サイドストーリー /1st/二階堂紅丸 の編集 Top > サイドストーリー > 1st > 二階堂紅丸 **9話 [#story_09] #region(ネタバレ注意) |>|母屋・夜――| |~二階堂紅丸|×ちゃん、ちょっといい?| |~〇×|え? あ……はい。| |~〇×|(なんだろう?)| |~矢吹真吾|紅丸さん、どうかしたんですか?| |~二階堂紅丸|ん、ちょっとな。| |~二階堂紅丸|……×ちゃん、足に怪我してるだろ。| |~〇×|えっ!?| |~二階堂紅丸|さっきつまずいた時に、足首でも捻ったんじゃないか?&br;右足を少し引きずってるぜ。| |~二階堂紅丸|見せてみろ。| |~〇×|はい……。| |~〇×|(確かにさっき、少し捻っちゃったけど……。&br;もうあまり痛くないのに……紅丸さん、よく気づいたなぁ。)| |~〇×|(それだけ、見てくれてるってこと?&br;ううん、そんな……自意識過剰だよ。)| |~二階堂紅丸|やっぱり捻ってるな……。&br;一度医者に診てもらって、早めに治しておいた方がいい。| |~〇×|お医者さん!? このくらい放っておいても治りますよ。| |~二階堂紅丸|バカだなぁ……。&br;こういう怪我こそ、初めの処置が大事なんだ。| |~二階堂紅丸|放っておいて、もう一度捻ったりしてみろ。&br;かなり長引くぞ。| |~〇×|う……。| |~二階堂紅丸|ナギがこのまま引き下がるとも思えない。&br;走って逃げなければいけない状況に陥る可能性だってある。| |~二階堂紅丸|その時、大人しく俺に担がれるならいいが……。&br;運悪くひとりだったらどうする。| |~〇×|……痛くても走って逃げます。| |~二階堂紅丸|ハハッ、その度胸はいいな!&br;だけど、治せるもんは治しておこうぜ。| |~二階堂紅丸|その方が、俺もキミも他のメンバーだって安心だ。| |~二階堂紅丸|京に伝えてくるから、ちょっと待ってな。| |~〇×|……はい。| |~〇×|(捻っちゃったくらいで病院へ行くなんて……。&br;でも、紅丸さんが言うことは正しい。)| |~〇×|(病院で診てもらって、早く治そう。)| |~二階堂紅丸|ついたぜ。&br;ここ、オレのかかりつけの医者がいる病院なんだ。| |~〇×|紅丸さんの……?| |~二階堂紅丸|KOFで戦えば、大なり小なり怪我はするものだからな。&br;ついておいで。| |~〇×|はい。| |~二階堂紅丸|この部屋だ。&br;先生、入るぜ。| |~医者|こんばんは、紅丸くん。&br;後ろにいるのが、今夜の患者さんかな?| |~二階堂紅丸|ああ。| |~〇×|〇×です。よろしくお願いします。| |~医者|礼儀正しいお嬢さんだ。&br;それで、ケガは?| |~〇×|えっと……足を捻っただけで、大したことないんですけど。| |~二階堂紅丸|いろいろと事情があってな。&br;いつでも全力で走れるように調整してやって欲しいんだ。| |~医者|陸上の選手か何かなのかい?| |~〇×|い、いえ……そうではなく……。| |~医者|うん?| |~二階堂紅丸|とにかく、痛みを軽減させて欲しいのと、&br;治りやすくしてやって欲しいんだ。先生にならできるだろ?| |~医者|まあ、できるけど……。| |~二階堂紅丸|何も聞かずに、やってくれ。| |~医者|……わかったよ。&br;ちょっと治療するから、君は外に出て待っててくれ。| |~二階堂紅丸|わかった。| |~医者|くくく……面白いね。&br;このくらいの怪我であんなにムキになる彼は初めて見たよ!| |~〇×|す、すみません……。| |~医者|どうして謝るの。大切にされてるってことだろ。&br;君は彼の恋人かな?| |~〇×|いえ、違います。| |~医者|じゃあ、あいつの片思いかな?| |~〇×|え……そんなことないと思います。| |~医者|どうしてそう思うんだい?| |~〇×|だって紅丸さんは、女の子みんなに優しいし……。&br;少し優しくしてもらったからって特別なんて……。| |~医者|ハハ、もっと自信を持ったらいいのに。| |~医者|確かにあいつは女の子には平等に優しいヤツだけど、&br;ここへ連れてきた女の子は、君が初めてだよ。| |~〇×|え……。| #endregion //---------- ページの更新 ビジュアル編集モードに切り替える &aname(top); 解放条件 #region |~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他| |1話|1|1|| |2話|3|5|| |3話|4|10|| |4話|8|15|| |5話|10|20|| |6話|11|24|| |7話|13|28|| |8話|18|32|| |9話|18|36|| |10話|18|40|| |11話|21|43|| |12話|21|46|| |13話|33|49|| |14話|34|52|| |15話|40|55|| |16話|47|58|| |17話|51|61|| |18話|52|64|| |19話|52|67|| |エピローグ||70|メインストーリー4章29話読了| |~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他| #endregion *序章 [#preface] **1話 [#story_01] #region(ネタバレ注意) |>|道場・出発前――| |~矢吹真吾|KOFに向けて出発する前に、戸締りしてきます!| |~草薙京|オレも行く。留守中、さっきみたいな野郎に入り込まれちゃ&br;敵わねぇからな。| |~〇×(主人公)|あ、私も手伝います!| |~二階堂紅丸|×ちゃんはここにいな。&br;道場に来たばかりで、右も左も分からないだろ?| |~〇×|でも……。| |~二階堂紅丸|開会式から戻ったら、道場の中を案内するよ。&br;それまでは任せておけばいい。| |~〇×|は、はい……。| |~|(開会式……&br;行くって決めたけど、やっぱり不安……。)| |~|(招待状の差出人……ナギって、知り合いなのかな。&br;でも、心当たりはないし……。)| |~二階堂紅丸|…………。| |~|そんな不安そうな顔をしなくても&br;俺たちがついているんだから、大丈夫だぜ。| |~〇×|は、はい……。| |~二階堂紅丸|ま、不安そうなキミもかわいいけどね。| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|小動物みたいで、かわいいよ。&br;でも、やっぱりかわいい子には笑っていて欲しいな。| |~〇×|しょ、小動物ですか?| |~二階堂紅丸|さっきも言ったけど、&br;キミみたいな可憐な人がマネージャーなら負ける気がしないぜ。| |~|試合中は、俺から目を離さないで欲しい。&br;キミが応援してくれたら、百人力だよ。| |~〇×|え、えっと……。| |~二階堂紅丸|応援のお礼に、俺は全ての勝利をキミに捧げよう。&br;もちろん、受け取ってくれるよな?| |~〇×|え、ええ?| |~|あ、ありがとうございます……?| |~二階堂紅丸|かわいい反応だな、子猫ちゃん。&br;これからよろしく。| |~〇×|ひゃっ!?&br;な、何するんですか……!| |~二階堂紅丸|何って、最上級の挨拶なんだけど。&br;お気に召さなかったかな?| |~草薙京|紅丸、そいつをからかうのもいい加減にしろ。&br;面倒ごとはゴメンだ。| |~二階堂紅丸|からかってはいないんだけどなぁ。&br;あ、俺も準備手伝うよ。| |~〇×|(いきなり手の甲にキスするなんて。&br;び、びっくりした……。)| |~矢吹真吾|大丈夫っすか?| |~〇×|う、うん……。&br;ちょっとびっくりしただけ。| |~矢吹真吾|……紅丸さんのこと、悪く思わないでくれたらうれしいっす。| |~〇×|え?| |~矢吹真吾|ちょっと軽い感じだけど、悪い人じゃないっていうか……。| |~|きっと、紅丸さんなりに〇さんの不安を少しでも&br;軽くしようと思ってのことだと思います。| |~〇×|……うん。| |~|(紅丸さん、どんな人なんだろう……。)| #endregion //---------------------------------------- *1章 [#chapter_1] **2話 [#story_02] #region(ネタバレ注意) |>|道場・朝――| |~〇×|(いい天気……。&br;よーし、朝ご飯張り切って作らなきゃ!)| |~〇×|(あれ……台所からいい匂いが漂ってくるような。&br;大門さん、かな?)| |~〇×|おはようございます。| |~二階堂紅丸|お、おはよう。もっとゆっくり寝ても良かったのに。&br;朝早いんだね。| |~〇×|紅丸さん!? 台所で何を……?| |~二階堂紅丸|台所ですることは、料理って相場が決まってるだろ?&br;朝食の支度をしてたんだよ。| |~〇×|で、でも……食事の支度は私の仕事で。| |~〇×|はっ!| |~〇×|もしかして、&br;昨夜の私の料理が本当はおいしくなかったんじゃ……。| |~二階堂紅丸|おいしかったよ!&br;本当に、心の底からおいしかった。| |~〇×|じゃあ、どうして……。| |~二階堂紅丸|×ちゃんは道場に来て、まだ間もないだろ?| |~二階堂紅丸|それにナギとかいう野郎から&br;身に覚えのないKOFの招待状が来て不安でいっぱいだ。| |~二階堂紅丸|そんな時に、あんまり無理してほしくなかったんだよ。&br;料理なら俺、得意だからさ。| |~〇×|紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|ま、起きてきたんなら手伝ってくれるかい?&br;一緒においしい朝ご飯を作ろうぜ。| |~〇×|はい!&br;朝もやっぱり魚料理ですか?| |~二階堂紅丸|魚も肉も使うよ。&br;格闘家には良質なタンパク質が必要だからね。| |~〇×|タンパク質……じゃあ、お汁はつみれ汁にしましょうか。&br;昨日、好評でしたし。| |~二階堂紅丸|お、いいな!&br;じゃあ俺は鮭をさばくとしよう。| |~〇×|鮭!? 丸々一匹ですか!?| |~二階堂紅丸|ゴローちゃんが安かったとか言って買ってきたんだよ。&br;これぐらいなら俺がさばけるからな。| |~〇×|すごいですね、器用……。| |~二階堂紅丸|慣れだよ。&br;みんなよく食べるからね、さばく機会も必然的に増えるんだ。| |~〇×|私もそんな風にさばけるようになりたいです。| |~二階堂紅丸|それなら、俺が手取り足取り腰取り教えてやろうか?| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|……なーんてな。| |~〇×|お願いします!| |~二階堂紅丸|へ?| |~〇×|あ、もしかして冗談のつもりでした? す、すみません!| |~二階堂紅丸|いや、別に魚のさばき方くらいいつでも教えてあげるけど。| |~〇×|あげるけど……? 何です?| |~二階堂紅丸|……いや、みんなの為においしい料理を作りたい。&br;その気持ちはいいね! 益々気に入ったぜ!| |~二階堂紅丸|おっと……みんなが来るまで時間がないぞ。&br;さばくのを教えるのは今度にして、準備を急ごう。| |~〇×|はい!| |~二階堂紅丸|あ、あと……俺が手伝ったっていうのは、あいつらには内緒な。| |~〇×|どうしてですか?| |~二階堂紅丸|どうしても。&br;さ、急いで準備するぞ。| |~〇×|(紅丸さん、良い人だなぁ……。)| #endregion //---------- **3話 [#story_03] #region(ネタバレ注意) |>|キムチームVSリョウチーム試合当日・朝――| |~〇×|(今日は京さんたちの試合はないから観戦だけだよね。&br;荷物はこれで大丈夫なはず……。)| |~草薙京|おい、あんた。手が空いてるなら紅丸を呼んできてくれ。| |~〇×|紅丸さんですね、わかりました。| |~〇×|紅丸さーん!| |~〇×|うーん、ここにはいないみたい……。| |~矢吹真吾|あれ、紅丸さんを探してるんすか?| |~〇×|うん、そうなの。&br;真吾くん、見なかった?| |~矢吹真吾|さっき道場の方に歩いて行くのを見ましたよ。&br;まだいるかはわかんないんすけど……。| |~〇×|ありがとう! 行ってみるね。| |~〇×|紅丸さん、いますか?| |~〇×|あ……っ!| |~二階堂紅丸|…………。| |~〇×|(何か考え事をしているみたい。&br;邪魔したくはないけど、京さんが呼んでるし……。)| |~〇×|(声を掛けた方がいいよね?)| |~〇×|あの、紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|……ああ、×ちゃんか。&br;どうしたんだい?| |~〇×|京さんに頼まれて紅丸さんを呼びに来たんです。&br;……考え事ですか?| |~二階堂紅丸|まあな。| |~〇×|もしかして、ヨミさんのことですか……?| |~二階堂紅丸|へぇ……鋭いね。| |~〇×|さっき京さんたちと話していた時、調べたそうでしたから。&br;オフィシャルチーム、気になりますよね。| |~二階堂紅丸|ああ、今のところ情報が少なすぎるからな。| |~二階堂紅丸|例え表舞台に立ったことのない地下格闘家でも&br;調べればある程度の情報は上がってくる……。| |~二階堂紅丸|いずれ戦うであろう相手だ。&br;調べておいて損はないのに、京は頭が固いぜ。| |~〇×|でも、京さんには京さんの考えがあると思いますし……。| |~二階堂紅丸|それもわかってるさ。&br;だけど、妙な胸騒ぎがするんだ。| |~〇×|胸騒ぎ、ですか?| |~二階堂紅丸|ああ、格闘家としての勘だよ。&br;あのチームには何かある。そんな気がするんだ。| |~〇×|…………。| |~二階堂紅丸|悪い。&br;キミを不安がらせるつもりはなかったんだ。| |~二階堂紅丸|何でかな……。&br;×ちゃんには、つい心の内を喋っちゃうみたいだ。| |~二階堂紅丸|キミはいつでも優しく受け止めてくれるし、&br;それに時々鋭いからね。| |~〇×|そんな。私はただ、聞くだけしか……。| |~二階堂紅丸|聞いてくれるだけでいいことって、意外と多いと思うよ。| |~〇×|そうでしょうか。| |~二階堂紅丸|そうだよ。現に俺は助かってるぜ!| |~〇×|そう言ってくれるとうれしいです。| |~二階堂紅丸|そういえば、京が呼んでるんだっけ?&br;きっと遅いって怒ってるぞ。| |~〇×|あ……忘れてました!| |~二階堂紅丸|ハハッ!&br;じゃあ、仲良く一緒に怒られに行くとしようか。| |~〇×|はい!| #endregion //---------- **4話 [#story_04] #region(ネタバレ注意) |>|歓迎会から帰ったあと・道場――| |~〇×|(眠れないなぁ……。&br;今日はいろいろあったから、目が冴えちゃったのかな。)| |~〇×|(……少し散歩してこよう。&br;道場の敷地内なら、大丈夫だよね。)| |~〇×|気持ちいい風……。| |~〇×|(紅丸さんと京さんは二次会から帰って来たのかな?&br;盛り上がってそうだし、まだ飲んでいるかも……。)| |~〇×|(でも明日は試合なのに、大丈夫かな。)| |~二階堂紅丸|おや、天女が舞い降りたのかと思ったら、×ちゃんか。&br;こんな夜中にひとり歩きなんて感心しないな。| |~〇×|べ、紅丸さん……!?| |~二階堂紅丸|あれ。そんなにびっくりした?| |~〇×|その、ちょうど紅丸さんのことを考えていたので……。| |~二階堂紅丸|……へぇ。&br;キミは本当に、……面白い子だね。| |~〇×|面白い……ですか?| |~二階堂紅丸|なんでもないさ。&br;それで、どうしたんだい? もう夜も遅いよ。| |~〇×|ちょっと眠れなくて散歩してたんです。&br;敷地内なら大丈夫かなって。| |~二階堂紅丸|眠れない時、気分転換したいのはわかるけどひとりはダメだ。&br;俺に声を掛けてくれたら、いつでもお供するよ。| |~〇×|ありがとうございます。&br;次から、お願いするようにしますね。| |~二階堂紅丸|ん、素直でよろしい。| |~二階堂紅丸|今夜は風が気持ちいいね。&br;芝生に転がって、寝てしまいたいくらいだ。| |~〇×|ふふ。気持ちよさそうですけど、風邪引きますよ?| |~二階堂紅丸|このくらいで風邪を引くほど、やわな鍛え方はしてないよ。&br;ん-……気持ちいいなぁ。| |~〇×|(本当に芝生に寝転がっちゃった……。)| |~二階堂紅丸|×ちゃんもおいで。星がきれいに見えるよ。| |~〇×|星が?| |~〇×|うわぁ……きれいですね!| |~二階堂紅丸|立ったまま顔を上げてちゃ首が疲れちゃうよ。&br;キミの特等席を作ってあげたから、隣においで。| |~〇×|ええっ、そんな……。&br;うれしいですけど、紅丸さんのタオルが汚れちゃいます!| |~二階堂紅丸|タオルが汚れたら洗濯すればいいだけだろ。&br;それとも、俺の隣にくるのはイヤなのかい?| |~〇×|そ、そんなことは! お邪魔します……!| |~二階堂紅丸|はい、いらっしゃい。&br;寝心地はいかがかな?| |~〇×|え? えっと……大変よろしいです。| |~二階堂紅丸|それは良かった。&br;ほら、上を見てごらん。| |~〇×|うわぁ……!&br;星って、こんなにたくさん見えるんですね。| |~二階堂紅丸|意外と見えるものだろ?| |~〇×|はい……会社に勤めていた時は、&br;こんな風に夜空を見上げることもなかったです。| |~二階堂紅丸|こうやって星空を眺めていると、&br;星のシャワーを浴びているみたいだよな。| |~〇×|星のシャワー……ふふ、ロマンチストですね。| |~二階堂紅丸|ナギの招待状よりセンスがいいだろ?| |~〇×|ふふ、そうですね。| |~二階堂紅丸|知ってるかい? 今見えている星の光は、&br;100年も200年も前のものなんだ。| |~〇×|100年前の光ってことですか?| |~二階堂紅丸|そう。宇宙の彼方で100年前に瞬いた光が、長い年月を掛け&br;地球まで届いて……俺たちの目に映っているんだ。| |~二階堂紅丸|そんな光を浴びていると思うと、&br;自分の悩みなんてちっぽけに感じてこないか?| |~〇×|……そうかもしれませんね。| |~二階堂紅丸|今日は初めてKOFの試合を見たり、大勢の格闘家と食事に&br;行ったり……初めて尽くしで疲れただろ。| |~〇×|はい……でも、楽しかったです。| |~二階堂紅丸|よしよし、×ちゃんは本当にいい子だな。| |~〇×|(ん……何だか急に眠たくなってきちゃった。)| |~二階堂紅丸|明日の試合、俺たちが必ず勝つ。&br;そして勝利を小鳥のようにかわいいキミに捧げるよ。| |~〇×|……スースー。| |~二階堂紅丸|ん?| |~二階堂紅丸|なんだ、眠っちゃったのか。&br;今日は疲れただろうし、無理もないな。| |~二階堂紅丸|おやすみ、×ちゃん。良い夢を――| #endregion //---------- **5話 [#story_05] #region(ネタバレ注意) |>|試合当日・朝――| |~〇×|(みなさん、すごいなぁ。&br;昨日飲み会で遅かったはずなのに、朝早くから稽古して……。)| |~〇×|(私も美味しいご飯を作って&br;みなさんをサポートしなくちゃ……!)| |~〇×|(つみれ汁、卵焼き、焼き鮭、納豆、おひたし。&br;それに炊きたての美味しいご飯!)| |~〇×|(あとはお漬物を出して……あれ?&br;そういえば、昨日どうやって自分の部屋に戻ったんだっけ。)| |~〇×|…………。| |~〇×|(ど、どうしよう!&br;昨日どうやって自分の部屋に戻ったのか記憶がない!)| |~〇×|(昨日の夜は、眠れなくて散歩してたら紅丸さんに会って、&br;一緒に芝生の上に転がって星を眺めて……。)| |~〇×|(ああ……そこから記憶がない!)| |~矢吹真吾|おお、いい匂い!&br;今日の朝食もうまそうっすね!| |~〇×|え、あ……真吾くん。| |~矢吹真吾|あれ?&br;何だか疲れているみたいですけど、どうかしたんすか?| |~〇×|な、何でも無いよ。大丈夫、いつも通りだから。| |~矢吹真吾|そ、そうっすか?| |~〇×|(記憶がないなんて、言えるわけないよ……。)| |~草薙京|おい、真吾! シャワーを浴びたらちゃんと頭を拭けよ。&br;廊下が水浸しじゃねぇか!| |~矢吹真吾|ああ! すんません!!&br;すぐ拭きます!| |~草薙京|ったく……。| |~〇×|…………。| |~草薙京|そういや、いつの間に仲良くなったんだ?| |~〇×|え? あ、京さん……。&br;仲良くなったって、何のことですか?| |~草薙京|紅丸とのことだ。&br;昨夜、紅丸に抱えられてただろ。| |~〇×|抱えられ……ああ――――っ!| |~草薙京|!?&br;な、なんだよ。急に大声を出して……。| |~〇×|(そ、そうだ……私、星空を見ながら寝ちゃったんだ。&br;それで紅丸さんが私を部屋まで……。)| |~〇×|(私ってば、何て醜態を……。)| |~草薙京|×?&br;おい、あんた。大丈夫か?| |~二階堂紅丸|ふぅ……水もしたたるいい男とは今の俺の為にある言葉だぜ。| |~草薙京|はぁ……。| |~二階堂紅丸|×ちゃん、どうかしたのか?&br;もしや、俺の美しさにあてられたのかい?| |~草薙京|アホか!&br;……お前、昨日こいつを部屋まで運んでただろ?| |~二階堂紅丸|ああ、それがどうかしたのか?| |~草薙京|念の為聞くが、何もしなかっただろうな?&br;これ以上の面倒ごとはゴメンだぜ。| |~二階堂紅丸|この俺が、眠っているレディーに手を出すような男に&br;見えるか?| |~草薙京|……それならいいけどよ。| |~二階堂紅丸|×ちゃん、お茶がいい? それともコーヒーかな?| |~〇×|あ……お茶でお願いします。| |~二階堂紅丸|お茶ね、了解。| |~〇×|あの、紅丸さん。&br;昨日は、その……すみませんでした。| |~二階堂紅丸|ん? ああ、寝ちゃったことなら気にしないでいいよ。| |~〇×|でも、部屋まで運んでもらってしまって……。&br;私、重いのに……。| |~二階堂紅丸|そんなこと気にするもんじゃないさ。| |~二階堂紅丸|それより、可愛い寝顔を拝ませてもらって役得だったよ。| |~〇×|ひぇぇぇ……!| |~二階堂紅丸|さ、お茶も入ったしご飯にしよう。&br;真吾、ご飯をよそってくれるか?| |~矢吹真吾|はいっす!| |~〇×|(すごく迷惑を掛けてしまったのに……。&br;紅丸さん、私が気にしないようにしてくれてるみたい。)| |~〇×|(優しいなぁ……。)| #endregion //---------- **6話 [#story_06] #region(ネタバレ注意) |>|KOF会場――| |~〇×|(京さんも、紅丸さんも、真吾くんもすごかったなぁ……。&br;KOFの戦いって、見てるこっちまでドキドキしちゃう。)| |~〇×|あ、いけない!&br;控え室に戻って、いろいろ準備しないと……!| |~〇×|(えっと……荷物は、これとこれと……あと、これかな。&br;う、結構重いかも……。)| |~〇×|(でも、これもマネージャーの仕事なんだし、&br;頑張らないと!)| |~二階堂紅丸|×ちゃん、持つよ。| |~〇×|えっ、紅丸さん!?| |~二階堂紅丸|レディーの細腕で持てる荷物じゃないだろ?&br;こういう時は俺を頼りな。| |~〇×|で、でも……勝利インタビュー始まっちゃいます。&br;ここは大丈夫ですから、行ってください。| |~二階堂紅丸|勝利インタビューなんて、&br;KOF開催中は何度も受けることになるんだ。| |~二階堂紅丸|だから、今はこっちが優先。わかった?| |~〇×|(すごい自信……。&br;それだけの実力を持っているからこそ言えるんだろうな。)| |~〇×|(甘えてもいいのかな……。)| |~二階堂紅丸|ほら、道の真ん中で俺に見とれてちゃ危ないぜ。&br;×ちゃんは壁側を歩きな。| |~〇×|あ、ありがとうございます。| |~二階堂紅丸|それで、どうだったかな? 華麗に戦う俺の姿は……。| |~〇×|すごく格好よかったです!| |~二階堂紅丸|ん、キミのその笑顔を見る為に戦ったんだよ。&br;その瞳に俺だけを映してほしくてね。| |~〇×|え、えっと……。| |~二階堂紅丸|キミは、かわいいな。| |~〇×|(そんなこと言われたら返答に困るよ……!&br;……でも、心地いいのはどうして?)| |~ファンA|ああっ、紅丸様! どうしてこんなところに!?| |~ファンB|試合、見ました!&br;かっこよすぎて、天にも昇る気持ちでしたわ!| |~二階堂紅丸|サンキュー、子猫ちゃんたち。| |~ファンA|はぁぁん、紅丸様のウインクが……。| |~ファンB|素敵すぎますぅぅ。| |~ファンA|……ところで、その女は何です?&br;見ない顔ですね。| |~ファンB|新しい紅丸様のファン?&br;それなら、私たち紅丸様ファンクラブを通してくださいな!| |~二階堂紅丸|ハハッ。&br;この子は俺たち京チームのマネージャーだよ。| |~二階堂紅丸|栄養管理や雑務まで、色々な仕事をやってもらってるんだ。| |~ファンA|そうでしたの!&br;紅丸様の特別ではなく……マネージャーでしたのね!| |~ファンB|それでしたら、写真撮影をお願いできます?&br;紅丸様、いいですか?| |~二階堂紅丸|もちろん。&br;かわいい子猫ちゃんにせがまれちゃ、ノーとは言えないさ。| |~ファンB|やーん、紅丸様ったら。&br;はい、カメラ。落とさないよう注意してくださいね?| |~〇×|は、はい……。| |~〇×|(一眼レフカメラ……すごく高そう。)| |~ファンB|紅丸様、私たちを持ち上げてくださらない?| |~ファンA|いいですわね! お願いしますわ!| |~二階堂紅丸|はいはい、お姫様| |~ファンA&B|きゃあっ♪| |~〇×|撮りますね! はい、チーズ……!| |~〇×|(……あれ? 胸が痛い?)| |~ファンB|ありがとうございますぅ。&br;きゃぁ、素敵な写真! 宝物にしますね!| |~〇×|(私……どうして、こんなに胸が痛むの?)| #endregion //---------- **7話 [#story_07] #region(ネタバレ注意) |>|母屋・早朝――| |~〇×|(鳥の声が聞こえる……。もう朝なんだ。&br;起きて、朝食を作ろう。)| |~〇×|(昨夜は遅くまで盛り上がっていたみたい。)| |~〇×|(それでも、いつも通りの時間に朝練をするんだから、&br;格闘家って、すごいなぁ。)| |~〇×|(朝食のメニューは、つみれ汁、メインがサケの塩焼き。&br;小鉢は、ひじきの煮物と切り干し大根の煮物でいいかな?)| |~〇×|(そういえばテリーさんたち、朝に和食って大丈夫なのかな?&br;パンの方がいいのかも? うーん……。)| |~〇×|(でも、和食と洋食両方作るのは大変だし……。)| |~二階堂紅丸|おはよう、×ちゃん。| |~〇×|あ、おはようございます。&br;って……どうして裸なんですか!?| |~二階堂紅丸|裸って……上半身だけだろ?&br;髪を乾かさないうちにシャツを着るのは嫌いなんだよ。| |~〇×|確かに服が濡れちゃいますけど……。| |~二階堂紅丸|だろ?&br;それに、×ちゃんになら見られても構わないぜ?| |~二階堂紅丸|ふふ、上半身くらいで大げさだよ。| |~〇×|(そう言われても、目のやり場に困っちゃう。&br;確かにすごくきれいな上半身だけど……。)| |~二階堂紅丸|お、見るのに抵抗なくなったかな?| |~〇×|ち、違います!| |~二階堂紅丸|でも、海に行けば男なんて海パン一枚だけだし、&br;KOFの大会でもズボンだけの選手もいるぜ?| |~二階堂紅丸|初(うぶ)なのもかわいいけどさ。&br;これくらい慣れておかないと、大変だぜ?| |~〇×|は、はい……。| |~〇×|(私だって海やプールにくらい行ったことあるし、&br;その時は照れたりしなかったのに……。)| |~〇×|(こんなにドキドキしちゃうのは、紅丸さんだから……?)| |~二階堂紅丸|朝食の支度だよね?| |~〇×|えっ!? あ……はい。&br;和食でいいのか、洋食がいいのか悩み所なんですけど。| |~二階堂紅丸|ん-……別にいつも通り和食でいいんじゃないかな?&br;あいつらに気を遣うことないって。| |~二階堂紅丸|それより……料理を手伝うからさ、&br;ちょっと俺のお願いも聞いてくれないかな?| |~〇×|お願い……ですか?| |~二階堂紅丸|そ。&br;毎朝、髪のセットするの……ひとりじゃ大変なんだよな。| |~〇×|あ、確かに大変そうです。| |~二階堂紅丸|だろ? あの髪形は俺のアイデンティティだからね。&br;バッチリ決めたいんだ。手伝ってくれるかい?| |~〇×|はい。……でも服は着てくださいね?| |~二階堂紅丸|ハハッ、こだわるな!| |~〇×|だって……。| |~〇×|(ドキドキしちゃう。)| |~二階堂紅丸|わかったよ、プリンセスの仰せのままに。| |~〇×|あの髪形って、セットにどれくらいの時間がかかるんですか?| |~二階堂紅丸|んー……だいたい一時間くらいかな?| |~〇×|い、一時間ですか!?| |~二階堂紅丸|あの髪形は、&br;俺にとっちゃ戦う為の儀式みたいなもんだからな。| |~二階堂紅丸|妥協は一切しない。&br;バッチリ決まらないと、試合相手にも申し訳ないだろ?| |~〇×|そういうものですか……。| |~〇×|(髪を下ろしてる紅丸さんも素敵だけどな……。)| |~二階堂紅丸|ああ。KOFに行くからには、セットは必須。&br;バッチリ頼むぜ、マネージャー。| |~〇×|はい、頑張ります!| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *2章 [#chapter_2] **8話 [#story_08] #region(ネタバレ注意) |>|母屋・夕方――| |~〇×|(腹が減っては、冷静に判断を下せないってことで&br;先に食事をすることになったんだけど……。)| |~矢吹真吾|〇さん、おかわりお願いします!| |~二階堂紅丸|ん……このだし巻き卵も最高だよ。&br;可憐な人が作ると、食事まで華やかになるんだな。| |~テリー・ボガード|おお! この魚、うまいな。焼き具合も最高だぜ!| |~アンディ・ボガード|アジという魚だよ、兄さん。| |~ジョー・東|納豆のおやきっつーのも最高だぜ!&br;×ちゃんって、本当に料理が上手いんだな。| |~〇×|あ、ありがとうございます。| |~草薙京|飯、まだあるか?| |~〇×|もちろんです。&br;大盛りでいいですか?| |~草薙京|ああ、わかってるじゃねぇか。| |~〇×|(あんな力を使っちゃった後なのに、みなさんすごく普通……。&br;というか、普通すぎる……。)| |~〇×|(敢えてそう振る舞ってくれているのかも……。)| |~〇×|はい、ご飯大盛りです。| |~草薙京|お、サンキュ。| |~〇×|きゃっ!| |~草薙京|おっと……。| |~矢吹真吾|さすが草薙さん、ナイスキャッチです!| |~草薙京|……どうした? 虫でもいたのか?| |~〇×|い、いえ……何でもありません。&br;すみませんでした。| |~草薙京|別にいいけどよ。&br;急に悲鳴あげられたら、びっくりすんだろうが。| |~〇×|そ、そうですよね……。| |~二階堂紅丸|…………。| |~〇×|話し合いの前に、ざっと片付けてきますね。| |~草薙京|ああ。| |~二階堂紅丸|手伝うよ。| |~〇×|えっ、大丈夫ですよ。&br;これはマネージャーである私の仕事で……。| |~二階堂紅丸|いいから。&br;手伝った方が早く終わるだろ。| |~包|僕も手伝うよ!| |~二階堂紅丸|俺と×ちゃんでやるから大丈夫だ。&br;お前は、これからの話し合いの準備をしておいてくれ。| |~包|はーい!| |~〇×|紅丸さんも話し合いの準備をしてくださって大丈夫ですよ?&br;ここはひとりでも……。| |~二階堂紅丸|ひとりよりふたりの方がいいだろ。&br;食器は俺が運ぶから、キミは洗い物担当な。| |~〇×|……わかりました。ありがとうございます。| |~二階堂紅丸|ん、素直でよろしい。| |~〇×|ふー……終わりました!&br;紅丸さんのおかげで、捗りました。| |~〇×|あ、お皿を一枚しまい忘れてました!&br;きゃっ!| |~二階堂紅丸|危ない!| |~二階堂紅丸|ふー……危ないところだったな。&br;危うく食器棚に顔面強打するところだったぜ?| |~〇×|すみません! ありがとうございますっ!| |~二階堂紅丸|ん? なんでそんなにすぐ俺から離れようとするのかな?| |~〇×|えっ……。| |~二階堂紅丸|俺が気づいてないとでも思ってたのか?&br;さっきから、俺たちに触れないよう気をつけてただろ。| |~二階堂紅丸|なぜだ?| |~〇×|……ご、ごめんなさい。| |~二階堂紅丸|…………悪い、脅かすつもりはなかったんだ。&br;ただ、急に接触を避けるからさ、なんでかなって。| |~〇×|私、そんなに露骨でしたか……?| |~二階堂紅丸|いや、自然に振る舞えてたと思うぜ?&br;ただし……俺の目は誤魔化せなかったけどな。| |~〇×|…………。| |~二階堂紅丸|どうして、避けたりしたんだい?&br;俺にも話せないこと?| |~〇×|…………から。| |~二階堂紅丸|ん?| |~〇×|私……気味が悪いから。| |~二階堂紅丸|は?| |~〇×|だって、あんな得体の知れない力が&br;手のひらからでたんですよ?| |~〇×|みなさん普通に接してくれていましたけど&br;気味が悪くないわけがないです……。| |~二階堂紅丸|×ちゃん。| |~〇×|ダメです、手に触らないで。&br;もし何か変なことになったりでもしたら……!| |~二階堂紅丸|変なことになんてならないよ。&br;こんな可愛い手のどこが気味悪いって言うのさ。| |~〇×|あ、危ないですよ……。| |~二階堂紅丸|危なくないよ。&br;そんなに言うなら、ほら――| |~二階堂紅丸|こうやって、手を握っておいてあげる。| |~〇×|べ、紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|ね、どこも気味悪くなんてない。&br;力があってもなくてもキミはキミじゃないか。| |~二階堂紅丸|今後、×ちゃんがどうなろうと、&br;俺がキミを嫌いになることなんてないよ。| |~二階堂紅丸|例え、天地がひっくり返ろうとね。| |~〇×|紅丸さん……!| |~〇×|私、本当に気味悪くないですか?| |~二階堂紅丸|まだ言うの?&br;手を握るので足りないなら、キスしようか?| |~〇×|え……! そ、それはちょっと……。| |~二階堂紅丸|ハハッ! 大丈夫、キミは気味悪くなんてない。&br;とっても魅力的で頑張り屋の可憐な女性さ。| |~〇×|(不安な気持ちは完全には消えないけど……。&br;でも、すごく気持ちが楽になった気がする。)| |~〇×|……ありがとうございます、紅丸さん。| |~二階堂紅丸|俺は何もしてないよ。| |~二階堂紅丸|じゃ、そろそろ行こうか。&br;話し合いからは逃げられないからね。| |~〇×|はい!| #endregion //---------- **9話 [#story_09] #region(ネタバレ注意) |>|母屋・夜――| |~二階堂紅丸|×ちゃん、ちょっといい?| |~〇×|え? あ……はい。| |~〇×|(なんだろう?)| |~矢吹真吾|紅丸さん、どうかしたんですか?| |~二階堂紅丸|ん、ちょっとな。| |~二階堂紅丸|……×ちゃん、足に怪我してるだろ。| |~〇×|えっ!?| |~二階堂紅丸|さっきつまずいた時に、足首でも捻ったんじゃないか?&br;右足を少し引きずってるぜ。| |~二階堂紅丸|見せてみろ。| |~〇×|はい……。| |~〇×|(確かにさっき、少し捻っちゃったけど……。&br;もうあまり痛くないのに……紅丸さん、よく気づいたなぁ。)| |~〇×|(それだけ、見てくれてるってこと?&br;ううん、そんな……自意識過剰だよ。)| |~二階堂紅丸|やっぱり捻ってるな……。&br;一度医者に診てもらって、早めに治しておいた方がいい。| |~〇×|お医者さん!? このくらい放っておいても治りますよ。| |~二階堂紅丸|バカだなぁ……。&br;こういう怪我こそ、初めの処置が大事なんだ。| |~二階堂紅丸|放っておいて、もう一度捻ったりしてみろ。&br;かなり長引くぞ。| |~〇×|う……。| |~二階堂紅丸|ナギがこのまま引き下がるとも思えない。&br;走って逃げなければいけない状況に陥る可能性だってある。| |~二階堂紅丸|その時、大人しく俺に担がれるならいいが……。&br;運悪くひとりだったらどうする。| |~〇×|……痛くても走って逃げます。| |~二階堂紅丸|ハハッ、その度胸はいいな!&br;だけど、治せるもんは治しておこうぜ。| |~二階堂紅丸|その方が、俺もキミも他のメンバーだって安心だ。| |~二階堂紅丸|京に伝えてくるから、ちょっと待ってな。| |~〇×|……はい。| |~〇×|(捻っちゃったくらいで病院へ行くなんて……。&br;でも、紅丸さんが言うことは正しい。)| |~〇×|(病院で診てもらって、早く治そう。)| |~二階堂紅丸|ついたぜ。&br;ここ、オレのかかりつけの医者がいる病院なんだ。| |~〇×|紅丸さんの……?| |~二階堂紅丸|KOFで戦えば、大なり小なり怪我はするものだからな。&br;ついておいで。| |~〇×|はい。| |~二階堂紅丸|この部屋だ。&br;先生、入るぜ。| |~医者|こんばんは、紅丸くん。&br;後ろにいるのが、今夜の患者さんかな?| |~二階堂紅丸|ああ。| |~〇×|〇×です。よろしくお願いします。| |~医者|礼儀正しいお嬢さんだ。&br;それで、ケガは?| |~〇×|えっと……足を捻っただけで、大したことないんですけど。| |~二階堂紅丸|いろいろと事情があってな。&br;いつでも全力で走れるように調整してやって欲しいんだ。| |~医者|陸上の選手か何かなのかい?| |~〇×|い、いえ……そうではなく……。| |~医者|うん?| |~二階堂紅丸|とにかく、痛みを軽減させて欲しいのと、&br;治りやすくしてやって欲しいんだ。先生にならできるだろ?| |~医者|まあ、できるけど……。| |~二階堂紅丸|何も聞かずに、やってくれ。| |~医者|……わかったよ。&br;ちょっと治療するから、君は外に出て待っててくれ。| |~二階堂紅丸|わかった。| |~医者|くくく……面白いね。&br;このくらいの怪我であんなにムキになる彼は初めて見たよ!| |~〇×|す、すみません……。| |~医者|どうして謝るの。大切にされてるってことだろ。&br;君は彼の恋人かな?| |~〇×|いえ、違います。| |~医者|じゃあ、あいつの片思いかな?| |~〇×|え……そんなことないと思います。| |~医者|どうしてそう思うんだい?| |~〇×|だって紅丸さんは、女の子みんなに優しいし……。&br;少し優しくしてもらったからって特別なんて……。| |~医者|ハハ、もっと自信を持ったらいいのに。| |~医者|確かにあいつは女の子には平等に優しいヤツだけど、&br;ここへ連れてきた女の子は、君が初めてだよ。| |~〇×|え……。| #endregion //---------- **10話 [#story_10] #region(ネタバレ注意) |>|渋谷・夜――| |~〇×|あの、紅丸さん! 私……歩けますから!| |~二階堂紅丸|ダーメ。足首を捻挫してるんだ、歩かせられないよ。&br;先生だって、しばらく安静にって言ってただろ?| |~〇×|でも、軽い捻挫って言ってましたし……。| |~二階堂紅丸|あの先生、とんでもなく腕がいいからさ。&br;固定してもらったまま一晩寝れば大分動かせるようになる。| |~二階堂紅丸|だから、今は我慢して俺におんぶされてな。| |~〇×|が、我慢だなんて……。| |~二階堂紅丸|それともお姫様抱っこの方が良かったかな?| |~〇×|そ、そんなことないです!| |~〇×|(お姫様抱っこなんて、もっと恥ずかしい……。&br;だって、お互いの顔が見えちゃう……。)| |~〇×|(ああ、想像しただけで恥ずかしくなってきちゃった。)| |~二階堂紅丸|……お、雨が強くなってきた。傘ちゃんと差しとけよ。&br;濡れて風邪でも引いたら、大変だぜ?| |~〇×|はい……。| |~〇×|(紅丸さんも濡れないように……。)| |~二階堂紅丸|俺はいいから、×ちゃんが濡れないように差しな。| |~〇×|でも、これくらいしかできないから……。&br;せめて紅丸さんが濡れないようにしたいです。| |~二階堂紅丸|……それなら、もっとぎゅってくっついてよ。&br;こうすればふたりで傘に入っていられるだろ?| |~〇×|……は、はい。| |~〇×|(恥ずかしいなんて言ってる場合じゃないよね……。&br;紅丸さんの背中……広くて温かい。)| |~二階堂紅丸|よしよし……素直でいい子だ。| |~二階堂紅丸|怪我も大したことなくて良かったよ。&br;次からは少しでもおかしいって思ったら、すぐ俺に言えよ?| |~〇×|次って……そんな頻繁にケガなんてしませんよ。| |~二階堂紅丸|……わからないぜ。| |~二階堂紅丸|×ちゃんに何かしらの力が目覚めた今、&br;状況はきっと目まぐるしく変わっていく。| |~二階堂紅丸|そんな気がするんだ。| |~〇×|KOF……どうなるんでしょう。| |~二階堂紅丸|なるようになるさ。&br;×ちゃんは、俺たちについてくればいい。| |~二階堂紅丸|俺たちのチームのマネージャーなんだからな。| |~〇×|はい。| |~二階堂紅丸|それより、今日は疲れただろ。&br;背中で寝てていいぜ。ちゃんと部屋まで運んであげるからさ。| |~〇×|だ、大丈夫です。起きてますから。| |~二階堂紅丸|いいから。遠慮せず、寝てな。| |~〇×|(そんなこと言われても……。&br;ドキドキしすぎて眠るなんて無理です……!)| |~二階堂紅丸|ん? どうかした?| |~〇×|な、なんでもありません……!| #endregion //---------- **11話 [#story_11] #region(ネタバレ注意) |>|母屋・夜――| |~ビリー・カーン|おい、ちょっといいか?| |~草薙京|ああ?| |~〇×|ビリーさん、傷の手当てをしないと……。| |~ビリー・カーン|便所だ。&br;すぐ戻るから、ちょっと待っててくれ。| |~〇×|す、すみません!&br;ゆっくり行ってきてください。| |~ビリー・カーン|おう。| |~矢吹真吾|あの、ビリーさん。便所はこっちじゃないですよ?| |~ビリー・カーン|るせーな。&br;便所はあの嬢ちゃんから離れる言い訳だ。| |~ビリー・カーン|女じゃあるめぇし、仲良しこよしで便所に行く訳ねぇだろ。| |~二階堂紅丸|……それで、話とは何だ?| |~草薙京|くだらねぇ話じゃねぇだろうな。| |~ビリー・カーン|……明日、KOF開催者たちのパーティーが開かれる。&br;この状況下だが、説明も兼ねて続行だそうだ。| |~ビリー・カーン|こっちからナギに近づけるチャンスは滅多にねぇ。&br;諸々探るには打って付けだ。| |~二階堂紅丸|……なるほどね。| |~草薙京|探るにしても、敵の手の内だ。&br;リスクの方がデカいんじゃねぇか?| |~二階堂紅丸|虎穴に入らずんば虎子を得ず……だろ。| |~草薙京|まあ、そうとも言うが……。| |~二階堂紅丸|心配しなくとも忍び込むなんてマネはしないよ。| |~矢吹真吾|じゃあ、どうするんですか?| |~二階堂紅丸|正規の招待状を手に入れる。| |~矢吹真吾|え、手に入るんですか!?| |~二階堂紅丸|うちの財閥をなめてもらっちゃ困るな。&br;すぐに手配しよう。| |~ビリー・カーン|アンタらに話して正解だったな。&br;頼むぜ。| |>|母屋・朝――| |~〇×|(朝ご飯の準備もバッチリ。&br;みなさんを呼びに行かなくちゃ……。)| |~〇×|あ、真吾く……。| |~矢吹真吾|紅丸さん! 例の招待状、届いたっすよ!| |~二階堂紅丸|おう、サンキュ!| |~〇×|……例の招待状って、何のことですか?| |~二階堂紅丸|×ちゃん……。| |~矢吹真吾|えっと、これは紅丸さんの好きなアーティストの&br;ライブの招待状でして!| |~〇×|こんな時にライブですか……?| |~矢吹真吾|う!| |~二階堂紅丸|その言い訳は下手すぎるだろ。| |~矢吹真吾|だって、招待状といえばライブくらいしか思いつかなくて。&br;あとKOFとか……。| |~二階堂紅丸|はー……ったく、しょうがねぇな。| |~二階堂紅丸|実は,KOF開催者たちのパーティーが今夜開かれる。&br;きっとナギとヨミも来るだろう。| |~〇×|ナギさんとヨミさんが来る……。&br;そのパーティーの招待状ですか?| |~二階堂紅丸|ああ。| |~矢吹真吾|ナギとヨミのこと……あと、〇さんの力についても&br;可能な限り調べてきますね!| |~〇×|……私も連れて行ってください!| |~矢吹真吾|ええ!?| |~〇×|だって、私のことですよね……?&br;それなのにただ待ってるだけなんてできません。| |~二階堂紅丸|ダメだ。| |~二階堂紅丸|パーティーと言えば聞こえはいいが、KOF開催者たちが&br;一堂に会するんだ。何が起こるかわからない。| |~二階堂紅丸|そんなところに可愛いキミを連れていける訳がないだろ。| |~〇×|でも……もしかしたら開催者のみなさんも&br;ビリーさんたちみたいに洗脳されてるかもしれません。| |~〇×|私なら、みなさんを元に戻すことができます!&br;お願いです、連れて行ってください。| |~二階堂紅丸|……キミに危険な思いをして欲しくないんだ。&br;わかってくれ。| |~〇×|紅丸さんが優しいのはわかっています。&br;でも……嫌な予感がするんです。| |~二階堂紅丸|………………。| |~〇×|紅丸さん。| |~二階堂紅丸|……わかったよ、キミには敵わないな。| |~〇×|あ、ありがとうございます!| |~二階堂紅丸|その代わり、俺の傍を決して離れないこと。&br;あと、今日中にパーティーのマナーなどを覚えること。| |~二階堂紅丸|いいね?| |~〇×|はい!| |~二階堂紅丸|着いたよ、入って。| |~〇×|え……ここですか?| |~〇×|(た、高そうなお店……。)| |~二階堂紅丸|そうだよ。&br;はい、どうぞ……プリンセス。| |~〇×|あ、ありがとうございます。| |~〇×|うわぁ……素敵なお店!| |~オーナー|いらっしゃいませ。&br;嬉しいお言葉、ありがとうございます。| |~二階堂紅丸|オーナー、久しぶり。&br;電話で話した通り、この子を変身させて欲しいんだ。| |~オーナー|パーティーに出席できるように、でしたわね。&br;お任せ下さいませ。| |~二階堂紅丸|サンキュ。さあ、プリンセス。&br;俺はここで待っているから、行っておいで。| |~〇×|は、はい……。| |~〇×|(こんなに素敵なドレス、初めて着た……。&br;メイクもアクセサリーも……自分じゃないみたい。)| |~オーナー|はい、できましたわ。&br;二階堂様にお披露目と参りましょう。| |~〇×|は、はい……。| |~〇×|(緊張する……。)| |~〇×|べ、紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|…………。| |~〇×|紅丸さん?| |~二階堂紅丸|あ……いや、あまりにもキレイで言葉を失っていたよ。&br;どこの花の妖精かと思ってしまったくらいさ。| |~〇×|そ、そんな……。| |~二階堂紅丸|ありがとう、オーナー。&br;じゃあ、行こうか。| |~〇×|あの、この服は……!?| |~二階堂紅丸|俺からキミへのプレゼント。&br;さ、他にもしなければいけないことは山積みだ。| |~二階堂紅丸|次は食事のマナーを学びに、レストランだよ。| |~〇×|は、はい……! よろしくお願いします!| |~二階堂紅丸|食事のマナー、立ち振る舞いは、こんなもんで大丈夫だろ。&br;あとは……社交ダンスだな。| |~〇×|社交ダンス……ですか?| |~二階堂紅丸|パーティーに出席するなら、絶対に踊れないと。&br;俺が教えるから、その通りに動いてみて。| |~〇×|は、はい……!| |~〇×|(社交ダンスなんて、初めて……。私にできるのかな。)| |~二階堂紅丸|右手は繋いで、左手は俺の肩において。&br;まずは基本のステップから。| |~二階堂紅丸|ワン・ツー、ワン・ツー……っ!| |~〇×|す、すみません!| |~二階堂紅丸|ノープロブレム。初めの頃は誰でも相手の足を踏むものだ。&br;気にせず、もう一度いくよ。| |~二階堂紅丸|ワン・ツー、ワン・ツー……そう、その調子。| |~〇×|(足を踏まないように、よく見て……。)| |~二階堂紅丸|(今日一日、みっちりしごいたけど一度も弱音を吐かない。&br;この子、なかなかいい根性してるな。)| #endregion //---------- **12話 [#story_12] #region(ネタバレ注意) |>|パーティー会場・夜――| |~〇×|うわぁ……すごい人ですね。| |~二階堂紅丸|あっちは政治家の方、向こうは教育評論家。&br;芸能人も結構いるね。| |~〇×|みなさん、KOF開催に関わっている人なんですか?| |~二階堂紅丸|どうなんだろうね。&br;どこまで絡んでいるか全ては把握できていないからな。| |~二階堂紅丸|まあ、ここにいる大半の人が関わっていると&br;思っておけばいい。| |~〇×|はい……。| |~二階堂紅丸|ナギたちは、ホールにはいないみたいだな。&br;控え室か……?| |~〇×|本当に来るんでしょうか……?| |~二階堂紅丸|必ず来るさ。&br;お、今かかった曲……練習した曲じゃないか。| |~二階堂紅丸|おいで。&br;せっかくだから踊ろう。| |~〇×|ええ!?| |~二階堂紅丸|大丈夫、俺がリードしてあげるよ。| |~〇×|で、でも……目立ったりして大丈夫ですか?| |~二階堂紅丸|踊っている人も結構いるし、そんな目立たないよ。| |~〇×|(紅丸さんが目立つのに……&br;ほら、ダンススペースに入っただけで女性が色めいてる。)| |~二階堂紅丸|おいで、俺のプリンセス。| |~〇×|は、はい……。| |~〇×|(ちょっと、心地いいかも。)| |~二階堂紅丸|お、いい感じに踊れてるじゃないか。&br;一日でここまでとは、×ちゃんは筋がいいな。| |~〇×|そんなこと……。&br;紅丸さんの教え方が上手だからですよ。| |~二階堂紅丸|謙遜しなくていいのに。&br;ま、そこがキミの美点でもあるけどな。| |~〇×|(あ……気を抜くと、紅丸さんの足を踏んづけちゃいそう。)| |~二階堂紅丸|顔を上げて。| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|失敗を恐れず、楽しめばいいんだよ。&br;ほら、俺に花のような笑顔を見せて。| |~〇×|……はい。| |~ヨミ|あれは……ナギ様に報告しなければ。| |~二階堂紅丸|曲が終わるよ、はい……決めポーズ。| |~二階堂紅丸|パーフェクトだったよ、×ちゃん。| |~〇×|ありがとうございます!| |~女性A|次は私と踊ってくださらない?| |~女性B|いいえ、私よ!| |~二階堂紅丸|ごめんね、可憐な子猫ちゃんたち。&br;今日は彼女以外と踊らないって決めてるんだ。| |~女性A|そんな……。| |~二階堂紅丸|さ、あっちでドリンクをもらおうか。&br;おいで、俺のプリンセス。| |~〇×|はい。| |~ヨミ|その前に、こちらへ来てもらおうか。| |~〇×|……ヨミさん!| |~二階堂紅丸|来たな。&br;×ちゃん、こっちだ!| |~ヨミの手下たち|無駄だ。| |~ヨミ|エリート格闘家の貴様でも、一般人が多くいるこの場で&br;自由に戦うことはできない。| |~ヨミ|ついてこい。| |~〇×|……紅丸さん。| |~二階堂紅丸|心配するな、これも計画通りさ。| |~ナギ|愛しのヒメ。僕に会いに来てくれたんだね。| |~〇×|……あなたにいろいろと聞きたい事があってきました。| |~ナギ|僕に? 何かな。何でも聞いてくれていいよ。&br;答えられる範囲で答えてあげる。| |~〇×|(……この人の瞳を見ると、引き込まれそうで怖い。)| |~二階堂紅丸|(……×ちゃん、怖いのか。)| |~二階堂紅丸|大丈夫、俺がついてる。| |~〇×|……はい。| |~ナギ|……へぇ、僕の前で何見せつけてくれてるのかな?&br;別にどうとも思わないけど、気分が良いものでもないね。| |~ナギ|ヨミ。| |~ヨミ|はっ!| |~ナギ|気分が変わった。&br;君は僕がつれて帰るよ、本当の君の居場所へね。| |~〇×|な、何!?| |~二階堂紅丸|×ちゃん、絶対に俺の傍を離れるなよ。| |~ヨミ|この人数相手に勝てると思っているのか。| |~二階堂紅丸|勝てるね。&br;正義は必ず勝つって言葉、知らないのか?| |~ヨミ|正義だと……? 笑わせるな。&br;本当の正義は、ナギ様だ。| |~二階堂紅丸|やれやれ……困ったちゃんだな?| |~ヨミ|やれ!| |~ヨミ手下たち(原文ママ)|はっ!| |~二階堂紅丸|いくら集まったところで、ザコはザコだよ。&br;幻影ハリケーン!| |~二階堂紅丸|×ちゃん、今だ。逃げるぞ!| |~〇×|は、はい……!| |~ヨミ|くっ……追え!| |~ヨミ手下たち|はっ!| |~二階堂紅丸|ここまでくれば大丈夫だろ。| |~〇×|すみません。危険を冒して連れて行ってもらったのに、&br;何も聞き出せなくて……。| |~二階堂紅丸|いや、×ちゃんは悪くないよ。&br;俺たちの計算が甘かっただけのことさ。| |~二階堂紅丸|…………。| |~ヨミ|…………。| |~〇×|紅丸さん?| |~二階堂紅丸|いや、何でも無い。&br;今日はもう遅い。早く部屋へ戻っておやすみ。| |~〇×|あれ……何だか急に眠気が……?&br;紅丸さんも早めに休んでくださいね。| |~二階堂紅丸|ああ。| |~二階堂紅丸|……道場のみんなに何かしたのはお前か。| |~ヨミ|少し眠ってもらっただけだ。| |~二階堂紅丸|(催眠性のある霧か……。)| |~ヨミ|お前も限界に近いんじゃないか?| |~二階堂紅丸|……何が目的だ。| |~ヨミ|ナギ様の伝言だ。&br;彼女にこれ以上近づくことは神が許さない。| |~ヨミ|忠告を守らなければ、&br;彼女を洗脳し神の元へ強制的に連れ戻す。| |~二階堂紅丸|なぜ彼女にそこまでこだわる。&br;あの力のせいなのか?| |~ヨミ|お前が知る必要はない。| |~二階堂紅丸|何っ?| |~ヨミ|お前の体は限界だ。&br;ゾウでも一分も持たない睡眠薬を含ませた霧だ。| |~二階堂紅丸|はっ、すげーもんを使うな。| |~ヨミ|伝えたからな。| |~二階堂紅丸|ま……待て……く、くそ。眠気が……。&br;くそっ……た……れ…………。| |~矢吹真吾|紅丸さん、どこで寝てるんすか!&br;早く起きてくださいよ。| |~二階堂紅丸|!?| |~二階堂紅丸|俺……眠ってしまっていたのか。| |~矢吹真吾|昨日のパーティー、どうだったんですか?&br;みんなで待ってたはずなのに、気づいたら眠ってしまってて。| |~二階堂紅丸|…………。| |~矢吹真吾|紅丸さん?| |~二階堂紅丸|いや、何でも無い。| |~草薙京|真吾、紅丸……こんなところにいたのか。| |~〇×|朝食ができましたので、先に食べちゃってください。| |~矢吹真吾|今、行きます!| |~二階堂紅丸|俺はあとでいい。| |~〇×|紅丸さん……。| |~草薙京|昨日、何かあったのか?| |~〇×|……私のせいで、何も聞き出すことができなくて。&br;紅丸さん、呆れてしまったんだと思います。| |~草薙京|そのくらいのことで呆れるようなヤツだとは&br;思えないけどな……。| |~〇×|……でも…………。| |~草薙京|…………。| |~矢吹真吾|大丈夫ですよ。&br;外で寝たりなんかしたから、きっと腹でも冷やしたんですよ!| |~草薙京|……それはないだろ。| |~矢吹真吾|え、ないですかね!?| |~〇×|(元気づけようとしてくれたのかな……。)| |~〇×|冷めないうちにご飯にしましょうか。&br;たくさん食べてくださいね。| |~〇×|(あとで紅丸さんに改めて謝ろう……。&br;お礼も言えてないままだし……。ちゃんと話さなきゃ。)| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *3章 [#chapter_3] **13話 [#story_13] #region(ネタバレ注意) |>|K'とマキシマの本拠地――| |~〇×|(紅丸さん、表面上は普通に接してくれるけど&br;どこか素っ気ない気がする……。)| |~〇×|(ふたりでパーティーに行ってからずっと……。&br;私、何かしたのかな……。)| |~〇×|(山崎さんに情報料を払ってくれたお礼は&br;ちゃんと言わないと……。)| |~〇×|あの、紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|何かな?| |~〇×|山崎さんの件……。&br;その、情報を買ってくださりありがとうございます。| |~二階堂紅丸|別に君だけの為じゃない。&br;話はそれだけかな?| |~〇×|え……あ、はい。| |~二階堂紅丸|なら、もう行くな。| |~〇×|…………。| |~〇×|(やっぱりどこか変……。&br;いつもならもっとかまってくれるのに……寂しい。))| |~二階堂紅丸|…………。| |~二階堂紅丸|(こうするしかないんだ。)| |~二階堂紅丸|はぁ……。| |~矢吹真吾|こんなの紅丸さんらしくないです!| |~二階堂紅丸|し、真吾!?| |~矢吹真吾|なーんか変ですよ、紅丸さん。&br;〇さんと無理に距離を取っているように見えるっす。| |~二階堂紅丸|…………。| |~二階堂紅丸|んなことねぇよ。| |~矢吹真吾|そんなことありますよ!&br;〇さん、寂しそうな顔してましたよ。| |~矢吹真吾|紅丸さんを怒らせたのかもって、心配もしてました!| |~二階堂紅丸|×ちゃんが……?| |~矢吹真吾|みんなといる時は変わらないけど、&br;ふたりきりになったら急によそよそしくなるって……。| |~矢吹真吾|何かあったんなら、話してあげて欲しいっす。&br;あんな〇さん、見ているだけで辛いです。| |~二階堂紅丸|…………そうか。| |~矢吹真吾|紅丸さん!&br;おれには話せなくても、〇さんには……。| |~二階堂紅丸|バーカ。&br;大事だからこそ、話せないこともあんだよ。| |~二階堂紅丸|お子ちゃまの真吾にはわからねぇだろうけどな。| |~矢吹真吾|はいいいい!?&br;〇さんを泣かす紅丸さんに言われたくないっす!| |~二階堂紅丸|……そうだな。| |~矢吹真吾|こんなの紅丸さんらしくないですよ。&br;本当に何があったんですか?| |~二階堂紅丸|こっちにはこっちの事情があるんだ。&br;放っておいてくれ!| |~矢吹真吾|……紅丸さん!| |~矢吹真吾|こんなの……おかしいっすよ。| #endregion //---------- **14話 [#story_14] #region(ネタバレ注意) |>|大阪市立博物館前――| |~〇×|(自信ない……なんて、言ってられないよね。&br;がんばらなくちゃ……。)| |~マキシマ|よし、行くか。| |~〇×|あ……その前にお手洗いに行ってきていいですか?| |~マキシマ|ああ、もちろんだ。| |~〇×|ありがとうございます。すぐ戻ります。| |~〇×|(はぁ……緊張する。でも、がんばらないと……。)| |~草薙京|よぉ。| |~〇×|えっ!? あ……待ってくれてたんですか?| |~草薙京|そういう訳じゃねぇよ。&br;オレもこっちに用事があっただけだ。| |~〇×|そうでしたか。&br;でも、待っていてくれてありがとうございます。| |~草薙京|だから、ちげぇって言ってんだろ。| |~〇×|ふふ。| |~〇×|(そんなこと言って、京さんが優しいのは知ってる……。)| |~草薙京|緊張は大丈夫か?| |~〇×|あ……はい。| |~草薙京|じゃあ、行くか。| |~〇×|はい、頑張りますね!| |~〇×|(やっぱり、優しいなぁ……。&br;パーティーに行く前は紅丸さんも優しかったのに……。)| |~〇×|(ううん、今はこんなこと考えないの!)| |~二階堂紅丸|楽しそうに何を話してるのかな?| |~草薙京|紅丸……。| |~二階堂紅丸|ふたりきりで何してたのか、気になってさ。ん?| |~草薙京|お前なぁ……。| |~〇×|紅丸さん……この間からずっと変です……。| |~二階堂紅丸|え?| |~草薙京|あ? ×?| |~〇×|私のこと避けたり、急にこんなこと言ったり……。&br;私は……前みたいにいっぱい紅丸さんとお喋りしたいです……!| |~〇×|本当のことを言ってください!| |~二階堂紅丸|なっ!?| |~草薙京|お前のことだから、なんかヘマして、×を避けてんだろ。&br;違うか?| |~二階堂紅丸|ヘマって……俺がそんなことするとでも?| |~草薙京|相手が相手だからな。人の弱みを突くのが上手い連中だ。&br;お前が弱みを握られてもおかしくねぇ。| |~二階堂紅丸|…………。| |~〇×|私は、紅丸さんが何の理由もなく&br;こんなことをするとは思えません。| |~〇×|お願いです……本当の、本当のことを&br;教えてください。| |~二階堂紅丸|…………。| |~二階堂紅丸|ハハッ……。| |~二階堂紅丸|……参ったな。| |~二階堂紅丸|そうだよ、京の言う通り……ナギとヨミに脅されていた。&br;これ以上、×ちゃんに近づくなとね。| |~草薙京|……予想通りだな。| |~二階堂紅丸|ハハ、全てお見通しかよ。| |~草薙京|お前がこいつにつらく当たるなんぞ、&br;そんな理由がなけりゃあり得ねぇからな。| |~二階堂紅丸|……まあな。| |~二階堂紅丸|お前はライバルだが……。&br;恋の方までライバルじゃなくて良かったよ。| |~草薙京|ハッ、寝言は寝て言え。| |~草薙京|10分やる。&br;大仕事の前に、ふたりで話して誤解を解いとくんだな。| |~二階堂紅丸|サンキュ。| |~草薙京|おー。| |~二階堂紅丸|…………えっと、ごめんな?| |~〇×|本当ですよ。&br;私がどれだけ寂しかったか……わかってますか?| |~二階堂紅丸|俺も寂しかった。| |~〇×|紅丸さん、もっと私を信用してください。&br;ナギさんにもヨミさんにも、私……負けませんから!| |~二階堂紅丸|……!&br;ハハハ、本当……キミには敵わないな。| |~二階堂紅丸|……抱きしめてもいいかい?| |~〇×|そ、そういうこと……聞かないでください。| |~二階堂紅丸|そう? なら、もっと大胆なこともしちゃおうかな。| |~〇×|え!?| |~二階堂紅丸|……したいけど、今はおでこで我慢しとくよ。| |~二階堂紅丸|大好きだよ。| |~〇×|私も……好きです。| |~二階堂紅丸|行こう、×ちゃんをみんなが待ってる。| |~〇×|はい!| #endregion //---------- **15話 [#story_15] #region(ネタバレ注意) |>|コレクター邸宅からの帰り道――| |~二階堂紅丸|この辺りまでくれば大丈夫だろう。&br;少し休憩しよう。| |~〇×|はい……。| |~〇×|(お姫様抱っこでここまで運んでもらっちゃった……。&br;一休憩(原文ママ)したら、自分の足で歩かなきゃ。)| |~二階堂紅丸|水しかないけど、飲んで。| |~〇×|ありがとうございます、いただきます。| |~二階堂紅丸|熱はないみたいだな。体調はどうだい?| |~〇×|大丈夫です。| |~〇×|(まだ少し目眩がするけど、&br;少し休めばきっと大丈夫になるはず……。)| |~二階堂紅丸|ダメ、本当のことを言って。| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|顔色、まだ悪いぜ……。&br;リョウじゃないが、やせ我慢はダメだ。| |~二階堂紅丸|それに……俺の前で無理して欲しくない。&br;俺には甘えていい。だろ?| |~〇×|……はい。| |~二階堂紅丸|よし……! 俺によりかかってちょっと休みな。&br;座っているより、少しは楽だろ?| |~〇×|あ、ありがとうございます……。| |~〇×|(でも、ドキドキして、休まるどころじゃないかも……。&br;だけど……幸せ。)| |~〇×|(紅丸さんの心臓の音がする……。&br;すごく、心地いい……。)| |~二階堂紅丸|キレイな星空だな。| |~〇×|本当ですね。| |~二階堂紅丸|今日の星は、特別キレイに見えるな……。&br;キミと見ているから、かな?| |~〇×|え……?| |~二階堂紅丸|大切な人と一緒にいるだけで、景色が輝いて見える。&br;そう聞いたことはあったけど……まさか本当だったとはね。| |~〇×|紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|キミのかわいいつぶらな瞳にも、&br;今日の星空が特別美しく映っていたらいいな。| |~〇×|……そうですね、今まで見た中で一番かもしれません。| |~二階堂紅丸|…………幸せだなぁ。| |~二階堂紅丸|なんて、こんな非常時に不謹慎かな。| |~〇×|……不謹慎かもしれませんが、私も幸せです。&br;ずっと、こうしていたいくらい。| |~二階堂紅丸|こうしていると、世界にふたりだけしかいないようだね。| |~〇×|ふふ、そうですね。| |~二階堂紅丸|ごめんな。| |~〇×|え? どうして謝るんですか?| |~二階堂紅丸|本当は代わってあげたいのに……何もできない。&br;そんな自分が時々憎らしくてしょうがないんだ。| |~〇×|そんなことないですよ……。&br;紅丸さんは、私にいろいろなことをしてくれています。| |~〇×|これから一緒にしたいこともたくさんあります。&br;世界が平和になったら……。| |~〇×|(その時、私は生きているのかな……。&br;紅丸さんとこうやって一緒にいられるのかな……。)| |~〇×|私……死にたくない。紅丸さんとずっと一緒にいたいです。&br;おじいちゃんとおばあちゃんになるまで、ずっと……!| |~二階堂紅丸|……やっと本音を言ってくれたね。| |~二階堂紅丸|ずっと強がって弱音を吐かなかったから、&br;心配だったんだ。| |~二階堂紅丸|こんなに女性のことを心配したのは、初めてだよ。&br;同時に、尊敬もしてるけどね。| |~〇×|そ、尊敬なんて……。| |~二階堂紅丸|だって、自分の好きな女性が世界の為にがんばってるんだよ?&br;誇りに思わない訳がないでしょ。| |~二階堂紅丸|でも、頑張りすぎないで。&br;たまには、ゆっくり翼を休めて……俺の女神様。| |~二階堂紅丸|キミは死なないよ。&br;絶対に……死なせない。| |~〇×|紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|一緒におじいちゃんおばあちゃんになるんでしょ?| |~〇×|……はい!| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *4章 [#chapter_4] **16話 [#story_16] #region(ネタバレ注意) |>|飛行場――| |~二階堂紅丸|×ちゃん、あーんしな。| |~〇×|ちょっと紅丸さん……みなさんが見てます!| |~二階堂紅丸|見せつけてやればいいさ。&br;こうやってふたりきりでのんびりできるのも今のうちだぜ。| |~〇×|ふ、ふたりきりじゃないです……!| |~草薙京|はぁ……非常時に何やってんだ。| |~テリー・ボガード|ハハ、仲が良くていいことじゃないか。| |~矢吹真吾|目のやり場にちょっと困りますけど、&br;本当……仲直りできて良かったです。| |~テリー・ボガード|仲直り?&br;ふたりはケンカでもしてたのか?| |~矢吹真吾|ケンカというか……ちょっと、事情があって。| |~テリー・ボガード|事情?| |~アンディ・ボガード|兄さん、プライベートにあまり首を突っ込んじゃダメだよ。| |~アンディ・ボガード|それに、人の恋路を邪魔する者は&br;馬に蹴られて死んでしまうとも言うし……。| |~リョウ・サカザキ|お、都都逸(どどいつ)か。よく知っているな。| |~テリー・ボガード|おいおい、邪魔とは聞き捨てならないな。&br;邪魔どころか、応援してるっていうのにな。| |~矢吹真吾|おれも、応援というか……。&br;〇さんには幸せになって欲しいです!| |~アンディ・ボガード|そうだね。僕も同感だよ。| |~草薙京|アイツには相当なもんを背負わしちまってるしな。| |~テリー・ボガード|ああ……。&br;で、事情ってなんだ?| |~矢吹真吾|それは、ヨミさんが紅丸さんを脅して……。| |~草薙京|おい、真吾。| |~矢吹真吾|はっ! しまったぁ!&br;テリーさん、その聞き方ズルイですよ!| |~テリー・ボガード|ハハ、どうしても気になってな。スマンスマン。| |~アンディ・ボガード|だけど、ヨミに脅されていたとは……?| |~ヨミ|……あの件か。| |~ヨミ|二階堂紅丸、あの時はすまなかった。| |~二階堂紅丸|ん?| |~二階堂紅丸|ああ……あの時な。&br;どうした急に謝るなんて、お前らしくないぜ。| |~ヨミ|皆が〇×の幸せを願う中、&br;俺のやったことが、ふたりを不仲にしたと聞いてな。| |~ヨミ|あの時の俺の行動はナギ様の命令によるもの……。&br;後悔はしていない。| |~ヨミ|だが、間違っていたのかも知れない……そう思った。&br;だから謝罪した。| |~二階堂紅丸|ふーん?&br;お前も少しずつ変わってきたという訳か。| |~二階堂紅丸|だけど、別にお前のせいじゃないぜ。&br;俺の弱さが原因でこの子に寂しい想いをさせてしまった。| |~二階堂紅丸|これからはずっと傍にいて、この子を守るぜ。| |~〇×|私も……。私も紅丸さんを守ります。| |~二階堂紅丸|ハハッ、俺のプリンセスは時々強くて困る。&br;守るのはナイトの役目と決まっているだろ?| |~〇×|でも……私にしかできない守り方もありますから。| |~二階堂紅丸|……ああ、そうだな。| |~二階堂紅丸|×ちゃん。&br;全てが終わったら、俺だけのものになってくれるか?| |~〇×|えっ……!&br;えっと……あの……!!| |~テリー・ボガード|俺たちは何も聞いてないぜ! なあ、アンディ。| |~アンディ・ボガード|なんだか急に耳が遠くなったような……。| |~矢吹真吾|おれは急に眠気が……ぐーぐー。| |~ビリー・カーン|なんだ、その気の遣い方は……。茶番かよ。| |~〇×|え、えっと……。| |~二階堂紅丸|答えてくれないのか?| |~〇×|えっ……あ、あの……。よろしくお願いします。| |~二階堂紅丸|×ちゃん!| |~〇×|わああ、紅丸さん!&br;みなさんが見てますってば……!| #endregion //---------- **17話 [#story_17] #region(ネタバレ注意) |>|コテージ・夕方――| |~〇×|(みなさん、おなかすいてるよね……。&br;何か作れるものは……。)| |~二階堂紅丸|×ちゃん、やっと見つけた。&br;そこで何をやってるのかな?| |~〇×|あ、紅丸さん……。何か食事をと思いまして……。| |~二階堂紅丸|こんなフラフラで料理なんてダメに決まってるだろ。&br;はい、×ちゃんはそこに座って。| |~二階堂紅丸|何か食べたいものは?| |~〇×|うーん……。&br;やはりみなさんガッツリしたものがいいのでしょうか?| |~二階堂紅丸|他のヤツじゃなくて、キミが食べたいものを聞いてるんだよ。| |~〇×|私の……?| |~二階堂紅丸|そうだよ。&br;少しでも食べられそうなものはあるかい?| |~〇×|食欲があまりなくて……。| |~二階堂紅丸|果物でも何でもいい。少しでも食べて欲しい。&br;あ、りんごがある。食べられそうなら剥くけど、どうかな。| |~〇×|りんごなら、食べられそうです。| |~二階堂紅丸|良かった。&br;ただ剥くより、すりおろした方がいいかい?| |~〇×|そこまでしなくても大丈夫です。&br;ふふ……紅丸さんってば、過保護ですね。| |~二階堂紅丸|キミに対してだけはね。&br;こんな自分、生まれて初めてだよ。| |~二階堂紅丸|……怪我はない?| |~〇×|はい、大丈夫です。紅丸さんが守ってくれましたから……。| |~二階堂紅丸|守れるのは、暴徒からだけだ。&br;ケガレからはキミを守れていない……。| |~〇×|紅丸さん……。&br;浄化は私の我が儘でしてるだけですから。| |~二階堂紅丸|我が儘なんかじゃないさ。&br;そうしないと、人が……世界が傷つくからそうしてるだけだろ。| |~二階堂紅丸|本当は、どこか安全な場所に閉じ込めてしまいたい……。&br;でも世界の浄化は、キミにしかできないことだもんな。| |~〇×|その気持ちだけでもうれしいです。| |~二階堂紅丸|心の底から代わりたいと思ったのは、初めてだよ。&br;本当、キミといると初めてのこと尽くしだな。| |~二階堂紅丸|だけど、そういうこと込みでキミのことを好きになったんだ。&br;ずっと傍にいて、サポートするよ。| |~〇×|紅丸さん……ありがとうございます。| |~二階堂紅丸|×ちゃん、こっちにおいで?| |~〇×|え……は、はい。| |~二階堂紅丸|…………こうしてると、落ち着くな。| |~二階堂紅丸|一つだけ、お願いしてもいいかい?| |~〇×|お願い……ですか?| |~二階堂紅丸|ああ。| |~二階堂紅丸|ナギを止める為に、命を使うのだけはやめて欲しい。&br;その為なら何でもする。| |~二階堂紅丸|どんな強敵だって倒してみせる。&br;だから……キミの命だけは! 頼む……。| |~〇×|紅丸さん……苦しいですよ。| |~二階堂紅丸|わ、悪い!| |~〇×|……きっと大丈夫です。&br;だって、約束したじゃないですか。| |~〇×|全てが終わったら…………ですよね?| |~〇×|それに、私だって紅丸さんと一緒に&br;おじいちゃんおばあちゃんになりたいです。| |~二階堂紅丸|……ああ、そうだったな。| |~〇×|(本当は怖い……。でも、今は死ぬことが怖いんじゃない。&br;この人と……紅丸さんと離れ離れになることが怖いの。)| |~〇×|大好きです、紅丸さん……。| #endregion //---------- **18話 [#story_18] #region(ネタバレ注意) |>|コテージ・夜――| |~二階堂紅丸|×ちゃん、体調はどうかな?| |~〇×|さっき少し食べたからか、だいぶいい感じです。| |~二階堂紅丸|良かった……。&br;少し出掛けるんだけど、付き合ってもらえるかな?| |~〇×|お出かけですか?| |~二階堂紅丸|ああ、キミも買っておきたいものがあるだろ?&br;それと……何か体に良いものでも食べてこよう。| |~二階堂紅丸|少しでも食べて、英気を養っておかないとね。| |>|沖縄のレストラン――| |~二階堂紅丸|買い忘れはないね?| |~〇×|はい、大丈夫です。&br;その……全部出してもらっちゃって、いいんでしょうか。| |~二階堂紅丸|もちろん。キミは、俺のお姫様なんだから……。&br;そんなことを気にする必要はないよ。| |~〇×|で、でも……何だか申し訳なくて。| |~二階堂紅丸|笑顔を見せてくれたら、それでいいよ。&br;俺にとって、キミの笑った顔が一番のご褒美なんだからな。| |~〇×|紅丸さん……。| |~二階堂紅丸|さて、ディナーにしよう。&br;沖縄に来たら必ず来る、お気に入りのレストランなんだ。| |~二階堂紅丸|食べられそうなものを適当に見繕って頼んでみたから、&br;好きなものを食べて。| |~〇×|ありがとうございます。| |~〇×|(わぁ、どれもおいしそう。)| |~〇×|……ん、おいしいです。すごく優しい味付けですね。| |~二階堂紅丸|だろ?&br;×ちゃんも気に入ってくれると思ったんだ。| |~〇×|(幸せだなぁ……。&br;明日から決戦が始まるなんて……まるで嘘みたい。)| |~二階堂紅丸|こっちのもおいしいから食べてみて。| |~〇×|はい。| |~〇×|……え?| |~二階堂紅丸|あーん……だろ?&br;ここなら、誰の目も気にすることない。| |~〇×|えっと……い、いただきます。| |~二階堂紅丸|ふふ、かわいい。おいしいかな?| |~〇×|は、はい……。| |~〇×|(恥ずかしくて、味どころじゃないけど……。&br;でも、すごく幸せ……。)| |~二階堂紅丸|顔色、少し良くなったね。でも無理はしちゃダメだよ。| |~〇×|気をつけます……。| |~二階堂紅丸|ん、よろしい。| |~二階堂紅丸|全てが終わって、東京に戻れたら……キミとデートがしたいな。&br;行きたいところとか、してみたいデートってある?| |~〇×|……笑いません?| |~二階堂紅丸|大好きな子の希望を笑う訳がないだろ。| |~〇×|じゃあ、その……ベタなんですけど。| |~二階堂紅丸|うん。| |~〇×|待ち合わせ先に彼が来てて、待った? って聞いたら、&br;今きたとこって応えてくれて……。| |~〇×|そのあと、当たり前のように手を繋いで歩きたいです。&br;時々、腕をぎゅって抱きしめたりしながら……。| |~二階堂紅丸|任せておいて。二人の理想のデートをしよう。| |~二階堂紅丸|待ち合わせは渋谷駅かな。| |~二階堂紅丸|お昼前に待ち合わせて、俺が時間前に着いてて……。&br;キミは時間ギリギリに駆けてくる。| |~二階堂紅丸|そんな小走りのキミをかわいいなぁ……と眺めながら、&br;俺はキミの到着を待つんだ。| |~〇×|ふふ、楽しみです。| |~二階堂紅丸|俺もだ。&br;おっと……そろそろ戻って休まないとな。| |~〇×|……はい。| |~二階堂紅丸|ん? 名残惜しい?| |~〇×|少し……。&br;でも、終わったらきっと……また来られますよね。| |~二階堂紅丸|ああ、いつでも連れてきてあげるよ| |~二階堂紅丸|…………。| |~〇×|紅丸さん?| |~二階堂紅丸|いや、何でも無いよ。行こう。| #endregion //---------- **19話 [#story_19] #region(ネタバレ注意) |>|コテージ・寝室――| |~〇×|(……私、どうして、泣いて……。)| |~〇×|え……?| |~二階堂紅丸|大丈夫? 悪い夢でも見たのかい?| |~〇×|紅丸さん……? どうして私の部屋に?| |~二階堂紅丸|覚えていないのか?&br;夜中にすごい高熱が出て、大騒ぎだったんだぜ?| |~二階堂紅丸|医者を呼んで、診てもらって……。&br;もう体はだるくないかい?| |~〇×|はい……。| |~二階堂紅丸|熱も下がったみたいだな、良かったよ。| |~〇×|夢を見ていたみたいです……。| |~二階堂紅丸|どんな夢?| |~〇×|昔のこと、ううん……前世の夢だと思います。| |~〇×|夢を見て……全て思い出しました。| |~〇×|ナギさんを残して逝ってしまったナミさんの気持ちも、&br;ナギさんを愛していたナミさんの気持ちも……。| |~二階堂紅丸|…………それって……。| |~〇×|心配しないでください。&br;今の私は〇×。ナミさんではありませんから。| |~二階堂紅丸|なんだ……驚かすなよな。| |~〇×|すみません。| |~〇×|夢の中で、私はナミさんでした。&br;ナミさんはこの世界を愛していました……。| |~〇×|ナギさんにも同じように、&br;この世界を愛して欲しいと願っていました。| |~〇×|それをナギさんも分かっていたはずなのに……。&br;長い年月の孤独がナギさんを変えてしまったんだと思います。| |~〇×|数千年もの間、ずっとひとりなんて……。&br;そんなの私なら耐えられない。| |~〇×|紅丸さんと離れて数千年も生きるなんて……。&br;私だって狂っちゃうと思います。| |~二階堂紅丸|そう言われればそうかも知れないけど……。&br;それでも世界を滅ぼしていい理由にはならないぜ。| |~〇×|はい、それはその通りです……。| |~〇×|ナギさんに同情している訳じゃないんですけど……。| |~〇×|きっとナギさんにもナギさんの事情があるんだなって、&br;夢を見ながら思ったんです。| |~〇×|ナギさんだって、救われなきゃいけないって。&br;それが……きっと私の、ナミさんの責任なんだって。| |~二階堂紅丸|責任……運命ってことか。| |~〇×|はい……。| |~〇×|(紅丸さん、嫌な気持ちでいっぱいだよね。)| |~〇×|(私なら……紅丸さんが他の女性のことをこんな風に言ったら&br;すごく嫌だもの。)| |~〇×|(嫌われても、仕方ない……。)| |~二階堂紅丸|……それで、キミはどうしたいんだい?| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|どうしたいのか、言ってごらん。&br;俺にできることなら協力するぜ。| |~〇×|紅丸さん……!| |~二階堂紅丸|ん? どうしたんだ?| |~〇×|(この人はすごい……。&br;すごく心が広くて、優しくて……。)| |~〇×|(私の想像の上をずっと歩いてくれる人。)| |~〇×|ナミさんの気持ちがわかった今、なおさら思うんです。&br;ナギさんを止めないといけないって。| |~〇×|世界を変えるなんて……。&br;そんなこと、ナミさんは望んでいないのだから。| |~〇×|お願いです。一緒にナギさんを止めてください!&br;できれば……彼も救う形で。| |~二階堂紅丸|…………わかった。&br;だが、最優先は世界を救うこと、そしてキミの命だ。| |~二階堂紅丸|ナギを救えるかどうかはわからない。&br;だけど――| |~二階堂紅丸|プリンセスの頼みは、叶えてあげるのがナイトの務めさ。| |~〇×|……ありがとうございます!| |~二階堂紅丸|×ちゃん、約束は覚えているよな?| |~〇×|はい、もちろんです。&br;忘れるわけがありませんよ。| |~二階堂紅丸|それなら、オーケーだよ。| |~二階堂紅丸|行こうか。&br;ナギを救いに……そして、俺たちの幸せな未来の為にね。| |~〇×|はいっ!| #endregion //---------- **エピローグ [#story_20] #region(ネタバレ注意) |>|道場――| |~〇×|ああ、待ち合わせに遅れちゃう!| |~〇×|(なかなか服が決まらなくて、遅くなっちゃった!)| |~〇×|行ってきます!| |~草薙京|ああ? アイツ、確か紅丸と出かけるんだろ?&br;同じ家に住んでるのに、何でわざわざ待ち合わせしてんだ?| |~矢吹真吾|初めてのデートだから、待ち合わせがしたかったそうですよ。| |~草薙京|はぁ……?&br;よくわからんが……幸せそうでなによりだな。| |~矢吹真吾|はい、おれも同感です!| |>|渋谷駅――| |~女性A|わぁ、紅丸じゃない。&br;今日はひとりなの? 私と遊ぼうよ~。| |~二階堂紅丸|ん……?| |~女性A|私のこと、覚えてないのー?| |~二階堂紅丸|ああ、前にクラブで会った子かな?| |~二階堂紅丸|ごめんね、キミの気持ちは嬉しいけど……。| |~〇×|(ああ、時間ギリギリ!)| |~二階堂紅丸|あっ……×ちゃん!| |~〇×|紅丸さん……!| |~二階堂紅丸|ハハ、本当に時間通り。&br;キミに会いたくて死にそうだったよ!| |~〇×|死にそうって……朝も会いましたよ!?| |~二階堂紅丸|キミに会えない一分一秒がどれだけ長く感じるか……。&br;教えてあげないといけないみたいだね。| |~女性A|だ、誰……その女……。| |~二階堂紅丸|今日は俺だけのお姫様とデートなんだ。| |~女性A|はぁ!?| |~二階堂紅丸|さあ、行こうか!| |~〇×|はい。| |~女性A|うそでしょ~……。| |~二階堂紅丸|あ、ちょっと待った。何か忘れてないか?| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|待った? って聞くんだろ?| |~〇×|あ……そうでした!&br;えっと……ま、待ちました?| |~二階堂紅丸|今来たところだよ、×ちゃん。| |~〇×|ふふふ。| |~二階堂紅丸|さ、今日は何がしたい?&br;キミがしたいことなら、何だって叶えてあげるよ。| |~〇×|え、えっと……。| |~二階堂紅丸|ん? 聞こえないよ。| |~〇×|その……手を繋いで歩きたいです。| |~二階堂紅丸|…………。| |~二階堂紅丸|今日は敬語禁止。デートだからね。| |~〇×|ええっ!?| |~二階堂紅丸|可愛い恋人に敬語を使われると寂しいなって思ってさ。ほら。| |~〇×|手を繋いで、歩きたい……な?| |~二階堂紅丸|ハハッ、よくできました!| |~二階堂紅丸|あ、そっちの手も貸して。| |~〇×|え? 左手も……?| |~二階堂紅丸|うん、ちょっと待ってね。| |~二階堂紅丸|……はい、できた。| &attachref(アルバム /サイドスチル/SSスチル_二階堂紅丸.jpg,zoom,,259x200); |~〇×|……ゆ、指輪?| |~二階堂紅丸|本当は沖縄のレストランで渡したかったんだけど、&br;渡しそこねてさ。| |~〇×|(左手の薬指……こ、これってまさか……。)| |~二階堂紅丸|おじいちゃんおばあちゃんになっても&br;ずっと一緒にいてくれるかな?| |~〇×|は、はい……!| |~二階堂紅丸|こら、敬語禁止だって。| |~〇×|ん!? 鼻摘ままないでくだひゃい!| |~二階堂紅丸|ハハ、本当に……キミといるのは永遠に飽きそうにないな。| |~〇×|……私は永遠にドキドキしてそうです。| |~二階堂紅丸|お望みなら……ずっとドキドキさせてあげるよ。| |~〇×|し、心臓が持たない……!| |~二階堂紅丸|そう? キミの心臓だから大切にしてあげないとな。| |~〇×|ふふ、お手柔らかにお願いします!| |~二階堂紅丸|はーい、また敬語~。&br;次から敬語で話すたびにキスしようかな。| |~〇×|ええっ!?| |~二階堂紅丸|あははっ、冗談だよ。| |~〇×|もう、紅丸さんったら。| |~二階堂紅丸|…………ありがとな。| |~〇×|え?| |~二階堂紅丸|生きていてくれて……。&br;そして、俺を選んでくれて……嬉しいよ。| |~〇×|私の方こそ……選んでくれてありがとうございます。&br;これからもよろしくおね……じゃなくて、よろしくね!| |~二階堂紅丸|ああ、よろしくな!| #endregion &aname(top){上へ戻る}; データ参照プラグイン 入力支援ツールを表示 ▼参照先ページ選択:データを表示 元データの書式(インラインプラグイン)を継承する