――| |~包|あと、おやつも忘れないでね!| |~二階堂紅丸|おいおい包。おやつって、遠足に行くんじゃないんだぜ?| |~包|えー、でもおやつは絶対必要だよ!&br;……ほら、あのお店のお菓子とか、美味しそう!| |~二階堂紅丸|あっ! おい、包、ひとりで行くな。迷子になるぞ。| |~〇×|あっ、ふたりとも待ってください!| |~ロバート・ガルシア|ははは、これから泉の水を浄化して、&br;世界救おうとしとるとは思えんな。| |~〇×|ふふ、そうですね。&br;なんだか、いつものお買い物みたいです。| |~ロバート・ガルシア|そうやな。でも伊勢行く前に&br;のんびりみんなで買い物できるんは、今日だけかもな。| |~ロバート・ガルシア|と、いうわけやから、この貴重な時間、&br;ちょっとワイに貸してくれへん?| |~〇×|え?&br;ええと、どういう意味でしょう?| |~ロバート・ガルシア|×ちゃんが、ワイを救ってくれたことへのお礼、&br;まだしてへんかったやろ?| |~ロバート・ガルシア|後々なんかできたらって思てたんやけど、&br;こんな状況やし、今お礼させてや。| |~〇×|そんな、お礼なんて……。&br;それに今は、包くんと紅丸さんを追いかけないと。| |~ロバート・ガルシア|だーいじょうぶやって。あいつらが迷子になることないやろ。&br;ちょっとくらい別行動したってかまへん。| |~ロバート・ガルシア|ほら、行こうや。&br;×ちゃんに、来てほしい店があんねん。| |~〇×|(……ここって、靴のお店?)| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、前にワイの車乗った日、靴擦れしてたやん?&br;その靴、合うとらんのやろ?| |~〇×|実は、そうなんです。長く歩くと少し痛むんですけど、&br;ここ最近、買い替える時間が無くて、そのままで……。| |~ロバート・ガルシア|あかんあかん。伊勢行ったらたくさん歩くことになるやろし、&br;足に合った靴、買っといたほうがええと思うで。| |~〇×|あ、あの、『お礼』って、もしかして……?| |~ロバート・ガルシア|おう、そやで。&br;ワイが×ちゃんに合う靴、買うたるわ。| |~〇×|そ、そんな、いいですよ。&br;申し訳ないです……!| |~ロバート・ガルシア|前も言うたやろ、&br;『×ちゃんは命の恩人』やって。| |~ロバート・ガルシア|ほんまに感謝してるんや。&br;こんくらいのことはさせてもらえんと、困るわ。| |~〇×|……わかりました。&br;あの、本当にありがとうございます。| |~ロバート・ガルシア|ええんやって! ほら、×ちゃん足のサイズ何センチ?&br;ワイが、よさそうなん、いくつか見繕ってくるわ。| |~ロバート・ガルシア|ほらほら、そこの椅子座って。&br;のんびり待っててくれればええからな。| |~ロバート・ガルシア|とりあえず、ワイが見た中でよさそうなんは、&br;これと、これと、こいつと、こっちと、それと――| |~〇×|(わあ、ロバートさん、たくさん靴を持ってきてくれた。&br;どれもすごく素敵だなぁ。)| |~ロバート・ガルシア|ほな、まずはこの靴から履こうか。&br;×ちゃん、足貸してえな。| |~〇×|ま、待ってください、ロバートさん、&br;私、靴の脱ぎ履きくらい自分でできます……!| |~ロバート・ガルシア|ええから。任しとき、| |~〇×|(ロバートさんの手が脚に触れて……。&br;なんだか恥ずかしい……。)| |~ロバート・ガルシア|――うーん、こっちは違ったな。これもだめや。| |~ロバート・ガルシア|お、これはどうやろう?&br;×ちゃん、歩いてみてくれへん?| |~〇×|あ、はい。&br;――そうですね。歩いてみて違和感はないです。| |~ロバート・ガルシア|うーん、でもなあ、ちょーっと体重のかかり方が悪そうや。&br;なかなか難しいなあ。| |~〇×|(ロバートさん、すごくこだわって選んでくれてるみたい。)| |~ロバート・ガルシア|あ、そうや!&br;×ちゃん、ちょっと座って待っててな。| |~〇×|(ロバートさん、何か思いついたみたいに、&br;嬉しそうに歩いて行った。どうしたんだろう?)| |~ロバート・ガルシア|――×ちゃん、お待たせ。&br;このスニーカー、履いてみてくれへん?| |~〇×|これですか? わあ、デザインが可愛いですね……!| |~ロバート・ガルシア|ええのは見た目だけやないで。&br;この靴のメーカーの靴は、履き心地が抜群なんや。| |~ロバート・ガルシア|このメーカーはな、めっちゃ企業努力してるんやで。&br;ええ靴を作るための研究を、かかさんのや。| |~ロバート・ガルシア|いろんな人種、性別、年齢、体形の人の、&br;足に掛かる負荷をデータ化して、靴作りにいかしとる。| |~ロバート・ガルシア|それに、最高のスポーツシューズを作るために、&br;スポーツチームやスタジアムを、いくつも保有してるんやで。| |~〇×|なるほど……。いい靴を作るために、&br;頑張ってるメーカーさんなんですね。| |~ロバート・ガルシア|そうなんや。どうも、創業者の妻が、大ケガして&br;足に後遺症を持っとる人らしくてな。| |~ロバート・ガルシア|そういうこともあって、よりいい靴、歩きやすい靴を&br;作ることに、情熱を注いでるっちゅう話や。| |~〇×|そうだったんですか。&br;創業者の人、きっといろいろな思いがあるんでしょうね……。| |~ロバート・ガルシア|そういうこっちゃな。さ、×ちゃん、メーカーの&br;努力の結晶の靴、履いて歩いてみてくれんか。| |~〇×|はい。&br;――わ、この靴とても歩きやすいし、すごく軽いです!| |~ロバート・ガルシア|うんうん、歩き方もきれいやな。&br;よっしゃ、この靴で決まりや!| #endregion //---------- **4話 [#story_04] #region(ネタバレ注意) |>|新しい靴のフィッティングが終わり――| |~〇×(主人公)|(そう言えば、ロバートさんが&br;選んでくれた靴、いくらなんだろう?)| |~〇×|(――ええっ!?&br;これ、私が想像してた値段と桁が違う……!)| |~店員|こちら、お買い上げですね。&br;ありがとうございます。| |~ロバート・ガルシア|プレゼント用に包んでくれはります?&br;ええと、リボンの色は――| |~〇×|あ、あの、ロバートさん! やっぱりいいです!&br;私、こんな高い靴だって知らなくて。ごめんなさい!| |~ロバート・ガルシア|なんや? ×ちゃん、まだ遠慮しとるん?&br;ええって。足に合うならそれが何よりやろ?| |~店員|こちら、お買い上げいただきましたお品になります。&br;お出口までお運びしますね。| |~ロバート・ガルシア|どうもおおきに。| |~ロバート・ガルシア|ほら×ちゃん、はよ行くで。| |~〇×|あ、ちょっと、ロバートさん……!| |~〇×|あの、あんなに高い靴買っていただいて、本当にすみません。&br;私、ぜんぜん値段を見てなくて。| |~ロバート・ガルシア|だからええんやって。&br;ええもんは高い。当然やろ?| |~ロバート・ガルシア|まあ、この大量消費の時代、高級品てのは贅沢品と&br;思われがちやけどな。| |~ロバート・ガルシア|けど値が張るもんてのは、ええもんを届けようとした人らの、&br;妥協なき理想と、技術の結晶なんやで。| |~ロバート・ガルシア|そういうんを、ワイらが使っていくんも、&br;ええことなんやないかな?| |~〇×|(そっか。この靴のメーカーさんも、&br;頑張って靴を作ってくれたんだよね。)| |~〇×|……そうですね。ありがとうございます。&br;私、この靴大切に履きますね。| |~ロバート・ガルシア|うんうん。&br;足は第二の心臓や。ええ靴で守っとくんやで。| |~〇×|(うん、この靴があれば、&br;きっとたくさん歩いても、大丈夫だよね。)| |~アナウンサー|――速報をお伝えします。| |~〇×|わっ! びっくりした……。&br;速報……?| |~ロバート・ガルシア|なんや? あの街頭ビジョンからか。| |~記者A|ガルシアさん! 今回のKOFの混乱、&br;出資者としてどう思われますか!?| |~初老の男|…………。| |~〇×|(報道の人たちが、年配の男性を取り囲んでる?&br;KOFの出資者って、あの人が?)| |~記者B|ガルシアさん! 何かコメントを!&br;出資者としての責任は――| |~〇×|(あ、年配の男の人、何も答えずに行っちゃった。)| |~〇×|ロバートさん、今のは……。| |~ロバート・ガルシア|ああ。報道の連中が、今回のKOFの混乱についての、&br;出資者側の反応を聞こうとしとるんやろうな。| |~ロバート・ガルシア|主催者が何も答えへんから、流れ弾を喰らっとるんやろ。&br;まあ、しゃあないわな。| |~〇×|出資者なら、実際の大会運営はしてないですよね。&br;なのにあんなに追いかけられるなんて、大変ですね。| |~ロバート・ガルシア|……ああ、そうやな。| |~〇×|(あれ? ロバートさん、なんだか浮かない表情。&br;さっきの映像のこと、心配してるのかな?)| |~包|×お姉ちゃーん!| |~〇×|あっ! 包くんに、紅丸さん!| |~包|ちょっとロバートさん、酷いよ!&br;×お姉ちゃんを連れてっちゃうなんて!| |~二階堂紅丸|全くだ。美しいレディの独り占めなんて、許せないな。| |~ロバート・ガルシア|すまんすまん、ちょいと×ちゃんと&br;デートしたくなってもうて。| |~〇×|で、デートだなんて、私そんな……!| |~包|もうっ! ×お姉ちゃん、&br;次は僕に付き合ってもらうからね!| |~二階堂紅丸|さっき向こうに素敵なカフェを見つけたんだ。&br;そこで休憩なんてどうかな?| |~包|賛成! 僕、ちょっと喉が渇いてきちゃったんだ。| |~〇×|それじゃあ、カフェで休憩にしようか。| |~〇×|あの、ロバートさん? 一緒に行きましょう。| |~ロバート・ガルシア|あ? ……ああ。ついてくから、先に行っとってくれ。| |~〇×|わかりました。待ってますね!| |~報道陣|……ご覧のようにアルバート・ガルシアさんは、&br;報道陣の問いかけに答えることなく――| |~ロバート・ガルシア|(大勢で取り囲んどいて、『問いかけ』とはな。)| |~ロバート・ガルシア|――ようやっとかけてくれはったな。&br;テレビ観てたで、親父。| |~ロバート・ガルシア|ええ加減黙っとらんで、&br;身の振り方考えんとまずいんちゃうか?| |~ロバート・ガルシア|――!| |~ロバート・ガルシア|……なんやて?&br;親父、何考えとるんや?| #endregion //---------- **5話 [#story_05] #region(ネタバレ注意) |>|第一の泉浄化後・山中――| |~〇×(主人公)|次の泉に行かなきゃいけないのに、&br;休憩になってしまって……すみません。| |~アンディ・ボガード|気にしないで。&br;泉の浄化には、〇さんの力が必要なんだしね。| |~ジョー・東|ああ。まずは泉を一つ浄化できたんだ。&br;無理しねーで、確実に進んでいこうぜ。| |~〇×|はい。ありがとうございます。| |~〇×|(そうだよね。無理しないで、ちゃんと自分の力を&br;出せるようにしておかなきゃ。)| |~〇×|(でも、私が泉を浄化しなきゃ、世界が大変なことに&br;なっちゃうなんて、やっぱりプレッシャーだな……。)| |~テリー・ボガード|×、飲み物はいるか?&br;ずいぶん歩いたからな、水分補給はしておけよ。| |~包|お菓子もあるよ。&br;×お姉ちゃん、一緒に食べようよ。| |~〇×|包くん、テリーさん、ありがとうございます。&br;でも、ちょっと近くを歩いてきていいですか?| |~〇×|せっかくだから、山からの景色を見ようかと思って。| |~〇×|(これからのこととか、つい考えちゃうし、&br;ひとりになって頭を冷やしてこよう。)| |~ジョー・東|景色? あ、わかったぜ。泉が淀んでた時の空気で、&br;まだ気持ちが悪いんだろ?| |~アンディ・ボガード|違うよジョー。&br;誰にだって、ひとりになりたいときがあるものさ。| |~アンディ・ボガード|〇さん、気分転換してくるのもいいけど、&br;あんまり遠くには行っちゃだめだよ。| |~〇×|ありがとうございます、アンディさん。&br;落ち着いたら、すぐ戻ってきますね。| |~〇×|(頭を冷やしたくて、離れてきちゃったけど、&br;みなさんに悪いことしちゃったかな。)| |~〇×|(はあ……本当に泉を浄化出来ちゃったし、&br;これから私、どうなっていくんだろ――)| |~ロバート・ガルシア|――せやからん、何度も言うとるやろ!!| |~〇×|(わ! び、びっくりした。&br;あれ? ロバートさんだ。電話してるみたい。)| |~ロバート・ガルシア|しつこいわ!&br;なに言われようと、ワイはそっちには帰らへん!| |~ロバート・ガルシア|親父こそ、ええ加減目ぇ覚ましや!&br;自分がやっとること、おかしいってわからんのか?| |~〇×|(帰らない? 親父?&br;ロバートさん、ご実家からの電話なのかな?)| |~〇×|(それに、ロバートさんすごく怒ってるみたい。&br;どうしちゃったんだろう?)| |~ロバート・ガルシア|親父、おおっぴらにはしとらんようやけど、&br;出資、まだ続けとるんやろ?| |~ロバート・ガルシア|何を言われたかしらんが、&br;これ以上奴らに金出すメリットは、なんもあらへんて!| |~〇×|(え、出資? 金を出す?&br;な、なんだか、かなりプライベートな話のような……。)| |~ロバート・ガルシア|――ああ、そうかいな。じゃあもう勝手にせぇ!&br;今にわかるで、ワイの言うことが正しかったってことがな!| |~〇×|(あ、ロバートさん電話終わったみたい。&br;……聞いちゃったこと、ちゃんと謝ろうかな。)| |~〇×|あ、あの、ロバートさん。| |~ロバート・ガルシア|嬢ちゃん? なんや、いつの間にいたんや?| |~〇×|すこし前です。&br;すみません。私、ロバートさんの電話聞いてしまって……。| |~ロバート・ガルシア|あー、そうなんか。&br;ええよ、ワイが×ちゃんおるの気付かんかっただけや。| |~ロバート・ガルシア|それより、大声出してて驚いたやろ。&br;×ちゃん、堪忍な。| |~〇×|ロバートさん、今の電話大丈夫ですか?&br;余計なお世話かもしれないけど、私、心配です。| |~ロバート・ガルシア|大丈夫。×ちゃんが気にするようなことは、&br;なんもあれへん。| |~〇×|あ、あの、ロバートさん。私見当違いなことを&br;言ってるのかもしれないですけど――| |~〇×|ロバートさんに何かつらいことがあったら、&br;私が味方になりたいって、思ってますから。| |~ロバート・ガルシア|……そっか、おおきにな。&br;ワイも、何があっても、×ちゃんの味方や。| #endregion //---------- **6話 [#story_06] #region(ネタバレ注意) |>|第二の泉浄化後、旅館・自室――| |~〇×(主人公)|(今日はなんだかとても疲れた……。&br;山道をたくさん歩いたせいかな?)| |~〇×|(なんだか、何もしてないと寝ちゃいそう。&br;テレビでもつけてよう。)| |~ニュースキャスター|――続いてのニュースです。| |~〇×|(あ、ちょうどニュース番組やってる。観ておこうかな。)| |~ニュースキャスター|観客が暴徒化するなどして、中止に追い込まれたKOF。&br;我々はKOFの出資者にインタビューを試みました。| |~〇×|(KOFの話題だ……。出資者の人って、&br;最近よくテレビで観る年配の男の人かな?)| |~記者|――アルバート・ガルシアさん! KOFの中止について、&br;出資者としての責任はどう果たされるんですか!?| |~初老の男|…………。| |~〇×|(あ、やっぱり、ロバートさんに靴を買ってもらった時に、&br;街頭ビジョンで見た男の人だ。)| |~ニュースキャスター|――このように、アルバート・ガルシアさんは、&br;現在、記者の問いかけに答える様子はありません。| |~ニュースキャスター|世界有数の大財閥の長であり、KOFの巨額出資者。&br;アルバート・ガルシアさんには、KOF中止の責任が――| |~〇×|(大財閥のトップで巨額出資者だと、自分が主催じゃない&br;KOFの責任まで問われちゃうの? それって変だよね。)| |~〇×|(――あ、あれ? アルバート・ガルシア?&br;『ガルシア』って、ロバートさんの苗字だよね……?)| |~〇×|(『ガルシア』に『出資』。&br;そういえば、最初に泉を浄化したあと――)| |~ロバート・ガルシア|親父こそ、ええ加減目ぇ覚ましや!&br;自分がやっとること、おかしいってわからんのか?| |~ロバート・ガルシア|親父、おおっぴらにはしとらんようやけど、&br;出資、まだ続けとるんやろ?| |~ロバート・ガルシア|何を言われたか知らんが、&br;これ以上奴らに金出すめりっとは、なんもあらへんて!| |~〇×|(あの時ロバートさんも、出資がどうのって話してた。&br;まさか、『ガルシア』って、ロバートさんは――)| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、おるか?| |~〇×|(――! ロバートさんだ。)| |~〇×|(ガルシア財団のこと、思い切って聞いてみようかな。)| |~ロバート・ガルシア|おう、×ちゃん。&br;随分疲れてたみたいやけど、体調どうや?| |~〇×|はい。ちょっと疲れちゃったけど、少し休めば大丈夫です。| |~〇×|それより私、ロバートさんに伺いたいことがあるんです。&br;ちょっとだけお話できますか?| |~ロバート・ガルシア|なんや、×ちゃん?&br;愛の告白かいな?| |~〇×|ち、ちがいます!&br;ええと、今流れているニュースのことです。| |~ニュースキャスター|繰り返します。KOFの巨額出資者、ガルシア財団の&br;アルバート・ガルシアさんは、現在も何も語らず――| |~〇×|ロバートさんって、もしかしてガルシア財団の……。| |~ロバート・ガルシア|――嬢ちゃんの想像の通りやで。&br;ワイは、ガルシア財団の人間や。| |~ロバート・ガルシア|そんで、最近テレビに出とるあのおっさんは、&br;ガルシア財団の総帥で、ワイの親父なんや。| |~〇×|(やっぱり……!)| |~〇×|もしかして、最初の泉を鎮めたあとの電話も、&br;お父さんがテレビで騒がれていることに関係があるんですか?| |~ロバート・ガルシア|ああ。あの時は、ガルシア財団の、KOFへの&br;出資について、言い争いになってな。| |~ロバート・ガルシア|報道の連中は知らんようやが、KOFが中止した今も、&br;ガルシア財団からナギへの出資が続いてるようなんや。| |~〇×|KOFが中止になった、今でも……?| |~ロバート・ガルシア|なんでかは分からんけどな、&br;親父が出した金の使い道なら見当がつく。| |~ロバート・ガルシア|おそらく、ナギが言っていた『神世界の礎』っちゅうのになる&br;格闘家を集めるための、活動資金やろな。| |~〇×|(ガルシア財団からの出資が、ナギさんたちの&br;活動資金に……それって、大変なことなんじゃ。)| |~ロバート・ガルシア|ワイは、親父に出資をやめるように何度も電話で話した。&br;けど、全く聞く耳持ってくれんかったわ。| |~〇×|息子であるロバートさんの意見を&br;全然聞いてくれないなんて、どうしてなんでしょう?| |~ロバート・ガルシア|親父曰く、KOF中止によって生まれた、ガルシア財団への&br;世間の不信感を払拭したいんやと。| |~ロバート・ガルシア|その手立てを、ナギたちは真摯に考えてくれとるから、&br;手を切るわけにはいかない、とか言うとったが、どうだかな。| |~〇×|そうなんですか……。&br;それは、ロバートさんもおつらいですよね。| |~〇×|(自分の父親が、ナギさんたちの協力者だなんて、&br;ロバートさん、どれだけ苦しいだろう。)| |~ロバート・ガルシア|ワイは、親父を止めてやりたいが、&br;親父のやつ、ワイにすぐ帰国しろとまで言ってきとるんや。| #endregion //---------- **7話 [#story_07] #region(ネタバレ注意) |~〇×(主人公)|ロバートさん、帰国してしまうんですか……?| |~ロバート・ガルシア|まさか。帰らんよ。&br;ワイはここで、嬢ちゃんに恩返しせなあかん。| |~ロバート・ガルシア|それに、このままナギたちに&br;気持ちよく仕事さすんは癪に障る。| |~ロバート・ガルシア|親父は聞く耳を持ってくれる様子はないが、&br;これからも辛抱強く、説得を続けるつもりや。| |~〇×|(ロバートさん、まだ帰国しないでいてくれるんだ……。)| |~〇×|良かった……。| |~ロバート・ガルシア|はは、声に出てるで。声に。| |~〇×|……! すみません。&br;つい、不安になってしまって……。| |~ロバート・ガルシア|大丈夫や。×ちゃんは何も心配することあらへん。&br;親父のことは、ちゃんとワイが説得する。| |~〇×|わかりました。&br;もし、私にできることがあったら、すぐに言ってくださいね。| |~ロバート・ガルシア|おおきに、頼りにしとるで、×ちゃん。| |~ロバート・ガルシア|ほんなら、ワイはもうお暇するわ。&br;すまんかったな、突然部屋にきて。| |~〇×|いえ、私の方こそ、急にご家庭のことに首を突っ込んで、&br;すみませんでした。| |~ロバート・ガルシア|はは、ガルシア財団のこと、確認したくなるのもわかるで。&br;ほな、またあとでな。| |~〇×|(ロバートさん、行っちゃった。)| |~〇×|(ガルシア財団総帥の子供かぁ……びっくりしたけど、&br;ロバートさんがロバートさんなことに、変わりはないよね。)| |~ロバート・ガルシア|――はあ……。&br;あれ? なんでワイ、ちょっとがっかりしてんねやろ。| |~リョウ・サカザキ|〇に、家のことを知られてしまったから……、&br;じゃないのか?| |~ロバート・ガルシア|うおっ。&br;なんやリョウ、いつからいたんや。| |~リョウ・サカザキ|お前と、〇が話している途中からな。| |~ロバート・ガルシア|ったく、立ち聞きなんて、趣味悪いでほんま。| |~リョウ・サカザキ|それについては、すまなかった。| |~リョウ・サカザキ|だがロバート、〇は、人を色眼鏡で見るような&br;人間には見えない。それだけは、言わせてくれ。| |~ロバート・ガルシア|せやな。それはわかっとるよ。&br;でも、これは性分みたいなもんなんや。| |~ロバート・ガルシア|他人にワイのバックボーンを知られる瞬間は、&br;いつだって身構えてまう。| |~ロバート・ガルシア|これまで、ワイの生まれを知ってから&br;態度を変えられたことなんて、数えきれないほどあるからな。| |~ロバート・ガルシア|でも×ちゃんはそんなんやない。&br;それは、ちゃんとわかっとるよ。| |~リョウ・サカザキ|……わかった。それならいいんだ。| |~リョウ・サカザキ|ところで、親父さんは大丈夫なのか?| |~ロバート・ガルシア|全然大丈夫やない。もう少し頭のええ親父やと思てたけど、&br;あそこまで意固地になるとはな。| |~リョウ・サカザキ|聞く耳持たず、か。&br;……ロバート、これはあくまで俺の推測なんだが――| |~ロバート・ガルシア|おっと、ちょい待ち。&br;どうやら、考えてることは一緒のようやで。| |~ロバート・ガルシア|親父の、あの取り付くしまもない感じ……。&br;ワイらの考え通りの可能性が高いやろな。| #endregion //---------- **8話 [#story_08] #region(ネタバレ注意) |>|八神さんの暴走を止め、旅館へ戻るころには夜になっていた――| |~包|×お姉ちゃん、大丈夫かな……。&br;あれからずっと眠ってるけど。| |~リョウ・サカザキ|包、落ち着け。〇の脈も呼吸も異常はない。&br;今はしばらく休ませよう。| |~包|うn……。&br;うう、×お姉ちゃん、早く目を覚まさないかなあ。| |~包|――あれ? そう言えばロバートさんは?&br;あんなに心配そうに、×ちゃんを抱えて来たのに。| |~リョウ・サカザキ|ロバートは『やることがある』と言って、&br;どこかに出かけて行ったぞ。| |~包|どこか? それってどこなの?| |~リョウ・サカザキ|さあな。&br;ロバートのことだ、何か考えがあってのことだろう。| |~包|うーん、×お姉ちゃんがこんな状態なのに、&br;ロバートさん、どこに行っちゃったんだろう?| |~ロバート・ガルシア|(最後の泉は見つかったが、やっぱちいとやっかいやな。)| |~ロバート・ガルシア|――と言うわけでして、是非そちらの所有する泉の調査を、&br;させていただけないでしょうか?| |~御用邸の主人|ほっほっ。そんなに硬くならずに。&br;かのガルシア家からの依頼、断るわけがございません。| |~主人の娘|そうですわ。ロバート様からのお願いなら、&br;なんでも聞いて差し上げたいくらい。| |~御用邸の主人|その通り。&br;満足いくまで、泉の調査をしてください。| |~ロバート・ガルシア|はい。快くご協力いただいたこと、感謝いたします。| |~御用邸の主人|よいのですよ。力になれることがあれば、&br;何なりと仰ってください。| |~ロバート・ガルシア|(このおっさんの笑顔の裏に、ガルシア家と&br;コネクション持ちたいっちゅう魂胆が、丸見えや……。)| |~ロバート・ガルシア|(それに、なんで主人の娘も同席しとるんや。&br;嫌な予感するし、早よ帰ろ。)| |~ロバート・ガルシア|それでは、そろそろ失礼いたします。&br;今回のご協力、ありがとうござい――| |~御用邸の主人|ほっほっほっ。ロバート様はせっかちなお方だ。&br;実は、こちらからもお話があるんですよ。| |~ロバート・ガルシア|……それはどういったお話でしょう?| |~御用邸の主人|ロバート様は、そろそろ身を固めたいなどとは、&br;お考えではありませんか?| |~用邸の主人|実は、うちの娘も、そろそろ年頃でしてね。| |~主人の娘|うふふ、私、ロバート様と歳も近いし、&br;お話も合うと思うんです。| |~御用邸の主人|無理に、とは言いませんが、娘から私が所有する&br;泉の話でも、聞いていってはくださいませんか?| |~ロバート・ガルシア|(泉に入ることを許可するから、&br;娘とええ感じになってけっちゅうことか……。)| |~ロバート・ガルシア|(ああ、またや。ワイがガルシア家だから、&br;この人らもこうやって、必死に気を引こうとしよる。)| |~ロバート・ガルシア|(やーっと帰れた。とんでもない時間やないか!)| |~ロバート・ガルシア|(それにしてもあの娘さん、玉の輿狙ってるんが&br;みえみえの会話ばっかしとったなあ。)| |~ロバート・ガルシア|(こういうんはよくあるとはいえ、&br;ああまで露骨なんは、ほんま勘弁してほしいわ。)| |~ロバート・ガルシア|(ほんま呪いやな……。どこに行っても何をしても、&br;ガルシア家っちゅう名前で、みんな目の色変えよる。)| |~ロバート・ガルシア|はあ……×ちゃんが心配やな。&br;気い取り直して、とっとと戻ろ。| #endregion //---------- **9話 [#story_09] #region(ネタバレ注意) |>|第五の泉へ向かう道中――| |~二階堂紅丸|大丈夫かい? ×ちゃん。&br;泉まで、俺が抱きかかえて行こうか?| |~〇×(主人公)|ありがとうございます。&br;けど、このくらい自分で歩けますから。| |~包|でも、本当に無理しないでね?&br;×お姉ちゃん、疲れてるみたいだし……。| |~〇×|ありがとう。&br;でも大丈夫だよ。昨日もゆっくり休んだし……ひゃっ!| |~ロバート・ガルシア|っと……あかんあかん。&br;転んでまうで、×ちゃん。| |~〇×|ロバートさん……!&br;すみません、手を引いてもらって……。| |~ロバート・ガルシア|足元ふらついてんで。&br;しんどい時はしんどいって言いや。な?| |~ロバート・ガルシア|包、紅丸、みんなと先行っててくれや。&br;ワイは嬢ちゃんを少し休ませてから追いかける。| |~包|わかった。&br;ロバートさん、×お姉ちゃんのこと、お願いね。| |~二階堂紅丸|ナイト役を奪われちゃったな。&br;わかった、先に行ってるよ。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、このへん座れるで。&br;ちょっと休んでいこうや。| |~〇×|すみませんロバートさん。&br;せっかくロバートさんが、泉の場所を見つけてくれたのに。| |~ロバート・ガルシア|そんなん、×ちゃんの苦労に比べたら、&br;大した手間やない。| |~〇×|いえ、そんなことないです。&br;次に進めるのも、ロバートさんのおかげで――| |~〇×|……あれ? そういえば、ロバートさんは&br;どうやって次の泉の場所が分かったんですか?| |~ロバート・ガルシア|ああ、まあワイもガルシアの人間っちゅうことで、&br;社交界には顔が利くんや。| |~〇×|(しゃ、社交界って。何だか雲の上の世界だなぁ……。)| |~ロバート・ガルシア|そんでまあ、この辺に住んどる土地持ちの連中で、&br;泉を所有しとる家を探したら、どんぴしゃりや。| |~ロバート・ガルシア|あとは、ガルシア家の名前を出せば、一発っちゅうわけ。| |~〇×|そうだったんですか。ロバートさんのお家って、&br;とても信頼されているんですね。| |~ロバート・ガルシア|信頼っちゅうか、親父や先代が築いた威光のおかげやな。&br;そんで、ワイはそれに乗っかってるだけなんやけど。| |~〇×|そんなことないですよ。&br;ロバートさん自身の人柄もあってのことだと思いますよ。| |~ロバート・ガルシア|ありがとな。けど、そうやとしても、&br;ガルシアの名前ってのは強力なんや。| |~ロバート・ガルシア|だからこそ、この際使えるもんはなんでも使うたるんや。&br;これはつまり……ノブレス・オブリージュってやつやな。| |~〇×|の、ノブレス……ええと、なんでしょう?| |~ロバート・ガルシア|『ノブレス・オブリージュ』。欧米由来の言葉で、&br;『高貴さには義務が伴う』って意味や。| |~ロバート・ガルシア|わかりやすく言うと、『社会的地位を持つ者は、その特権を&br;用いて社会に対して責任を負うべきである』って感じやな。| |~〇×|つまりその……えらい人やお金持ちは、世の中のために&br;なるようなことをしましょう……ってことですか?| |~ロバート・ガルシア|そんな感じやな。&br;だから、ワイはガルシアの名をええことに利用したるんや。| |~ロバート・ガルシア|それにひきかえ、うちのバカ親父はそれもせんと、&br;未だにナギに出資を続けとるらしいからな。| |~ロバート・ガルシア|ここは、ワイが親父の名代として、その責務を果たすまでや。&br;世界と、×ちゃんのためにな。| |~〇×|(ロバートさん、ガルシア家の人として、&br;世界をよくしようって思ってるんだ。)| |~〇×|ロバートさん、責任感が強いんですね……尊敬します。| |~ロバート・ガルシア|んー、ちょっと違うかな。&br;ワイは、自分にできることをやろうとしてるだけや。| |~ロバート・ガルシア|今朝、旅館で×ちゃんも言ってたやん、&br;『私にしかできないことなら、私がやる』って。| |~ロバート・ガルシア|あの言葉も、ノブレス・オブリージュの崇高な精神や。&br;自分の立場を受け入れて、世の中の為に動くっちゅうな。| |~〇×|そうなんでしょうか?&br;ただ、私にできることを頑張ろうって、思っただけで……。| |~ロバート・ガルシア|そうか。×ちゃんは、自然とノブレス・オブリージュの&br;精神でいられるんやろうな。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、それってめっちゃ立派なことやと思うで。| |~〇×|あ、ありがとうございます……。| |~〇×|(ノブレス・オブリージュ。&br;私は、私にできることに誇りと責任を――)| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *3章 [#chapter_3] **10話 [#story_10] #region(ネタバレ注意) |>|K'とマキシマの本拠地・屋上――| |~ロバート・ガルシア|――マキシマ、わざわざこんなとこ呼び出してまで、&br;ワイにしたい話っちゅうのはなんや?| |~マキシマ|他の連中に聞かれないように配慮したつもりだ。&br;お前さんの身内についての話だからな。| |~ロバート・ガルシア|なんやて? 身内ってのは、ガルシア財団についての話か?| |~マキシマ|ああ。そうだ。| |~マキシマ|お前さんの親父さんや、ガルシア財団の人間たちだがな、&br;ナギの洗脳に遭っている可能性が濃厚だ。| |~ロバート・ガルシア|はあ……。やっぱりな、そんなことやろうと思たで。| |~マキシマ|父親が洗脳されているという話を、&br;随分あっさり受け入れるんだな。| |~ロバート・ガルシア|そりゃあな。何度か電話で親父とは話したが、&br;あのおかしな様子は、洗脳されたと考えるんが自然や。| |~ロバート・ガルシア|とはいえ、親父だけやなく財団の人間たちもか。&br;こりゃあえらいこっちゃやな。| |~マキシマ|ああ。今お前さんが親父さんの元に戻れば、&br;味方はいないものと思っておいたほうがいい。| |~マキシマ|ほとぼりが冷めるまで、親父さんや側近連中には、&br;接触しないのが身のためだ・| |~マキシマ|とくに、あのカーマン・コールとかいうエージェント。&br;あいつは腕が立つんだろう? 用心しろよ。| |~ロバート・ガルシア|わかった。忠告おおきにな、マキシマ。| |~ロバート・ガルシア|それにしても、親父もカーマンも、今は敵か。&br;はあ……まいったなあ。| |~マキシマ|ナギが、使えるものは誰であろうと利用している、&br;ということだろうな。| |~ロバート・ガルシア|ああ。ナギがすべての元凶や。&br;あいつをどうにかすれば、それで全て済む。| |~ロバート・ガルシア|必ずナギたちを止める。&br;そんで、親父もカーマンたちもみんな元通りや。| |~マキシマ|どのみち、ナギを止めなければ世界は終わりだ。&br;俺たちは勝利するしかない。| |~ロバート・ガルシア|その通りやな。ナギを倒して×ちゃんも、&br;親父もガルシア財団も全部救うんや。| |~マキシマ|気合十分だな。頼もしいぞ。| |~ロバート・ガルシア|はは、やるっきゃないんや。まかしとき。| |~ロバート・ガルシア|おおきにな、マキシマ。&br;親父たちの情報を、ワイにだけ話してくれて。| |~ロバート・ガルシア|このあともほかの連中……特に×ちゃんには、&br;このこと話さんといてくれるか?| |~マキシマ|ああ。〇は献身的な人間のようだが、&br;だからこそ、聞かせないほうがいいこともあるだろう。| |~ロバート・ガルシア|ああ。ワイの身内のことにまで、&br;×ちゃんを巻き込まれへん。| |~ロバート・ガルシア|(×ちゃんは、親父たちが洗脳されてると知ったら、&br;また浄化の力を使うはずや。これ以上、負担はかけられへん。)| #endregion //---------- **11話 [#story_11] #region(ネタバレ注意) |>|博物館から移動後、食堂にて――| |~矢吹真吾|〇さん、たくさん食べてくださいね。&br;すこしでも体力つけないと、だめですよ。| |~〇×(主人公)|ありがとう。ここのお店、とっても美味しくて、&br;たくさん食べられそうだよ。| |~包|よかった。食欲があるって、元気な証拠だもんね。| |~〇×|うん。まだまだ頑張れそう。| |~〇×|(本当は、ちょっと体がだるいけど、今は頑張らなきゃ。)| |~ロバート・ガルシア|頑張るんもええけど、あんまり無理したらあかんで。| |~ロバート・ガルシア|博物館で、暴徒たちを自ら進んで浄化してたやろ。&br;あんなん出くわすたびにやってたら、体もたんで?| |~二階堂紅丸|そうだよ。×ちゃんの力で助かる人もいるけど、&br;それでキミ自身を危険に晒すのは、違うと思うよ?| |~ロバート・ガルシア|そうや。×ちゃんが頑張り屋さんなんは知っとるけど、&br;力を使い続けたらどうなるか、もうわかったんやから……な?| |~〇×|そうですね。&br;確かに無理をしたら、私の命は……。| |~〇×|でも、私に与えられたこの力が、&br;誰かの役に立つなら使いたいんです。| |~〇×|ノブレス・オブリージュ……、&br;あの言葉を聞いた日から、ずっと心に残っています。| |~ロバート・ガルシア|……!&br;×ちゃん、覚えとってくれたんか。| |~〇×|はい。私、その言葉をロバートさんから聞いて、&br;自分の力と少しずつ向き合えている気がします。| |~矢吹真吾|の、ノブレ……って、なんですか?| |~二階堂紅丸|『ノブレス・オブリージュ』。&br;『高貴さは義務を伴う』って意味の言葉さ。| |~二階堂紅丸|『持つ者は、持たざる者を助ける責任がある』&br;とでも言えば、わかりやすいのかな?| |~包|つまり、×お姉ちゃんは、自分だけにある浄化の力を、&br;これからも誰かのために使おうと思ってるってこと?| |~〇×|うん。それが、私だけにできることだから。| |~ロバート・ガルシア|そのために、体ん中にケガレを溜め込んでも……か?| |~〇×|はい、それでも……自分が与えられた力に責任を。&br;『ノブレス・オブリージュ』の精神でいたいんです。| |~ロバート・ガルシア|…………。| |~ロバート・ガルシア|…………はぁ。| |~ロバート・ガルシア|ほんま、×ちゃんは偉いなあ……。| |~ロバート・ガルシア|話聞いてたら、自分が恥ずかしくなってきたわ。| |~〇×|え? ロバートさん、自分が恥ずかしいってどういう――| |~ロバート・ガルシア|あ! なんや、水なくなってもうた。&br;いやあ、博物館で名芝居したからな。喉乾いてもうたかも。| |~ロバート・ガルシア|おばちゃんに水もろてくるわ。&br;食事中に席立ってすまんな、ちょいと失礼するで。| |~〇×|(ロバートさん……なんだか暗い顔をしてた。)| #endregion //---------- **12話 [#story_12] #region(ネタバレ注意) |>|K'とマキシマの本拠地・自室――| |~〇×(主人公)|(ロバートさんが手に入れたっていう情報をもとに、&br;みなさんで情報収集に出かけて行ったけど、大丈夫かな?)| |~〇×|(みなさん、私の体を心配して、留守番してるように&br;言ってくれたけど……なんだか落ち着かない。)| |~〇×|(……うん、ぼんやりしてても、いろんなこと考えちゃうし、&br;マキシマさんに、何か手伝うことはないか聞いて来よう。)| |~〇×|(あれ? マキシマさんどこだろう?&br;あっちかな――――きゃっ!)| |~〇×|(なんだろう。今、靴が変な感じになっちゃったような?)| |~〇×|(あ、ロバートさんからもらった靴の紐が切れてる……。)| |~〇×|(たくさん歩いたから切れたのかな?&br;でも、なんだか嫌な予感が――)| |~ロバート・ガルシア|――しつこいわ! ワイは『帰らん』言うとるんや!| |~〇×|(え? この声、ロバートさんだよね。&br;なにかあったのかな? 行ってみよう!)| |~〇×|(あ、ロバートさんと、黒いスーツを着た男の人たち?&br;それに見たことない車も停まってる。どうしたんだろう?)| |~〇×|あの、ロバートさん、この方たちは?| |~ロバート・ガルシア|ああ、×ちゃんか。&br;こいつらは、ガルシア財団の手の者や。| |~ロバート・ガルシア|本拠地に戻ってきたら、出くわしてな。&br;ワイを迎えに来た言うてる。| |~ロバート・ガルシア|とうとう親父が実力行使に出よったんや。&br;ガルシア財団総帥として、ワイに余計な行動させん気や。| |~〇×|そんな……父親とはいえ、&br;ロバートさんの意思を無視して、連れ帰ろうだなんて。| |~黒服A|ロバート様、御父上のご命令です。&br;即刻、帰国していただきます。| |~黒服B|御父上は仰いました、ロバート様を帰国させよと。| |~黒服C|さあ、早く我々の車にお乗りください。| |~ロバート・ガルシア|しつっこいわ! さっきから何度も&br;『帰らん』と言うてるやろが!| |~ロバート・ガルシア|お前ら、さっきからこっちがなに言おうと&br;『帰国しろ』しか言わんな。いい加減にせえよ。| |~〇×|(黒いスーツの人たち、何だか様子がおかしい。&br;どうしたんだろう?)| |~ロバート・ガルシア|しゃあない。こうなったら気は進まんが、&br;こっちも実力行使で――| |~〇×|(あれ? この人たちをよく見てみると、&br;周りに黒いモヤが見える。もしかして、正気じゃない?)| |~〇×|ロバートさん、待ってください。&br;この人たちの周りに、黒いモヤが見えます。| |~〇×|私が浄化すれば、ロバートさんのお家の人たちは&br;ちゃんともとに戻りますよ!| |~ロバート・ガルシア|……気付いてもうたか、×ちゃん。&br;実はガルシア家の者たちは、ナギに洗脳されとるんや。| |~〇×|え、ナギさんに? どうして、ガルシア財団の人たちを?| |~ロバート・ガルシア|前に、ガルシアの金がナギたちの活動資金に&br;なっとるやろうって、話したやろ。| |~ロバート・ガルシア|あれは親父の意思やなかったんや。&br;ナギのやつに、いいように操られとった。| |~〇×|(そんな。ロバートさんのお父さんたち、&br;ナギさんに利用されていたなんて。)| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、頼むから力は使わんでくれ。&br;ワイの身内のために、あんたの命削るわけにはいかん。| |~〇×|で、でも、このままじゃ、この人たちは元に戻りませんよ?&br;やっぱり、私が浄化しないと――| |~黒服C|抵抗なさるのならば、私たちも大人しくはできません。| |~黒服B|この場で、その女性を守りながら、戦いますか?| |~〇×|(黒服の人たちが近づいてきた。&br;このままじゃ……!)| |~ロバート・ガルシア|わかったわかった。&br;ワイがついて行けばいいんやな?| |~〇×|え? ロバートさん、ついて行ったらだめですよ……!| |~ロバート・ガルシア|大丈夫や、×ちゃん。&br;すぐに戻るさかい、なんも心配いらん。| |~黒服A|ロバート様、ご理解いただけて何よりです。| |~黒服C|すぐに車を出しますので、お乗りください。| |~ロバート・ガルシア|ふん、ワイを乗せるんなら、&br;もうちょいイカした車用意せいや。| |~〇×|あ、ロバートさん……!| |~〇×|(ロバートさん、連れて行かれちゃった。どうしよう!)| |~マキシマ|〇、どうした?&br;今、見たことない車が走っていったが、何かあったのか?| |~包|×お姉ちゃんただいまー!&br;って、あれ? ロバートさんは? 先に帰ったはずなのに。| |~リョウ・サカザキ|〇、ただ事じゃないって雰囲気だな。&br;どうしたんだ?| |~〇×|そ、それが、ガルシア財団の人たちが現れて、&br;車でロバートさんを連れて行ったんです。| |~〇×|ガルシア財団のみなさん、ナギさんに洗脳されてたみたいです。&br;ロバートさんのことも洗脳するのが目的だったら……。| |~マキシマ|ロバートが乗っているのは、さっきの車だな?&br;今追いかければ、見失わずに済むだろう。| |~リョウ・サカザキ|よし、俺がバイクで追う。&br;お前たちは、ここで待っていろ。| |~〇×|(ロバートさん、私が黒いスーツの人たちを&br;浄化しようとするのを、止めてくれた。)| |~〇×|(私のことを心配したんだよね。&br;でも私だって、ロバートさんのことが心配だもの。)| |~〇×|リョウさん、待ってください。私も行きます!| |~リョウ・サカザキ|なに? だめだ、すぐに降りろ!| |~〇×|私は大丈夫ですから、早く行きましょう。&br;ロバートさんが乗った車、見失っちゃいます!| |~リョウ・サカザキ|そうは言っても、危険な目にあわせるわけには――| |~包|よーし、僕も行く!&br;ロバートさんは僕たちのチームメイトだもん。助けなきゃ!| |~リョウ・サカザキ|こ、こら包! お前まで乗るんじゃない!| |~マキシマ|おい、早くしろ。本当に見失うぞ。| |~リョウ・サカザキ|くっ、仕方ない。&br;〇、しっかりつかまっていろよ!| |~リョウ・サカザキ|包! 着いたら知らせるから追ってこい!| |~包|わかった……!| |~〇×|(きゃっ! 速い……!&br;これなら、ロバートさんの車に追いつけるかも!) |~ロバート・ガルシア|なんや、随分人気のない場所に連れてきたやん。| |~ロバート・ガルシア|ロボットみたいに、帰国せえ帰国せえ繰り返しとるから、&br;てっきり空港に直行するんかと思っとった。| |~黒服A|ロバート様には、ここで少々お時間を頂きます。| |~ロバート・ガルシア|なんや全く、人を連れ出しといて。| |~ロバート・ガルシア|まあ、人目がないほうが好都合やけどな……とりゃっ!| |~黒服A|ぐっ!!| |~ロバート・ガルシア|まだまだ! とりゃ! とりゃ! とりゃ!| |~黒服B|がはっ!!| |~黒服C|ごほぉっ!!| |~ロバート・ガルシア|まったく、全員でよってたかってこの程度かいな。&br;ほな、悪いがワイはお暇させてもらうわ。| |~アルバート・ガルシア|待て、ロバート。| |~ロバート・ガルシア|まさか、親父!? なんでここに?| |~ナギ|やあ、ロバート・ガルシア。&br;君に、お父さんを超える機会をあげるよ。| #endregion //---------- **13話 [#story_13] #region(ネタバレ注意) |~〇×(主人公)|(ロバートさんの車、こっちの方に行ったはずだよね。&br;途中で見失っちゃったけど、早く見つけなくちゃ!)| |~リョウ・サカザキ|ん? あそこに停まっているのは、&br;さっきの黒い車じゃないか!?| |~包|本当だ! ロバートさん、乗ってるかも!| |~〇×|(ロバートさん、無事でいてください!)| |~リョウ・サカザキ|よし、車の中の様子を確認するぞ。| |~包|じゃあ僕が覗いてみるよ。| |~包|そーっと……って、あれ?&br;ロバートさん、車の中にはいないよ?| |~〇×|え?&br;じゃあ、ロバートさんはどこに?| |~ロバート・ガルシア|ハッ! ハッ! トリャッ!!!!| |~〇×|(え? これはロバートさんの声?&br;もしかして、戦ってる?)| |~アルバート|……うぐ!| |~ロバート・ガルシア|とどめや! 極限流奥義、龍虎乱舞!!!&br;そりゃそりゃそりゃそりゃあ!! どないや!!| |~〇×|(ロバートさんに、あれはロバートさんのお父さん!&br;どうしてふたりが戦ってるの!?)| |~〇×|(……あれ? よく見ると、ロバートさんもお父さんも&br;体の周りに黒いモヤがある。)| |~〇×|(二人とも正気じゃないんだ!&br;こんなこと、早く止めないと。)| |~アルバート|がっ! ――ごはっ!| |~ロバート・ガルシア|…………。| |~〇×|(ロバートさんの攻撃で、お父さんが倒れた……!)| |~リョウ・サカザキ|ロバートお前、親父さんになんてことを!&br;いったい、なにがあったというんだ!?| |~ロバート・ガルシア|なんや? ワイを非難する奴がおるんか?| |~ロバート・ガルシア|ワイは間違っとらん。邪魔するもんは、みんな消えてまえ!| |~リョウ・サカザキ|――なっ! ロバート!?| |~〇×|(今度は、ロバートさんがリョウさんに殴りかかった!)| |~〇×|リョウさん気を付けてください!&br;ロバートさん、ケガレのせいで暴走しています!| |~包|うん。&br;ロバートさん、悪い気の影響を受けてるみたい!| |~リョウ・サカザキ|ならば、正気に戻さないといけないわけか。| |~〇×|それなら、私が力を使います。| |~リョウ・サカザキ|だめだ。〇はさがっていろ。| |~包|そうだよ。×お姉ちゃんは、これ以上力を使ったらだめ!| |~リョウ・サカザキ|ここは俺たちでなんとかする。&br;〇は、絶対に浄化の力を使うな!| |~〇×|でもそれじゃあ、みなさんが戦うことに――| |~ロバート・ガルシア|――もう、家に縛られる必要はない……。&br;親父と同じ道に、進まんくてええんや……ええんや!!| |~リョウ・サカザキ|っぐ!! な、なにぃ!?&br;なんというスピードだ!| |~包|ろ、ロバートさん、止まって――| |~包|――う、うわあ!!| |~リョウ・サカザキ|くっ! ああっ!!| |~〇×|リョウさん! 包くん!| |~〇×|(ロバートさん、いつも以上に強い。&br;理性を失って、ブレーキが利かなくなってるのかも。)| |~ロバート・ガルシア|――隙ありや! 極限流奥義!&br;そりゃそりゃそりゃそりゃあ!! どないや!!| |~リョウ・サカザキ|くそぉぉぉぉ!!| |~包|死んじゃううぅぅ!!| |~〇×|(そんな、リョウさんと包くんが倒れた……!)| |~ロバート・ガルシア|あんたらにワイは倒せへん。ワイはもっと強くなるんや!&br;もっともっと強くなって、運命から逃げきってやるんや!!| |~〇×|(運命から逃れる? もしかしてそれが、暴走してる原因?&br;ロバートさん、何に苦しめられているの?)| |~ナギ|――彼が拒む運命とは何か。&br;ふふ、気付いていないのかい? ヒメ。| |~〇×|え!? ナギさん、いつの間にそこに!?| |~〇×|ナギさんがここにいるってことは、&br;やっぱりあなたが、ロバートさんを洗脳したんですか!?| |~ナギ|人聞きが悪いな、ヒメ。&br;僕はただ、彼の背中を押してあげただけだよ。| |~〇×|背中を押してやっただけって、&br;それはどういう……。| |~ナギ|彼は、ガルシア財団の御曹司。恵まれた境遇と思いきや、&br;彼自身は家柄に縛られることを、嫌っていたみたいだよ。| |~ナギ|特に、他人から家柄でしか自分を見てもらえないことは、&br;彼にとって、とても虚しいことだったみたいだ。| |~〇×|で、でも、ロバートさんのこと、&br;家柄だけで見る人ばかりじゃないはずです!| |~ナギ|ヒメ、人間には君のような清い心の持ち主は、多くないんだ。&br;地位の高い人間は、色眼鏡で見られるものさ。| |~ナギ|だからこそ、彼は武道にのめり込んだ。&br;武道は自分自身の力だけが試される世界だからね。| |~ナギ|もっとも、彼の父親は、ガルシア家の後継ぎとして、&br;立派に育てたかったみたいだけど。| |~〇×|ロバートさんは、&br;お父さんのKOFへの出資を、止めようとしてました。| |~〇×|それって、ロバートさんがガルシア家の後継ぎとして、&br;ちゃんと頑張ろうとして立ってことじゃないんですか?| |~ナギ|確かに、彼はガルシア家の責務を果たそうとしている。&br;それも彼の意思なのかもしれないね。| |~ナギ|でも、その心の奥底には、&br;幼い頃から抱き続ける無情さが、ずっと漂っていたんだよ。| |~ロバート・ガルシア|――もう、運命から逃れていいんや……。&br;ワイは、ガルシア家には、縛られない……。| |~ナギ|お聞きの通りだよ、ヒメ。&br;彼は、自分の置かれた境遇で生きて痛くはないんだ。| |~ナギ|自分を、自分として見てくれない。&br;そんな無情な世界から、逃げ出したいのが彼の本心さ。| |~〇×|(そんな。ロバートさんは、ずっと苦しんでいたの?)| |~〇×|(……! そういえば、このあいだ――)| |~〇×|はい、それでも……自分が与えられた力に責任を。&br;『ノブレス・オブリージュ』の精神でいたいんです。| |~ロバート・ガルシア|ほんま、×ちゃんは偉いなあ……。| |~ロバート・ガルシア|話聞いてたら、自分が恥ずかしくなってきたわ。| |~〇×|(あの時のロバートさんは、私の話を聞いて、&br;自分自身の境遇について考えていたのかもしれない。)| |~〇×|(ロバートさんには、&br;自分の運命を受け入れられない苦しみがあったの?)| |~リョウ・サカザキ|――くそ! まだまだぁっ!| |~〇×|リョウさん!? もう無理です、立たないでください!| |~リョウ・サカザキ|友がいいように操られているのを、&br;黙って見ていられるか!| |~リョウ・サカザキ|ロバート、正気に戻れ!&br;お前は、本当は心の強い男のはずだ!| |~ロバート・ガルシア|ワイが強い男……そうや、ワイは強い!&br;強いから! こんな運命なかったことにできるんや!!| |~リョウ・サカザキ|ぐあぁっ……!!| |~〇×|リョウさん!!| |~〇×|(酷い。こんなこと、絶対に止めなくちゃ!)| |~ナギ|おや? ヒメ、浄化の力を使おうとしているのかい?| |~ナギ|そんなことをすれば、また君の中にケガレが溜まる。&br;それがどういうことか、わかっているんじゃないのかい?| |~〇×|(そうだ。&br;ケガレが溜まっていけば、私の命は……。)| |~〇×|(……ううん、『ノブレス・オブリージュ』だよね。)| |~〇×|(ロバートさん……あなたが教えてくれた……。&br;私は私の運命を、受け入れます。)| #endregion //---------- **14話 [#story_14] #region(ネタバレ注意) |>|私は、暴走したロバートさんを止めるため、&br;浄化の力を使おうとしていた――| |~ロバート・ガルシア|……ワイは、こんな運命から逃れるんや!| |~〇×(主人公)|(ロバートさんを浄化しなきゃ!&br;それに、ロバートさんのお父さんたちも。)| |~〇×|ロバートさん、みなさん、もとに戻ってください!| |~〇×|はあ……はあ……ロバートさんや、みなさんは?| |~〇×|(――よかった。全員黒いモヤがなくなってる。&br;もとに戻ったみたい。)| |~〇×|(そうだ! そういえばナギさんは?&br;……あれ? どこにもいない。)| |~ナギ|――そうやって浄化の力を使い続けてごらんよ、ヒメ。&br;いずれ君は、僕の力を頼るしかなくなる……。| |~〇×|(え!? あ、頭の中で、ナギさんの声がする!&br;ナギさんの力を頼るしかなくなるって、どういう意味?)| |~〇×|(でも今はそのことよりも、&br;ロバートさんが大丈夫か、確かめなきゃ。)| |~〇×|(……ロバートさん、すごく気持ちよさそうに眠ってる。&br;怪我もしてないみたいだし、よかった。)| |~〇×|(ロバートさんの苦しみを、少しでも減らせないのかな。&br;私になにか……できたら。)| |~〇×|(あ……いけない。なんだか、気が遠く――)| |~〇×|(――ん……。ここはベッドの上……?)| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん、目が覚めたんやな。よかった……。| |~〇×|ロバートさん……?&br;ああ、よかった。正気に戻ったんですね。| |~〇×|私、あのあとどうなったんですか?&br;それに、ロバートさんのお父さんたちは?| |~ロバート・ガルシア|あーもう。起きて早々、あんまりいろいろ考えたあかんよ。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃんは、ワイが目を覚ました時には倒れとった。&br;多分、力を使ったせいで気絶してたんやろ。| |~ロバート・ガルシア|親父やガルシア家の者たちも、多少ケガしてたけど無事や。&br;さっき、無事に帰国したって連絡があったで。| |~〇×|そうだったんですか。私、ずいぶん眠ってたんですね。| |~ロバート・ガルシア|そうやで。ごっつ心配したわ。| |~〇×|はい……ご心配おかけして、すみませんでした。| |~ロバート・ガルシア|いや、それはワイの方や。&br;手間かけさせてほんま悪かった、堪忍な。| |~ロバート・ガルシア|ワイな、暴走してた時のことぼんやり覚えとんねん。&br;親父も、リョウも、包も蹴り飛ばしてほんま最悪や……。| |~ロバート・ガルシア|それもこれも、ワイが自分の境遇から逃げたいっちゅう、&br;弱い心を持ってたせいや。情けなくてたまらんわ。| |~ロバート・ガルシア|はぁ……これでも、ずっと気ぃ張ってきたんやけどな。&br;ナギに付け込まれるくらいの隙は、あったっちゅうわけや。| |~〇×|今回のことは、ナギさんが仕掛けた事ですし、&br;ロバートさんが悪いわけじゃありませんよ。| |~ロバート・ガルシア|いいや、悪いのはワイや。&br;ナギの策略だったとしても、な。| |~〇×|(ロバートさん、自分を責めちゃってる。&br;私、なんて言ってあげたらいいんだろう。)| |~ロバート・ガルシア|いやあ、かっこ悪いなあ。×ちゃんに&br;ノブレス・オブリージュを教えといて、自分はこうや……。| |~〇×|ロバートさん、私はロバートさんが、&br;その言葉を教えてくれたこと、感謝してるんです。| |~〇×|お願いですから、そんなに自分を責めないでください。| |~ロバート・ガルシア|ありがとな、×ちゃん。&br;×ちゃんの言いたいことは、わかるんやけどな。| |~ロバート・ガルシア|今は、ちょっとええ言葉返せん。&br;すまんな、これ以上かっこ悪いとこ見せたないわ。| |~ロバート・ガルシア|あーなんや、その……すまん。&br;ちょっと頭冷やしてくるわ。| |~〇×|(ロバートさん、行っちゃった。&br;どうしたら、ロバートさんを元気づけられるんだろう。)| #endregion //---------- **15話 [#story_15] #region(ネタバレ注意) |>|最後の神殿へ向かう直前――| |~二階堂紅丸|さ、これで準備万端だけど、&br;×ちゃんは、本当に行けそうかい?| |~〇×(主人公)|はい。&br;今は体調も落ち着いてるし、大丈夫です。| |~包|でも、絶対無理はしないでね。&br;倒れちゃったら、神鏡を取りに行くなんて、できないからね。| |~リョウ・サカザキ|ああ。少しでも気分が悪ければ、すぐに言うんだぞ。| |~〇×|はい。ありがとうございます。| |~〇×|(体調に不安はあるけど、最後までみなさんについて行こう。)| |~マキシマ|――みんな集まったようだな。&br;それでは、そろそろ出発するぞ。| |~包|あれ? ちょっと待って、ロバートさんがいないよ!| |~リョウ・サカザキ|ロバートのやつ、これからって時にどこに行ったんだ?| |~〇×|ロバートさん、いつの間にいなくなったんでしょうね。&br;私、探してきます。| |~リョウ・サカザキ|いや、〇。俺が行く。&br;あんたはあまり無理せず、少しでも体力を温存しておけ。| |~〇×|いえ、このくらい大丈夫です。&br;みなさんは、荷物の確認をしておいてください。| |~〇×|(ロバートさん、どうしたんだろう?&br;これから最後の神鏡を取りに行くのに、現れないなんて。)| |~〇×|(ナギさんに暴走させられたあと元気がなかったし、&br;何だか心配だな。)| |~〇×|(ロバートさん屋内にはいなかったな。&br;もしかしたら屋上に……あ、いた!)| |~〇×|ロバートさん、みなさんもう集まって――| |~ロバート・ガルシア|――ああ、そうや。&br;うんうん、わかったわ。それでな……。| |~〇×|(あ、ロバートさん、電話中だったみたい。&br;邪魔したらよくないよね、ちょっと待ってよう。)| |~ロバート・ガルシア|わかった。伝えとく。&br;わかったって、そんなに念を押さんで大丈夫や。| |~ロバート・ガルシア|それとその、なんと言うか、ワイが言うことやないけど、&br;これを機によう養生しいや、親父。| |~ロバート・ガルシア|――ああ。それじゃあな。| |~〇×|(あ、ロバートさん、電話終わったみたい。)| |~ロバート・ガルシア|――すまんすまん、×ちゃん。&br;あれやろ、呼びに来てくれたんやろ? おおきにな。| |~〇×|はい。&br;あの、今のってお父さんですか?| |~ロバート・ガルシア|そや。急に電話してきて、ぎょうさん喋りよるから、&br;集合時間にすっかり遅れてもうた。| |~〇×|そうだったんですか。&br;お父さんは、帰国されたあともお元気ですか?| |~ロバート・ガルシア|ああ、ワイがナギにそそのかされて&br;親父と戦ってもうた時のケガも、大したことないらしいで。| |~ロバート・ガルシア|それに、洗脳からもすっかり目え覚めたおかげで、&br;ナギたちへの出資も金輪際断つ言うとった。| |~〇×|そうなんですか。&br;お父さん、ちゃんとわかってくれたんですね。| |~ロバート・ガルシア|ああ。洗脳なんぞされてへんかったら、しっかりしたもんや。&br;おかげでワイも安心できたわ。| |~〇×|はい。&br;私も、ロバートさんの心配事がなくなって、よかったです。| |~ロバート・ガルシア|そうそう、言い忘れとったけど、×ちゃんに、お礼を言わんとな。| |~〇×|え? お礼、ですか?| |~ロバート・ガルシア|親父のこと、ガルシア財団のこと、ワイが暴走したこと、&br;全部、×ちゃんなしでは、解決できんかった。| |~ロバート・ガルシア|なんもかんも、×ちゃんのおかげや。&br;ほんま、ありがとな。| |~ロバート・ガルシア|うちの親父も感謝しとったで。直接お礼したいこと伝えろて、&br;めっちゃしつこく言われたわ。| |~〇×|そんな。私は目の前のことに、&br;ただ夢中になっていただけですから。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃんは、ただただ夢中で、&br;自分の身を危険に晒してもうたってことか?| |~〇×|はい。私は、自分がどうなるかよりも、&br;ロバートさんたちを救いたかったんです。| |~〇×|ロバートさんが、自分のお父さんと戦ったり仲間を傷つけたり。&br;そんな悲しいこと、止めたくて。| |~ロバート・ガルシア|×ちゃん。&br;ワイのために、後先考えんで力使うてまうなんて……。| |~ロバート・ガルシア|なあ、×ちゃんは人のためにその力使うて、&br;自分の命削ることが怖くはないんか?| |~〇×|怖くない……とは、言えません。&br;私だって本当はこの力を使うのは怖いです。| |~〇×|みなさんには言えないですけど……、&br;逃げ出したくなることだってあるんです。| |~〇×|ロバートさんが暴走した時、&br;運命から逃げたいって、言ってましたよね。| |~〇×|私もそうです。避けられない運命から、本当は逃げたい。&br;私もロバートさんも、そういうところは同じですよ。| |~ロバート・ガルシア|…………。| |~〇×|あっ……す、すみませんロバートさん。&br;私、つい弱音を……。| |~包|――×お姉ちゃん、どこにいるのー?&br;そろそろ出発する時間だよー?| |~〇×|(あ、包くんの声だ……。&br;もうそんな時間なんだ、早く戻らないと……。)| |~〇×|ロバートさん、出発の時間みたいなので、&br;早く屋内に戻りま――| |~ロバート・ガルシア|すまん、×ちゃん。&br;ちょっとだけ、こうさせてや。| |~〇×|ロ、ロバートさん……?| |~〇×|(ロバートさんに、抱きしめられてる……?)| #endregion //---------- **16話 [#story_16] #region(ネタバレ注意) |>|みなさんのいる居間へ戻ろうとしたその時――| |~〇×(主人公)|あ、あの、ロバートさん、どうしたんですか?| |~〇×|(ロバートさんの心音が聞こえてくる。&br;どうしよう、ドキドキしてきちゃった……。)| |~ロバート・ガルシア|ワイは×ちゃんを、特別やとでも思ってたんやろか。&br;×ちゃんの話聞いて、目え覚めたわ。| |~ロバート・ガルシア|命削るような力持って、怖くないわけないよなあ。&br;そんなん、誰だってそうや。| |~ロバート・ガルシア|ワイは、嫌な運命から逃げたいと思うのが、後ろめたかった。&br;けど、嫌だと思うこと自体は、悪いことやないのかもなあ。| |~〇×|(なんでだろう。ロバートさんの胸越しに聞こえる声、&br;今にも泣き出しそうに聞こえる。)| |~〇×|あの、私、避けようのない運命を受け入れる勇気なんて、&br;誰も最初から持っていないと思うんです。| |~〇×|それでも、ふとした拍子に人は強くなって、&br;運命に立ち向かえるようになるんだと思います。| |~〇×|――『ふとした拍子』っていうのが、なんなのかは、&br;まだよくわからないですけど。| |~ロバート・ガルシア|そうかもしれんなあ。&br;ワイにもあるんかな。その『ふとした拍子』が。| |~ロバート・ガルシア|……うん、きっとあるんやろな。&br;×ちゃんといれば、その時がきそうな気がするわ。| |~〇×|(抱き締められた腕から、さっきより強い意志を感じる。)| |~〇×|(……そばにいたい。ロバートさんの支えになりたい。&br;一緒に運命に立ち向かって、乗り越える。)| |~〇×|(ロバートさんが何に苦しんでいるのか、気付けなかった。&br;でも、これからは少しでも力になりたい。)| |~包|あー! ×お姉ちゃんに、ロバートさん!| |~包|やっと見つけたと思ったら、ふたりで何してるの!?| |~〇×|え!? ぱ、包くん! こ、これは、その……。| |~〇×|(そうだ、包くんが私たちを探してるの、忘れてた!)| |~包|ロバートさん、酷いよ!&br;×お姉ちゃんを独り占めして、抱きついてるなんて!| |~ロバート・ガルシア|すまんすまん。これはなあ、神鏡を探しに行く前に、&br;ちょっと×ちゃんに、元気もらっとってな。| |~包|ええー、なんだか怪しいなー。| |~ロバート・ガルシア|本当やって、最後の神鏡を前に尻込みしてるワイを、&br;×ちゃんが、励ましてくれとったんや。| |~ロバート・ガルシア|な? ×ちゃん?| |~〇×|へ!? ええと、はい!| |~包|えー、すっごく怪しい。| |~ロバート・ガルシア|まあまあ、気にせんと。&br;そろそろ出発時間なんやろ? 急いで戻ろうや。| |~包|あ、そうだった!&br;みんなふたりのこと待ってるよ、早く行こう!| |~〇×|うん。ごめんね、待たせちゃって。| |~〇×|さあ行きましょう、ロバートさん。&br;早く神鏡探しに、出発しないと!| |~ロバート・ガルシア|ああ、わかっとる。&br;……さっきは、ほんまおおきにな、×ちゃん。| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *4章 [#chapter_4] **17話 [#story_17] #region(ネタバレ注意) |~ロバート・ガルシア|(あれ? ここは極限流の道場やないか。&br;いったいどうなっとるんや?)| |~ロバート・ガルシア|(あ、あそこにいるんは、子供んときのワイやないか!&br;懐かしいなー、これは極限流に弟子入り志願しに来た日や。)| |~ロバート・ガルシア|(極限流で強うなって、親父に決められた人生じゃなく、&br;自分の人生を歩むんやって、飛び込んだんやったな。)| |~ロバート・ガルシア|(そういや、あのころのリョウは、戦うの嫌っとったよなあ。&br;それが今じゃめっちゃ強うなっとる。)| |~ロバート・ガルシア|(……そうか。ワイは、リョウが人生かけて背負った&br;極限流を、逃げ場所にしたんやな。)| |~ロバート・ガルシア|(あ、あそこにいるんは、子供ん時のリョウや。)| |~ロバート・ガルシア|(なあ、ワイのしたこと……謝らせてくれ……リョウ――)| |~リョウ・サカザキ|――おい、ロバート。&br;ロバート起きろ。そろそろ沖縄に着くぞ。| |~ロバート・ガルシア|(なんや? ああ、夢見てたんか。&br;初めて極限流に行った日の夢なんて、懐かし過ぎるわ。)| |~リョウ・サカザキ|ロバート? ずいぶんぼーっとしているが、大丈夫か?| |~ロバート・ガルシア|ああ。ちょっと夢見ててな。&br;ガキの頃の、極限流に弟子入り志願しに行った時の夢や。| |~リョウ・サカザキ|なんだ、懐かしいな。&br;あのころは、お互いまだまだ未熟だったな。| |~ロバート・ガルシア|ああ。ほんで、ワイは強くなりたくて仕方なかったわ。| |~ロバート・ガルシア|……あのな、リョウ。ワイは、家のことや親父からの期待、&br;強くなればそういうものから逃げられると思っとった。| |~ロバート・ガルシア|だから、極限流に弟子入りに行ったんや。&br;ワイは、お前の背負った極限流を逃げ場所にしとった。| |~ロバート・ガルシア|お前はちゃんと、極限流の看板背負うことにも、&br;親父さんのことにも、妹のことにも、向き合っとった。| |~ロバート・ガルシア|ワイは、お前のそういうもんも、全部自分の逃げ場所にした。&br;今更やけど、謝らせてくれ。| |~リョウ・サカザキ|……そういえば、暴走した時に言ってたな。&br;『運命から逃げたい』と。| |~ロバート・ガルシア|ああ。あれがワイの深層心理っちゅうやつなんや。&br;それで、逃げた先が極限流ちゅうことや。| |~ロバート・ガルシア|みっともないし、申し訳ないわ。&br;本当にすまんかったな。| |~リョウ・サカザキ|何を言ってるんだ。謝ることは何もない。&br;お前は家柄のことが嫌で、極限流に逃げた。それがどうした?| |~ロバート・ガルシア|な、なんやリョウ。そんなあっさり肯定しおって。| |~リョウ・サカザキ|あのなロバート、今さら恥じる必要も、詫びる必要もない。| |~リョウ・サカザキ|お前はサカザキ家の家族も同然だろ?&br;俺も、うちの家族も全員そう思っているぞ。| |~ロバート・ガルシア|そらワイかて、そう思てる。当たり前やろ。| |~リョウ・サカザキ|あのなロバート、家族ってのは人生で苦しい時の&br;逃げ場所であっていいと俺は思う。| |~リョウ・サカザキ|人間、安心できる逃げ場所があるから、強くなれる。&br;お前にとってそれがうちなら、俺は嬉しいよ。| |~ロバート・ガルシア|リョウ……なんやお前、ええこと言うやん。| |~ロバート・ガルシア|そうやな。ワイには、お前んちっていう&br;逃げ場所があったんや。| |~ロバート・ガルシア|そんで、お前と一緒に作り上げた、&br;ワイだけの極限流もある。| |~ロバート・ガルシア|だから、ワイは運命に立ち向かおうって思えたんや。&br;はは……なんでこんな簡単なこと忘れとったんやろ。| |~リョウ・サカザキ|それだけ、お前が背負ってるものが、大きいってことだろうな。| |~リョウ・サカザキ|だからロバート、また家から逃げたくなったら、&br;うちに来ていいんだぞ。| |~リョウ・サカザキ|家族みんなで飯でも食えば、&br;ちょっとは楽になるだろう?| |~ロバート・ガルシア|そうやな。&br;ほんまにどうしようもなくなった時は、頼らせてもらうわ。| |~リョウ・サカザキ|ああ。当然だろう、家族なんだからな。| |~ロバート・ガルシア|はは、おおきに。| |~ロバート・ガルシア|ほんじゃあ、さっさと沖縄上陸して、事を片付けんとな。&br;そうせな、帰る場所にも帰られへん。| |~リョウ・サカザキ|ああ、そうだな。必ず勝利しよう。| |~リョウ・サカザキ|それからな、ロバート。〇だが、ずっと不安そうに&br;していてな、しっかり支えてやってくれるか。| |~ロバート・ガルシア|ああ、もちろんや。&br;×ちゃんのことは、ワイに任せとき。| #endregion //---------- **18話 [#story_18] #region(ネタバレ注意) |>|最終決戦当日・早朝――| |~〇×(主人公)|(変な時間に目が覚めちゃったな。&br;みんなが起きてくるまで、何しようかな。)| |~〇×|(あれ? 窓の向こうに誰かが見える。&br;あれはもしかしてロバートさん?)| |~〇×|(どうしたんだろう?&br;ちょっと気分転換したいし、私も外に出ようかな。)| |~〇×|ロバートさん、おはようございます。| |~ロバート・ガルシア|あれ? ×ちゃん、どうしたんやこんな朝早くに。| |~〇×|なんだか目が覚めてしまったんです。&br;そういうロバートさんも、ずいぶん早いんですね。| |~ロバート・ガルシア|ああ、ワイもなんだか目が冴えてな。&br;なんか落ち着かんから、体動かそうと思うて。| |~〇×|そうだったんですか。&br;トレーニングを始めるところを、邪魔してすみません。| |~ロバート・ガルシア|いやいや、むしろ話しかけてくれてよかったわ。&br;気分変えたいなあと思っとったから。| |~〇×|(ロバートさんも、私と同じで気分転換したかったんだな。&br;沖縄に来てから、全然落ち着けなかったもんね。)| |~ロバート・ガルシア|――ん? ×ちゃん、それどうしたんや?| |~〇×|え? えっと、どれですか?&br;私なにか、変なところがありますか?| |~ロバート・ガルシア|靴や靴。&br;そのスニーカー、靴紐切れとるやないか。| |~〇×|あ、これは、ちょっと前に切れてしまって。&br;すみあせん、ロバートさんが買ってくれた靴なのに。| |~ロバート・ガルシア|そんなんええんや。&br;こっちこそ、気付いてやれなくて堪忍な。| |~ロバート・ガルシア|これ、歩きにくかったやろ。&br;頑張り屋さんなんはわかるけど、困ったら早よ言いや。| |~〇×|すみません。私、日々のことに夢中になって、&br;身の回りのことがおざなりになってしまってて。| |~ロバート・ガルシア|そんだけ、×ちゃんに負担があるってことやな。| |~ロバート・ガルシア|どれ、ワイがどうにかしたる。ちょっとそこ座り。| |~〇×|えっと、この階段のところですか?| |~ロバート・ガルシア|そや、そんで靴ひも切れたほうの足、前に出してくれ。| |~ロバート・ガルシア|ちょっと待っててな。&br;まずは、切れた靴紐外すで。| |~〇×|あの、ロバートさん。&br;私、予備の靴紐は持ってないんです。| |~ロバート・ガルシア|ああ、いらんで。ここに、代わりのもんがあるからな。| |~〇×|え? その紐は?| |~ロバート・ガルシア|これは、ワイの予備の髪留めや。&br;これなら靴紐代わりになるやろ。| |~〇×|ええっ、そんな。大事な髪留めを使わないでください。| |~ロバート・ガルシア|遠慮せんでええ。前も言ったやろ、足は第二の心臓やって。&br;ちゃんと靴紐結んで、歩きやすいようにしとき。| |~〇×|はい、ありがとうございます……!| |~〇×|……あの、ロバートさん。&br;運命ってやっぱり、絶対に逃げられないものなんでしょうか。| |~ロバート・ガルシア|んー? どうしたんや、×ちゃん。&br;やっぱりこの旅が、しんどくなってきてもうたんか?| |~〇×|いえ、そんなことはないです。&br;ナギさんを止めようって、今でもちゃんと思ってます。| |~〇×|でも、とてもつらい運命から、逃げることもできないなんて&br;悲し過ぎるんじゃないかなって、考えてしまって。| |~〇×|(ナギさんは、ナミさんを失って、たったひとりで&br;地上を見守るのが運命だなんて、つらすぎるよね……。)| |~ロバート・ガルシア|せやな。でも、どうしたって逃れられないからこそ&br;『運命』って言うんやないかなあ。| |~ロバート・ガルシア|やったら、しんどくても、&br;運命を目の前にしてどうするかが、大事なんちゃうんかな。| |~ロバート・ガルシア|運命の先にある結果は、変わらんのかもしれへん。&br;けど、そこに至るまでの過程って言うんは、運命にすら縛られへん。| |~ロバート・ガルシア|だから、運命から逃げようとあがくも、受け入れるも、&br;それを背負ったもん次第で、きっとどっちでもええんや。| |~〇×|その運命がどんなに過酷でも、ですか?| |~ロバート・ガルシア|そうや。運命に導かれる結果が、どれだけしんどくても、&br;そこに至る過程ってのは、必ずあるもんや。| |~ロバート・ガルシア|だからワイはな、その過程を楽しめば&br;ええんちゃうかなって、気がしてるんや。| |~〇×|過程を楽しむんですか?&br;それって、どういうことなんでしょう?| |~ロバート・ガルシア|そやな、ワイの場合だったら、逃げたり迷ったりして、&br;寄り道すんのが、楽しむってことなんかなって思うわ。| |~ロバート・ガルシア|たくさん逃げて迷って、そうしてるうちに、&br;最後は運命に負けへんくらい、強い自分になってるかもしれへん。| |~ロバート・ガルシア|運命は変えられへん。だけど、運命と向き合う中で、&br;自分が変わることは、できるんちゃうかなあ。| |~〇×|(私も力に目覚めて、怖かったり悩んだり、&br;いろんなことがあった。だから、今の私がいるんだよね。)| |~〇×|(ナギさんの運命も変わらない。&br;だけど、ナギさんもなにかが変わったらいいな。)| |~ロバート・ガルシア|ま、寄り道しまくって、最後に強うなるかもとは言うたけど、&br;そんなんはきっと、いばらの道やろうな。| |~〇×|いばらの道かもしれませんけど、&br;それって、素敵な考えだと思います。| |~〇×|私、ロバートさんの前向きな考えを聞いて、&br;とても励まされました。| |~〇×|(ロバートさん、お家や自分のことで悩んだりしてたけど、&br;今はとても明るい表情をしてるな。)| |~ロバート・ガルシア|はは、ありがとうな。でも、ワイがこう考えられるように&br;なったんは、×ちゃんのおかげなんや。| |~〇×|え、私が……?| |~ロバート・ガルシア|×ちゃんが、ワイにたくさん&br;いい影響を与えてくれてたっちゅうことや。| |~〇×|(少しでも、ロバートさんの力になれたのかな?&br;そうだったら、嬉しいな。)| |~ロバート・ガルシア|……なあ、×ちゃん。&br;ワイな、あんたにもうひとつ話したいことがあんねん。| |~〇×|はい。どんなお話ですか?| |~ロバート・ガルシア|えっとな。&br;こんな時にこんな話したら、迷惑かもしれへんのやけど――| |~〇×|(あれ? ロバートさんどうしたんだろう。&br;話しにくいことなのかな?)| |~ロバート・ガルシア|――これからもずっと、ワイのそばにいてくれんか?| |~〇×|え……?| #endregion //---------- **19話 [#story_19] #region(ネタバレ注意) |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| #endregion //---------- **エピローグ [#story_20] #region(ネタバレ注意) |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| |~|| #endregion &aname(top){上へ戻る}; データ参照プラグイン 入力支援ツールを表示 ▼参照先ページ選択:データを表示 元データの書式(インラインプラグイン)を継承する