サイドストーリー /1st/八神庵 の編集 Top > サイドストーリー > 1st > 八神庵 **1話 [#story_01] #region(ネタバレ注意) |~〇×|はぁ、はぁ……。&br;ここまで来ればさすがにもう大丈夫、だよね……。| |~〇×|(みんな、無事だといいけど……。あの八神さんって人&br;京さんを探し回っているみたいだった。)| |~〇×|(京さんの知り合いだってバレたらまずいことになりそう。&br;あの人にも見つからないようにみんなと合流しないと!)| |~暴徒A|グアアアアッ!| |~〇×|……っ!| |~〇×|(このままじゃ見つかっちゃう!&br;暴徒たちがいない方に逃げないと!)| |~暴徒B|グアアアッ!| |~〇×|え、こっちにもいたなんて……。| |~暴徒B|グアアアアッ!| |~〇×|きゃあっ!?| |~〇×|(あれ? 痛くない……。)| |~八神庵|ふん。雑魚め。| |~〇×|(や、八神さん!&br;どうしよう、逃げなくちゃ……。)| |~暴徒C|グルルルァッ!| |~〇×|きゃっ!| |~八神庵|邪魔だ!| |~暴徒C|ウギャアアッ!| |~〇×|(一撃で! つ、強い……!)| |~八神庵|女、まだ逃げてなかったとは。&br;よほど死にたいようだな。| |~〇×|し、死にたくなんてありません!| |~八神庵|なら大人しく……去れ!| |~〇×|……っ!| |~暴徒A|グルアアアアッ!| |~〇×|(えっ?&br;私の後ろの暴徒を倒してくれたの……?)| |~八神庵|聞こえなかったのか?&br;戦えないのなら……消えろと言っている!| |~〇×|は、はい!| |~〇×|(八神さんの言う通りだ。私に戦う力は無い……。&br;今は、早くみんなに合流しないと……。)| |~〇×|(……!&br;あ、あの人武器を持ってる!)| |~〇×|八神さん! 危ない! 後ろ!| |~八神庵|……チッ。| |~〇×|八神さん! 怪我を!?| |~八神庵|……これぐらい大したことはない。| |~〇×|血が……!早く手当てしないと!| |~八神庵|邪魔だ! 消えろ!| |~〇×|で、でも……。| |~八神庵|目障りだ。&br;消えぬというなら貴様の息の根を止める!| |~〇×|……っ!| |~暴徒C|グガァァァ!| |~八神庵|どこを見ている!&br;貴様の相手は俺だ!| |~暴徒C|ガッ!| |~〇×|(は、早く逃げなきゃ……!)| |~〇×|はぁ、はぁ……。| |~〇×|(あの人、私のことを庇ってくれた?&br;京さんを「殺す」なんて言うから怖い人だと思ったのに……。)| |~〇×|(怪我、してたよね……。それにあの人数の暴徒……。&br;大丈夫かな?)| |~〇×|(怖い人だけど……庇ってくれたのかな……。)| |~〇×|(今度会ったらちゃんとお礼を言おう。)| |~〇×|あ、もうこんな時間……。&br;そろそろ夕飯の買出しに行こうかな。| |~〇×|(こうして、いつものように夕飯の買い出しに行って&br;……まるで会場での暴動が嘘みたいに思える。)| |~〇×|(……あれ以来、暴徒にも合わないし、何も起こっていない。&br;KOFGの会場に近づかなければ安心なのかな……?)| |~〇×|(暴動のこと、それからナギさんたちのことを気にして、&br;いつも、誰かが買い物にはついてきてくれているけど……。)| |~〇×|(すぐ近所のスーパーだし、申し訳ないんだよね。&br;みなさん試合前でトレーニングしたいはずだし。)| |~〇×|(道場を覗いてみて、まだ稽古中なら&br;ささっと行ってきちゃおうかな。)| |~矢吹真吾|草薙さん、もう一度手合わせお願いしたいっす!| |~草薙京|何度やっても結果は変わらねえぜ?| |~〇×|(うん、みんな稽古に集中しているみたい。&br;よーし、出かけよう。)| |~〇×|(今日のご飯は、鶏のから揚げと、アジのフライと、&br;シーザーサラダと……。)| |~〇×|(あ、あとお醤油も買ってこないと。)| |~八神庵|…………。| |~猫|にゃあ| |~〇×|(あそこにいるのって……もしかして、八神さん?&br;猫ちゃんにごはんをあげてるみたいだけど……。)| |~〇×|あの……。| |~八神庵|誰だ。| |~〇×|私です。&br;あの、KOFの会場で助けてもらった……。| |~八神庵|助けた……?| |~〇×|あの……腕の怪我は大丈夫ですか?| |~八神庵|ああ、あの時の女か……。&br;この程度、たいしたことはない。| |~〇×|すみません、私のせいで……。| |~八神庵|貴様を庇ったわけではない。| |~〇×|で、でも!| |~八神庵|しつこいぞ、女。これ以上俺に付きまとうな。| |~〇×|待ってください……!| |~〇×|(あれ? 今ここの角を曲がったはずなのにどこにもいない。&br;どこに行っちゃったんだろう。)| |~〇×|(それにしてもあの怪我、結構深そうだったのに&br;ちゃんと手当をしていないみたいだった……。)| |~〇×|(八神さんはああ言っていたけど、あの時、私が逃げているのを&br;確認していたから、暴徒にやられたように見えた。)| |~〇×|(……やっぱり薬と包帯だけでも渡したいな。&br;ええと、薬局は……。)| |~〇×|あ、もうこんな時間……!&br;早く帰らなくちゃ!| |~矢吹真吾|あ! 〇さん!&br;どこに行ってたんですか! おれ、心配したんですよ!| |~矢吹真吾|草薙さーん! 紅丸さーん!&br;〇さん帰ってきましたよー!| |~二階堂紅丸|×ちゃん!&br;どこに行ってたの? 探してたんだよ!| |~二階堂紅丸|キミに何かあったら、俺は涙で溺れてしまうよ。&br;……キミが無事に帰ってきてくれてよかった。| |~矢吹真吾|〇さん、本当に心配してたんですよ~!| |~〇×|みんな、心配してくれたんだね……。ごめんなさい。&br;今度から気をつけます。| |~草薙京|…………。| |~〇×|あの、京さん……?| |~草薙京|なんで一人で出かけた?| |~〇×|そ、それは……いつも着いて来てくれて申し訳ないですし、&br;みなさんにご迷惑をかけてしまうんじゃないかと思って……。| |~草薙京|あんた、今の状況わかってんのかよ!?| |~〇×|ご、ごめんなさい……。| |~二階堂紅丸|おい京、そんなに怒鳴るなよ。&br;×ちゃんが心配だったのはわかるけどさ。| |~草薙京|はぁ?&br;誰が心配なんて……。| |~二階堂紅丸|へぇ? 顔に書いてあるけどな&br;可愛い可愛い×ちゃんが心配です、って。| |~草薙京|お前じゃあるまいし、んなこと考えてるわけねぇだろ。&br;オレはただ、何かあったら迎えに行くのが面倒だからな。| |~二階堂紅丸|へ~、そうか。じゃあ、×ちゃんのピンチには&br;俺が颯爽と駆けつけちゃっていいんだな?| |~草薙京|好きにしろ。| |~〇×|あ……。&br;すみません、私のせいで……。| |~二階堂紅丸|まあ、放っておいていいんじゃないかな。| |~〇×|でも……。| |~二階堂紅丸|キミに対して怒っているわけじゃないよ。| |~二階堂紅丸|あんなこと言いつつ結構真剣に探してたし、&br;そもそもキミがいないことに一番最初に気付いたのは京だし。| |~二階堂紅丸|あえて言うなら、何もできない&br;この状況にいらついてるんじゃないかな。| |~二階堂紅丸|ああ見えて結構真面目なんだよ。&br;許してやってくれる?| |~〇×|許すなんてそんな……。&br;私が勝手な行動をとってしまったんです。| |~〇×|買い物とか、出かけるたびにみなさんについてきてもらうのは&br;申し訳なく感じてしまって……。| |~二階堂紅丸|それに息も詰まっちゃうよね。&br;折を見て俺からも京に話してみるよ。でも、当面は……。| |~矢吹真吾|出かける時、誰かに声をかけるのはどうですかね?&br;黙っていなくなると、心配しちゃいますから……。| |~二階堂紅丸|まあ、それしかないか。| |~矢吹真吾|八神さんも、いつ草薙さんの居場所を探し当てて&br;襲ってこないとも限らないですし。| |~〇×|(八神さんか……。)| |~〇×|その、八神さんってどういう人なんでしょうか……?&br;京さんを殺す、って言ったりなんだか怖くて……。| |~二階堂紅丸|あれ? ×ちゃん、気になるの?&br;……もしかして、ああいうヤローがタイプとか?| |~〇×|い、いえ、そういうわけじゃないんですが。&br;ちゃんと聞いたことがなかったなと思って……。| |~矢吹真吾|八神さんはずっと草薙さんのことをつけ狙っているんすよ。| |~〇×|つけ狙う? どうして?| |~矢吹真吾|八神さんは草薙さんの命を狙ってるんす!&br;とにかく凶暴で怖い人なんすよ! 話もまったく通じないし!| |~〇×|八神さんはどうして京さんをそこまで……。| |~二階堂紅丸|ただ憎んでいるってだけなら、むしろ話は簡単なんだが……。&br;一言では言い表せない深い因縁があの二人にはあるんだよ。| |~〇×|(紅丸さん、とても複雑な顔をしている……。&br;これ以上、深くは聞かない方がいいのかも。)| |~二階堂紅丸|まあ、とにかく八神にはあまり関わらない方がいい。&br;×ちゃんが傷つくだけだよ。| |~二階堂紅丸|心も――体もね。| |~〇×|……分かりました。| |~〇×|(凶暴で話の通じない人か……。&br;確かに京さんに向ける視線は震えるほど恐ろしかった。)| |~〇×|(言い方も突き放すような感じだったし、不愛想だけど……。&br;でも、なんとなく、そこまで悪い人には思えないんだよね。)| |~〇×|(猫ちゃんにごはんあげてたくらいだし……。)| |~矢吹真吾|う……、すみません。〇さんが戻ってきたら、&br;安心してお腹すいちゃったみたいです……。| |~〇×|あっ! もう夕飯の支度の時間……!| |~矢吹真吾|〇さん、今日の夕飯は何ですか?| |~〇×|あ、鶏のから揚げとアジフライと、&br;シーザーサラダを作ろうかなって。| |~二階堂紅丸|ふふっ。楽しみだな。&br;×ちゃんのご飯は美味しいからね。| |~〇×|(……色々考えても仕方ないよね。&br;また会えたら、今度こそお礼を言おう。)| #endregion //---------- ページの更新 ビジュアル編集モードに切り替える &aname(top); 解放条件 #region |~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他| |1話|13|1|| |2話|13|5|| |3話|13|10|| |4話|13|15|| |5話|21|10|| |6話|21|24|| |7話|22|28|| |8話|28|32|| |9話|28|36|| |10話|29|40|| |11話|33|43|| |12話|35|46|| |13話|41|49|| |14話|46|52|| |15話|47|55|| |16話|48|58|| |17話|50|61|| |18話|52|64|| |19話|60|67|| |エピローグ||70|メインストーリー4章29話読了| |~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他| #endregion *1章 [#chapter_1] **1話 [#story_01] #region(ネタバレ注意) |~〇×|はぁ、はぁ……。&br;ここまで来ればさすがにもう大丈夫、だよね……。| |~〇×|(みんな、無事だといいけど……。あの八神さんって人&br;京さんを探し回っているみたいだった。)| |~〇×|(京さんの知り合いだってバレたらまずいことになりそう。&br;あの人にも見つからないようにみんなと合流しないと!)| |~暴徒A|グアアアアッ!| |~〇×|……っ!| |~〇×|(このままじゃ見つかっちゃう!&br;暴徒たちがいない方に逃げないと!)| |~暴徒B|グアアアッ!| |~〇×|え、こっちにもいたなんて……。| |~暴徒B|グアアアアッ!| |~〇×|きゃあっ!?| |~〇×|(あれ? 痛くない……。)| |~八神庵|ふん。雑魚め。| |~〇×|(や、八神さん!&br;どうしよう、逃げなくちゃ……。)| |~暴徒C|グルルルァッ!| |~〇×|きゃっ!| |~八神庵|邪魔だ!| |~暴徒C|ウギャアアッ!| |~〇×|(一撃で! つ、強い……!)| |~八神庵|女、まだ逃げてなかったとは。&br;よほど死にたいようだな。| |~〇×|し、死にたくなんてありません!| |~八神庵|なら大人しく……去れ!| |~〇×|……っ!| |~暴徒A|グルアアアアッ!| |~〇×|(えっ?&br;私の後ろの暴徒を倒してくれたの……?)| |~八神庵|聞こえなかったのか?&br;戦えないのなら……消えろと言っている!| |~〇×|は、はい!| |~〇×|(八神さんの言う通りだ。私に戦う力は無い……。&br;今は、早くみんなに合流しないと……。)| |~〇×|(……!&br;あ、あの人武器を持ってる!)| |~〇×|八神さん! 危ない! 後ろ!| |~八神庵|……チッ。| |~〇×|八神さん! 怪我を!?| |~八神庵|……これぐらい大したことはない。| |~〇×|血が……!早く手当てしないと!| |~八神庵|邪魔だ! 消えろ!| |~〇×|で、でも……。| |~八神庵|目障りだ。&br;消えぬというなら貴様の息の根を止める!| |~〇×|……っ!| |~暴徒C|グガァァァ!| |~八神庵|どこを見ている!&br;貴様の相手は俺だ!| |~暴徒C|ガッ!| |~〇×|(は、早く逃げなきゃ……!)| |~〇×|はぁ、はぁ……。| |~〇×|(あの人、私のことを庇ってくれた?&br;京さんを「殺す」なんて言うから怖い人だと思ったのに……。)| |~〇×|(怪我、してたよね……。それにあの人数の暴徒……。&br;大丈夫かな?)| |~〇×|(怖い人だけど……庇ってくれたのかな……。)| |~〇×|(今度会ったらちゃんとお礼を言おう。)| |~〇×|あ、もうこんな時間……。&br;そろそろ夕飯の買出しに行こうかな。| |~〇×|(こうして、いつものように夕飯の買い出しに行って&br;……まるで会場での暴動が嘘みたいに思える。)| |~〇×|(……あれ以来、暴徒にも合わないし、何も起こっていない。&br;KOFGの会場に近づかなければ安心なのかな……?)| |~〇×|(暴動のこと、それからナギさんたちのことを気にして、&br;いつも、誰かが買い物にはついてきてくれているけど……。)| |~〇×|(すぐ近所のスーパーだし、申し訳ないんだよね。&br;みなさん試合前でトレーニングしたいはずだし。)| |~〇×|(道場を覗いてみて、まだ稽古中なら&br;ささっと行ってきちゃおうかな。)| |~矢吹真吾|草薙さん、もう一度手合わせお願いしたいっす!| |~草薙京|何度やっても結果は変わらねえぜ?| |~〇×|(うん、みんな稽古に集中しているみたい。&br;よーし、出かけよう。)| |~〇×|(今日のご飯は、鶏のから揚げと、アジのフライと、&br;シーザーサラダと……。)| |~〇×|(あ、あとお醤油も買ってこないと。)| |~八神庵|…………。| |~猫|にゃあ| |~〇×|(あそこにいるのって……もしかして、八神さん?&br;猫ちゃんにごはんをあげてるみたいだけど……。)| |~〇×|あの……。| |~八神庵|誰だ。| |~〇×|私です。&br;あの、KOFの会場で助けてもらった……。| |~八神庵|助けた……?| |~〇×|あの……腕の怪我は大丈夫ですか?| |~八神庵|ああ、あの時の女か……。&br;この程度、たいしたことはない。| |~〇×|すみません、私のせいで……。| |~八神庵|貴様を庇ったわけではない。| |~〇×|で、でも!| |~八神庵|しつこいぞ、女。これ以上俺に付きまとうな。| |~〇×|待ってください……!| |~〇×|(あれ? 今ここの角を曲がったはずなのにどこにもいない。&br;どこに行っちゃったんだろう。)| |~〇×|(それにしてもあの怪我、結構深そうだったのに&br;ちゃんと手当をしていないみたいだった……。)| |~〇×|(八神さんはああ言っていたけど、あの時、私が逃げているのを&br;確認していたから、暴徒にやられたように見えた。)| |~〇×|(……やっぱり薬と包帯だけでも渡したいな。&br;ええと、薬局は……。)| |~〇×|あ、もうこんな時間……!&br;早く帰らなくちゃ!| |~矢吹真吾|あ! 〇さん!&br;どこに行ってたんですか! おれ、心配したんですよ!| |~矢吹真吾|草薙さーん! 紅丸さーん!&br;〇さん帰ってきましたよー!| |~二階堂紅丸|×ちゃん!&br;どこに行ってたの? 探してたんだよ!| |~二階堂紅丸|キミに何かあったら、俺は涙で溺れてしまうよ。&br;……キミが無事に帰ってきてくれてよかった。| |~矢吹真吾|〇さん、本当に心配してたんですよ~!| |~〇×|みんな、心配してくれたんだね……。ごめんなさい。&br;今度から気をつけます。| |~草薙京|…………。| |~〇×|あの、京さん……?| |~草薙京|なんで一人で出かけた?| |~〇×|そ、それは……いつも着いて来てくれて申し訳ないですし、&br;みなさんにご迷惑をかけてしまうんじゃないかと思って……。| |~草薙京|あんた、今の状況わかってんのかよ!?| |~〇×|ご、ごめんなさい……。| |~二階堂紅丸|おい京、そんなに怒鳴るなよ。&br;×ちゃんが心配だったのはわかるけどさ。| |~草薙京|はぁ?&br;誰が心配なんて……。| |~二階堂紅丸|へぇ? 顔に書いてあるけどな&br;可愛い可愛い×ちゃんが心配です、って。| |~草薙京|お前じゃあるまいし、んなこと考えてるわけねぇだろ。&br;オレはただ、何かあったら迎えに行くのが面倒だからな。| |~二階堂紅丸|へ~、そうか。じゃあ、×ちゃんのピンチには&br;俺が颯爽と駆けつけちゃっていいんだな?| |~草薙京|好きにしろ。| |~〇×|あ……。&br;すみません、私のせいで……。| |~二階堂紅丸|まあ、放っておいていいんじゃないかな。| |~〇×|でも……。| |~二階堂紅丸|キミに対して怒っているわけじゃないよ。| |~二階堂紅丸|あんなこと言いつつ結構真剣に探してたし、&br;そもそもキミがいないことに一番最初に気付いたのは京だし。| |~二階堂紅丸|あえて言うなら、何もできない&br;この状況にいらついてるんじゃないかな。| |~二階堂紅丸|ああ見えて結構真面目なんだよ。&br;許してやってくれる?| |~〇×|許すなんてそんな……。&br;私が勝手な行動をとってしまったんです。| |~〇×|買い物とか、出かけるたびにみなさんについてきてもらうのは&br;申し訳なく感じてしまって……。| |~二階堂紅丸|それに息も詰まっちゃうよね。&br;折を見て俺からも京に話してみるよ。でも、当面は……。| |~矢吹真吾|出かける時、誰かに声をかけるのはどうですかね?&br;黙っていなくなると、心配しちゃいますから……。| |~二階堂紅丸|まあ、それしかないか。| |~矢吹真吾|八神さんも、いつ草薙さんの居場所を探し当てて&br;襲ってこないとも限らないですし。| |~〇×|(八神さんか……。)| |~〇×|その、八神さんってどういう人なんでしょうか……?&br;京さんを殺す、って言ったりなんだか怖くて……。| |~二階堂紅丸|あれ? ×ちゃん、気になるの?&br;……もしかして、ああいうヤローがタイプとか?| |~〇×|い、いえ、そういうわけじゃないんですが。&br;ちゃんと聞いたことがなかったなと思って……。| |~矢吹真吾|八神さんはずっと草薙さんのことをつけ狙っているんすよ。| |~〇×|つけ狙う? どうして?| |~矢吹真吾|八神さんは草薙さんの命を狙ってるんす!&br;とにかく凶暴で怖い人なんすよ! 話もまったく通じないし!| |~〇×|八神さんはどうして京さんをそこまで……。| |~二階堂紅丸|ただ憎んでいるってだけなら、むしろ話は簡単なんだが……。&br;一言では言い表せない深い因縁があの二人にはあるんだよ。| |~〇×|(紅丸さん、とても複雑な顔をしている……。&br;これ以上、深くは聞かない方がいいのかも。)| |~二階堂紅丸|まあ、とにかく八神にはあまり関わらない方がいい。&br;×ちゃんが傷つくだけだよ。| |~二階堂紅丸|心も――体もね。| |~〇×|……分かりました。| |~〇×|(凶暴で話の通じない人か……。&br;確かに京さんに向ける視線は震えるほど恐ろしかった。)| |~〇×|(言い方も突き放すような感じだったし、不愛想だけど……。&br;でも、なんとなく、そこまで悪い人には思えないんだよね。)| |~〇×|(猫ちゃんにごはんあげてたくらいだし……。)| |~矢吹真吾|う……、すみません。〇さんが戻ってきたら、&br;安心してお腹すいちゃったみたいです……。| |~〇×|あっ! もう夕飯の支度の時間……!| |~矢吹真吾|〇さん、今日の夕飯は何ですか?| |~〇×|あ、鶏のから揚げとアジフライと、&br;シーザーサラダを作ろうかなって。| |~二階堂紅丸|ふふっ。楽しみだな。&br;×ちゃんのご飯は美味しいからね。| |~〇×|(……色々考えても仕方ないよね。&br;また会えたら、今度こそお礼を言おう。)| #endregion //---------- **2話 [#story_02] #region(ネタバレ注意) |~大門五郎|もうこんな時間か。&br;今日はこれくらいにしておいたらどうだ。| |~矢吹真吾|いや、草薙さん!&br;もう一度手合わせお願いしたいです!| |~二階堂紅丸|はぁっ……。スイッチ入っちゃったか。&br;京、責任取って相手してやれよ。| |~草薙京|断る。| |~矢吹真吾|そんな~! 草薙さ~ん!| |~草薙京|まとわりつくな!| |~大門五郎|ふーむ、仕方ない。それなら、クールダウンをするために&br;辺りを走ってきたらどうだ?| |~矢吹真吾|それ……いいっすね!&br;行きましょう、草薙さん!| |~草薙京|なんでだよ。オレはパス。| |~矢吹真吾|そんなぁ~! 草薙さんも行きましょうよ~!&br;紅丸さんは行きますよね!?| |~二階堂紅丸|俺も遠慮しておこうかな。&br;セットが崩れるしさ。それに、このあと出かけるんだ。| |~矢吹真吾|うぅ……。仕方ないっすね……。| |~矢吹真吾|じゃあ一人で行ってきます! うおおおおー!| |~草薙京|ったく、素直っつーかバカっつーか。| |~二階堂紅丸|さてと、じゃあ俺もこれで。| |~〇×|あ、みなさん、どこか行かれるんですか?| |~二階堂紅丸|うん、トレーニングも終わったしね。&br;何か用事でもあったかな?| |~〇×|買い物に行って来ようと思うんですが、&br;何か必要なものはあるかな、と思いまして。| |~二階堂紅丸|俺は大丈夫かな。| |~二階堂紅丸|……って、買い物に行くの、&br;いつもより随分早い時間だね?| |~〇×|はい。明るいうちに行った方がみなさん&br;心配しないかなと思いまして。| |~二階堂紅丸|うん。ヤツらがいつ襲ってくるかはわからないけど、&br;昼なら人目もあるからめったなことはできないだろうし。| |~二階堂紅丸|いい判断だと思うよ。一人で行かせるのは心配だから、&br;できればついていってあげたいんだけど……。| |~二階堂紅丸|あいにく、今日は用があるんだ、ごめんね。&br;次は必ず、キミを守るナイトになるから。| |~〇×|ええと、京さんは……。| |~草薙京|オレも特にねえ、と言いたいところだが、&br;ちょうど暇してたし、ついていってやる。| |~草薙京|で、何を買うって?| |~〇×|そうですね……。京さんがついて来てくれるなら&br;みりんやお味噌とか、まとめて買おうかと思います。| |~草薙京|おいおい、真吾じゃあるまいしオレは荷物持ちじゃねえぞ。| |~〇×|真吾くんは確かに何でも持ってくれますね。| |~草薙京|アイツは素直なのが取り柄だからな。| |~〇×|ふふっ。&br;京さんと真吾くんはとても信頼し合っているんですね。| |~草薙京|は? どこをどう聞いたらそうなるんだよ| |~〇×|(京さんは認めないだろうけど、真吾くんの話をしている時&br;とても楽しそうなんだよね。)| |~〇×|(格闘家って、家族や友達じゃなくても、お互い信頼し合っていて&br;……そういう関係ってなんだか羨ましいな。)| |~〇×|(でも、同じ格闘家なのに八神さんはどうして&br;京さんを殺す、なんて物騒なこと……。)| |~草薙京|ん?&br;難しい顔してどうした?| |~〇×|あ……格闘家のみなさん……テリーさんたちも&br;戦っていない時は仲間、という感じなのに――| |~〇×|どうして八神さんだけ、京さんに対して&br;ああいう感じなんでしょうか……。| |~草薙京|あ? 八神?| |~〇×|う……すみません、話すのが嫌だったら良いんですが……。| |~草薙京|別に嫌ってわけじゃねえよ。&br;八神……あいつは、見たまんまだぜ。| |~〇×|(見たまま……誰も寄せ付けないような雰囲気で、&br;すごく怖かった…….京さんは怖くないのかな?)| |~草薙京|ん?| |~〇×|ええと、その……真吾くんと紅丸さんから&br;少し八神さんのことを聞いてしまって……。| |~〇×|京さんはその……怖くないのですか?&br;ああやって付け狙われて……。| |~草薙京|あー……なんつーか……。| |~草薙京|まあ、あんま気にすんな。&br;あれがヤツのライフワークみたいなもんだ。| |~〇×|でも……「殺す」なんて言われてるのに……。| |~草薙京|めんどくせえなとは思うけどな。&br;そんなの気にしてたらKOFなんて出られねえよ。| |~〇×|(なんだかあまり話したくなさそうだな。&br;これ以上は聞かないでおこう。)| |~〇×|ありがとうございました。&br;……そうだ、京さん、今日の夕飯は何がいいですか?| |~草薙京|お、リクエストしていいのか?&br;それなら――| |~〇×|(えっ? あれは……)| |~草薙京|八神!| |~八神庵|京!&br;貴様を殺す!| |~草薙京|チッ……めんどくせぇのに見つかったな。&br;八神。こんな町中でやろうってのか?| |~八神庵|場所など関係ない。&br;今日こそ決着をつける!| |~草薙京|聞く耳持たねえ、か。| |~草薙京|×。こいつはなんとかするから、一度道場に戻ってろ。| |~〇×|で、でも……。| |~八神庵|貴様は……。| |~草薙京|八神!&br;てめぇの相手はオレだろ!| |~草薙京|×。オレが注意を引きつける。| |~〇×|でも、京さんは……?| |~草薙京|ここで相手にすると面倒だ。&br;適当なところを回って撒く。| |~八神庵|何をコソコソ話している!&br;いくぞ!| |~草薙京|いいぜ! 相手してやるよ!&br;……オラッ!| |~八神庵|グッ……!| |~草薙京|どうした? なまってんじゃねえか?| |~八神庵|おのれ……!| |~〇×|(八神さん、右腕を庇ってる?)| |~草薙京|八神、オレについてこい!&br;もっと広いフィールドの方がお互いやりやすいだろ?| |~八神庵|いいだろう。| |~〇×|あっ、京さん……!| |~〇×|(私を逃がすために、移動してくれたんだ。&br;今のうち道場まで帰ろう!)| |~〇×|(それにしても、八神さん、すごく怖かった……。&br;やっぱり、助けてもらったっていうのは私の勘違い……?)| |~草薙京|はぁー……疲れたぜ……。| |~〇×|京さん! 怪我はありませんか?| |~草薙京|ああ。なんともねえよ。| |~〇×|よかった……。&br;あの、八神さんはどうなったんですか?| |~草薙京|あ? 撒いてきた。&br;いや、しつこかったのなんのって……。| |~草薙京|あいつ、いつものスーパーの方に戻っていったみたいだな。&br;あの辺に隠れ家があるのかもしれねえ。| |~〇×|八神さんの隠れ家が、あのスーパーの近くに?| |~草薙京|多分な……今日のであんたのこともバレしまったみたいだから&br;あのスーパー行くときは気をつけろよ。| |~〇×|わ、わかりました。| |~〇×|(あのスーパーの近くに、八神さんの隠れ家があるなら&br;また、会うかもしれないな……。)| |~〇×|(……さっきの八神さんを思い出すと怖いし、京さんの&br;知り合いだってバレた今、どんな態度を取られるか分からない。)| |~〇×|(そう考えると、今度八神さんに会ったとき、&br;どうすればいいんだろう……。)| |~〇×|(……さっきの八神さん、明らかに腕の傷を庇ってた。&br;もしかしたら、あれから悪化したのかもしれない。)| |~〇×|(……手当とか、したのかな。&br;ううん、あんな人のこと、気にする必要ないよね……。)| |~〇×|(でも、本当に私のせいで怪我したとしたら……。)| |~〇×|(……考えすぎても仕方ない! 次見かけたら、&br;お礼を言ってお薬を渡して、終わりにしよう!)| |~〇×|(八神さん、本当にスーパーの近くにいるのかな?)| |~八神庵|…………。| |~〇×|(あ! 本当にいた!)| |~〇×|こ、こんにちは。八神さん。| |~八神庵|貴様は……。| |~八神庵|京はどこにいる。| |~〇×|ええと……京さんは……&br;今日はお留守番です。| |~八神庵|……ならば、用はない。| |~〇×|あ!&br;待ってください!| |~八神庵|……貴様。なぜついてくる。| |~〇×|あなたに用事がなくても私にはあるんです!&br;はい、これ。| |~八神庵|これは、なんだ?| |~〇×|消毒液と包帯です。&br;腕の傷、なんだか治りが遅いようですし……。| |~〇×|化膿しているんじゃないかと思いまして……。&br;ちゃんと消毒しないと……。| |~八神庵|いらん!| |~〇×|あっ、待ってください!| |~〇×|(……いない。&br;逃げられちゃったのかな。)| |~〇×|(もうしつこくしないほうがいいかな……。)| |~〇×|(それにしても、八神さんは、&br;こんな路地裏で何をやっていたんだろう?)| |~猫|にゃー。| |~〇×|え? 猫ちゃん……?| |~猫|にゃー……。| |~〇×|(一生懸命なにかを舐めている……これって、ミルク?&br;……もしかして、八神さんが?)| |~〇×|(京さんに対して「殺す」って言ったり、&br;京さんを見る目はすごく怖かったのに……。)| |~〇×|(猫ちゃんを見る目は優しかった……気がする。)| |~〇×|(やっぱり、KOFの会場でも私のことを助けようと&br;してくれた……?)| |~〇×|(本音をいえば、もう関わりたくない……だけど……。)| |~〇×|(本当はどういう人なのか、確かめたい……明日、&br;あの猫ちゃんがいたところにもう一回行ってみよう。)| #endregion //---------- **3話 [#story_03] #region(ネタバレ注意) |~矢吹真吾|ご馳走様っすー!&br;いやあ、今日の朝ごはんもめっちゃ美味しかったですよ!| |~〇×|ふふ。ありがとう。&br;みんなたくさん食べてくれるから、本当に作り甲斐があるよ。| |~〇×|(よし、このあと片づけをしたらスーパーに行って、&br;猫ちゃんにミルクをあげたのが八神さんなのか確認をしてこよう。)| |~アナウンサー|数日前に暴動騒ぎが起きたKOFの会場で、暴動が&br;起こっているようです。現場のリポーターに繋いでみましょう。| |~リポーター|はい、こちら渋谷です。KOF会場前では、&br;朝から反対派が集まっており、抗議活動を行っています。| |~リポーター|怪我人もすでに数人出ており――| |~二階堂紅丸|まったく。嫌なニュースが続くね。| |~〇×|これまでにこんな風にお客さんが暴れたことはないって&br;言っていましたよね。どうして今回、急にこんなことに……。| |~矢吹真吾|ん~何度考えてもわからないですね。| |~〇×|(こうして毎日みなさんと食卓を囲んでいると&br;平和だなって思うけど、まだ何も解決していないんだな……。)| |~草薙京|考えたってしょうがねえだろ。| |~草薙京|……にしても、やっぱり×、&br;単独行動は辞めた方がいいんじゃねえか。| |~〇×|え? どうしてですか?| |~草薙京|忘れたのかよ。あのナギ、だったか?&br;あいつにご指名されてんだろ。| |~草薙京|それに八神にもオレの連れってことがバレたからな。| |~矢吹真吾|え!? 八神さん?&br;何かあったんですか?| |~草薙京|ああ。買い物に行く途中に襲われてな。| |~矢吹真吾|ええっ……そうなると、〇さんが一人で行動するのは&br;やっぱり心配ですよね……。| |~〇×|(で、でもみなさんがついて来ちゃうと、&br;八神さんのことを調べられなくなっちゃう……。)| |~二階堂紅丸|…………。| |~二階堂紅丸|まあ、気持ちはわかるけどさ。| |~二階堂紅丸|×ちゃんだって幼稚園児じゃないんだから&br;いつも一緒に行動するって言うのはどうなのかな。| |~矢吹真吾|でも……。| |~二階堂紅丸|×ちゃんもお前たちみたいなむさくるしい格闘家が&br;ずっとそばにいたら息が詰まるんじゃない?| |~二階堂紅丸|だいたい、女の子はヤローに知られたくない買い物も多いんだよ。&br;ね、×ちゃん。| |~〇×|(紅丸さん、私が自由に出かけられるように&br;気を遣ってくれてるんだ……話を合わせよう。)| |~〇×|そうですね。&br;化粧品とか洋服とかを見たいと思う日もありますし……。| |~矢吹真吾|なるほどー。確かの女性の買い物は長いですよね。&br;……あ! 悪い意味じゃないですよ!| |~二階堂紅丸|とはいえ、×ちゃんのことが心配って言うのはわかる。&br;だから、出かけるのを絶対、昼間だけにしてもらうとか……。| |~二階堂紅丸|何かあったらすぐに携帯で連絡を取れるようにしておくとか。| |~二階堂紅丸|それでいいなら、すぐに駆けつけられるよう&br;俺が携帯を常に気に掛けておくよ。| |~〇×|ありがとうございます。&br;紅丸さん。| |~二階堂紅丸|……っていうわけで、携帯の番号教えて、×ちゃん♪| |~〇×|ふふふ。いいですよ。| |~草薙京|まぁ、確かにちょっと過保護すぎたか。| |~〇×|いえ、京さんたちの気持ちはとても嬉しかったです。&br;だから、なるべく明るいうちに行動するようにしますね。| |~〇×|(ええと、スーパーの道の脇のこの辺りに……。)| |~猫|にゃー。| |~〇×|こんにちは。今日もここにいたんだね。| |~〇×|(首輪もしていないし、ずいぶん痩せているな……。&br;捨て猫なのかな?)| |~八神庵|……何をしている?| |~〇×|や、八神さん。| |~八神庵|そこをどけ。| |~〇×|(ミルク! やっぱり、八神さんが猫ちゃんにあげていたんだ。&br;しかもちゃんと猫用のミルクで……。)| |~八神庵|……何を見ている。&br;なぜ、ここに来た。| |~〇×|す、すみません。&br;この包帯と消毒薬を、渡そうと思っただけで……。| |~八神庵|何度言わせる。不要だ。| |~〇×|でも、その傷は私を庇ったから……。| |~八神庵|何度も言わせるな。&br;俺には貴様を庇うつもりなど無かった。| |~八神庵|俺は無関係な女を助けるような情は持ち合わせていない。&br;……貴様の勘違いを押し付けられても迷惑なだけだ。| |~〇×|私の勘違い……そうでしょうか?| |~八神庵|何?| |~〇×|八神さんは、京さんを「殺す」と言ったりして&br;怖い人だと思います……。| |~〇×|……だけど、猫ちゃんを助けたり、優しい部分もあって&br;正直よくわからないです。| |~〇×|助けたいという気持ちがなければ、弱っている猫ちゃんに&br;餌をあげ続けるなんてことしない、ですよね……。| |~〇×|八神さんって本当は……どういう人なんですか?| |~八神庵|ふん。これは……ただの気まぐれだ。| |~猫|にゃー。| |~〇×|この子はそうは思っていないみたいですよ?&br;ほら、こんなに八神さんに懐いています。| |~猫|にゃー。| |~八神庵|ふん……。| |~八神庵|俺は、弱いものが嫌いだ。&br;無力なまま朽ち果てていくものが、な。| |~八神庵|……もし、あの会場で貴様を助けていたとしたら、&br;ただ、それだけの理由だ。| |~八神庵|特別な理由など、何もない。&br;……わかったら、去れ。| |~猫|にゃー。| |~八神庵|……懐くな。| |~猫|にゃー。| |~八神庵|…………。&br;じゃれつくな、と言っている。| |~八神庵|いいか、次同じことをしたら貴様を……殺す!| |~猫|にゃー!| |~八神庵|…………。| |~〇×|(……な、なんだか……困ってる?)| |~〇×|(八神さんってあんなに怖かったのに……&br;なんだか、不思議な人だな……。)| |~八神庵|……何を見ている。| |~〇×|す、すみません。&br;仲、いいなと思って……。| |~八神庵|…………。&br;何故今日はそんなにじゃれつく。| |~猫|にゃー……。| |~〇×|(あれ?&br;もしかして……調子が悪い?)| |~猫|……にゃう……。| |~〇×|だ、大丈夫!?| |~〇×|(どうしよう……。&br;もしかして何か変なものでも食べたのかな?)| |~八神庵|…………。| |~〇×|八神さん、&br;早く病院に連れて行きましょう!| |~八神庵|不要だ。| |~〇×|えっ……?| |~八神庵|この小さな生き物の命はここまでだ。&br;ここまで生きたのだから、せめて最後を看取ってやる。| |~八神庵|……生きるものは、必ず死ぬ。&br;その時期が異なるだけだ。| |~〇×|でも……ダメです!&br;まだ助かるかもしれないんですから、諦めるなんてダメです!| |~〇×|絶対、この猫ちゃんは助けます!| |~八神庵|必要ない。| |~〇×|八神さんが行かなくても、&br;私が病院に連れていきますから……!| |~〇×|このままじゃ猫ちゃんが死んでしまうかもしれません!| |~〇×|救えるかもしれないのに、何かできるかもしれないのに、&br;手を伸ばさないなんて……助けないなんて……。| |~〇×|私は、そんなのは嫌です!| |~八神庵|しかし、その猫が持つ宿命がある。&br;それなら、捻じ曲げるな。| |~八神庵|ここで死ぬとしても、その猫の運命だ。&br;受け入れろ。| |~〇×|……嫌です!&br;それが運命だって言うなら、そんな運命、私が変えます!| |~八神庵|……っ!&br;何故だ……。| |~〇×|……だって、この猫ちゃんは、&br;まだ生きたいと思っているから……。| |~八神庵|……何故そんなことがわかる。| |~〇×|さっきから、私に助けを求めるように&br;手を伸ばしています。| |~〇×|だったら、私に助けを求めるのなら、&br;私はその手を取る……それだけです。| |~八神庵|おい、女。待て――| |~〇×|(猫ちゃんはただの食べ過ぎだったみたい……。&br;まだ治療は必要だけど、命に別状は無さそうでよかった。)| |~八神庵|…………。| |~〇×|八神さん! 待っていてくれたんですか。| |~八神庵|ふん。どうなったか結末を見届けようと思っただけだ。| |~猫|にゃー。| |~八神庵|生き延びたか。&br;……ふん、ずいぶんお節介な女に見つかって、運がよかったな。| |~〇×|(八神さん、笑った……?&br;やっぱり、八神さんは……。)| |~暴徒A|グルァアアア!| |~〇×|(っ、こ、こんな時に……!&br;暴徒が!?)| |~〇×|八神さん!&br;この猫ちゃんを連れて逃げてください……!| |~八神庵|何?| |~〇×|私はあの人たちと戦えませんから……。&br;猫ちゃんを守れるのは八神さんだけです。| |~八神庵|……貴様はどうするつもりだ。| |~〇×|……上手く逃げます。| |~〇×|この人たち、私の行く先に現れるような気がするので、&br;どこか人気のない場所に……。| |~八神庵|……貴様の行く先に現れる……だと?| |~暴徒A|グルァアアア!| |~〇×|時間がありません!&br;猫ちゃんの世話をお願いできますか。| |~〇×|静かなところで安静にして、&br;この薬を毎食後一滴ずつ飲ませてあげて……。| |~八神庵|チッ。&br;……こっちだ!| |~〇×|や、八神さん……!?| |~〇×|はぁ、はぁ……。&br;こ、ここは……。| |~〇×|(もしかして、八神さんの隠れ家……?)| |~〇×|どうして、私を……。| |~八神庵|ここならしばらく奴らから姿を隠せる。&br;それだけだ。| |~八神庵|……勘違いするな。その弱き生き物の運の尽きまで&br;付き合ってやろうと思っただけだ。| |~〇×|(つまり、猫ちゃんの世話を&br;してくれるっていうことかな。)| |~〇×|(でも、どうして私までここに……?)| |~八神庵|おい。| |~〇×|は、はい。| |~八神庵|この猫の世話は貴様がしろ。| |~〇×|えっ?| #endregion //---------- **4話 [#story_04] #region(ネタバレ注意) |~八神庵|おい。| |~〇×|は、はい。| |~八神庵|この猫の世話は貴様がしろ。&br;猫を助けた以上、貴様には面倒を見る責務がある。| |~〇×|も、もちろん、そのつもりですが……。| |~八神庵|ならば、いい。猫の寝床くらいは俺が提供する。&br;静かなところで安静にしなければならないんだろう。| |~八神庵|ここにいれば余計な騒音や外敵に苛まれることはない。&br;猫も静養できるだろう。| |~〇×|八神さん……ありがとうございます。| |~八神庵|礼などいらん。&br;それより、猫に薬をやらなくていいのか。| |~〇×|あっ、はい! 注射器を使って、&br;口の横から一滴垂らしてあげて……。| |~猫|にゃー……。| |~〇×|ごめんね、ちょっと我慢しててね。| |~〇×|……これでよし、と。| |~猫|んにゃ…………。| |~〇×|猫ちゃん、疲れてたみたいですね。&br;薬飲んだらすぐ眠っちゃいました。| |~八神庵|そうか。| |~〇×|それじゃあ、次は八神さんの番です。| |~八神庵|……?| |~〇×|八神さん。KOF会場では本当にありがとうございました。| |~八神庵|……まだ言っているのか。&br;あれはたまたま……。| |~〇×|はい。でも、それで私が助かったのも、&br;八神さんが怪我をしたのも事実ですし。| |~〇×|だから、その怪我の治療をさせてほしいんです。| |~八神庵|…………。| |~八神庵|わざわざそんなことを言うために&br;俺の後をつけ回していたのか。| |~〇×|つけ回すって……。| |~八神庵|こんなものはいらないと言っている。| |~〇×|でも、ちゃんと手当をしないと怪我は治りませんよ。&br;せめて消毒だけでもさせてくれませんか?| |~八神庵|……好きにしろ。| |~〇×|はい。好きにします。| |~〇×|(やっぱり、酷い怪我……)| |~〇×|……ごめんなさい。しみますよね?| |~八神庵|……別に。| |~〇×|はい、これで終わりです。&br;えっと、包帯は……。| |~八神庵|自分でやる。| |~〇×|はい、わかりました。| |~八神庵|……くっ。| |~〇×|(八神さん、なんか苦戦しているような……。&br;もしかして、うまく巻けないとか?)| |~〇×|(八神さん、もしかして不器用?&br;ふふふ。意外な一面もあるんだな……ちょっとほっとしたかも。)| |~〇×|貸してください。やりますよ。| |~八神庵|……ああ。| |~〇×|……はい、できました。| |~八神庵|…………。| |~〇×|それじゃあ、私はこれで。| |~〇×|あ、さっきも言いましたけど、猫ちゃんに&br;薬あげてくださいね。毎食後、この薬を注射器で……。| |~八神庵|…………。| |~〇×|(薬をあげるのって結構大変なんだよね……。&br;八神さん、大丈夫かな?)| |~〇×|(え? 今の音ってもしかして……。)| |~〇×|八神さん、お腹がすいているんですか?| |~八神庵|だったらどうだと言うんだ。| |~〇×|(そういえば、この部屋って殺風景だしあまり生活感がないな。&br;台所もないしどうやって、ご飯を食べているんだろう?)| |~〇×|(……どうしよう。なんだか猫ちゃんのことも&br;八神さんのことも放っておけないな……。)| |~〇×|(京さんを殺すって言ったり、猫ちゃんを見捨てようと&br;したけど、八神さんも生活能力がないというか。)| |~〇×|(なんだか、お世話をしたくなるというか……。)| |~〇×|……あの、八神さん。&br;私、これからもここに通ってもいいですか?| |~八神庵|何?| |~〇×|猫ちゃんのお世話はもちろんですが、&br;その、八神さんのことも気になるので……。| |~八神庵|……勝手にしろ。| |~〇×|……はい。勝手にさせてもらいます。&br;それなら、食事も持ってきていいですか?| |~八神庵|飯だと? どういうことだ?| |~〇×|ええと、私、道場でみなさんの分の食事を作っているんです。&br;一人分くらい増えても変わらないかなあって。| |~八神庵|…………。| |~〇×|……あの、迷惑だったらすみません。| |~八神庵|……猫の面倒を見るついでなら、構わん。| |~〇×|……! あ、ありがとうございます。| |~八神庵|用がなければ来るな。| |~〇×|う……。わかりました。&br;それでは、これからよろしくお願いしますね、八神さん。| |~八神庵|ああ。…………。| |~〇×|あ、そういえば名乗ってなかったですね。&br;私の名前は〇×です。| |~八神庵|……ふん。&br;気が向いたら覚えておく。| |~〇×|お待たせしました!&br;夕ごはん出来ましたよー!| |~矢吹真吾|やったー!&br;楽しみにしてたんすよ!| |~二階堂紅丸|へぇ、今日は天ぷらか。&br;本当に色々な料理が作れるんだね。| |~〇×|ふふ。今はネットでいろんなレシピを検索できますからね。| |~矢吹真吾|ネットさまさま! 〇さんさまさまっすね!&br;いっただっきまーす!| |~〇×|(っと、八神さんの分を取り分けておかないと。)| |~〇×|(それにしても、勢いで食事を持っていくって言っちゃったけど&br;夜出かけたら、みなさんとの約束を破ることになっちゃうよね。)| |~〇×|(でも、近所だし。大体、こんなことになる前は通勤で&br;もっと遅い時間に繁華街を通っていたし……。)| |~草薙京|おい、お代わり。| |~〇×|あ、すみません!&br;今持って来ますね。| |~二階堂紅丸|なんか今日のごはん、量が多くない?| |~〇×|え、そうですか!?| |~矢吹真吾|きっとたくさん食べてほしいって言う&br;〇さんの気持ちですよね!| |~〇×|う、うん!&br;そういうこと!| |~二階堂紅丸|へぇ~、そうなんだ。ありがたいな。&br;じゃあ、俺もお代わりもらえる?| |~〇×|はい! 今持って来ます!| |~〇×|(勢いで昨日ああ言ったけど、八神さんに会いに行くって&br;みなさんに申し訳ないな……。)| |~〇×|八神さん?| |~八神庵|……来たか。| |~猫|にゃー。| |~〇×|ふふ。猫ちゃんもすっかり居ついたんですね。| |~八神庵|目の前でチョロチョロ動かれるのもうっとうしいがな。| |~〇×|(態度は相変わらず、か……。)| |~〇×|はい、お待たせしました。&br;食事を持って来ましたよ。| |~八神庵|そうか。| |~〇×|美味しいですか?| |~八神庵|……悪くないな。| |~〇×|お口に合ったならよかったです。&br;ええと、また明日も来るとき持って来ますね。| |~八神庵|…………。| |~〇×|ええと、猫ちゃんにもご飯を食べさせて……。&br;なんだか、猫ちゃんって呼び続けるのも言いづらいですね。| |~〇×|何か名前を付けてあげませんか?| |~八神庵|名前……。| |~〇×|何がいいかなあ……。&br;八神さん、何かいいアイディアありますか?| |~八神庵|……ツァラトゥストラ。| |~〇×|つ……なんですか?| |~八神庵|ツァラトゥストラ。&br;昔どこかで見た本のタイトルだ。| |~〇×|なるほど。とても格好良い名前だと思います!&br;……でも、ちょっと長くて呼びにくいかも。| |~〇×|うーん……そうだ!&br;「つーちゃん」はどうでしょうか?| |~八神庵|……好きにしろ。| |~〇×|ありがとうございます。&br;つーちゃん、ごはんを食べたらお薬を飲もうね。| |~猫|にゃー。| |~ナギ|ふうん、ここが庵の隠れ家か。| |~ヨミ|もう【交渉】を開始されますか?| |~ナギ|ううん、まだやめておくよ。&br;もっといいタイミングがあるだろうから、ね。| |~ヨミ|かしこまりました。| |~ナギ|ふふ。八神庵。&br;君に祝福を授けてあげるよ――| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *2章 [#chapter_2] **5話 [#story_05] #region(ネタバレ注意) |~八神庵|今日も来たのか。&br;貴様も懲りん奴だ。入れ。| |~〇×|すみません、お邪魔します。| |~〇×|(伊勢に行くかどうか考えなきゃいけない。&br;けど……気がついたら足がここに向いていた。)| |~猫|にゃー!| |~〇×|ふふっ、つーちゃん、すっかり元気になりましたね。| |~八神庵|ああ。| |~〇×|これ、今日の食事です。どうぞ。| |~八神庵|そうか。…………。| |~〇×|(八神さん……一応食べてはくれてるけど、&br;口に合ってるのかな?)| |~〇×|(もう結構な回数届けに来てるけど、&br;いつも無言で食べてるし……うーん……。)| |~八神庵|…………なんだ、人の顔をじろじろ見て。| |~〇×|あ、いえ、お口に合ってるかどうか気になって。| |~八神庵|不満はない。| |~〇×|それならよかったです。&br;…………。| |~八神庵|…………。| |~〇×|(うーん……気まずい……。&br;何か話題ないかな……。)| |~八神庵|貴様、どうして浮かない顔をしている。| |~〇×|え? あ、えっと、黙ったままなのもよくないかなと思って&br;話題探しを――| |~八神庵|そうではない。ここに来た時から、&br;浮かない顔をしていただろう。| |~八神庵|まるで悩み事を抱えているとでも&br;言わんばかりにな。| |~〇×|悩み事……そうですね、その通りです。| |~八神庵|くだらんな。迷いなどただの足かせでしかないだろう。| |~〇×|ですが、もし失敗して、みなさんに迷惑をかけたらと思うと&br;ためらってしまうんです。| |~八神庵|……それは、京にも関わることか。| |~〇×|京さんだけではありません。&br;この世界の人全員に関わることです。| |~〇×|もちろん、八神さんにも。| |~八神庵|…………。| |~〇×|信じられないかもしれませんが、&br;この世界を壊そうとしている人がいるんです。| |~〇×|そして、私にはその人を止める力がある……&br;かもしれない。| |~〇×|けどまだ確信が持てないというか、&br;自分の力が信じられないというか……。| |~〇×|力を上手く使いこなせずに、&br;みなさんに迷惑をかけたらと思うと、不安になるんです。| |~八神庵|力、か。&br;それで、貴様はどうしたいんだ。| |~〇×|もちろん、私の力でみなさんを……世界を救えるなら&br;そうしたい、と思います。| |~八神庵|……。| |~〇×|すみません、急に変な話しちゃって。| |~八神庵|悩みがあるだろうと貴様に聞いたのは俺のほうだ。&br;何を謝る必要がある。| |~〇×|すみませ……あっ。| |~八神庵|…………フン。| |~〇×|(八神さん……私のことを元気づけようと&br;してくれた、のかな……?)| |~猫|にゃー。| |~〇×|ふふっ。つーちゃん、楽しそうに遊んでますね。| |~八神庵|ああ。| |~〇×|あれは紙のボール?&br;八神さんが作ってあげたんですか?| |~八神庵|作ったというほどではない。| |~〇×|(ふふ、でも楽しそうに遊んでる。)| |~猫|にゃー。| |~〇×|どうしたの? これ、開いてほしいの?&br;ええと……。| |~〇×|これは……バンドのチラシ?&br;八神さん、こういう音楽を聞くんですか?| |~八神庵|いや。これは、ただの地図代わりだ。| |~〇×|地図?| |~八神庵|ああ。ここのライブハウスで演奏するんだが、&br;道がかなり入り組んでるから、と押し付けられた。| |~〇×|演奏!?&br;もしかして、バンドをやってるんですか?| |~八神庵|ああ。| |~〇×|(八神さんが……バンド!?)| |~〇×|ええと、ギターですか? ボーカルですか?| |~八神庵|ベースだ。| |~〇×|ベース……。| |~〇×|(八神さんが、ベースを弾く? どんな感じなんだろう。&br;失礼だけど、全然想像がつかないな……。)| |~〇×|(ちょっとだけ、見てみたいかも……。)| |~八神庵|貴様、興味があるのか。| |~〇×|は、はい。八神さんがどんな演奏するのか、&br;気になります。| |~八神庵|来るか。| |~〇×|え?| |~八神庵|ライブ。チケットを手配してやる。&br;来たいならば来るがいい。| |~〇×|い、いいんですか? ありがとうございます。&br;その、おいくらでしょうか?| |~八神庵|そんなものはいらん。| |~〇×|で、ですが……。| |~八神庵|飯の礼だ。素直に受け取れ。| |~〇×|……わかりました。&br;ありがとうございます。| |~〇×|(八神さんのライブ……どんなライブなんだろう。&br;楽しみだなぁ……。)| |~〇×|(もうすぐ開演時間か……。&br;なんだかドキドキしてきちゃった。)| |~女性A|いおりーん! 早く出て来て~!| |~〇×|(い、いおりん……?&br;八神さん、人気ある人なんだな……。)| |~女性A|いおりん見られるの、久しぶりだよ~!&br;この間のライブ、チケット買えなかったからさ。| |~女性B|プレミアついてたんだっけ。このライブも即完売だったよね。&br;私たちホント運よかったよね~。| |~〇×|(そんなに人気のライブなの……!?&br;それなのに八神さん、チケットを手配してくれるなんて……。)| |~〇×|(申し訳ない気がするけど、せっかく頂いたチケットだし、&br;めいっぱい楽しませてもらおう。)| |~〇×|(あ、始まる……!)| |~ボーカル|渋谷、盛り上がってるかー!?| |~ボーカル|今日は八神もいるぜー!| |~八神庵|…………。| |~〇×|(八神さん、ステージの上でも、すごい存在感……。)| |~八神庵|…………始めるぞ!| |~〇×|(……八神さんの声で始まったステージは圧巻の一言だった。)| |~〇×|(ステージの上の八神さんは、今までに見たことがないほど&br;情熱的な表情でベースを弾いていた。)| |~〇×|(……ステージの上の八神さんから、&br;何故か目が離せない……。)| |~〇×|(器用に動く長い指、ギターとのセッション、&br;ライトを浴びてのベースソロ……。)| |~八神庵|…………。| |~〇×|……!| |~〇×|(……もしかして、八神さんのこと、&br;ずーっと見てたの、バレてたのかな……?)| |~〇×|(ええと、終わったらここで待っているように言われたけど……。)| |~〇×|(……どんな顔して会えばいいのかな。八神さん、今までと&br;全然違う感じだった……。あんな一面もあるんだ。)| |~〇×|(……すっごくかっこよかった……。&br;なんだか、まだ頬が熱い……。)| |~ボーカル|今日はお疲れ八神!&br;相変わらずお前のベースは世界一だな!| |~八神庵|くだらん。それより人を待たせている。| |~ボーカル|人? あ、もしかしてあっちで待ってる女の子?&br;こんばんは~。八神がお世話になってます!| |~〇×|あ、えっと、こちらこそお世話になってます……!&br;その、ライブお疲れ様でした! すごくよかったです!| |~ボーカル|ありがと! 優しそうないい子だな~。&br;八神にこんなかわいい彼女がいたなんて。| |~八神庵|おい。| |~ボーカル|ははは、悪い悪い。それじゃ、邪魔しちゃ悪いし、&br;俺はここで失敬するよ。| |~ボーカル|お嬢さん、八神のことよろしくな!| |~〇×|あ、は、はい……!| |~ボーカル|八神も、また都合ついたらライブやろうぜ!| |~八神庵|……ああ。そうだな。| |~〇×|(彼女って言われたのはびっくりしたけど、&br;八神さん、バンドの人とあんなふうに話すんだ。)| |~〇×|(八神さんのことを知れるって、&br;なんだか嬉しいな……。)| |~八神庵|くだらん茶番に付き合わせたな。| |~〇×|ふふっ、大丈夫です。&br;あらためて、ライブお疲れ様でした。| |~〇×|とってもすごくて……本当にかっこよかったです!| |~八神庵|……そうか。&br;楽しめたならよかったな。| |~〇×|それに、チケットありがとうございました。&br;完売してたそうなのに……。| |~八神庵|あのライブハウスには何度も出ていて、融通が利く。&br;気にするな。| |~〇×|……本当にありがとうございました。&br;今度、何か差し入れをお持ちします。| |~八神庵|……気にするなと言っている。| |~〇×|わかりました。じゃあ、今回はお言葉に甘えますね。| |~八神庵|ああ。| |~〇×|(なんだか、さっきまで、ステージにいた人と話していると思うと&br;ちょっと緊張するな……。)| |~八神庵|少しは気がまぎれたか。| |~〇×|え?| |~八神庵|貴様の浮かない顔、少しは晴れたようだ。| |~〇×|(もしかして八神さん、私を元気づけるために……?)| |~八神庵|…………!| |~〇×|八神さん……?| |~暴徒A|グオオオオッ!!| |~〇×|――!| #endregion //---------- **6話 [#story_06] #region(ネタバレ注意) |~暴徒A|グウウウ……ッ。| |~〇×|(ぼ、暴徒が……!&br;いけない、足がすくんで動けない……。)| |~暴徒A|ガアアアッ!| |~八神庵|はっ、ふっ、はあっ!| |~暴徒A|グアッ!| |~八神庵|怯んだか。今のうちに逃げるぞ。| |~八神庵|……ここまで逃げれば追ってこれまい。| |~〇×|はぁ……はぁ……すみません……。| |~八神庵|近頃、妙に暴れる輩が増えてきているな。&br;厄介だ。| |~八神庵|そういえば以前同じようなことがあったとき、&br;貴様は言っていたな。| |~八神庵|貴様の行く先に現れる気がする、と。&br;何か心当たりでもあるのか。| |~〇×|……はい。以前お話した、私の悩み……&br;世界を壊そうとしている人たちに、関係があります。| |~八神庵|そうか。…………。| |~暴徒B|ウウ……グウウッ……。| |~八神庵|この先にも暴徒がいる。奴らを避けて帰るぞ。| |~〇×|あっ、はい!| |~〇×|(そういえば八神さん、さっきも暴徒は&br;怯ませるだけで戦おうとはしなかった。)| |~〇×|(八神さん、京さんを「殺す」なんて言うから&br;戦いに目がない怖い人%%%のかと(原文ママ)%%%思っていたけど……。)| |~〇×|(もしかしたら、思っていたような人と、&br;ちょっと違うのかもしれない。)| |~〇×|(……八神さんやみなさんに迷惑かけないためにも、&br;暴徒をこれ以上増やさないためにも……。)| |~〇×|(やっぱり私は伊勢に行くべきだ。&br;力のことは不安だけど、やれるだけやろう。)| |~八神庵|おい、何を呆けている。&br;貴様を道場まで送る、さっさと来い。| |~〇×|あっ、す、すみません! ありがとうございます!| |~八神庵|……ここまで来ればもう大丈夫だろう。| |~〇×|はい。わざわざありがとうございました。&br;あの、気をつけて帰ってくださいね。| |~八神庵|気をつけて?&br;俺を誰だと思っている。| |~〇×|ふふっ。そうでしたね。| |~八神庵|ああ。| |~草薙京|×? それに八神……&br;どうしててめえらが一緒にいるんだ?| |~八神庵|京! ふふふ……よくぞ俺の目の前に現れた。&br;月も貴様の断末魔を今か今かと待ちかねているぞ!| |~草薙京|だったら代わりにてめえの断末魔を聞かせてやれよ。| |~草薙京|っつーかおい×、何夜中に外出てんだよ。&br;一人で行動すんなって約束したろ。| |~〇×|すみません……。| |~草薙京|……まあ、あんたも気分転換くらいしたい時は&br;あるだろうけどよ。| |~草薙京|にしてもなんだって八神なんかと一緒に。| |~八神庵|貴様が知る必要などない。| |~草薙京|まあ、他人のプライベートに&br;踏み込むつもりはねえけどさ。| |~草薙京|×、これから伊勢に行くかもしれねえって時に&br;勝手な行動はすんなよな。みんな心配してんだぞ。| |~〇×|はい、すみません……。| |~八神庵|伊勢……?| |~草薙京|じゃあな、八神。せいぜいオレを殺す夢でも見て&br;幸せな気分で夜を明かせよ。| |~八神庵|貴様こそ、それがいずれ正夢になる日を&br;震えて待っているがいい。| |~草薙京|……帰ったか。&br;おい、×。| |~草薙京|あんまうるせえことは言いたかねえけど、&br;八神に近付くのはやめとけよ。| |~草薙京|あいつは、あんたが思う以上にやばい奴だ。&br;オレだって相手すんのがめんどくさくなるくらいにはな。| |~草薙京|……それにしても、八神が女を送るなんてずいぶん&br;珍しいこともあるんだな。| |~〇×|そうなんですか?| |~草薙京|ああ。あいつは優しさとか情っていうのから&br;最も遠い位置にいるヤツだ。| |~草薙京|目的のためなら女だろうと容赦はしない。| |~草薙京|……だから、あいつには近づかない方がいい。| |~〇×|(本当に、そうなのかな……。私が知っている八神さんは&br;京さんたちが言うような人ではない気がするけど……。)| |~〇×|……わかりました。気をつけます。| |~草薙京|ああ。| |~草薙京|ま、あいつを手懐けるのは慣れてるしな。&br;もしものときはオレがなんとかしてやるよ。| |~〇×|て、手懐ける……?| |~草薙京|ふあ……それにしてもマジで眠ぃ……。&br;ここんとこ伊勢行きの準備でバタバタしてるせいかな。| |~〇×|あ、京さん! その伊勢行きのことなんですが……。| |~〇×|私、頑張ってみようと思います。&br;みなさんには、明日きちんと話をするつもりです。| |~草薙京|…………あんた、なんかちょっと顔つきが変わったな。&br;八神に何か吹き込まれたか?| |~〇×|それは……内緒です。| |~草薙京|へっ、そうか。まあ、あんたの好きにしろ。| |~〇×|はい。頑張ります!| #endregion //---------- **7話 [#story_07] #region(ネタバレ注意) |~八神庵|明日から伊勢に行く、だと?| |~〇×|はい。以前もお話したと思いますが、&br;世界を壊そうとしている人たちがいて……。| |~〇×|私にはそれを止める力があるかもしれなくて、&br;そのために、私は伊勢に行きます。| |~八神庵|京も伊勢がどうのと言っていたな。&br;それで、わざわざ俺に報告しにきたのか。| |~〇×|伊勢に行くとなるとしばらく食事を持って来れなくなりますし&br;つーちゃんのお世話もできなくなるので……。| |~猫|にゃぁ……。| |~〇×|ごめんね、つーちゃん。&br;全部無事に終わったら、また会いに来るから。| |~八神庵|……京も、伊勢に行くのか。| |~〇×|は、はい。道場のみなさん、&br;全員で一緒に行くことになってます。| |~八神庵|そうか。…………。| |~八神庵|…………猫のことは俺が見てやる。&br;貴様は伊勢にでもどこへでも行くがいい。| |~〇×|はい。……すみません、ありがとうございます。| |~八神庵|貴様は本当に礼と謝罪ばかりの女だな。| |~〇×|たくさんお世話になってますから。&br;この決心をつけられたのも、八神さんのおかげです。| |~八神庵|俺が何をしたと言うんだ。| |~〇×|八神さんのライブで元気づけられたこと、&br;八神さんが暴徒との争いを避けたこと……。| |~〇×|それを見て、もう暴徒が増えたりしないように&br;私にできることはやろうと思ったんです。| |~八神庵|それは貴様の意思だ。俺の行動は関係ない。| |~〇×|でも、八神さんに勇気づけられたことは確かですから。| |~八神庵|…………。| |~〇×|それでは、出発の準備がありますので、&br;ここで失礼しますね。| |~〇×|つーちゃん、またね。| |~猫|にゃあ!| |~八神庵|…………。| |~〇×|(よし、頑張ろう!)| |~八神庵|京……そしてあの女が伊勢に行く、か……。| |~八神庵|……伊勢。今日は伊勢に何をしに行くと言うのだ……?| |~ヨミ|無駄なことを。| |~ナギ|本当に、そうだね。| |~八神庵|――! 貴様ら、いつの間に……。| |~猫|フーッ!!| |~ナギ|ふふっ、ヒメが近頃かわいがっている猫だね。&br;いい子、いい子。| |~猫|シャーーッ!!| |~ナギ|……そんな目で見られるなんて、悲しいな。| |~八神庵|無駄話はやめろ。なんの用だ。| |~ナギ|ヒメのことを気にしているようだからね、&br;そのことで話をしに来たんだよ。| |~八神庵|ヒメ……?| |~ヨミ|〇×のことだ。&br;奴らは、泉の浄化のため伊勢に行く。| |~八神庵|浄化だと?| |~ナギ|暴走する人々を止めるため……みたいだけど、&br;そんなことをしても無駄なのにね。| |~ナギ|神世界ができればこの世界は変わる。&br;そうすれば、ヒメも、みんなも、苦しまなくて済む。| |~ナギ|泉を浄化することは、ヒメがただ無意味に&br;疲れて行くだけなんだ。| |~八神庵|それを俺に話してなんになると言うんだ。| |~ヨミ|あの女のことを気にかけていたようだったからな。| |~ヨミ|聞けば動じ、こちらに応じるかと思ったが、&br;見当違いだったか。| |~八神庵|節穴もいいところだな。あの女の容態など、&br;俺の知ったことではない。あの女に興味はない。| |~ナギ|当然だよ。だって彼女は、僕と結ばれる運命なんだから。| |~ナギ|そしてその運命に、君の力が役に立つ。&br;君に流れる、オロチの血が。| |~ナギ|オロチの血からと僕の力。二つが混ざり合えば、&br;きっと素晴らしい力が君に宿る。| |~ナギ|それは神世界を創る大切な礎となり、&br;僕とヒメの、新しい世界ができあがる。| |~ナギ|だから、君に力をあげる。&br;敗者復活戦の始まりだよ。| |~八神庵|ウ……ぐう……っ!?&br;貴様、俺に何を……!| |~ナギ|祝福さ。| |~ナギ|それじゃあね、八神庵。&br;神世界でまた会おう。| |~八神庵|はぁ……はぁ……祝福、だと……?| |~八神庵|京……京……!&br;俺は、貴様を……!! オオオ……!| |~猫|にゃあ……。&br;ゴロゴロ……。| |~八神庵|っ……。&br;猫の分際で……俺を、気遣ってるとでも言うのか……!| |~八神庵|(力の抑制が効かん。&br;……このままではこの猫の命はなくなるだろう。)| |~八神庵|(そうなれば、あの女がどんな顔をするか……。)| |~猫|にゃ?| |~八神庵|何故だ……っ、何故あの女の顔が浮かぶ……!| |~猫|にゃあん!| |~八神庵|……しばらく、貴様の面倒が見れなくなる……っ。| |~猫|にゃ……。| |~八神庵|……安心しろ。事が済めば、また貴様の面倒を見る。&br;それまでは……。| |~八神庵|ハァッ……ぐっ、ライブハウスの奴らなら、&br;貴様を、よくしてくれるはずだ。そこにいろ……!| |~猫|にゃあ!| |~八神庵|(ナギとヨミ……俺に何をしたのか必ず問いただしてやる。&br;祝福だと? ふざけるな……っ。)| |~八神庵|…………っ。| #endregion //---------- **8話 [#story_08] #region(ネタバレ注意) |~〇×|(泉の浄化は残すところあと一つ。だけど、&br;どんどん自分の身体が蝕まれているのを感じる。)| |~〇×|(でも、やらなきゃ。世界を、&br;みなさんを守るために……。)| |~'''八神庵'''|'''ククク……ハッハッハ……!&br;ハァーハッハッハッハ!'''| |~'''ビリー・カーン'''|'''チッ! ……どうなってやがる!?'''| |~'''草薙京'''|'''オロチの力が暴走した、だと……?&br;泉の瘴気のせいか……!'''| |~'''八神庵'''|'''グ……キョォォォォ!&br;コロス! キョォォォォ! コロス!'''| |~〇×|(あの時の八神さん、まるで暴徒のようだった。&br;ううん、それ以上に強い力を感じた。)| |~〇×|(京さんが言っていた、&br;オロチの力っていったい――?)| |~〇×|――っ、誰!?| |~八神庵|…………。| |~〇×|八神、さん……。| |~八神庵|泉では、世話になった。その礼を言いに来た。| |~〇×|(いつもの八神さんみたい。無事でよかった……。)| |~〇×|八神さんにケガがなくてよかったです。それにしても、&br;まさか泉で八神さんに会うなんてびっくりしました。| |~八神庵|…………。| |~〇×|あの、つーちゃんはどうしてますか?| |~八神庵|ライブハウスの者に預けている。&br;悪いようにはしないはずだ。| |~〇×|そうですか。……戻ったら、&br;すぐに顔を見せてあげたいですね。| |~八神庵|顔を見せに行くだけの気力が貴様に残っていればな。| |~八神庵|まるで病人のような顔色をしている。&br;それでは顔を見せたところで猫を不安がらせるだけだ。| |~〇×|あ、えっと……ここのところ山道を歩いたり、いろいろ&br;浄化したりしてたので、疲れが溜まってるんだと思います。| |~八神庵|疲れ……。| |~〇×|少し休めば大丈夫ですから、これくらい平気ですよ。| |~八神庵|…………。| |~〇×|八神さんのほうこそ、身体、大丈夫ですか?&br;その、泉では大変なことがありましたし……。| |~八神庵|これまでにも何度かあったことだ。&br;貴様が気にすることではない。| |~〇×|(……八神さんが話したくないのなら、&br;無理に聞かない方がいいよね……。)| |~〇×|わかりました。でも、もしまたあんなことになっても、&br;私の力でなんとかできるかもしれません。| |~〇×|だからそのときは――| |~八神庵|いらん。| |~〇×|ですが……。| |~八神庵|いらんと言っている。| |~〇×|…………すみません。| |~八神庵|貴様が謝るようなことではない。&br;俺は俺自身でこの力を飼い慣らす、それだけのこと。| |~〇×|(八神さんの力……。いったい、どんな力が八神さんを&br;あんなふうにしてしまっているんだろう。)| |~〇×|(少しずつ八神さんのことを知れていると思ったけど、&br;まだまだ知らないことだらけだ。)| |~〇×|(もっとこの人の、&br;八神さんの助けになれたらいいのに……。)| |~八神庵|貴様は……。| |~八神庵|貴様は、己の身に何があろうともその力を行使し、&br;目的を果たすつもりか?| |~〇×|……はい。世界を、そしてみなさんを守りたいですから。&br;もちろん、八神さんのことも。| |~八神庵|……フン、くだらん。| |~八神庵|用件は済んだ。ではな。| |~〇×|(泉を浄化して、世界を守って、&br;そして八神さんと一緒につーちゃんを迎えに行こう。)| |~〇×|(……今夜の月は、なんだかいつもよりきれいに見えるなぁ……。)| |~八神庵|ウ……グ……ウオオオオッ!!| |~〇×|……! や、八神さん!?| #endregion //---------- **9話 [#story_09] #region(ネタバレ注意) |~八神庵|オオオ……グオオオオオッ!!| |~〇×|(八神さんが暴走してる……!&br;と、止めないと……! 泉の時と同じように、八神さんを……。)| |~〇×|八神さん! お願いします、元に戻ってください!| |~〇×|(……いけない、頭がくらくらする……&br;けど、八神さんを止めなきゃ……!)| |~八神庵|ウウウッ、キョォオオオオ!!| |~〇×|ど、どうして……!?&br;お願い、元に戻って……!| |~八神庵|ウ、ウウ……お、女……き、さま……&br;グウウ……!| |~〇×|(す、少し元に戻った? もう一息……!)| |~二階堂紅丸|おい、なんの騒ぎだ!?| |~草薙京|八神……!? なんでてめえがこんなところに!| |~八神庵|ウウウウ……グオオオオオッ!| |~草薙京|チッ……ボディがガラ空きだぜ!| |~八神庵|ガアッ!!| |~〇×|京さん! 泉の時のように私が八神さんを浄化します!&br;だから……――っ!| |~二階堂紅丸|×ちゃん! 疲れてるんだから無理しないで。| |~草薙京|こいつの相手はオレのほうが慣れてる。&br;喰らいやがれええええっ!| |~八神庵|ぐう……っ!&br;――お、俺、は……。| |~草薙京|正気に戻ったか八神。| |~八神庵|俺は、また……。| |~〇×|はぁ……はぁ……八神さん、よかった……。| |~二階堂紅丸|×ちゃんが必死に八神を浄化しようとしたんだ。&br;感謝しなよ。| |~八神庵|女……何故だ。| |~〇×|だて……八神さんが、心配、だから……&br;はぁ、はぁ……。| |~八神庵|それで己が疲弊してもか。貴様、死んでも知らんぞ。| |~八神庵|…………。| |~草薙京|あっ、おい待て八神!| |~草薙京|……って言って待つ奴じゃねえか。あー、痛え……。| |~〇×|京さん、怪我を……。すぐに消毒薬と包帯持ってきますね。| |~草薙京|あんたのほうがしんどそうなのに手間かけられるかよ。&br;それより、なんで八神がここにいたんだ?| |~〇×|それは……泉で私が八神さんの暴走を止めたお礼を&br;言いにきてくれたみたいで……。| |~草薙京|へえ、あいつにもそんな律儀なとこあんだな。| |~二階堂紅丸|レディに優しい一面が、八神にねえ。| |~〇×|帰ろうとしたところで暴走して、泉の時のように浄化して&br;止めようと思ったんですが、上手く行かなくて……。| |~草薙京|そりゃそうだろ。あいつの相手なんざ、&br;簡単にできるようなもんじゃねえからな。| |~二階堂紅丸|むしろ泉ですんなりできたのが奇跡ってくらいだよ。&br;×ちゃん、すごいね。| |~〇×|そうなんですか? ……あの、八神さんの暴走の&br;原因って、いったいなんなんでしょうか?| |~〇×|泉ではオロチがどうとか、と&br;言っていましたが……。| |~草薙京|……この先一緒に行動する以上、&br;アンタには話しておいたほうがいいかもな。| |~二階堂紅丸|またいつ八神が来るかもわからないし、ね。| |~草薙京|八神には、オロチの血っつーもんが流れてる。&br;その血のせいで、あいつは暴走するんだ。| |~〇×|そのオロチというのは、どういうものなんですか?| |~二階堂紅丸|なんというか、地球そのもの? って言えばいいのかな。| |~二階堂紅丸|まあ、ナギのように世界をどうこうできるくらいの力を&br;持ってるとんでもないヤツさ。| |~二階堂紅丸|そして遥か昔に、人類を滅ぼそうとしたオロチを、&br;京たちの先祖が力を合わせてオロチを封印した。| |~〇×|つまり京さんや八神さんのご先祖様は、&br;オロチと戦う人たちだったってことですよね?| |~〇×|それなのにどうして八神さんにオロチの力が……。| |~草薙京|封印して何百年か経ってから、八神の一族が&br;オロチの力を欲しがったんだよ。| |~草薙京|オロチと契約を結んで、八神の一族はオロチの力を&br;使うようになった……って言われてる。| |~〇×|そんなことが……。でも、そんな力に振り回されて、&br;八神さんは大丈夫なんでしょうか?| |~二階堂紅丸|ああ――あの暴走のせいかわからないけれど、&br;八神家は代々、短命だと言われているね。| |~〇×|短命……!?| |~二階堂紅丸|恐らく、あいつだって同じだろう。| |~〇×|(八神さんが……短命……。)| |~〇×|……八神さんの暴走の原因のことはわかりました。&br;離してくれてありがとうございます。| |~草薙京|ああ。とにかく、あいつにはあまり近づくな。&br;あの暴走は並の人間にどうこうできるもんじゃねえ。| |~草薙京|オロチの血が暴走したら、軍人も手こずるくらい&br;やべえことになったりするからな。| |~〇×|(京さんたちは、&br;本当にすさまじい経験をしてきたんだな……。)| |~〇×|(それに、八神さんに宿るオロチの力……。)| |~〇×|(……どうにか、できないのかな……。)| #endregion //---------- **10話 [#story_10] #region(ネタバレ注意) |~ヨミ|ふむ……まだ息はあるようだ。&br;……だが、殺す価値もない。| |~ヨミ|せっかくナギ様が祝福をお与えになったというのに、&br;使えぬ失敗作め。| |~八神庵|…………待て。| |~ヨミ|なんだ。| |~八神庵|祝福とはなんだ。&br;俺にいったい、何をした。| |~ヨミ|……まあ、話してやってもいいだろう。| |~ヨミ|オロチの血の力を増幅させる。ただそれだけのことだ。| |~八神庵|それが祝福、だと?| |~ヨミ|草薙京を殺す力が授けられる。貴様にとっては&br;最上の祝福ではないか?| |~八神庵|俺には既に京を殺す力がある……っ、俺は……。| |~ヨミ|ならば何故殺さない?&br;今すぐにでも殺せばいいではないか。| |~八神庵|…………。| |~ヨミ|所詮、貴様は弱者。はかない命を持つ、な。&br;神世界の礎にもなれぬ、弱い人間だ。| |~ヨミ|力を増幅させることで貴様の強さを引き出し、&br;神世界の礎として役立てようとナギ様はお考えだったが……。| |~ヨミ|やはり弱者はどうあがいても弱者なんだ。| |~ヨミ|だが、弱者にも弱者なりの役目がある。&br;神世界の生け贄となる役目がな。| |~ヨミ|せいぜい、生け贄になるまでの時間を&br;好きなように過ごしているがいい。| |~八神庵|(……ふざけたことを……。)| |~'''ヨミ'''|'''ナギ様からの伝言だ。'''| |~'''ヨミ'''|'''『簡単にオロチの力に飲まれるなんて&br;意外と弱い人間なんだね』と。'''| |~'''ヨミ'''|'''しょせん、お前では草薙京に勝てない。&br;ナギ様はお前を見限ったのだろうな。'''| |~'''ヨミ'''|'''……失敗作に用はない。&br;それが神世界の決定だ。'''| |~八神庵|くっ……。| |~八神庵|俺が弱い……京に勝てん……失敗作、だと……?&br;あの男、戯言を……。| |~八神庵|う、ぐ……はぁ、はぁ……。| |~八神庵|………………。| |~八神庵|……少し、気分を変えに行くか……。| |~ボーカル|あれ、八神! 戻って来てたのか?| |~八神庵|……ああ。| |~猫|にゃーん!| |~ボーカル|ははは、つーちゃんも八神が帰ってきて喜んでるみたいだな。| |~八神庵|猫が、世話になっている。| |~ボーカル|いいっていいって。観客からもかわいがってもらってるし。&br;で、なんだ? 今日は演奏しにきてくれたのか?| |~八神庵|1曲だけな。| |~ボーカル|じゅーぶん! いいサプライズになるぞ~。| |~女性A|きゃーっ! いおりーん!| |~女性B|なんで? 今日いおりん来るって言われてたっけ?| |~ボーカル|今日はサプライズだ!&br;八神の演奏、しっかり聞いて帰るんだぜ!| |~八神庵|…………。| |~八神庵|(…………思うように指が動かん。&br;チューニングも甘い……俺としたことが抜かったか。)| |~女性A|……なんか、かっこいいのはかっこいいけど、&br;今日のいおりん、いつもと違わない?| |~女性B|うん……元気がない気がする……。&br;ベースにも迫力ないし……。| |~女性A|いおりーん! がんばって~!!| |~八神庵|…………。| |~ボーカル|お疲れ。今日のお前、らしくなかったな。&br;何かあったのか?| |~ボーカル|あ、あの彼女と喧嘩したとか?| |~八神庵|彼女ではない。喧嘩もしていない。| |~ボーカル|あれ? そうだったんだ。まあ、なんだ。&br;なんかあったらいつでも言えよ。| |~ボーカル|……って、お前は人に相談とかするような奴じゃないか。| |~猫|にゃーん。| |~ボーカル|つーちゃんもお前のこと心配してるみたいだし、&br;今日は連れて帰って一緒に過ごしてやれよ。| |~猫|にゃあ。| |~八神庵|…………。| |~八神庵|(あの女の力のおかげか、暴走は落ち着いている。&br;多少なら、構わんか。)| |~猫|にゃー!| |~八神庵|……フン。行くぞ。| |~猫|ゴロゴロゴロ……。| |~〇×|(よし、次の泉に向かう準備は&br;こんなところで大丈夫かな……。)| |~〇×|(八神さん、あれからどうしてるんだろう。&br;少し、電話してみてもいいかな……?)| |~〇×|(……八神さん、出てくれるかな。)| |~〇×|(八神さん……電話に出て……。)| |~八神庵|……俺だ。| |~〇×|八神さん! よかった、出てくれた!| |~八神庵|なんの用だ。| |~〇×|そ、その、この間暴走してましたから、&br;身体とか大丈夫なのか気になって……。| |~八神庵|大したことはない。&br;……貴様には、くだらんものを見せたな。| |~〇×|くだらなくなんて……。あの後、京さんたちから聞きました。&br;八神さんのご先祖様のことや、一族のことを……。| |~八神庵|京め、余計なことを。| |~八神庵|……貴様は、今どうしている。| |~〇×|次に浄化する泉が見つかったので、&br;出発する準備をしているところです。| |~〇×|出発前に、八神さんの声が聴けてよかった……。| |~八神庵|……貴様は、まだ世界を救うなどということを&br;考えているのか。| |~〇×|もちろんです。それが私の使命……だと思いますから。| |~八神庵|使命……それが、己の意思とは関係なく&br;与えられたものだとしてもか。| |~〇×|はい。| |~八神庵|それで己の身体が疲弊していく一方だとしてもか。| |~〇×|はい。疲れてるのはみなさんも同じですし、&br;きちんと休めば大丈夫ですから。| |~猫|にゃーん!| |~〇×|あれ、その声……つーちゃん?&br;八神さん、お家に戻ってるんですか?| |~八神庵|ああ。| |~〇×|無事に帰れたようでよかったです。&br;食事や休養はしっかりとれてますか?| |~八神庵|余計なお世話だ。| |~〇×|すみません……八神さんのことが気になっちゃって。| |~八神庵|……何故貴様はそこまで、己のことより&br;他人のことを気遣おうとする。| |~八神庵|己が疲れても、俺の暴走を止めようとして&br;何故そのようなことができる。| |~〇×|それは……大切な仲間、だからでしょうか。&br;大切な人にはやっぱり元気でいてほしいですし。| |~八神庵|貴様がそう思うように、貴様が疲弊した姿を見るのは&br;避けたいと思う者がいるとは考えないのか。| |~〇×|え……?| |~八神庵|…………。| |~〇×|(八神さん、私のことを気遣ってくれてる……?)| |~〇×|……そうですね。気を付けます。&br;ありがとうございます、八神さん。| |~矢吹真吾|〇さーん、ちょっといいですかー!?| |~〇×|あ、うん! すぐ行くね!&br;すみません八神さん。呼ばれてるので、この辺で。| |~八神庵|ああ。| |~〇×|その……元気でいてくださいね。| |~八神庵|貴様もな。| |~猫|にゃーん!| |~〇×|ふふっ。元気に帰ってきて、&br;またつーちゃんのお世話してあげないと。| |~〇×|それでは、失礼します。| |~〇×|(……よし、頑張ろう。)| |~八神庵|大切な仲間、か。戯言を。| |~猫|ゴロゴロゴロ……。| |~八神庵|(まだ、あのヨミとかいう男に殴られた箇所が痛む。&br;容赦のない男だ。)| |~八神庵|(あの女は、浄化する力を使えば疲弊する。&br;それは、俺の暴走に対しても同様だ。)| |~八神庵|(……俺はあの女をどうしたいのだ。&br;あの女が疲弊したところで、俺にはなんの関係もない。)| |~八神庵|(だが、あの女を無駄に疲弊させるわけにはいかん。&br;だからあの女に近づかん……と考えてしまっている。)| |~八神庵|(俺が他人に気を遣うなど……。)| |~猫|にゃあ。| |~八神庵|……おい、なんだ。膝に乗るな。動けんだろう。| |~八神庵|クソッ、勝手な猫め。俺の膝は寝床ではない。| |~八神庵|…………今だけだからな。| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *3章 [#chapter_3] **11話 [#story_11] #region(ネタバレ注意) |~草薙京|博物館の下見は終わり、と。&br;あとはマキシマが書類の偽装すんのを待つだけか。| |~〇×|世界を救うためとはいえ、誰かを騙すのは&br;心が痛みますが……頑張らないといけませんね。| |~草薙京|背に腹は代えられないしな。&br;ま、結果を出せばいいんだよ結果を。| |~草薙京|にしてもマキシマの野郎、なんだってオレに&br;下見の役目なんか押し付けやがったんだ。| |~草薙京|めんどくさいぜ、ったく。| |~〇×|私ひとりで下見に行くのは不安でしたし……&br;付き合わせてすみません、京さん。| |~草薙京|まあ、あんた一人行かせて何か起きるよりは&br;マシだけどよ。| |~草薙京|また八神の野郎が現れるかもしれねえしな。| |~〇×|(八神さん……五つ目の泉に行く前に電話したきり、&br;連絡できてないけど、どうしてるんだろう。)| |~〇×|(電話しても出ないし、無事だといいんだけど……。)| |~草薙京|――と、そうだ。帰りにちょっと本屋に寄っていいか。&br;紅丸からファッション雑誌買ってきてくれって頼まれてんだ。| |~草薙京|えーっと、ファッション雑誌はどこだ?| |~〇×|結構大きな本屋ですから、探すの大変そうですね。&br;……あ。| |~草薙京|ん、あったのか?| |~〇×|あ、いえ、ちょっと気になる本を見つけたので……。| |~〇×|(ツァラトゥストラはかく語りき……。)| |~〇×|(つーちゃんに名前をつけるとき、&br;八神さんが言っていた本ってこれかな?)| |~草薙京|つぁら……なんだこれ。| |~〇×|哲学書みたいです。八神さんが以前、&br;ちょっとこの本のことを話していて……。| |~草薙京|へーえ、あの八神がねえ。あいつのわけわかんねえ言動って&br;ひょっとしたらこういうのから来てるのかもな。| |~〇×|(八神さんは、昔どこかで見た本、としか&br;言ってなかったけど……。)| |~〇×|(つーちゃんの名前にするくらいだし、&br;実は何か思い入れがあるのかも。)| |~〇×|(読んでみれば少しは八神さんの気持ちに近づけるかな……。)| |~〇×|(うーん、買ってみたのはいいけど、&br;哲学書って難しい……。| |~〇×|(永劫回帰……人生は嬉しいことも悲しいことも&br;まったく同じように何度も永遠に繰り返すということ。)| |~〇×|(その永劫回帰による運命をあるがまま受け入れ、&br;愛することを運命愛と言う……か。)| |~〇×|(うーん、難しいな……。嬉しいことも悲しいことも&br;全部受け入れる、か。)| |~草薙京|おいおい、そんなしかめっつらしてどうしたんだよ。| |~〇×|あ、京さん。本屋で買った本を読んでるんですが、&br;なかなか難しくて……。| |~草薙京|まあ、八神が口に出すようなもんなら&br;わけわかんなくて当然だよな。| |~〇×|(運命、か。八神さんに宿るオロチの血も&br;私のこの力も運命……なのかな。)| |~〇×|あの、京さん。運命ってどう思います?| |~草薙京|紅丸がよく女口説くときに使う言葉って&br;イメージだな。出会えたこの運命に感謝、とか。| |~〇×|え、えっとそうじゃなくて、&br;この本に書いてあったんですが――| |~草薙京|なるほど。運命をあるがまま愛する、ね。&br;オレは胡散臭いなとしか思えねえが。| |~〇×|自分の運命を受け入れることで、&br;人は強くなる、人を越えて超人になる……。| |~〇×|と、この本には書いてあります。&br;でも、受け入れるって簡単なことじゃありませんよね。| |~草薙京|まあ、な。けどまあ、&br;なんだかんだで慣れてくるもんだとは思うぜ。| |~草薙京|八神とやりあうのも、別に受け入れたってわけじゃねえが&br;何度も戦ってる内になんていうか、当たり前みたいになった。| |~〇×|京さんと八神さん、そんなに長い間戦って来たんですか?&br;確か、ご先祖様の頃から繋がりがあるとか……。| |~草薙京|そうらしいな。昔は家同士で争ったこともあったらしいが、&br;正直オレからしたらそんなことはどうでもいい。| |~草薙京|ただ八神の野郎がいけすかねえからやり合う。&br;それだけだ。| |~草薙京|たぶん、八神も同じようなこと考えてんじゃねえかな。&br;家だのなんだの気にするタイプじゃねえし。| |~〇×|京さんは、八神さんのことをよく知ってるんですね。| |~草薙京|嫌でもわかっちまうんだよなあ。うんざりするけどよ。| |~〇×|(そう言いながらも、京さんは八神さんの相手をする。&br;これって、受け入れてるってことだよね……。)| |~〇×|……京さん、ありがとうございます。&br;本に書いてあること、少しわかった気がします。| |~草薙京|そうなのか? よくわかんねえけど&br;まあ、あんたがそう言うんならそれでいい。| |~マキシマ|おーい京。博物館のことで相談があるんだが。| |~草薙京|ああ、すぐ行く。&br;んじゃ、本読むのもほどほどにして、いい加減休めよ。| |~〇×|はい、ありがとうございます、京さん。| |~〇×|(あるがまま、運命を愛する……&br;少し、心がけてみよう。)| #endregion //---------- **12話 [#story_12] #region(ネタバレ注意) |~〇×|(博物館で暴徒に襲われた時は&br;どうなるかと思ったけど――)| |~ジョー・東|おばちゃん! お好み焼きのおかわりくれ!| |~おばちゃんA|ええでー! じゃんじゃん食べるんやで!| |~〇×|(わかってくれる人もいるんだって知れて&br;本当によかった。)| |~テリー・ボガード|こっちも頼むぜ!| |~矢吹真吾|あっ、こっちも!| |~〇×|(……八神さん、ごはんちゃんと食べてるかな?&br;ここで一緒に食べられたら、なんて……。)| |~〇×|(――え、八神さんから電話!?)| |~〇×|す、すみません、ちょっと失礼します!| |~〇×|も、もしもし?| |~八神庵|俺だ。| |~〇×|っ……、八神さん! よかった、ここのところ&br;電話しても出ないので何かあったのかと……。| |~八神庵|ああ。貴様の着信履歴がしつこいから&br;かけてやった。| |~〇×|す、すみません。| |~八神庵|別に謝れとは言っていない。&br;……心配、かけたか。| |~〇×|こうして元気そうな声が聴けたので大丈夫です。&br;つーちゃんも元気ですか? 食事はきちんととれてますか?| |~八神庵|貴様が心配するようなことはない。&br;そっちはどうだ。| |~〇×|今日は嬉しいことがあったんです。みなさんが&br;暴徒に襲われてる子どもたちを助けて……。| |~〇×|それでいろんな人から感謝されて、&br;格闘家への誤解がちょっと解けて。| |~〇×|頑張ってきてよかったって思いましたし、&br;これからも頑張ろうって思いました。| |~八神庵|フン……。貴様らしいな。| |~〇×|これから私たちは、また次の場所に向かいます。&br;この世界を守るために。| |~八神庵|自らの身体を犠牲にしてまでもか。| |~〇×|……はい。| |~〇×|あの、この間、&br;ツァラトゥストラはかく語りきを読んだんです。| |~〇×|その中に、運命愛という言葉がありました。&br;嬉しいことも悲しいことも、自分の運命を愛し、受け入れること。| |~〇×|そうすることで人は強くなれる、&br;ということみたいで……私もそうありたいと思ったんです。| |~〇×|この力を運命だと思って前に進もう、って。もちろん怖いと&br;思うこともありますから、簡単には行きませんが……。| |~八神庵|そう考える精神が大事だと、そう言いたいのだな。| |~〇×|……はい。| |~八神庵|ならば俺の、京を殺すという使命もまた、&br;繰り返されるべき運命というものだ。| |~八神庵|京を殺すことは俺の喜び。京を殺し、俺も死に、&br;そしてまた次の人生で俺は俺として京を殺す。| |~八神庵|それはとても素晴らしい人生だ。| |~〇×|え、えっと、殺すとかそういうのは&br;私はおっかないなと思うんですが……。| |~〇×|八神さんはそう思うことで、オロチの血のことも&br;受け入れようとしてるんですよね。| |~八神庵|貴様の目にはそのように映るのか。| |~〇×|勝手な思い込みだったらすみません。| |~八神庵|貴様がそう思うのならそれでいい。&br;それで、俺が受け入れていたらどうだと言うんだ。| |~〇×|八神さんのその運命を、少しでも私の力で&br;支えられたら……なんて思ったんです。| |~〇×|私には八神さんの暴走を抑える力がある。&br;その力で、少しでも八神さんの支えになれたら……。| |~〇×|つーちゃんを助けたときのように、&br;八神さんも助けたいと思います。| |~八神庵|俺は猫と同じと言うことか。| |~〇×|そうじゃなくて……例え運命だとしても、&br;自分の力でどうにかできるならどうにかしたい。| |~〇×|もしかしたらどうにかすることも含めて&br;運命なのかもしれませんが……。| |~〇×|と、とにかく、自分がやりたいことを&br;大事にしたいと思うんです!| |~八神庵|だがそうすることで貴様は疲弊する。&br;死ぬかもしれんのだぞ。| |~八神庵|自らを犠牲にして俺を生かし、貴様は何を望む?| |~〇×|それは……やっぱり、八神さんのことを&br;助けたいと思うからでしょうか……。| |~八神庵|だが貴様が死んでは、俺を助けることも叶わんぞ。| |~八神庵|死にたいのか……?| |~〇×|…………。| |~八神庵|死にたくなくば、これ以上俺につきまとうのはやめろ。| |~〇×|……嫌です。| |~八神庵|…………。| |~〇×|死にたくもありませんし、&br;八神さんが苦しい思いをするのも嫌です。| |~〇×|私は、八神さんを助けたいんです。| |~八神庵|偽善だな。| |~〇×|それでも構いません。| |~八神庵|…………。| |~八神庵|借りを作るのは好きではない。貴様が俺の支えになると&br;言うのならば、俺も相応のことはしてやる。| |~八神庵|ではな。| |~〇×|電話、切れちゃった……。| |~〇×|(相応のことはしてやるって、どういうことだろう……?)| |~〇×|(それにしても、八神さんと話せて本当によかった。&br;なんか、ちょっとドキドキしてる気がする……。)| |~〇×|(……月がきれいだな。)| |~八神庵|今宵の月はいい色をしている。| |~八神庵|(あの女に近づけば、あの女は俺を助けようとする。&br;ならば、あの女に近づかずに独自に動けばいいこと。)| |~八神庵|(……俺を失敗作呼ばわりした奴らがいけすかない。&br;あの女のことは……二の次だ。)| |~猫|にゃあん。| |~八神庵|貴様はもうしばらく、ライブハウスの世話になれ。&br;俺にはまだすべきことがある。| |~猫|にゃー。| |~八神庵|……次に顔を合わせるときは、あの女も一緒だ。| #endregion //---------- **13話 [#story_13] #region(ネタバレ注意) |~〇×|(いよいよ洞窟に向かう……。&br;気合入れて行かないと……。)| |~草薙京|……おい、待て。なんかこの先に嫌な気配がする。| |~矢吹真吾|えっ、も、もしかして暴徒とか?| |~草薙京|いや、この感じは……。| |~八神庵|京!!| |~〇×|八神さん!| |~草薙京|……やっぱりな。てめえ、何しに来たんだよ八神。&br;悪いが、今お前の相手をしてる暇はないぜ。| |~八神庵|承知の上だ。だからこそ俺は京、&br;貴様の目の前に立ちはだかっている。| |~草薙京|ったく、こんなところで余計な体力&br;消耗したくねえってのに……。| |~矢吹真吾|ややや、八神さんっ! お、おれたちは今、大事な用事が&br;あるんですっ! あ、あなたに構ってる暇はありませ――| |~八神庵|雑魚は黙っていろ。| |~矢吹真吾|ひいっ! や、やっぱり怖い……。| |~八神庵|貴様らの動向については把握している。&br;そこの女から聞いていたからな。| |~矢吹真吾|えっ!? 〇さん、いつの間に!?| |~〇×|ご、ごめんね。隠してたわけじゃないんだけど……。| |~草薙京|まあ別に変なことしてるわけじゃねえし、&br;そこはいいんだけどよ。| |~矢吹真吾|く、草薙さんも知ってたんですか!?| |~八神庵|ナギとヨミと戦う。&br;貴様らのその意志に付き合おうと思った。| |~八神庵|奴らの好きになどさせん。| |~草薙京|八神と意見が合うなんて、気持ち悪ぃことも&br;あるもんだな。| |~草薙京|八神お前、ナギとヨミと何かあったのか?| |~八神庵|貴様には関係のないことだ。| |~二階堂紅丸|とはいえ、ある程度はそちらの手の内を明かしてもらわないと&br;こっちとしても警戒心は解けないんだけどね。| |~八神庵|…………。| |~〇×|あの、八神さん、お願いします。&br;ナギさんとヨミさんと何があったのか教えてください。| |~八神庵|…………奴らは以前、俺の目の前に現れ、&br;俺の短命の呪いを解いてやる、と言った。| |~八神庵|自分たちの力となれば、京以上の力を与える、&br;とも言っていた。| |~八神庵|そして俺に、祝福というものを与えたらしい。&br;オロチの血を増幅させるものだそうだ。| |~草薙京|ああ、最近の八神が妙に激しかったのって&br;そのせいだったのか。| |~〇×|祝福……。| |~リョウ・サカザキ|呪いを解く……祝福、か。奴らの常套手段だな。&br;人の弱みに付け込み、取り入っていく……。| |~八神庵|弱み? そんなもの俺には存在しない。&br;だからこそ俺は奴らに惑わされずにいる。| |~ロバート・ガルシア|よくも悪くも京のことしか&br;頭にないからこそできることやな。| |~八神庵|あのヨミとかいう男に俺は一度やられた。&br;俺のことを不要な失敗作とのたまってな。| |~八神庵|奴らの描く理想こそ失敗作だと、&br;俺の力で教えてやらねばならん。| |~草薙京|へっ、お前ヨミにやられてたのかよ。&br;そんなんじゃオレとお遊戯もできないぜ?| |~八神庵|当然だ。遊戯で済むようなことではないからな。| |~矢吹真吾|あ、相変わらず八神さんの言ってること&br;よくわかんないっす……。| |~草薙京|ま、いつもの調子の八神って感じだな。&br;いいんじゃねえか、信用して。| |~マキシマ|人手はあればあるだけ助かるしな。&br;来てくれるのならばありがたいぞ。| |~八神庵|勘違いするな。貴様らに感謝されるために&br;やっているわけではない。| |~八神庵|俺は、奴らとけりをつけるために&br;貴様らと手を組むまで。慣れ合うつもりはない。| |~〇×|それでも、八神さんが一緒に戦ってくれるのなら&br;とても心強いです。| |~〇×|一緒に頑張りましょう、八神さん。| |~八神庵|……っ、俺に、触るな。| |~〇×|八神さん?| |~八神庵|…………俺に触れれば、貴様は俺を浄化してしまうだろう。&br;だからなるべく、貴様とは距離を取りたい。| |~〇×|だ、大丈夫ですよ。なるべく、力はいざというときのために&br;取っておきますから。| |~八神庵|どちらにせよ、奴らがどんな攻撃を仕掛けてくるかわからん。&br;俺は貴様らとは別行動を取らせてもらう。| |~二階堂紅丸|お、つまり俺たちがピンチになったら&br;駆けつけてくれるってことか? 優しいね、八神。| |~八神庵|…………。| |~矢吹真吾|や、八神さんの出番なんてないくらいに&br;おれたちがナギさんたちをやっつけますから!| |~八神庵|やれるものならな。| |~矢吹真吾|ううう……八神さんの顔、怖い……。| |~ロバート・ガルシア|よーし、頼もしい味方も入ったことやし、&br;気合入れて行こか! がんばろな、みんな!| |~八神庵|勝手に仲間扱いするな。俺は……。| |~ロバート・ガルシア|細かいことは気にしたらあかんって。&br;それじゃ、ぼちぼち行こか。| |~〇×|(八神さん、一人で大丈夫かな……。)| |~八神庵|おい、女。| |~〇×|え? あ、は、はい!| |~八神庵|……貴様には、感謝している。| |~〇×|え?| |~八神庵|貴様の語る運命愛とやら、俺に見せてみろ、女。| |~〇×|あ……はい、もちろんです! あと、私の名前は女じゃなくて&br;〇×ですよ。| |~八神庵|ああ、そうだな。覚えておいてやろう。| #endregion //---------- **14話 [#story_14] #region(ネタバレ注意) |~〇×|(鍾乳洞での一件の後、私は気を失い、&br;気がついたらいつもの場所に戻って来ていた。)| |~二階堂紅丸|お目覚めかい、眠り姫。| |~〇×|う……すみません……。えっと、&br;ナギさんとヨミさんがいなくなって、それから……。| |~草薙京|ひとまず、これからどうするか相談するために&br;こっちに戻ってきた。| |~マキシマ|とはいえ、手掛かりになるものなど&br;何ひとつ無いから、どうしたものかと難儀しているがな。| |~〇×|そうですか……。&br;あの、八神さんは……。| |~草薙京|あのあと一人でどっか行っちまったよ。| |~草薙京|×のことが気がかりじゃねえのかって言ったら&br;貴様らが面倒を見ろ、だとさ。| |~〇×|そうですか……。| |~〇×|(八神さん、どこに行ったんだろう……。&br;無事だといいんだけど……。)| |~〇×|……! 八神さんからの電話!&br;は、はい、もしもし!?| |~〇×|……え?| |~草薙京|おい、どうしたんだマネージャー。| |~〇×|……あの、八神さんにこの場所のこと、&br;教えても大丈夫ですか?| |~マキシマ|構わんが、どうしてだ?| |~〇×|八神さんが、ヨミさんを保護したそうです。| |~ヨミ|…………。| |~〇×|ヨミさん、苦しそう……。&br;目を覚ましてくれるでしょうか……。| |~八神庵|どうだろうな。奴は死のうとしていた。&br;すでに手遅れという可能性もある。| |~〇×|どうして、ヨミさんがそんな……。| |~八神庵|ナギと仲間割れでもしたのだろう。&br;うわ言のようにナギの名を呼んでいた。| |~草薙京|しっかし、なんだってお前、ヨミの野郎を助けたんだ?| |~八神庵|一人で行動しているこいつを捕らえ、&br;情報を吐き出させようと思ったまで。| |~八神庵|それ以外の理由はない。| |~マキシマ|まあ、手掛かりらしい手掛かりも無い中、&br;ヨミがいるのは助かるな。| |~〇×|で、でも、情報を吐き出させるって……&br;ヨミさん、簡単に話してくれるでしょうか?| |~八神庵|力ずくでやれば問題なかろう。| |~マキシマ|手段を選んじゃいられないしな。| |~〇×|で、できれば穏便にお願いします。&br;ヨミさんにだって事情はあるでしょうし……。| |~八神庵|甘いな、女。世界を救うことと、この男一人を救うこと、&br;どちらが大事だと言うんだ。| |~八神庵|貴様が望むのは世界を救うことなのだろう。&br;この男一人の犠牲で、貴様の望みは叶うかもしれんのだぞ。| |~〇×|ですが、誰かの犠牲のうちに成り立つ平和が&br;本当の平和だとは……私は思いません。| |~八神庵|自分の身体を犠牲にしている女が言うことではないな。| |~〇×|…………そう、ですね。| |~八神庵|何かを為すには犠牲はつきものだ。&br;だが、犠牲を軽くすることはできる。| |~八神庵|軽くしてやることくらいは、してやっても構わん。&br;貴様のことも、この男のこともな。| |~八神庵|……自身の力でどうにかできることはする。&br;貴様の言葉に乗ってやった。| |~〇×|八神さん……!| |~草薙京|なーんか、らしくねえな八神。&br;マネージャーのおかげで変わったか?| |~八神庵|貴様を殺す意志だけは永遠に変わらん。| |~草薙京|なんだ、いつもの八神だな。安心したぜ。| |~矢吹真吾|ちょっ、た、大変っす!&br;ニュース、ニュース見てください!!| |~アナウンサー|突如として沖縄は禍々しいモヤに包まれ、&br;現地は混乱に陥っています!| |~アナウンサー|交通機関も運航を停止し、&br;沖縄へは出ることも入ることもままならず――| |~アナウンサー|我々は取材ヘリで上空から様子を見ていることしか&br;できません!| |~草薙京|なんだこりゃ。今まで見て来た中で&br;一番とんでもないもんじゃねえか。| |~マキシマ|これも、ナギによるものなのか……。| |~八神庵|すべてはこの男から聞き出せばいいこと。&br;どんな情報が出るかはわからんがな。| |~〇×|どんなことであっても、私は受け入れたいと思います。&br;それが私の運命なら――| |~〇×|それを大事にしたいと思います。| |~八神庵|フン。ならば貴様のその気概、&br;俺が見届けてやろう。| #endregion &aname(top){上へ戻る}; //---------------------------------------- *4章 [#chapter_4] **15話 [#story_15] #region(ネタバレ注意) |~ビリー・カーン|しっかし、まさか八神がオレらの仲間になるとはな。| |~八神庵|仲間ではない。ただ行動を共にしているだけだ。| |~包|そういうの、仲間って言うんだよ~。| |~八神庵|…………。| |~〇×|(沖縄へ行くことになって、八神さんも&br;ついてきてくれることになって……。)| |~〇×|(こうしてみなさんと一緒に八神さんがいるって&br;なんだか不思議な光景だな。)| |~ビリー・カーン|言っておくけどよ八神。昔のKOFでのこと、&br;忘れたわけじゃねェからな。| |~八神庵|昔……?| |~ビリー・カーン|とぼけんなよ。KOFが終わったあと、&br;オレらをボコボコにしたこと……。| |~八神庵|覚えていないな。| |~ビリー・カーン|てめえっ!| |~〇×|あ、あのっ! む、昔のKOFって、&br;いったい何があったんですか?| |~ビリー・カーン|……あぁ、オレは前に、&br;コイツとチーム組んでKOFに出たことがあったんだよ。| |~ビリー・カーン|もう一人、極限流を目の敵にしている忍者も入れてな。| |~〇×|に、忍者……。| |~アンディ・ボガード|僕が師事した不知火流も忍術の流派だからね。&br;現代にも忍術は存在しているんだよ。| |~リョウ・サカザキ|さすが忍者と言ったところか。神出鬼没で、&br;唐突に目の前に現れることが多い。| |~ロバート・ガルシア|今も実はこのジェット機に乗っとったりしてな!| |~二階堂紅丸|いやいや、二階堂家のセキュリティは完璧さ。&br;不法侵入は見過ごさないよ。| |~ビリー・カーン|で、まあチームを組んで出場したのはいいが、&br;大会が終わったあとにこいつ、オレらをボコボコにしたんだ。| |~〇×|八神さん、どうしてそんなこと……。| |~八神庵|俺の目的は京を殺すこと。&br;それに奴らが邪魔だっただけだ。| |~ビリー・カーン|そんな理由でボコられて、&br;はいそうですかって納得できるかよ。| |~マキシマ|まあ、なんだ。その辺りの決着は、&br;すべてが終わってからすればいい。| |~マキシマ|このままじゃ全員がボコボコどころでは&br;済まないことになってしまうからな。| |~ビリー・カーン|そうだな。仲間割れしてる場合じゃねェか。| |~八神庵|だから仲間ではないと言っている。| |~ビリー・カーン|八神くんは最高の仲間だぜ、ってな。ははは!| |~八神庵|………………。| |~ビリー・カーン|チッ、挑発にも乗らねェか。&br;なんかほんと、大人しくなったな、八神。| |~〇×|八神さんは、確かにおっかないところも&br;あるかもしれませんが……。| |~〇×|でも、優しいところもありますよ。&br;ですよね、八神さん。| |~八神庵|……フン。| |~草薙京|お、照れてんのか八神。| |~八神庵|照れてなどいない。| |~包|照れてる~。八神さんにもかわいいところあるんだね♪| |~八神庵|それ以上喋れば子どもであろうと容赦はせんぞ。| |~包|わあっ、こわ~い!&br;×お姉ちゃん、助けて~!| |~八神庵|くだらん児戯だ……。| |~テリー・ボガード|まあ、なんにせよこの先沖縄で&br;一緒に戦っていくことには変わりない。| |~テリー・ボガード|だからさ、よろしく頼むぜ、八神。| |~ジョー・東|期待してるからな!| |~八神庵|当然だ。| |~〇×|(八神さん、なんだかんだでみなさんの中に&br;溶け込んでいるみたい。)| |~〇×|(やっぱり、KOFで何度も顔を合わせている仲だし、&br;格闘家同士だからこそわかることとかあるんだろうな。)| |~矢吹真吾|みんなで力を合わせて頑張りましょー!&br;おーっ!| #endregion //---------- **16話 [#story_16] #region(ネタバレ注意) |~〇×|はぁ……はぁ……ええと、次に浄化する人は……。| |~草薙京|マネージャー。働きすぎて息切れしてるぞ。&br;少し休んだほうがいいんじゃねえか。| |~包|暴徒はみんな気を失ってるみたいだし、&br;すぐには起きないと思うから休もう、お姉ちゃん。| |~〇×|ごめんなさい……それじゃあ、少しだけ……。| |~八神庵|……献身的なものだな。| |~〇×|少しでも多くの人を助けたいですから。| |~〇×|八神さんは、大丈夫ですか?| |~八神庵|…………。| |~草薙京|このあたり、やっぱナギの力が集中してるせいか&br;モヤがすげえ濃いよな。| |~草薙京|八神お前、また暴走するんじゃねえのか。&br;ナギの祝福とやらで暴走しやすくなってんだろ、お前。| |~八神庵|……今のところは抑えている。&br;だが、これが持続する保証はできん。| |~草薙京|そのままこらえてくれよ。&br;オレだって体力の無駄遣いはしたくねえしな。| |~ヨミ|……八神庵。まだ、祝福の力が残っているのか。| |~八神庵|そのようだ。&br;まったく、厄介ごとを寄越してくれたものだな。| |~ヨミ|ナギ様のおそばにいた間であれば、&br;貴様のその祝福を解くこともできたが……。| |~ヨミ|今の俺はただの人間。そのような力は持ち合わせていない。| |~八神庵|持っていたらこの場で解いたとでも言うのか。| |~ヨミ|…………。| |~八神庵|仮に貴様に今、解く力があったとしても不要だ。&br;この力はナギを倒すことでナギに返す。| |~八神庵|俺を失敗作呼ばわりしたことを後悔させてやろう。| |~ヨミ|……あのとき、貴様を殺さずに捨て置いたこと。&br;その選択がよいものであったかどうか……。| |~ヨミ|見極めさせてもらうぞ、八神庵。| |~八神庵|……勝手にしろ。| #endregion //---------- **17話 [#story_17] #region(ネタバレ注意) |~椎拳崇|……だいぶモヤが濃うなってきたな。&br;ちょい待ち、ここで給油しとくわ。| |~椎拳崇|10分休憩な。時間厳守やでえ!| |~〇×|街中モヤが濃くて、息が詰まりますね……。| |~八神庵|ああ、そうだな。…………。| |~〇×|あ、向こうに雑貨屋さんがありますよ。&br;八神さん、ちょっと気分転換に行ってみませんか?| |~八神庵|……ああ。| |~〇×|わあ、かわいいアクセサリーがたくさん。| |~店員|いらっしゃいませ、ごゆっくりご覧ください。| |~八神庵|こんな状況でも店を開けているとは、大した商魂だな。| |~〇×|こんなときだからこそ、かもしれません。&br;かわいい雑貨を見るとやっぱり嬉しくなりますし。| |~〇×|(最近は忙しくて、あんまりゆっくり&br;自分の買い物することもなかったからな……。)| |~八神庵|そういうものか。……ん?| |~〇×|八神さん、何か気になるものがありましたか?| |~八神庵|いや、ここは犬猫の首輪も売っているのだな、と&br;思っただけだ。| |~〇×|あ、本当だ。&br;これとか、つーちゃんに似合いそうですね。| |~八神庵|……あいつは、今頃どうしているだろうな。| |~〇×|……きっと、八神さんの帰りを待ってると思います。&br;だって、つーちゃん八神さんのことが大好きですから。| |~〇×|つーちゃんは今もライブハウスに?| |~八神庵|ああ。観客にもかわいがられているらしい。| |~〇×|ふふっ、よかった。そう聞いて安心しました。| |~〇×|……よかったらこれ、お土産に買いましょうか。&br;渋谷に帰ったら、つーちゃんに付けてあげましょう。| |~八神庵|……そうだな。| |~〇×|じゃあ、買ってきますね。| |~八神庵|おい、自分の欲しいものはないのか。| |~〇×|できればいろいろと見て回りたいですが、&br;そんな余裕もないですし……。| |~〇×|世界が元に戻ったら、&br;ゆっくり自分の買い物をしたいと思います。| |~八神庵|…………そうか。| |~椎拳崇|よし、みんなおるな。&br;そんじゃそろそろ出発し――| |~暴徒A|ウウウウ……ッ!!| |~椎拳崇|おわっ!? て、敵が来おったで!?| |~草薙京|チッ、しょうがねえ。とっとと片づけるぞ。| |~八神庵|……ああ。| |~草薙京|ボディがお留守だぜ!| |~八神庵|うおおおっ!| |~暴徒A|グ、グオオオオッ!!| |~暴徒B|ガアアアッ!!| |~矢吹真吾|ぜ、全然怯んでないっすよ!?| |~八神庵|……おそらく、ナギの影響力が強く出ているのだろう。&br;だがそんなこと関係な……――っ!| |~〇×|八神さん!| |~八神庵|う、グ……ッ!! グウウ……ッ……。| |~草薙京|チッ、こいつまでナギの影響受けてやがんのかよ!&br;こらえろっつっただろ!| |~八神庵|お、れ……ハ……&br;う、ぐう……!| |~〇×|(八神さん、必死に暴走をこらえてる……!&br;なんとか助けないと……っ。)| |~暴徒A|ウオオオオッ!| |~テリー・ボガード|パワーチャージ!| |~テリー・ボガード|暴徒たちは俺らに任せてくれ!&br;八神のことは京と×に任せた!| |~草薙京|へっ、結局こいつの面倒見る羽目になるんだな。&br;来いよ八神!| |~八神庵|う、ウ……き、京……!| |~〇×|八神さん! 正気に戻ってください!&br;お願いですから……!| |~八神庵|ヤメロ、女……ッ!!| |~〇×|…………っ!| |~〇×|(手を振り払われた……けど、&br;八神さんの目は……いつもの八神さんだ……。)| |~暴徒C|ウオオオオオッ!| |~草薙京|――! こっちからも暴徒が……!&br;マネージャー、逃げろ!| |~八神庵|……っ、どうしたあっ!| |~暴徒C|グアッ……!| |~草薙京|八神、お前……。| |~八神庵|……フン、正気に戻れだと? 俺は元より正気だ。&br;ナギの力などに惑わされはしない。| |~草薙京|よく言うぜ。結構ギリギリだったんじゃねえのか?| |~八神庵|さあな。それより、さっさと片を付けるぞ。| |~草薙京|言われなくても。| |~暴徒C|グア……ッ!| |~八神庵|遊びは終わりだ! 泣け! 叫べ!&br;そして、死ね!| #endregion //---------- **18話 [#story_18] #region(ネタバレ注意) |~〇×|いよいよ、決戦のときですね、八神さん。| |~八神庵|……ああ。……震えているようだが。| |~〇×|こ、これは、その……武者震いというやつです。| |~八神庵|フ……強がりを。| |~〇×|(……あ、今の八神さんの笑顔、&br;なんだかちょっと優しそうに見えた。)| |~〇×|ふふっ。| |~八神庵|なんだ、何がおかしい。| |~〇×|いえ。……頑張りましょうね、八神さん。| |~八神庵|……ああ。このようにナギの力が強い中でも、&br;俺は正気を保てている。| |~八神庵|このまま、ナギに祝福の力とやらを突き返そう。| |~〇×|できます、絶対に。| |~八神庵|それと……貴様に渡すものがある。| |~〇×|私に?| |~八神庵|目を閉じていろ。| |~〇×|(なんだろう……。)| |~八神庵|そのままじっとしているんだ。&br;動くんじゃないぞ。| |~〇×|(……八神さんがすぐそばにいる気がする。&br;首のあたりに、何か冷たいものが……。)| |~〇×|(八神さんの心臓の音が聞こえる……。)| |~八神庵|もういいぞ、目を開けろ。| |~〇×|……八神さん、これは……。| |~〇×|(ネックレス……?)| |~八神庵|雑貨屋で、欲しいものがないのかと聞いたら、&br;ゆっくり見て回る余裕がないと言っていただろう。| |~八神庵|だから代わりに俺が、&br;貴様に合いそうなものを見繕ってやった。| |~八神庵|不満ならばそのあたりにでも捨てておけ。| |~〇×|不満だなんて!&br;とっても嬉しいです、ありがとうございます。| |~〇×|(ネックレスが光ってきれい……。)| |~〇×|……ふふっ、これをつけてると、&br;力がわいてくるような気がします。| |~八神庵|その力で、ナギを倒すぞ。&br;…………×。| |~〇×|はい。………………あれ?| |~〇×|八神さん、今、私の名前……。| |~八神庵|…………。| |~〇×|ふふっ。やっと私の名前、呼んでくれましたね。| |~八神庵|……行くぞ、×。| |~〇×|はいっ、八神さん!| #endregion //---------- **19話 [#story_19] #region(ネタバレ注意) |~〇×|(すべて、終わった。世界は元通りになって、&br;たくさんの人がKOFを見て楽しんでいる。)| |~〇×|八神さん、本当にKOFには出場しないんですか?| |~八神庵|ああ。チームメンバーもいないしな。| |~〇×|そうですか……。八神さんがKOFに出るところ、&br;ちょっと見てみたかったです。| |~八神庵|いずれ機会はあるだろう。| |~〇×|そうですね。道場での仕事は続けますし、&br;次の大会では、ぜひお会いしたいです。| |~〇×|よかったら道場にも遊びに来てください。| |~八神庵|そこには京もいるんだな。&br;…………。| |~〇×|あ、あの、殺すとかそういうのはやめてくださいね……?| |~八神庵|善処しよう。| |~〇×|(善処…………。)| |~ナギ|やあ、ヒメ。それに庵。二人とも楽しそうだね。| |~ナギ|特に庵。君の表情、&br;ずいぶん晴れやかになったように見えるよ。| |~ナギ|僕が来るたびに睨みつけて歓迎してくれていたのが&br;嘘のようだね。| |~八神庵|…………何の用だ。| |~ナギ|君に祝福の力を授け、苦しめたこと。&br;それを謝ろうかと思って。| |~ナギ|君の執念には驚かされたよ。京への執着心……&br;それがあれば、君は長生きできそうだ。| |~八神庵|それは謝罪の言葉と言えるのか?| |~ナギ|あ、うーん……どうなんだろう?&br;ヒメはどう思う?| |~〇×|え、えーっと……謝るときはやっぱり、&br;ちゃんとごめんなさいって言ったほうがいいと思います。| |~ナギ|じゃあ、ごめんなさい、庵。| |~八神庵|……まるで謝罪を受けている気がしない。&br;いやそもそも謝罪などいらん。| |~ナギ|君がKOFに出てくれないのが残念だよ。&br;君がいたら、もっと早く世界は回復するのに。| |~八神庵|つまり俺がいなくても問題はないということだろう。&br;ならば知ったことではない。| |~ナギ|そうか。……じゃあ、僕はここで失礼するよ。&br;KOF主催として、やることがたくさんあるからね。| |~ナギ|それじゃあ、これからもよろしくね。| |~八神庵|……まったく。得体の知れない輩だ。| |~八神庵|だが、以前に比べて奴もまた、&br;晴れやかな顔になったと思う。| |~〇×|ええ、そうですね。神様としての使命とか、&br;そういうのから解放されたというか……。| |~八神庵|……神は死んだ。| |~〇×|あ、それもツァラトゥストラに関係する&br;言葉でしたよね。| |~八神庵|ああ。……まあ、厳密にはいろいろと&br;意味があるようだが……。| |~八神庵|今あの場にいるのは、&br;ナギという一人の男だ。| |~八神庵|そして俺も、八神庵という一人の男として、&br;×という一人の女のことを見てやろう。| |~〇×|私も……八神さんのこと、ずっと見てます。| |~八神庵|…………ああ。| |~猫|にゃーん!| |~〇×|え、つーちゃん!?| #endregion //---------- **エピローグ [#story_20] #region(ネタバレ注意) |~猫|にゃあ~! ゴロゴロゴロ……。| |~〇×|どうしてつーちゃんがここに……。| |~ボーカル|ああもう、足が速いんだから……&br;って、八神! それに八神の彼女さん!| |~八神庵|貴様、何故ここにいる。| |~ボーカル|あれ、彼女ってところ否定しないのか?| |~八神庵|…………。| |~ボーカル|まあいいや。KOFの主催者からさ、&br;大会を盛り上げるために来てくれって依頼があったんだ。| |~ボーカル|八神がうちのバンドにいるって、&br;主催の人よく知ってたよなあ。| |~八神庵|…………。| |~ナギ|…………ふふっ。| |~八神庵|それで、何故猫までいるんだ。| |~ボーカル|それが、猫に長旅はきついだろうからペットホテルに&br;預けようとしたんだけどさ。| |~ボーカル|ペットホテル嫌がって、もうにゃあにゃあ泣いてさ。&br;仕方なく連れて来たんだ。| |~猫|ゴロゴロゴロ……。| |~ボーカル|きっと八神に会いたかったんだろうな。| |~八神庵|……フン。| |~〇×|ふふっよかったねつーちゃん。&br;あ、そうだ。新しい首輪買ったの。| |~〇×|ホテルにあるから、あとでつけてあげるね。| |~猫|にゃ!| |~ボーカル|と、いうわけでバンドやるぞ八神!&br;主催者はお前もご指名だからな。| |~八神庵|…………仕方あるまい。だが、一つだけ&br;俺の言うことを聞いてもらうぞ。| |~ボーカル|八神の頼みならなんでも!| |~八神庵|……本当は東京に戻ってから、あらためて貴様を&br;招待し、聴かせる予定だったが、予定が変わった。| |~八神庵|×。このライブ、必ず来い。| |~〇×|え……? は、はい!| |~女性A|いおりんの久々のライブ楽しみ~!&br;東京からわざわざ来てよかった~!| |~女性B|この間は調子悪かったけど、&br;今日は大丈夫かな?| |~女性A|大丈夫だよ、だっていおりんだもん!| |~〇×|(ふふっ、八神さん、ファンの人たちに&br;愛されてるんだな。)| |~〇×|(必ず来いって言われたけど、何があるんだろう……。)| |~八神庵|……待たせたな。| |~ボーカル|みんな、準備はいいか!?| |~八神庵|…………。| |~〇×|(八神さん、懸命にベースを弾いてる。&br;初めて見た時……それ以上に、かっこいい……。)| |~女性A|いおりーん! さいこ~~!!| |~女性B|いつものいおりんらしい……ううん、&br;これまでのいおりんから更に格好よくなった!| |~ボーカル|みんな、盛り上がってるか~!?| |~ボーカル|今日はなんと、八神が作った新曲を披露するぜ!| |~女性A|新曲!? マジ!?| |~ボーカル|けどその前に、八神から大事な話があるらしい。&br;みんな、聞いてくれ!| |~八神庵|…………。| |~〇×|(八神さん……今、こっち見た……?)| |~八神庵|……ここしばらく、いろいろなことがあった。&br;幾度となく困難が待ち受けていた。| |~八神庵|だがそんな中でも、懲りずに前を向き、&br;行動を起こす奴らがいた。| |~八神庵|その中でも一層往生際が悪く、諦めも悪い女がいた。&br;だがその女の力あって、俺は今、ここに立っている。| |~八神庵|その女の気持ちに少しでも報いたい。&br;……少しでも、この感謝を伝えたい。| |~八神庵|……俺に出来ることは少ない。&br;だから、その女を想って、曲を作った。聞いてほしい。| |>|♪~| |~女性A|……。&br;……今までと、全然違う……。| |~女性B|いおりんが選んだんだもん。素敵な女性なんだろうね。&br;だったら応援するしかないよね……。| |~八神庵|……。| |~〇×|(八神さん、私を見てくれている……。)| |~〇×|(優しいメロディ……、なんだか私まで涙が……。)| |~八神庵|……待たせたな。| |~〇×|八神さん、お疲れ様です。&br;今日のライブ、とっても素敵でした。| |~猫|にゃーん!| |~〇×|ふふっ、つーちゃんも&br;ライブ楽しかったって言ってます。| |~八神庵|猫の言葉などわかるはずがないだろう。| |~〇×|でも、そんな気がするんです。本当に、&br;最高のライブでしたから……。| |~〇×|特に八神さんが作ったという曲……。&br;優しいメロディで、ずっと聴いていたいくらいでした。| |~八神庵|これからいくらでも聴かせてやる。&br;あれは、貴様に捧げる曲だからな。| |~〇×|八神さん……。ありがとうございます。| |~〇×|あの曲……暖かくて、綺麗で、&br;なんだかとても幸せな気分になりました……。| |~八神庵|ふっ、幸せと言いながら泣くとは。&br;ライブの時もそうだったな。| |~〇×|み、見えていたんですか?| |~八神庵|ああ。&br;ずっと、な。| |~八神庵|……だが、貴様に涙は似合わん。&br;笑っていろ。俺の曲を聴いて、笑え。| |~〇×|……曲だけではありません。八神さんの声、表情、&br;いろんなものを見て、聞いて、笑います。| |~八神庵|……ふっ。口が達者だな。| |~八神庵|まさか、俺がこんなに&br;他人へ情を抱くことになろうとはな。| |~八神庵|……×。| |~〇×|……なんですか?| |~八神庵|……触れてもいいか?| |~〇×|……はい。| &attachref(アルバム /サイドスチル/SSスチル_八神庵.jpg,zoom,,259x200); |~〇×|(八神さんの手が、私を絡めとる。&br;まるで、もう逃がさない、というように。)| |~八神庵|ふっ。貴様の手は小さいな。| |~〇×|八神さんの手が、大きいんです……。| |~八神庵|そんなことはない。&br;……小さいだけではなく、華奢ですぐに折れてしまいそうだ。| |~八神庵|こんな手で、戦い続けていたのか。| |~〇×|八神さん……。| |~八神庵|戦うこと、京を殺すこと。それだけが俺の生きがいで、&br;それ以外には不要だと思っていた。| |~八神庵|だが……それ以外にも必要なものができた。&br;これもまた、運命というものか。| |~八神庵|貴様と運命を共にし、受け入れること。&br;……悪くない。| |~〇×|……これからも、一緒にいましょうね、八神さん。| |~八神庵|ああ。| |~猫|にゃあん!| |~〇×|あ、もちろんつーちゃんも&br;一緒だよ。| |~八神庵|……。&br;×。| |~〇×|はい。| |~八神庵|……ネックレス、付けてくれているんだな。| |~〇×|はい……毎日つけています。| |~八神庵|……よく似合っている。| |~〇×|ありがとうございます……。| |~八神庵|次の新曲も考えている。&br;これも貴様に向けた曲だ。| |~八神庵|貴様といると、曲のアイディアが出てくる。&br;不思議なものだ。| |~〇×|聴かせてください。八神さんの曲、もっと、たくさん。| |~八神庵|……ああ。もちろんだ、×。| #endregion &aname(top){上へ戻る}; データ参照プラグイン 入力支援ツールを表示 ▼参照先ページ選択:データを表示 元データの書式(インラインプラグイン)を継承する