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解放条件
#region
|~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他|
|1話|5|1||
|2話|19|5||
|3話|21|10||
|4話|21|15||
|5話|23|20||
|6話|24|24||
|7話|24|28||
|8話|28|32||
|9話|29|36||
|10話|33|40||
|11話|35|43||
|12話|37|46||
|13話|37|49||
|14話|37|52||
|15話|41|55||
|16話|41|58||
|17話|47|61||
|18話|51|64||
|19話|51|67||
|エピローグ||70|メインストーリー4章29話読了|
|~話数|~プレイヤー&br;ランク|~キャラクター&br;ランク|~その他|
#endregion
*1章 [#chapter_1]
**1話 [#story_01]
#region(ネタバレ注意)
|>|私は、京さんたちと一緒に、格闘家のみなさんとの&br;飲み会へ向かっていた――|
|~〇×(主人公)|リョウさんたちの試合、すごかったですね。&br;私、まだドキドキしてます……。|
|~草薙京|なんだよ。まだそんなこと言ってんのか?|
|~〇×|あんなに激しい戦いを目の前で見たら、&br;胸がいっぱいになってしまって……。|
|~草薙京|ったく、そうやってぼんやり歩いて、&br;転んでも知らねえぞ。|
|~二階堂紅丸|ふふ、その時は俺が×ちゃんを&br;受け止めるから、大丈夫だよ。|
|~二階堂紅丸|それとも、俺が手をとってエスコートしようか?|
|~〇×|い、いえ! 大丈夫です、ありがとうございます。|
|~矢吹真吾|〇さん、無理はしないでいいっすからね!&br;疲れたら、いつでも言ってください!|
|~〇×|うん。真吾くんもありがとう。|
|~〇×|(……本当は、靴擦れしてて歩きづらいんだけど、&br;飲み会のお店までくらいなら、平気そうかな。)|
|~二階堂紅丸|……なんだ? 随分センスのいい車が停まったじゃないか。|
|~草薙京|オープンカーかよ。すかしてんな。|
|~矢吹真吾|わー、かっこいいっすね。&br;どんな人が乗ってるんでしょう?|
|~〇×|(あれ? 運転席の人がこっちに手を振ってる?)|
|~〇×|あ、あの人、ロバートさんじゃないですか?|
|~ロバート・ガルシア|どーも、×ちゃん。&br;さっきは控室まで来てくれて、ありがとうな。|
|~ロバート・ガルシア|もしよかったら、ワイの車で一緒に行かへん?&br;特別サービスで乗せてったるで。|
|~二階堂紅丸|なんだよ、ロバート。随分いい車に乗って来たと思ったら、&br;×ちゃんを、さらって行くつもりなのか?|
|~矢吹真吾|そうっすよ! 〇さんだけじゃなくて、&br;おれたちも乗せてってください!|
|~ロバート・ガルシア|それがな、後部座席見てくれん?|
|~〇×|……あ、包くん。&br;すごく気持ちよさそうに寝てますね。|
|~ロバート・ガルシア|そういうこと。&br;つまり、むっさい男たちを乗せるスペースはないわけやな。|
|~ロバート・ガルシア|さ、ワイの車はレディ優先やで。&br;×ちゃん、助手席でよければ乗ってくれや。|
|~〇×|で、でも……。|
|~〇×|(京さんたちを置いて、&br;私だけってわけにはいかないよね。)|
|~草薙京|〇、いいから乗っていけよ。|
|~〇×|え? でも、私だけ乗せてもらうなんて悪いですよ。|
|~二階堂紅丸|ふふ、×ちゃんは優しいんだね。&br;でも気にしないで大丈夫だよ。|
|~矢吹真吾|おれもオープンカーに乗ってみたかったですけど、&br;今回は〇さんに譲ります。|
|~草薙京|〇、じゃあ後でな。&br;紅丸、真吾、行くぜ。|
|~〇×|(あ、京さんたち行っちゃった……。)|
|~ロバート・ガルシア|ほな、×ちゃんはワイの車で決まりやな。&br;ほら、はよ乗りや。|
|~〇×|は、はい。よろしくお願いします……。|
|~ロバート・ガルシア|なんや、×ちゃん、京らのこと気にしとんの?|
|~〇×|はい。私、みなさんのマネージャーを任されてるのに、&br;一緒に行かなくてよくなかったかなって……。|
|~〇×|(本当は、靴擦れが痛いから、乗せてもらえるのは&br;嬉しいけど、やっぱりよくないよね。)|
|~ロバート・ガルシア|そんなん平気やて。&br;×ちゃんは真面目な子なんやなー。|
|~ロバート・ガルシア|それに、×ちゃん、足靴擦れしとるやろ。&br;そういう時は、無理せんどけばええねん。|
|~〇×|え? そうですけど、なんでわかったんですか?|
|~ロバート・ガルシア|歩き方を見て、靴擦れしとんのやろなって。|
|~ロバート・ガルシア|京と紅丸も気付いてたんちゃうかな。&br;真吾のやつは、どうか知らんけど。|
|~〇×|そうだったんですか。&br;私、飲み会のお店までなら、歩けるかと思って。|
|~ロバート・ガルシア|そうは思うても、無理は禁物やで。&br;京らも、大事なマネージャーに無理させたくないやろ。|
|~ロバート・ガルシア|ちょっとでもしんどい時は、いつでも言うんやで。&br;少なくとも、ワイは×ちゃんのこと、放っとかへん。|
|~〇×|はい。ありがとうございます。|
|~〇×|(ロバートさんとふたりで話すの初めてだけど、&br;なんだか前から知ってたような、話しやすい人だな。)|
|~〇×|(……ロバートさんの車でしばらく走って来たけど、&br;ずっと歩行者の視線を感じる。)|
|~女性A|ねえねえ! 信号待ちしてる車の男の人、&br;すっごくかっこいいね!|
|~女性B|ほんとだ! それに乗ってる車も、すごい素敵!|
|~〇×|(歩いてる女の人たちの声が聞こえてくる。&br;うん、確かにロバートさんって格好いいよね。)|
|~ロバート・ガルシア|どーも。お嬢さんら、声援ありがとな。|
|~女性A|手を振ってくれたー!|
|~女性B|きゃー! 笑った顔も素敵ー!|
|~〇×|(ロバートさん、笑顔で女の人たちに手を振ってる。&br;なんだか、こういうことも様になっちゃう人だな。)|
|~ロバート・ガルシア|すまんなあ。ワイがオープンカーに乗っとると、&br;こういうことが多いんや。落ち着かんやろ。|
|~〇×|い、いえ、ちょっとびっくりしちゃうけど、&br;大丈夫ですよ。|
|~〇×|(ロバートさん格好いいし、こういう車に乗ってると、&br;すごく目立つんだろうな。)|
|~ロバート・ガルシア|ほなよかった。&br;飲み会の店に着くまで、もうちょい寛いでってや。|
|~ロバート・ガルシア|あ、そや。今乗っとるこの車、実は日本で借りたもんなんや。&br;ワイの愛車は、国に置いてきてしもうてな。|
|~ロバート・ガルシア|ワイの車、めっちゃ格好ええんやで。&br;×ちゃんに見せたかったわ。|
|~〇×|(この車でも周りの注目を集めてるのに、&br;愛車だったら、ロバートさんもっと目立っちゃうのかな?)|
|~女性C|――ねえねえ。あの車の男の人、すっごいかっこよくない!?|
|~〇×|(信号待ちで、また黄色い声が聞こえてきた。&br;私が見られてるんじゃないのに、緊張しちゃうなあ……。)|
|~ロバート・ガルシア|――あ~、そうや、×ちゃん。&br;あんた、いろいろ大変やったみたいやなあ。|
|~〇×|え? 私ですか?&br;えっと……なんのことでしょう。|
|~ロバート・ガルシア|務めてた会社が、倒産してもうたんやろ?|
|~ロバート・ガルシア|紅丸がSNSで、新しいマネージャーのこと呟いててな。&br;それで×ちゃんのことを知ったんや。|
|~〇×|そうだったんですね。&br;はい、そうなんです。突然倒産してしまって……。|
|~ロバート・ガルシア|そうなんか。上の連中もいろいろあったんやろうけど、&br;社員の再就職もサポートせんと、冷たい会社やなあ。|
|~ロバート・ガルシア|ワイがその会社の社長やったら、&br;社員に絶対そんな苦労はさせへんのに……。|
|~〇×|ありがとうございます、ロバートさん。&br;でも、私もう大丈夫ですよ。|
|~〇×|(……とはいっても、やっぱり時々、&br;前の会社のこと、考えちゃうこともあるかな。)|
|~ロバート・ガルシア|ま、元気だしぃや。&br;女の子は笑顔でいるんが一番やで!|
|~〇×|はい。ありがとうございま……きゃっ!|
|~〇×|(きゅ、急にすごいスピードに! びっくりした!)|
|~包|ちょ、ちょっと、どうしたの!?&br;急にすごく揺れたけど!|
|~〇×|あ、包くん起きちゃったね。&br;今、ロバートさんが急にスピードを出したの。|
|~ロバート・ガルシア|ははは、どや? びっくりしたやろ。べおもろかったんちゃう?|
|~包|え、ええ? すごくびっくりはしたけど、&br;突然どうしたの?|
|~ロバート・ガルシア|ははは、すまんすまん、ちょっとした気まぐれってやつや。|
|~〇×|(ロバートさん、私を笑わせようとしてくれたんだな。&br;うん、なんだか楽しくなってきたかも。)|
|>|すっかり起きてしまった包くん、ロバートさんと会話を弾ませつつ、&br;目的地の居酒屋へ向かっていった――|
#endregion
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*2章 [#chapter_2]
**2話 [#story_02]
#region(ネタバレ注意)
|>|私の力のことも、黒いモヤのことも、&br;わからないまま朝を迎えた――|
|~〇×(主人公)|(なんだかあんまり眠れなかったけど、&br;早く朝ご飯の支度をしに行かなくちゃ。))|
|~〇×|(あれ? 道場の方から誰かの声がする。&br;誰かトレーニングしてるのかな?)|
|~矢吹真吾|てやっ!このっ!|
|~ロバート・ガルシア|ハッ! ハッ! トリャッ!|
|~〇×|(ロバートさんと、真吾くん。&br;ふたりとも、こんな早い時間から手合わせしてるんだ。)|
|~矢吹真吾|隙あり!&br;真吾キィィィック!!|
|~ロバート・ガルシア|残念、そっちこそ隙だらけや!&br;とりゃ! とりゃ! とりゃ!|
|~矢吹真吾|くぁっ!&br;くっ! まだまだっ!|
|~ロバート・ガルシア|お、まだ起き上がるん?&br;ほんなら、これはどないや!|
|~矢吹真吾|ひぃっ! 容赦なさすぎっす!|
|~〇×|(ロバートさん、流れるようなキックの連続。&br;真吾くん、防ぐだけで精一杯みたい。)|
|~ロバート・ガルシア|――ふう。&br;まあこんなもんかな。お疲れさん。|
|~矢吹真吾|はあ、はあ……。&br;あ、ありがとうございました……。|
|~ロバート・ガルシア|朝からええ運動になったで。&br;こっちこそありがとな。|
|~矢吹真吾|い、いい運動って……おれはもう限界っす。&br;さすがは極限流師範代、強すぎですよー。|
|~ロバート・ガルシア|いやいや、真吾もなかなか強かったで。&br;なんなら、極限流の門下生にならんか?|
|~矢吹真吾|え? 何言ってるんですか!&br;おれの師匠は、草薙さんだけっすよ!|
|~ロバート・ガルシア|ははは、わかっとるって。&br;冗談や、冗談。|
|~ロバート・ガルシア|ほんで、×ちゃんはどやった?&br;ワイの技、かっこよかったやろ?|
|~矢吹真吾|へ? 〇さん?&br;いつの間に……!|
|~〇×|ふたりの手合わせの途中から、お邪魔してました。|
|~矢吹真吾|ひどいっすよー。声かけてくれれば、&br;もうちょっと格好いいとこ見せたのに。|
|~ロバート・ガルシア|真吾、残念やけど、×ちゃんは&br;ワイに見惚れてたみたいやで?|
|~ロバート・ガルシア|な? そやろ?&br;×ちゃんの熱視線、感じたで。|
|~〇×|えっ! い、いえいえ! そんなことは……!|
|~ロバート・ガルシア|ははっ。そないに全力で否定することないやん。&br;ウブやなぁ。|
|~ロバート・ガルシア|あんときは、正気じゃなかったとはいえ、&br;こんな可愛らしい子を、恐ろしい目に合わせてもうたんやな。|
|~ロバート・ガルシア|嬢ちゃん。ほんま、あんときはおおきにな。|
|~〇×|そんな、気にしないでください……え?|
|~〇×|(ひゃっ! ロバートさんが手を……。)|
|~矢吹真吾|ちょ、ロバートさん、何してるんですか!|
|~〇×|あ、あの、ロバートさん? どうしたんですか?|
|~ロバート・ガルシア|ほんま、女神様みたいな綺麗な手やなあと思ってな。&br;この手がワイらを救ってくれたんやな。|
|~〇×|女神様だなんて。まだ私の能力が何かわかりませんし、&br;それに、あのときはただ必死だっただけですから。|
|~ロバート・ガルシア|その必死な気持ちが、ワイとリョウを救ったんやろ。|
|~ロバート・ガルシア|ほんまおおきに。&br;×ちゃんは、ワイらの命の恩人や。|
|~〇×|そんな、ロバートさんだって、&br;私を逃がすために、戦ってくれたじゃないですか。|
|~ロバート・ガルシア|そりゃそうや。命の恩人を守るのは当然やで。|
|~ロバート・ガルシア|これからは、ワイとリョウが、あんたを助ける。&br;今ここで、誓わせてくれや。|
|~〇×|は、はい。&br;ロバートさん、ありがとうございます。|
|~〇×|(ロバートさん、真剣な目で、誓ってくれた。&br;――私も、何かロバートさんの助けになりたいな。)|
|~ロバート・ガルシア|そう言ってもらえてよかったわ。&br;これから、改めてよろしゅうな。|
|~矢吹真吾|ちょっと、ロバートさん、&br;いつまで〇さんの手を握ってるんですか?|
|~ロバート・ガルシア|お、そういえばワイ、手合わせで汗かいたんやった。&br;いつまでも×ちゃんに引っ付いてたら悪いわ。|
|~ロバート・ガルシア|ほんなら、シャワーでも行ってくるわ。&br;おふたりさん、また後でな。|
|~矢吹真吾|ロバートさん、行っちゃいましたね。&br;おれ、ロバートさんに全然歯が立たなかったっす。|
|~〇×|そういえば、手合わせのあと、ロバートさんのこと&br;『極限流師範代』って言ってたけど、それって……?|
|~矢吹真吾|あれ? 〇さん、知らないんすか?&br;ロバートさんは『極限流』って流派の師範代なんですよ?|
|~矢吹真吾|極限流は、リョウさんが師範で、ロバートさんが師範代で、&br;ふたりは『無敵の龍』『最強の虎』って呼ばれてるんですよ!|
|~〇×|『無敵の龍』に『最強の虎』って、&br;なんだかすごく強そうだね。|
|~矢吹真吾|ですよね! しかも、そう呼ばれるのが納得できるくらい、&br;ふたりはめちゃくちゃ強いんです!|
|~〇×|(ロバートさん、武術の流派の師範代だったなんて、&br;普段の雰囲気からはイメージできない……不思議な人だな。)|
|~ロバート・ガルシア|(×ちゃん、顔赤くして可愛かったなあ。&br;あんなウブな子見たんは、久しぶりや。)|
|~ロバート・ガルシア|(と、あかんあかん。&br;にやけてる場合ちゃう、気い引き締めな。)|
|~ロバート・ガルシア|……さて。かけなおしとくか。|
|~ロバート・ガルシア|――ロバートや。悪いな、カーマン。&br;ずっと電話に出れんかった。|
|~ロバート・ガルシア|そうや、ちぃと憂き目を見る羽目になってもうたが、&br;もう大丈夫や。こっちには女神様がついとる。|
|~ロバート・ガルシア|それより、今回のKOFの主催は、ほんまヤバいで。|
|~ロバート・ガルシア|――大会スポンサーをだまくらかしてくれたこと、&br;よくよく後悔させなあかんようや。|
#endregion
//----------
**3話 [#story_03]
#region(ネタバレ注意)
|>|伊勢へ向かうための買い出し中――|
|~包|×お姉ちゃん、まずはどこのお店に行く?|
|~〇×(主人公)|うーん。どのくらい伊勢にいるかわからないし、&br;着替えとか日用品とか、あとはもしもの時の薬とか――|
|~包|あと、おやつも忘れないでね!|
|~二階堂紅丸|おいおい包。おやつって、遠足に行くんじゃないんだぜ?|
|~包|えー、でもおやつは絶対必要だよ!&br;……ほら、あのお店のお菓子とか、美味しそう!|
|~二階堂紅丸|あっ! おい、包、ひとりで行くな。迷子になるぞ。|
|~〇×|あっ、ふたりとも待ってください!|
|~ロバート・ガルシア|ははは、これから泉の水を浄化して、&br;世界救おうとしとるとは思えんな。|
|~〇×|ふふ、そうですね。&br;なんだか、いつものお買い物みたいです。|
|~ロバート・ガルシア|そうやな。でも伊勢行く前に&br;のんびりみんなで買い物できるんは、今日だけかもな。|
|~ロバート・ガルシア|と、いうわけやから、この貴重な時間、&br;ちょっとワイに貸してくれへん?|
|~〇×|え?&br;ええと、どういう意味でしょう?|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃんが、ワイを救ってくれたことへのお礼、&br;まだしてへんかったやろ?|
|~ロバート・ガルシア|後々なんかできたらって思てたんやけど、&br;こんな状況やし、今お礼させてや。|
|~〇×|そんな、お礼なんて……。&br;それに今は、包くんと紅丸さんを追いかけないと。|
|~ロバート・ガルシア|だーいじょうぶやって。あいつらが迷子になることないやろ。&br;ちょっとくらい別行動したってかまへん。|
|~ロバート・ガルシア|ほら、行こうや。&br;×ちゃんに、来てほしい店があんねん。|
|~〇×|(……ここって、靴のお店?)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、前にワイの車乗った日、靴擦れしてたやん?&br;その靴、合うとらんのやろ?|
|~〇×|実は、そうなんです。長く歩くと少し痛むんですけど、&br;ここ最近、買い替える時間が無くて、そのままで……。|
|~ロバート・ガルシア|あかんあかん。伊勢行ったらたくさん歩くことになるやろし、&br;足に合った靴、買っといたほうがええと思うで。|
|~〇×|あ、あの、『お礼』って、もしかして……?|
|~ロバート・ガルシア|おう、そやで。&br;ワイが×ちゃんに合う靴、買うたるわ。|
|~〇×|そ、そんな、いいですよ。&br;申し訳ないです……!|
|~ロバート・ガルシア|前も言うたやろ、&br;『×ちゃんは命の恩人』やって。|
|~ロバート・ガルシア|ほんまに感謝してるんや。&br;こんくらいのことはさせてもらえんと、困るわ。|
|~〇×|……わかりました。&br;あの、本当にありがとうございます。|
|~ロバート・ガルシア|ええんやって! ほら、×ちゃん足のサイズ何センチ?&br;ワイが、よさそうなん、いくつか見繕ってくるわ。|
|~ロバート・ガルシア|ほらほら、そこの椅子座って。&br;のんびり待っててくれればええからな。|
|~ロバート・ガルシア|とりあえず、ワイが見た中でよさそうなんは、&br;これと、これと、こいつと、こっちと、それと――|
|~〇×|(わあ、ロバートさん、たくさん靴を持ってきてくれた。&br;どれもすごく素敵だなぁ。)|
|~ロバート・ガルシア|ほな、まずはこの靴から履こうか。&br;×ちゃん、足貸してえな。|
|~〇×|ま、待ってください、ロバートさん、&br;私、靴の脱ぎ履きくらい自分でできます……!|
|~ロバート・ガルシア|ええから。任しとき、|
|~〇×|(ロバートさんの手が脚に触れて……。&br;なんだか恥ずかしい……。)|
|~ロバート・ガルシア|――うーん、こっちは違ったな。これもだめや。|
|~ロバート・ガルシア|お、これはどうやろう?&br;×ちゃん、歩いてみてくれへん?|
|~〇×|あ、はい。&br;――そうですね。歩いてみて違和感はないです。|
|~ロバート・ガルシア|うーん、でもなあ、ちょーっと体重のかかり方が悪そうや。&br;なかなか難しいなあ。|
|~〇×|(ロバートさん、すごくこだわって選んでくれてるみたい。)|
|~ロバート・ガルシア|あ、そうや!&br;×ちゃん、ちょっと座って待っててな。|
|~〇×|(ロバートさん、何か思いついたみたいに、&br;嬉しそうに歩いて行った。どうしたんだろう?)|
|~ロバート・ガルシア|――×ちゃん、お待たせ。&br;このスニーカー、履いてみてくれへん?|
|~〇×|これですか? わあ、デザインが可愛いですね……!|
|~ロバート・ガルシア|ええのは見た目だけやないで。&br;この靴のメーカーの靴は、履き心地が抜群なんや。|
|~ロバート・ガルシア|このメーカーはな、めっちゃ企業努力してるんやで。&br;ええ靴を作るための研究を、かかさんのや。|
|~ロバート・ガルシア|いろんな人種、性別、年齢、体形の人の、&br;足に掛かる負荷をデータ化して、靴作りにいかしとる。|
|~ロバート・ガルシア|それに、最高のスポーツシューズを作るために、&br;スポーツチームやスタジアムを、いくつも保有してるんやで。|
|~〇×|なるほど……。いい靴を作るために、&br;頑張ってるメーカーさんなんですね。|
|~ロバート・ガルシア|そうなんや。どうも、創業者の妻が、大ケガして&br;足に後遺症を持っとる人らしくてな。|
|~ロバート・ガルシア|そういうこともあって、よりいい靴、歩きやすい靴を&br;作ることに、情熱を注いでるっちゅう話や。|
|~〇×|そうだったんですか。&br;創業者の人、きっといろいろな思いがあるんでしょうね……。|
|~ロバート・ガルシア|そういうこっちゃな。さ、×ちゃん、メーカーの&br;努力の結晶の靴、履いて歩いてみてくれんか。|
|~〇×|はい。&br;――わ、この靴とても歩きやすいし、すごく軽いです!|
|~ロバート・ガルシア|うんうん、歩き方もきれいやな。&br;よっしゃ、この靴で決まりや!|
#endregion
//----------
**4話 [#story_04]
#region(ネタバレ注意)
|>|新しい靴のフィッティングが終わり――|
|~〇×(主人公)|(そう言えば、ロバートさんが&br;選んでくれた靴、いくらなんだろう?)|
|~〇×|(――ええっ!?&br;これ、私が想像してた値段と桁が違う……!)|
|~店員|こちら、お買い上げですね。&br;ありがとうございます。|
|~ロバート・ガルシア|プレゼント用に包んでくれはります?&br;ええと、リボンの色は――|
|~〇×|あ、あの、ロバートさん! やっぱりいいです!&br;私、こんな高い靴だって知らなくて。ごめんなさい!|
|~ロバート・ガルシア|なんや? ×ちゃん、まだ遠慮しとるん?&br;ええって。足に合うならそれが何よりやろ?|
|~店員|こちら、お買い上げいただきましたお品になります。&br;お出口までお運びしますね。|
|~ロバート・ガルシア|どうもおおきに。|
|~ロバート・ガルシア|ほら×ちゃん、はよ行くで。|
|~〇×|あ、ちょっと、ロバートさん……!|
|~〇×|あの、あんなに高い靴買っていただいて、本当にすみません。&br;私、ぜんぜん値段を見てなくて。|
|~ロバート・ガルシア|だからええんやって。&br;ええもんは高い。当然やろ?|
|~ロバート・ガルシア|まあ、この大量消費の時代、高級品てのは贅沢品と&br;思われがちやけどな。|
|~ロバート・ガルシア|けど値が張るもんてのは、ええもんを届けようとした人らの、&br;妥協なき理想と、技術の結晶なんやで。|
|~ロバート・ガルシア|そういうんを、ワイらが使っていくんも、&br;ええことなんやないかな?|
|~〇×|(そっか。この靴のメーカーさんも、&br;頑張って靴を作ってくれたんだよね。)|
|~〇×|……そうですね。ありがとうございます。&br;私、この靴大切に履きますね。|
|~ロバート・ガルシア|うんうん。&br;足は第二の心臓や。ええ靴で守っとくんやで。|
|~〇×|(うん、この靴があれば、&br;きっとたくさん歩いても、大丈夫だよね。)|
|~アナウンサー|――速報をお伝えします。|
|~〇×|わっ! びっくりした……。&br;速報……?|
|~ロバート・ガルシア|なんや? あの街頭ビジョンからか。|
|~記者A|ガルシアさん! 今回のKOFの混乱、&br;出資者としてどう思われますか!?|
|~初老の男|…………。|
|~〇×|(報道の人たちが、年配の男性を取り囲んでる?&br;KOFの出資者って、あの人が?)|
|~記者B|ガルシアさん! 何かコメントを!&br;出資者としての責任は――|
|~〇×|(あ、年配の男の人、何も答えずに行っちゃった。)|
|~〇×|ロバートさん、今のは……。|
|~ロバート・ガルシア|ああ。報道の連中が、今回のKOFの混乱についての、&br;出資者側の反応を聞こうとしとるんやろうな。|
|~ロバート・ガルシア|主催者が何も答えへんから、流れ弾を喰らっとるんやろ。&br;まあ、しゃあないわな。|
|~〇×|出資者なら、実際の大会運営はしてないですよね。&br;なのにあんなに追いかけられるなんて、大変ですね。|
|~ロバート・ガルシア|……ああ、そうやな。|
|~〇×|(あれ? ロバートさん、なんだか浮かない表情。&br;さっきの映像のこと、心配してるのかな?)|
|~包|×お姉ちゃーん!|
|~〇×|あっ! 包くんに、紅丸さん!|
|~包|ちょっとロバートさん、酷いよ!&br;×お姉ちゃんを連れてっちゃうなんて!|
|~二階堂紅丸|全くだ。美しいレディの独り占めなんて、許せないな。|
|~ロバート・ガルシア|すまんすまん、ちょいと×ちゃんと&br;デートしたくなってもうて。|
|~〇×|で、デートだなんて、私そんな……!|
|~包|もうっ! ×お姉ちゃん、&br;次は僕に付き合ってもらうからね!|
|~二階堂紅丸|さっき向こうに素敵なカフェを見つけたんだ。&br;そこで休憩なんてどうかな?|
|~包|賛成! 僕、ちょっと喉が渇いてきちゃったんだ。|
|~〇×|それじゃあ、カフェで休憩にしようか。|
|~〇×|あの、ロバートさん? 一緒に行きましょう。|
|~ロバート・ガルシア|あ? ……ああ。ついてくから、先に行っとってくれ。|
|~〇×|わかりました。待ってますね!|
|~報道陣|……ご覧のようにアルバート・ガルシアさんは、&br;報道陣の問いかけに答えることなく――|
|~ロバート・ガルシア|(大勢で取り囲んどいて、『問いかけ』とはな。)|
|~ロバート・ガルシア|――ようやっとかけてくれはったな。&br;テレビ観てたで、親父。|
|~ロバート・ガルシア|ええ加減黙っとらんで、&br;身の振り方考えんとまずいんちゃうか?|
|~ロバート・ガルシア|――!|
|~ロバート・ガルシア|……なんやて?&br;親父、何考えとるんや?|
#endregion
//----------
**5話 [#story_05]
#region(ネタバレ注意)
|>|第一の泉浄化後・山中――|
|~〇×(主人公)|次の泉に行かなきゃいけないのに、&br;休憩になってしまって……すみません。|
|~アンディ・ボガード|気にしないで。&br;泉の浄化には、〇さんの力が必要なんだしね。|
|~ジョー・東|ああ。まずは泉を一つ浄化できたんだ。&br;無理しねーで、確実に進んでいこうぜ。|
|~〇×|はい。ありがとうございます。|
|~〇×|(そうだよね。無理しないで、ちゃんと自分の力を&br;出せるようにしておかなきゃ。)|
|~〇×|(でも、私が泉を浄化しなきゃ、世界が大変なことに&br;なっちゃうなんて、やっぱりプレッシャーだな……。)|
|~テリー・ボガード|×、飲み物はいるか?&br;ずいぶん歩いたからな、水分補給はしておけよ。|
|~包|お菓子もあるよ。&br;×お姉ちゃん、一緒に食べようよ。|
|~〇×|包くん、テリーさん、ありがとうございます。&br;でも、ちょっと近くを歩いてきていいですか?|
|~〇×|せっかくだから、山からの景色を見ようかと思って。|
|~〇×|(これからのこととか、つい考えちゃうし、&br;ひとりになって頭を冷やしてこよう。)|
|~ジョー・東|景色? あ、わかったぜ。泉が淀んでた時の空気で、&br;まだ気持ちが悪いんだろ?|
|~アンディ・ボガード|違うよジョー。&br;誰にだって、ひとりになりたいときがあるものさ。|
|~アンディ・ボガード|〇さん、気分転換してくるのもいいけど、&br;あんまり遠くには行っちゃだめだよ。|
|~〇×|ありがとうございます、アンディさん。&br;落ち着いたら、すぐ戻ってきますね。|
|~〇×|(頭を冷やしたくて、離れてきちゃったけど、&br;みなさんに悪いことしちゃったかな。)|
|~〇×|(はあ……本当に泉を浄化出来ちゃったし、&br;これから私、どうなっていくんだろ――)|
|~ロバート・ガルシア|――せやからん、何度も言うとるやろ!!|
|~〇×|(わ! び、びっくりした。&br;あれ? ロバートさんだ。電話してるみたい。)|
|~ロバート・ガルシア|しつこいわ!&br;なに言われようと、ワイはそっちには帰らへん!|
|~ロバート・ガルシア|親父こそ、ええ加減目ぇ覚ましや!&br;自分がやっとること、おかしいってわからんのか?|
|~〇×|(帰らない? 親父?&br;ロバートさん、ご実家からの電話なのかな?)|
|~〇×|(それに、ロバートさんすごく怒ってるみたい。&br;どうしちゃったんだろう?)|
|~ロバート・ガルシア|親父、おおっぴらにはしとらんようやけど、&br;出資、まだ続けとるんやろ?|
|~ロバート・ガルシア|何を言われたかしらんが、&br;これ以上奴らに金出すメリットは、なんもあらへんて!|
|~〇×|(え、出資? 金を出す?&br;な、なんだか、かなりプライベートな話のような……。)|
|~ロバート・ガルシア|――ああ、そうかいな。じゃあもう勝手にせぇ!&br;今にわかるで、ワイの言うことが正しかったってことがな!|
|~〇×|(あ、ロバートさん電話終わったみたい。&br;……聞いちゃったこと、ちゃんと謝ろうかな。)|
|~〇×|あ、あの、ロバートさん。|
|~ロバート・ガルシア|嬢ちゃん? なんや、いつの間にいたんや?|
|~〇×|すこし前です。&br;すみません。私、ロバートさんの電話聞いてしまって……。|
|~ロバート・ガルシア|あー、そうなんか。&br;ええよ、ワイが×ちゃんおるの気付かんかっただけや。|
|~ロバート・ガルシア|それより、大声出してて驚いたやろ。&br;×ちゃん、堪忍な。|
|~〇×|ロバートさん、今の電話大丈夫ですか?&br;余計なお世話かもしれないけど、私、心配です。|
|~ロバート・ガルシア|大丈夫。×ちゃんが気にするようなことは、&br;なんもあれへん。|
|~〇×|あ、あの、ロバートさん。私見当違いなことを&br;言ってるのかもしれないですけど――|
|~〇×|ロバートさんに何かつらいことがあったら、&br;私が味方になりたいって、思ってますから。|
|~ロバート・ガルシア|……そっか、おおきにな。&br;ワイも、何があっても、×ちゃんの味方や。|
#endregion
//----------
**6話 [#story_06]
#region(ネタバレ注意)
|>|第二の泉浄化後、旅館・自室――|
|~〇×(主人公)|(今日はなんだかとても疲れた……。&br;山道をたくさん歩いたせいかな?)|
|~〇×|(なんだか、何もしてないと寝ちゃいそう。&br;テレビでもつけてよう。)|
|~ニュースキャスター|――続いてのニュースです。|
|~〇×|(あ、ちょうどニュース番組やってる。観ておこうかな。)|
|~ニュースキャスター|観客が暴徒化するなどして、中止に追い込まれたKOF。&br;我々はKOFの出資者にインタビューを試みました。|
|~〇×|(KOFの話題だ……。出資者の人って、&br;最近よくテレビで観る年配の男の人かな?)|
|~記者|――アルバート・ガルシアさん! KOFの中止について、&br;出資者としての責任はどう果たされるんですか!?|
|~初老の男|…………。|
|~〇×|(あ、やっぱり、ロバートさんに靴を買ってもらった時に、&br;街頭ビジョンで見た男の人だ。)|
|~ニュースキャスター|――このように、アルバート・ガルシアさんは、&br;現在、記者の問いかけに答える様子はありません。|
|~ニュースキャスター|世界有数の大財閥の長であり、KOFの巨額出資者。&br;アルバート・ガルシアさんには、KOF中止の責任が――|
|~〇×|(大財閥のトップで巨額出資者だと、自分が主催じゃない&br;KOFの責任まで問われちゃうの? それって変だよね。)|
|~〇×|(――あ、あれ? アルバート・ガルシア?&br;『ガルシア』って、ロバートさんの苗字だよね……?)|
|~〇×|(『ガルシア』に『出資』。&br;そういえば、最初に泉を浄化したあと――)|
|~ロバート・ガルシア|親父こそ、ええ加減目ぇ覚ましや!&br;自分がやっとること、おかしいってわからんのか?|
|~ロバート・ガルシア|親父、おおっぴらにはしとらんようやけど、&br;出資、まだ続けとるんやろ?|
|~ロバート・ガルシア|何を言われたか知らんが、&br;これ以上奴らに金出すめりっとは、なんもあらへんて!|
|~〇×|(あの時ロバートさんも、出資がどうのって話してた。&br;まさか、『ガルシア』って、ロバートさんは――)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、おるか?|
|~〇×|(――! ロバートさんだ。)|
|~〇×|(ガルシア財団のこと、思い切って聞いてみようかな。)|
|~ロバート・ガルシア|おう、×ちゃん。&br;随分疲れてたみたいやけど、体調どうや?|
|~〇×|はい。ちょっと疲れちゃったけど、少し休めば大丈夫です。|
|~〇×|それより私、ロバートさんに伺いたいことがあるんです。&br;ちょっとだけお話できますか?|
|~ロバート・ガルシア|なんや、×ちゃん?&br;愛の告白かいな?|
|~〇×|ち、ちがいます!&br;ええと、今流れているニュースのことです。|
|~ニュースキャスター|繰り返します。KOFの巨額出資者、ガルシア財団の&br;アルバート・ガルシアさんは、現在も何も語らず――|
|~〇×|ロバートさんって、もしかしてガルシア財団の……。|
|~ロバート・ガルシア|――嬢ちゃんの想像の通りやで。&br;ワイは、ガルシア財団の人間や。|
|~ロバート・ガルシア|そんで、最近テレビに出とるあのおっさんは、&br;ガルシア財団の総帥で、ワイの親父なんや。|
|~〇×|(やっぱり……!)|
|~〇×|もしかして、最初の泉を鎮めたあとの電話も、&br;お父さんがテレビで騒がれていることに関係があるんですか?|
|~ロバート・ガルシア|ああ。あの時は、ガルシア財団の、KOFへの&br;出資について、言い争いになってな。|
|~ロバート・ガルシア|報道の連中は知らんようやが、KOFが中止した今も、&br;ガルシア財団からナギへの出資が続いてるようなんや。|
|~〇×|KOFが中止になった、今でも……?|
|~ロバート・ガルシア|なんでかは分からんけどな、&br;親父が出した金の使い道なら見当がつく。|
|~ロバート・ガルシア|おそらく、ナギが言っていた『神世界の礎』っちゅうのになる&br;格闘家を集めるための、活動資金やろな。|
|~〇×|(ガルシア財団からの出資が、ナギさんたちの&br;活動資金に……それって、大変なことなんじゃ。)|
|~ロバート・ガルシア|ワイは、親父に出資をやめるように何度も電話で話した。&br;けど、全く聞く耳持ってくれんかったわ。|
|~〇×|息子であるロバートさんの意見を&br;全然聞いてくれないなんて、どうしてなんでしょう?|
|~ロバート・ガルシア|親父曰く、KOF中止によって生まれた、ガルシア財団への&br;世間の不信感を払拭したいんやと。|
|~ロバート・ガルシア|その手立てを、ナギたちは真摯に考えてくれとるから、&br;手を切るわけにはいかない、とか言うとったが、どうだかな。|
|~〇×|そうなんですか……。&br;それは、ロバートさんもおつらいですよね。|
|~〇×|(自分の父親が、ナギさんたちの協力者だなんて、&br;ロバートさん、どれだけ苦しいだろう。)|
|~ロバート・ガルシア|ワイは、親父を止めてやりたいが、&br;親父のやつ、ワイにすぐ帰国しろとまで言ってきとるんや。|
#endregion
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**7話 [#story_07]
#region(ネタバレ注意)
|~〇×(主人公)|ロバートさん、帰国してしまうんですか……?|
|~ロバート・ガルシア|まさか。帰らんよ。&br;ワイはここで、嬢ちゃんに恩返しせなあかん。|
|~ロバート・ガルシア|それに、このままナギたちに&br;気持ちよく仕事さすんは癪に障る。|
|~ロバート・ガルシア|親父は聞く耳を持ってくれる様子はないが、&br;これからも辛抱強く、説得を続けるつもりや。|
|~〇×|(ロバートさん、まだ帰国しないでいてくれるんだ……。)|
|~〇×|良かった……。|
|~ロバート・ガルシア|はは、声に出てるで。声に。|
|~〇×|……! すみません。&br;つい、不安になってしまって……。|
|~ロバート・ガルシア|大丈夫や。×ちゃんは何も心配することあらへん。&br;親父のことは、ちゃんとワイが説得する。|
|~〇×|わかりました。&br;もし、私にできることがあったら、すぐに言ってくださいね。|
|~ロバート・ガルシア|おおきに、頼りにしとるで、×ちゃん。|
|~ロバート・ガルシア|ほんなら、ワイはもうお暇するわ。&br;すまんかったな、突然部屋にきて。|
|~〇×|いえ、私の方こそ、急にご家庭のことに首を突っ込んで、&br;すみませんでした。|
|~ロバート・ガルシア|はは、ガルシア財団のこと、確認したくなるのもわかるで。&br;ほな、またあとでな。|
|~〇×|(ロバートさん、行っちゃった。)|
|~〇×|(ガルシア財団総帥の子供かぁ……びっくりしたけど、&br;ロバートさんがロバートさんなことに、変わりはないよね。)|
|~ロバート・ガルシア|――はあ……。&br;あれ? なんでワイ、ちょっとがっかりしてんねやろ。|
|~リョウ・サカザキ|〇に、家のことを知られてしまったから……、&br;じゃないのか?|
|~ロバート・ガルシア|うおっ。&br;なんやリョウ、いつからいたんや。|
|~リョウ・サカザキ|お前と、〇が話している途中からな。|
|~ロバート・ガルシア|ったく、立ち聞きなんて、趣味悪いでほんま。|
|~リョウ・サカザキ|それについては、すまなかった。|
|~リョウ・サカザキ|だがロバート、〇は、人を色眼鏡で見るような&br;人間には見えない。それだけは、言わせてくれ。|
|~ロバート・ガルシア|せやな。それはわかっとるよ。&br;でも、これは性分みたいなもんなんや。|
|~ロバート・ガルシア|他人にワイのバックボーンを知られる瞬間は、&br;いつだって身構えてまう。|
|~ロバート・ガルシア|これまで、ワイの生まれを知ってから&br;態度を変えられたことなんて、数えきれないほどあるからな。|
|~ロバート・ガルシア|でも×ちゃんはそんなんやない。&br;それは、ちゃんとわかっとるよ。|
|~リョウ・サカザキ|……わかった。それならいいんだ。|
|~リョウ・サカザキ|ところで、親父さんは大丈夫なのか?|
|~ロバート・ガルシア|全然大丈夫やない。もう少し頭のええ親父やと思てたけど、&br;あそこまで意固地になるとはな。|
|~リョウ・サカザキ|聞く耳持たず、か。&br;……ロバート、これはあくまで俺の推測なんだが――|
|~ロバート・ガルシア|おっと、ちょい待ち。&br;どうやら、考えてることは一緒のようやで。|
|~ロバート・ガルシア|親父の、あの取り付くしまもない感じ……。&br;ワイらの考え通りの可能性が高いやろな。|
#endregion
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**8話 [#story_08]
#region(ネタバレ注意)
|>|八神さんの暴走を止め、旅館へ戻るころには夜になっていた――|
|~包|×お姉ちゃん、大丈夫かな……。&br;あれからずっと眠ってるけど。|
|~リョウ・サカザキ|包、落ち着け。〇の脈も呼吸も異常はない。&br;今はしばらく休ませよう。|
|~包|うn……。&br;うう、×お姉ちゃん、早く目を覚まさないかなあ。|
|~包|――あれ? そう言えばロバートさんは?&br;あんなに心配そうに、×ちゃんを抱えて来たのに。|
|~リョウ・サカザキ|ロバートは『やることがある』と言って、&br;どこかに出かけて行ったぞ。|
|~包|どこか? それってどこなの?|
|~リョウ・サカザキ|さあな。&br;ロバートのことだ、何か考えがあってのことだろう。|
|~包|うーん、×お姉ちゃんがこんな状態なのに、&br;ロバートさん、どこに行っちゃったんだろう?|
|~ロバート・ガルシア|(最後の泉は見つかったが、やっぱちいとやっかいやな。)|
|~ロバート・ガルシア|――と言うわけでして、是非そちらの所有する泉の調査を、&br;させていただけないでしょうか?|
|~御用邸の主人|ほっほっ。そんなに硬くならずに。&br;かのガルシア家からの依頼、断るわけがございません。|
|~主人の娘|そうですわ。ロバート様からのお願いなら、&br;なんでも聞いて差し上げたいくらい。|
|~御用邸の主人|その通り。&br;満足いくまで、泉の調査をしてください。|
|~ロバート・ガルシア|はい。快くご協力いただいたこと、感謝いたします。|
|~御用邸の主人|よいのですよ。力になれることがあれば、&br;何なりと仰ってください。|
|~ロバート・ガルシア|(このおっさんの笑顔の裏に、ガルシア家と&br;コネクション持ちたいっちゅう魂胆が、丸見えや……。)|
|~ロバート・ガルシア|(それに、なんで主人の娘も同席しとるんや。&br;嫌な予感するし、早よ帰ろ。)|
|~ロバート・ガルシア|それでは、そろそろ失礼いたします。&br;今回のご協力、ありがとうござい――|
|~御用邸の主人|ほっほっほっ。ロバート様はせっかちなお方だ。&br;実は、こちらからもお話があるんですよ。|
|~ロバート・ガルシア|……それはどういったお話でしょう?|
|~御用邸の主人|ロバート様は、そろそろ身を固めたいなどとは、&br;お考えではありませんか?|
|~用邸の主人|実は、うちの娘も、そろそろ年頃でしてね。|
|~主人の娘|うふふ、私、ロバート様と歳も近いし、&br;お話も合うと思うんです。|
|~御用邸の主人|無理に、とは言いませんが、娘から私が所有する&br;泉の話でも、聞いていってはくださいませんか?|
|~ロバート・ガルシア|(泉に入ることを許可するから、&br;娘とええ感じになってけっちゅうことか……。)|
|~ロバート・ガルシア|(ああ、またや。ワイがガルシア家だから、&br;この人らもこうやって、必死に気を引こうとしよる。)|
|~ロバート・ガルシア|(やーっと帰れた。とんでもない時間やないか!)|
|~ロバート・ガルシア|(それにしてもあの娘さん、玉の輿狙ってるんが&br;みえみえの会話ばっかしとったなあ。)|
|~ロバート・ガルシア|(こういうんはよくあるとはいえ、&br;ああまで露骨なんは、ほんま勘弁してほしいわ。)|
|~ロバート・ガルシア|(ほんま呪いやな……。どこに行っても何をしても、&br;ガルシア家っちゅう名前で、みんな目の色変えよる。)|
|~ロバート・ガルシア|はあ……×ちゃんが心配やな。&br;気い取り直して、とっとと戻ろ。|
#endregion
//----------
**9話 [#story_09]
#region(ネタバレ注意)
|>|第五の泉へ向かう道中――|
|~二階堂紅丸|大丈夫かい? ×ちゃん。&br;泉まで、俺が抱きかかえて行こうか?|
|~〇×(主人公)|ありがとうございます。&br;けど、このくらい自分で歩けますから。|
|~包|でも、本当に無理しないでね?&br;×お姉ちゃん、疲れてるみたいだし……。|
|~〇×|ありがとう。&br;でも大丈夫だよ。昨日もゆっくり休んだし……ひゃっ!|
|~ロバート・ガルシア|っと……あかんあかん。&br;転んでまうで、×ちゃん。|
|~〇×|ロバートさん……!&br;すみません、手を引いてもらって……。|
|~ロバート・ガルシア|足元ふらついてんで。&br;しんどい時はしんどいって言いや。な?|
|~ロバート・ガルシア|包、紅丸、みんなと先行っててくれや。&br;ワイは嬢ちゃんを少し休ませてから追いかける。|
|~包|わかった。&br;ロバートさん、×お姉ちゃんのこと、お願いね。|
|~二階堂紅丸|ナイト役を奪われちゃったな。&br;わかった、先に行ってるよ。|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、このへん座れるで。&br;ちょっと休んでいこうや。|
|~〇×|すみませんロバートさん。&br;せっかくロバートさんが、泉の場所を見つけてくれたのに。|
|~ロバート・ガルシア|そんなん、×ちゃんの苦労に比べたら、&br;大した手間やない。|
|~〇×|いえ、そんなことないです。&br;次に進めるのも、ロバートさんのおかげで――|
|~〇×|……あれ? そういえば、ロバートさんは&br;どうやって次の泉の場所が分かったんですか?|
|~ロバート・ガルシア|ああ、まあワイもガルシアの人間っちゅうことで、&br;社交界には顔が利くんや。|
|~〇×|(しゃ、社交界って。何だか雲の上の世界だなぁ……。)|
|~ロバート・ガルシア|そんでまあ、この辺に住んどる土地持ちの連中で、&br;泉を所有しとる家を探したら、どんぴしゃりや。|
|~ロバート・ガルシア|あとは、ガルシア家の名前を出せば、一発っちゅうわけ。|
|~〇×|そうだったんですか。ロバートさんのお家って、&br;とても信頼されているんですね。|
|~ロバート・ガルシア|信頼っちゅうか、親父や先代が築いた威光のおかげやな。&br;そんで、ワイはそれに乗っかってるだけなんやけど。|
|~〇×|そんなことないですよ。&br;ロバートさん自身の人柄もあってのことだと思いますよ。|
|~ロバート・ガルシア|ありがとな。けど、そうやとしても、&br;ガルシアの名前ってのは強力なんや。|
|~ロバート・ガルシア|だからこそ、この際使えるもんはなんでも使うたるんや。&br;これはつまり……ノブレス・オブリージュってやつやな。|
|~〇×|の、ノブレス……ええと、なんでしょう?|
|~ロバート・ガルシア|『ノブレス・オブリージュ』。欧米由来の言葉で、&br;『高貴さには義務が伴う』って意味や。|
|~ロバート・ガルシア|わかりやすく言うと、『社会的地位を持つ者は、その特権を&br;用いて社会に対して責任を負うべきである』って感じやな。|
|~〇×|つまりその……えらい人やお金持ちは、世の中のために&br;なるようなことをしましょう……ってことですか?|
|~ロバート・ガルシア|そんな感じやな。&br;だから、ワイはガルシアの名をええことに利用したるんや。|
|~ロバート・ガルシア|それにひきかえ、うちのバカ親父はそれもせんと、&br;未だにナギに出資を続けとるらしいからな。|
|~ロバート・ガルシア|ここは、ワイが親父の名代として、その責務を果たすまでや。&br;世界と、×ちゃんのためにな。|
|~〇×|(ロバートさん、ガルシア家の人として、&br;世界をよくしようって思ってるんだ。)|
|~〇×|ロバートさん、責任感が強いんですね……尊敬します。|
|~ロバート・ガルシア|んー、ちょっと違うかな。&br;ワイは、自分にできることをやろうとしてるだけや。|
|~ロバート・ガルシア|今朝、旅館で×ちゃんも言ってたやん、&br;『私にしかできないことなら、私がやる』って。|
|~ロバート・ガルシア|あの言葉も、ノブレス・オブリージュの崇高な精神や。&br;自分の立場を受け入れて、世の中の為に動くっちゅうな。|
|~〇×|そうなんでしょうか?&br;ただ、私にできることを頑張ろうって、思っただけで……。|
|~ロバート・ガルシア|そうか。×ちゃんは、自然とノブレス・オブリージュの&br;精神でいられるんやろうな。|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、それってめっちゃ立派なことやと思うで。|
|~〇×|あ、ありがとうございます……。|
|~〇×|(ノブレス・オブリージュ。&br;私は、私にできることに誇りと責任を――)|
#endregion
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*3章 [#chapter_3]
**10話 [#story_10]
#region(ネタバレ注意)
|>|K'とマキシマの本拠地・屋上――|
|~ロバート・ガルシア|――マキシマ、わざわざこんなとこ呼び出してまで、&br;ワイにしたい話っちゅうのはなんや?|
|~マキシマ|他の連中に聞かれないように配慮したつもりだ。&br;お前さんの身内についての話だからな。|
|~ロバート・ガルシア|なんやて? 身内ってのは、ガルシア財団についての話か?|
|~マキシマ|ああ。そうだ。|
|~マキシマ|お前さんの親父さんや、ガルシア財団の人間たちだがな、&br;ナギの洗脳に遭っている可能性が濃厚だ。|
|~ロバート・ガルシア|はあ……。やっぱりな、そんなことやろうと思たで。|
|~マキシマ|父親が洗脳されているという話を、&br;随分あっさり受け入れるんだな。|
|~ロバート・ガルシア|そりゃあな。何度か電話で親父とは話したが、&br;あのおかしな様子は、洗脳されたと考えるんが自然や。|
|~ロバート・ガルシア|とはいえ、親父だけやなく財団の人間たちもか。&br;こりゃあえらいこっちゃやな。|
|~マキシマ|ああ。今お前さんが親父さんの元に戻れば、&br;味方はいないものと思っておいたほうがいい。|
|~マキシマ|ほとぼりが冷めるまで、親父さんや側近連中には、&br;接触しないのが身のためだ・|
|~マキシマ|とくに、あのカーマン・コールとかいうエージェント。&br;あいつは腕が立つんだろう? 用心しろよ。|
|~ロバート・ガルシア|わかった。忠告おおきにな、マキシマ。|
|~ロバート・ガルシア|それにしても、親父もカーマンも、今は敵か。&br;はあ……まいったなあ。|
|~マキシマ|ナギが、使えるものは誰であろうと利用している、&br;ということだろうな。|
|~ロバート・ガルシア|ああ。ナギがすべての元凶や。&br;あいつをどうにかすれば、それで全て済む。|
|~ロバート・ガルシア|必ずナギたちを止める。&br;そんで、親父もカーマンたちもみんな元通りや。|
|~マキシマ|どのみち、ナギを止めなければ世界は終わりだ。&br;俺たちは勝利するしかない。|
|~ロバート・ガルシア|その通りやな。ナギを倒して×ちゃんも、&br;親父もガルシア財団も全部救うんや。|
|~マキシマ|気合十分だな。頼もしいぞ。|
|~ロバート・ガルシア|はは、やるっきゃないんや。まかしとき。|
|~ロバート・ガルシア|おおきにな、マキシマ。&br;親父たちの情報を、ワイにだけ話してくれて。|
|~ロバート・ガルシア|このあともほかの連中……特に×ちゃんには、&br;このこと話さんといてくれるか?|
|~マキシマ|ああ。〇は献身的な人間のようだが、&br;だからこそ、聞かせないほうがいいこともあるだろう。|
|~ロバート・ガルシア|ああ。ワイの身内のことにまで、&br;×ちゃんを巻き込まれへん。|
|~ロバート・ガルシア|(×ちゃんは、親父たちが洗脳されてると知ったら、&br;また浄化の力を使うはずや。これ以上、負担はかけられへん。)|
#endregion
//----------
**11話 [#story_11]
#region(ネタバレ注意)
|>|博物館から移動後、食堂にて――|
|~矢吹真吾|〇さん、たくさん食べてくださいね。&br;すこしでも体力つけないと、だめですよ。|
|~〇×(主人公)|ありがとう。ここのお店、とっても美味しくて、&br;たくさん食べられそうだよ。|
|~包|よかった。食欲があるって、元気な証拠だもんね。|
|~〇×|うん。まだまだ頑張れそう。|
|~〇×|(本当は、ちょっと体がだるいけど、今は頑張らなきゃ。)|
|~ロバート・ガルシア|頑張るんもええけど、あんまり無理したらあかんで。|
|~ロバート・ガルシア|博物館で、暴徒たちを自ら進んで浄化してたやろ。&br;あんなん出くわすたびにやってたら、体もたんで?|
|~二階堂紅丸|そうだよ。×ちゃんの力で助かる人もいるけど、&br;それでキミ自身を危険に晒すのは、違うと思うよ?|
|~ロバート・ガルシア|そうや。×ちゃんが頑張り屋さんなんは知っとるけど、&br;力を使い続けたらどうなるか、もうわかったんやから……な?|
|~〇×|そうですね。&br;確かに無理をしたら、私の命は……。|
|~〇×|でも、私に与えられたこの力が、&br;誰かの役に立つなら使いたいんです。|
|~〇×|ノブレス・オブリージュ……、&br;あの言葉を聞いた日から、ずっと心に残っています。|
|~ロバート・ガルシア|……!&br;×ちゃん、覚えとってくれたんか。|
|~〇×|はい。私、その言葉をロバートさんから聞いて、&br;自分の力と少しずつ向き合えている気がします。|
|~矢吹真吾|の、ノブレ……って、なんですか?|
|~二階堂紅丸|『ノブレス・オブリージュ』。&br;『高貴さは義務を伴う』って意味の言葉さ。|
|~二階堂紅丸|『持つ者は、持たざる者を助ける責任がある』&br;とでも言えば、わかりやすいのかな?|
|~包|つまり、×お姉ちゃんは、自分だけにある浄化の力を、&br;これからも誰かのために使おうと思ってるってこと?|
|~〇×|うん。それが、私だけにできることだから。|
|~ロバート・ガルシア|そのために、体ん中にケガレを溜め込んでも……か?|
|~〇×|はい、それでも……自分が与えられた力に責任を。&br;『ノブレス・オブリージュ』の精神でいたいんです。|
|~ロバート・ガルシア|…………。|
|~ロバート・ガルシア|…………はぁ。|
|~ロバート・ガルシア|ほんま、×ちゃんは偉いなあ……。|
|~ロバート・ガルシア|話聞いてたら、自分が恥ずかしくなってきたわ。|
|~〇×|え? ロバートさん、自分が恥ずかしいってどういう――|
|~ロバート・ガルシア|あ! なんや、水なくなってもうた。&br;いやあ、博物館で名芝居したからな。喉乾いてもうたかも。|
|~ロバート・ガルシア|おばちゃんに水もろてくるわ。&br;食事中に席立ってすまんな、ちょいと失礼するで。|
|~〇×|(ロバートさん……なんだか暗い顔をしてた。)|
#endregion
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**12話 [#story_12]
#region(ネタバレ注意)
|>|K'とマキシマの本拠地・自室――|
|~〇×(主人公)|(ロバートさんが手に入れたっていう情報をもとに、&br;みなさんで情報収集に出かけて行ったけど、大丈夫かな?)|
|~〇×|(みなさん、私の体を心配して、留守番してるように&br;言ってくれたけど……なんだか落ち着かない。)|
|~〇×|(……うん、ぼんやりしてても、いろんなこと考えちゃうし、&br;マキシマさんに、何か手伝うことはないか聞いて来よう。)|
|~〇×|(あれ? マキシマさんどこだろう?&br;あっちかな――――きゃっ!)|
|~〇×|(なんだろう。今、靴が変な感じになっちゃったような?)|
|~〇×|(あ、ロバートさんからもらった靴の紐が切れてる……。)|
|~〇×|(たくさん歩いたから切れたのかな?&br;でも、なんだか嫌な予感が――)|
|~ロバート・ガルシア|――しつこいわ! ワイは『帰らん』言うとるんや!|
|~〇×|(え? この声、ロバートさんだよね。&br;なにかあったのかな? 行ってみよう!)|
|~〇×|(あ、ロバートさんと、黒いスーツを着た男の人たち?&br;それに見たことない車も停まってる。どうしたんだろう?)|
|~〇×|あの、ロバートさん、この方たちは?|
|~ロバート・ガルシア|ああ、×ちゃんか。&br;こいつらは、ガルシア財団の手の者や。|
|~ロバート・ガルシア|本拠地に戻ってきたら、出くわしてな。&br;ワイを迎えに来た言うてる。|
|~ロバート・ガルシア|とうとう親父が実力行使に出よったんや。&br;ガルシア財団総帥として、ワイに余計な行動させん気や。|
|~〇×|そんな……父親とはいえ、&br;ロバートさんの意思を無視して、連れ帰ろうだなんて。|
|~黒服A|ロバート様、御父上のご命令です。&br;即刻、帰国していただきます。|
|~黒服B|御父上は仰いました、ロバート様を帰国させよと。|
|~黒服C|さあ、早く我々の車にお乗りください。|
|~ロバート・ガルシア|しつっこいわ! さっきから何度も&br;『帰らん』と言うてるやろが!|
|~ロバート・ガルシア|お前ら、さっきからこっちがなに言おうと&br;『帰国しろ』しか言わんな。いい加減にせえよ。|
|~〇×|(黒いスーツの人たち、何だか様子がおかしい。&br;どうしたんだろう?)|
|~ロバート・ガルシア|しゃあない。こうなったら気は進まんが、&br;こっちも実力行使で――|
|~〇×|(あれ? この人たちをよく見てみると、&br;周りに黒いモヤが見える。もしかして、正気じゃない?)|
|~〇×|ロバートさん、待ってください。&br;この人たちの周りに、黒いモヤが見えます。|
|~〇×|私が浄化すれば、ロバートさんのお家の人たちは&br;ちゃんともとに戻りますよ!|
|~ロバート・ガルシア|……気付いてもうたか、×ちゃん。&br;実はガルシア家の者たちは、ナギに洗脳されとるんや。|
|~〇×|え、ナギさんに? どうして、ガルシア財団の人たちを?|
|~ロバート・ガルシア|前に、ガルシアの金がナギたちの活動資金に&br;なっとるやろうって、話したやろ。|
|~ロバート・ガルシア|あれは親父の意思やなかったんや。&br;ナギのやつに、いいように操られとった。|
|~〇×|(そんな。ロバートさんのお父さんたち、&br;ナギさんに利用されていたなんて。)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、頼むから力は使わんでくれ。&br;ワイの身内のために、あんたの命削るわけにはいかん。|
|~〇×|で、でも、このままじゃ、この人たちは元に戻りませんよ?&br;やっぱり、私が浄化しないと――|
|~黒服C|抵抗なさるのならば、私たちも大人しくはできません。|
|~黒服B|この場で、その女性を守りながら、戦いますか?|
|~〇×|(黒服の人たちが近づいてきた。&br;このままじゃ……!)|
|~ロバート・ガルシア|わかったわかった。&br;ワイがついて行けばいいんやな?|
|~〇×|え? ロバートさん、ついて行ったらだめですよ……!|
|~ロバート・ガルシア|大丈夫や、×ちゃん。&br;すぐに戻るさかい、なんも心配いらん。|
|~黒服A|ロバート様、ご理解いただけて何よりです。|
|~黒服C|すぐに車を出しますので、お乗りください。|
|~ロバート・ガルシア|ふん、ワイを乗せるんなら、&br;もうちょいイカした車用意せいや。|
|~〇×|あ、ロバートさん……!|
|~〇×|(ロバートさん、連れて行かれちゃった。どうしよう!)|
|~マキシマ|〇、どうした?&br;今、見たことない車が走っていったが、何かあったのか?|
|~包|×お姉ちゃんただいまー!&br;って、あれ? ロバートさんは? 先に帰ったはずなのに。|
|~リョウ・サカザキ|〇、ただ事じゃないって雰囲気だな。&br;どうしたんだ?|
|~〇×|そ、それが、ガルシア財団の人たちが現れて、&br;車でロバートさんを連れて行ったんです。|
|~〇×|ガルシア財団のみなさん、ナギさんに洗脳されてたみたいです。&br;ロバートさんのことも洗脳するのが目的だったら……。|
|~マキシマ|ロバートが乗っているのは、さっきの車だな?&br;今追いかければ、見失わずに済むだろう。|
|~リョウ・サカザキ|よし、俺がバイクで追う。&br;お前たちは、ここで待っていろ。|
|~〇×|(ロバートさん、私が黒いスーツの人たちを&br;浄化しようとするのを、止めてくれた。)|
|~〇×|(私のことを心配したんだよね。&br;でも私だって、ロバートさんのことが心配だもの。)|
|~〇×|リョウさん、待ってください。私も行きます!|
|~リョウ・サカザキ|なに? だめだ、すぐに降りろ!|
|~〇×|私は大丈夫ですから、早く行きましょう。&br;ロバートさんが乗った車、見失っちゃいます!|
|~リョウ・サカザキ|そうは言っても、危険な目にあわせるわけには――|
|~包|よーし、僕も行く!&br;ロバートさんは僕たちのチームメイトだもん。助けなきゃ!|
|~リョウ・サカザキ|こ、こら包! お前まで乗るんじゃない!|
|~マキシマ|おい、早くしろ。本当に見失うぞ。|
|~リョウ・サカザキ|くっ、仕方ない。&br;〇、しっかりつかまっていろよ!|
|~リョウ・サカザキ|包! 着いたら知らせるから追ってこい!|
|~包|わかった……!|
|~〇×|(きゃっ! 速い……!&br;これなら、ロバートさんの車に追いつけるかも!)
|~ロバート・ガルシア|なんや、随分人気のない場所に連れてきたやん。|
|~ロバート・ガルシア|ロボットみたいに、帰国せえ帰国せえ繰り返しとるから、&br;てっきり空港に直行するんかと思っとった。|
|~黒服A|ロバート様には、ここで少々お時間を頂きます。|
|~ロバート・ガルシア|なんや全く、人を連れ出しといて。|
|~ロバート・ガルシア|まあ、人目がないほうが好都合やけどな……とりゃっ!|
|~黒服A|ぐっ!!|
|~ロバート・ガルシア|まだまだ! とりゃ! とりゃ! とりゃ!|
|~黒服B|がはっ!!|
|~黒服C|ごほぉっ!!|
|~ロバート・ガルシア|まったく、全員でよってたかってこの程度かいな。&br;ほな、悪いがワイはお暇させてもらうわ。|
|~アルバート・ガルシア|待て、ロバート。|
|~ロバート・ガルシア|まさか、親父!? なんでここに?|
|~ナギ|やあ、ロバート・ガルシア。&br;君に、お父さんを超える機会をあげるよ。|
#endregion
//----------
**13話 [#story_13]
#region(ネタバレ注意)
|~〇×(主人公)|(ロバートさんの車、こっちの方に行ったはずだよね。&br;途中で見失っちゃったけど、早く見つけなくちゃ!)|
|~リョウ・サカザキ|ん? あそこに停まっているのは、&br;さっきの黒い車じゃないか!?|
|~包|本当だ! ロバートさん、乗ってるかも!|
|~〇×|(ロバートさん、無事でいてください!)|
|~リョウ・サカザキ|よし、車の中の様子を確認するぞ。|
|~包|じゃあ僕が覗いてみるよ。|
|~包|そーっと……って、あれ?&br;ロバートさん、車の中にはいないよ?|
|~〇×|え?&br;じゃあ、ロバートさんはどこに?|
|~ロバート・ガルシア|ハッ! ハッ! トリャッ!!!!|
|~〇×|(え? これはロバートさんの声?&br;もしかして、戦ってる?)|
|~アルバート|……うぐ!|
|~ロバート・ガルシア|とどめや! 極限流奥義、龍虎乱舞!!!&br;そりゃそりゃそりゃそりゃあ!! どないや!!|
|~〇×|(ロバートさんに、あれはロバートさんのお父さん!&br;どうしてふたりが戦ってるの!?)|
|~〇×|(……あれ? よく見ると、ロバートさんもお父さんも&br;体の周りに黒いモヤがある。)|
|~〇×|(二人とも正気じゃないんだ!&br;こんなこと、早く止めないと。)|
|~アルバート|がっ! ――ごはっ!|
|~ロバート・ガルシア|…………。|
|~〇×|(ロバートさんの攻撃で、お父さんが倒れた……!)|
|~リョウ・サカザキ|ロバートお前、親父さんになんてことを!&br;いったい、なにがあったというんだ!?|
|~ロバート・ガルシア|なんや? ワイを非難する奴がおるんか?|
|~ロバート・ガルシア|ワイは間違っとらん。邪魔するもんは、みんな消えてまえ!|
|~リョウ・サカザキ|――なっ! ロバート!?|
|~〇×|(今度は、ロバートさんがリョウさんに殴りかかった!)|
|~〇×|リョウさん気を付けてください!&br;ロバートさん、ケガレのせいで暴走しています!|
|~包|うん。&br;ロバートさん、悪い気の影響を受けてるみたい!|
|~リョウ・サカザキ|ならば、正気に戻さないといけないわけか。|
|~〇×|それなら、私が力を使います。|
|~リョウ・サカザキ|だめだ。〇はさがっていろ。|
|~包|そうだよ。×お姉ちゃんは、これ以上力を使ったらだめ!|
|~リョウ・サカザキ|ここは俺たちでなんとかする。&br;〇は、絶対に浄化の力を使うな!|
|~〇×|でもそれじゃあ、みなさんが戦うことに――|
|~ロバート・ガルシア|――もう、家に縛られる必要はない……。&br;親父と同じ道に、進まんくてええんや……ええんや!!|
|~リョウ・サカザキ|っぐ!! な、なにぃ!?&br;なんというスピードだ!|
|~包|ろ、ロバートさん、止まって――|
|~包|――う、うわあ!!|
|~リョウ・サカザキ|くっ! ああっ!!|
|~〇×|リョウさん! 包くん!|
|~〇×|(ロバートさん、いつも以上に強い。&br;理性を失って、ブレーキが利かなくなってるのかも。)|
|~ロバート・ガルシア|――隙ありや! 極限流奥義!&br;そりゃそりゃそりゃそりゃあ!! どないや!!|
|~リョウ・サカザキ|くそぉぉぉぉ!!|
|~包|死んじゃううぅぅ!!|
|~〇×|(そんな、リョウさんと包くんが倒れた……!)|
|~ロバート・ガルシア|あんたらにワイは倒せへん。ワイはもっと強くなるんや!&br;もっともっと強くなって、運命から逃げきってやるんや!!|
|~〇×|(運命から逃れる? もしかしてそれが、暴走してる原因?&br;ロバートさん、何に苦しめられているの?)|
|~ナギ|――彼が拒む運命とは何か。&br;ふふ、気付いていないのかい? ヒメ。|
|~〇×|え!? ナギさん、いつの間にそこに!?|
|~〇×|ナギさんがここにいるってことは、&br;やっぱりあなたが、ロバートさんを洗脳したんですか!?|
|~ナギ|人聞きが悪いな、ヒメ。&br;僕はただ、彼の背中を押してあげただけだよ。|
|~〇×|背中を押してやっただけって、&br;それはどういう……。|
|~ナギ|彼は、ガルシア財団の御曹司。恵まれた境遇と思いきや、&br;彼自身は家柄に縛られることを、嫌っていたみたいだよ。|
|~ナギ|特に、他人から家柄でしか自分を見てもらえないことは、&br;彼にとって、とても虚しいことだったみたいだ。|
|~〇×|で、でも、ロバートさんのこと、&br;家柄だけで見る人ばかりじゃないはずです!|
|~ナギ|ヒメ、人間には君のような清い心の持ち主は、多くないんだ。&br;地位の高い人間は、色眼鏡で見られるものさ。|
|~ナギ|だからこそ、彼は武道にのめり込んだ。&br;武道は自分自身の力だけが試される世界だからね。|
|~ナギ|もっとも、彼の父親は、ガルシア家の後継ぎとして、&br;立派に育てたかったみたいだけど。|
|~〇×|ロバートさんは、&br;お父さんのKOFへの出資を、止めようとしてました。|
|~〇×|それって、ロバートさんがガルシア家の後継ぎとして、&br;ちゃんと頑張ろうとして立ってことじゃないんですか?|
|~ナギ|確かに、彼はガルシア家の責務を果たそうとしている。&br;それも彼の意思なのかもしれないね。|
|~ナギ|でも、その心の奥底には、&br;幼い頃から抱き続ける無情さが、ずっと漂っていたんだよ。|
|~ロバート・ガルシア|――もう、運命から逃れていいんや……。&br;ワイは、ガルシア家には、縛られない……。|
|~ナギ|お聞きの通りだよ、ヒメ。&br;彼は、自分の置かれた境遇で生きて痛くはないんだ。|
|~ナギ|自分を、自分として見てくれない。&br;そんな無情な世界から、逃げ出したいのが彼の本心さ。|
|~〇×|(そんな。ロバートさんは、ずっと苦しんでいたの?)|
|~〇×|(……! そういえば、このあいだ――)|
|~〇×|はい、それでも……自分が与えられた力に責任を。&br;『ノブレス・オブリージュ』の精神でいたいんです。|
|~ロバート・ガルシア|ほんま、×ちゃんは偉いなあ……。|
|~ロバート・ガルシア|話聞いてたら、自分が恥ずかしくなってきたわ。|
|~〇×|(あの時のロバートさんは、私の話を聞いて、&br;自分自身の境遇について考えていたのかもしれない。)|
|~〇×|(ロバートさんには、&br;自分の運命を受け入れられない苦しみがあったの?)|
|~リョウ・サカザキ|――くそ! まだまだぁっ!|
|~〇×|リョウさん!? もう無理です、立たないでください!|
|~リョウ・サカザキ|友がいいように操られているのを、&br;黙って見ていられるか!|
|~リョウ・サカザキ|ロバート、正気に戻れ!&br;お前は、本当は心の強い男のはずだ!|
|~ロバート・ガルシア|ワイが強い男……そうや、ワイは強い!&br;強いから! こんな運命なかったことにできるんや!!|
|~リョウ・サカザキ|ぐあぁっ……!!|
|~〇×|リョウさん!!|
|~〇×|(酷い。こんなこと、絶対に止めなくちゃ!)|
|~ナギ|おや? ヒメ、浄化の力を使おうとしているのかい?|
|~ナギ|そんなことをすれば、また君の中にケガレが溜まる。&br;それがどういうことか、わかっているんじゃないのかい?|
|~〇×|(そうだ。&br;ケガレが溜まっていけば、私の命は……。)|
|~〇×|(……ううん、『ノブレス・オブリージュ』だよね。)|
|~〇×|(ロバートさん……あなたが教えてくれた……。&br;私は私の運命を、受け入れます。)|
#endregion
//----------
**14話 [#story_14]
#region(ネタバレ注意)
|>|私は、暴走したロバートさんを止めるため、&br;浄化の力を使おうとしていた――|
|~ロバート・ガルシア|……ワイは、こんな運命から逃れるんや!|
|~〇×(主人公)|(ロバートさんを浄化しなきゃ!&br;それに、ロバートさんのお父さんたちも。)|
|~〇×|ロバートさん、みなさん、もとに戻ってください!|
|~〇×|はあ……はあ……ロバートさんや、みなさんは?|
|~〇×|(――よかった。全員黒いモヤがなくなってる。&br;もとに戻ったみたい。)|
|~〇×|(そうだ! そういえばナギさんは?&br;……あれ? どこにもいない。)|
|~ナギ|――そうやって浄化の力を使い続けてごらんよ、ヒメ。&br;いずれ君は、僕の力を頼るしかなくなる……。|
|~〇×|(え!? あ、頭の中で、ナギさんの声がする!&br;ナギさんの力を頼るしかなくなるって、どういう意味?)|
|~〇×|(でも今はそのことよりも、&br;ロバートさんが大丈夫か、確かめなきゃ。)|
|~〇×|(……ロバートさん、すごく気持ちよさそうに眠ってる。&br;怪我もしてないみたいだし、よかった。)|
|~〇×|(ロバートさんの苦しみを、少しでも減らせないのかな。&br;私になにか……できたら。)|
|~〇×|(あ……いけない。なんだか、気が遠く――)|
|~〇×|(――ん……。ここはベッドの上……?)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、目が覚めたんやな。よかった……。|
|~〇×|ロバートさん……?&br;ああ、よかった。正気に戻ったんですね。|
|~〇×|私、あのあとどうなったんですか?&br;それに、ロバートさんのお父さんたちは?|
|~ロバート・ガルシア|あーもう。起きて早々、あんまりいろいろ考えたあかんよ。|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃんは、ワイが目を覚ました時には倒れとった。&br;多分、力を使ったせいで気絶してたんやろ。|
|~ロバート・ガルシア|親父やガルシア家の者たちも、多少ケガしてたけど無事や。&br;さっき、無事に帰国したって連絡があったで。|
|~〇×|そうだったんですか。私、ずいぶん眠ってたんですね。|
|~ロバート・ガルシア|そうやで。ごっつ心配したわ。|
|~〇×|はい……ご心配おかけして、すみませんでした。|
|~ロバート・ガルシア|いや、それはワイの方や。&br;手間かけさせてほんま悪かった、堪忍な。|
|~ロバート・ガルシア|ワイな、暴走してた時のことぼんやり覚えとんねん。&br;親父も、リョウも、包も蹴り飛ばしてほんま最悪や……。|
|~ロバート・ガルシア|それもこれも、ワイが自分の境遇から逃げたいっちゅう、&br;弱い心を持ってたせいや。情けなくてたまらんわ。|
|~ロバート・ガルシア|はぁ……これでも、ずっと気ぃ張ってきたんやけどな。&br;ナギに付け込まれるくらいの隙は、あったっちゅうわけや。|
|~〇×|今回のことは、ナギさんが仕掛けた事ですし、&br;ロバートさんが悪いわけじゃありませんよ。|
|~ロバート・ガルシア|いいや、悪いのはワイや。&br;ナギの策略だったとしても、な。|
|~〇×|(ロバートさん、自分を責めちゃってる。&br;私、なんて言ってあげたらいいんだろう。)|
|~ロバート・ガルシア|いやあ、かっこ悪いなあ。×ちゃんに&br;ノブレス・オブリージュを教えといて、自分はこうや……。|
|~〇×|ロバートさん、私はロバートさんが、&br;その言葉を教えてくれたこと、感謝してるんです。|
|~〇×|お願いですから、そんなに自分を責めないでください。|
|~ロバート・ガルシア|ありがとな、×ちゃん。&br;×ちゃんの言いたいことは、わかるんやけどな。|
|~ロバート・ガルシア|今は、ちょっとええ言葉返せん。&br;すまんな、これ以上かっこ悪いとこ見せたないわ。|
|~ロバート・ガルシア|あーなんや、その……すまん。&br;ちょっと頭冷やしてくるわ。|
|~〇×|(ロバートさん、行っちゃった。&br;どうしたら、ロバートさんを元気づけられるんだろう。)|
#endregion
//----------
**15話 [#story_15]
#region(ネタバレ注意)
|>|最後の神殿へ向かう直前――|
|~二階堂紅丸|さ、これで準備万端だけど、&br;×ちゃんは、本当に行けそうかい?|
|~〇×(主人公)|はい。&br;今は体調も落ち着いてるし、大丈夫です。|
|~包|でも、絶対無理はしないでね。&br;倒れちゃったら、神鏡を取りに行くなんて、できないからね。|
|~リョウ・サカザキ|ああ。少しでも気分が悪ければ、すぐに言うんだぞ。|
|~〇×|はい。ありがとうございます。|
|~〇×|(体調に不安はあるけど、最後までみなさんについて行こう。)|
|~マキシマ|――みんな集まったようだな。&br;それでは、そろそろ出発するぞ。|
|~包|あれ? ちょっと待って、ロバートさんがいないよ!|
|~リョウ・サカザキ|ロバートのやつ、これからって時にどこに行ったんだ?|
|~〇×|ロバートさん、いつの間にいなくなったんでしょうね。&br;私、探してきます。|
|~リョウ・サカザキ|いや、〇。俺が行く。&br;あんたはあまり無理せず、少しでも体力を温存しておけ。|
|~〇×|いえ、このくらい大丈夫です。&br;みなさんは、荷物の確認をしておいてください。|
|~〇×|(ロバートさん、どうしたんだろう?&br;これから最後の神鏡を取りに行くのに、現れないなんて。)|
|~〇×|(ナギさんに暴走させられたあと元気がなかったし、&br;何だか心配だな。)|
|~〇×|(ロバートさん屋内にはいなかったな。&br;もしかしたら屋上に……あ、いた!)|
|~〇×|ロバートさん、みなさんもう集まって――|
|~ロバート・ガルシア|――ああ、そうや。&br;うんうん、わかったわ。それでな……。|
|~〇×|(あ、ロバートさん、電話中だったみたい。&br;邪魔したらよくないよね、ちょっと待ってよう。)|
|~ロバート・ガルシア|わかった。伝えとく。&br;わかったって、そんなに念を押さんで大丈夫や。|
|~ロバート・ガルシア|それとその、なんと言うか、ワイが言うことやないけど、&br;これを機によう養生しいや、親父。|
|~ロバート・ガルシア|――ああ。それじゃあな。|
|~〇×|(あ、ロバートさん、電話終わったみたい。)|
|~ロバート・ガルシア|――すまんすまん、×ちゃん。&br;あれやろ、呼びに来てくれたんやろ? おおきにな。|
|~〇×|はい。&br;あの、今のってお父さんですか?|
|~ロバート・ガルシア|そや。急に電話してきて、ぎょうさん喋りよるから、&br;集合時間にすっかり遅れてもうた。|
|~〇×|そうだったんですか。&br;お父さんは、帰国されたあともお元気ですか?|
|~ロバート・ガルシア|ああ、ワイがナギにそそのかされて&br;親父と戦ってもうた時のケガも、大したことないらしいで。|
|~ロバート・ガルシア|それに、洗脳からもすっかり目え覚めたおかげで、&br;ナギたちへの出資も金輪際断つ言うとった。|
|~〇×|そうなんですか。&br;お父さん、ちゃんとわかってくれたんですね。|
|~ロバート・ガルシア|ああ。洗脳なんぞされてへんかったら、しっかりしたもんや。&br;おかげでワイも安心できたわ。|
|~〇×|はい。&br;私も、ロバートさんの心配事がなくなって、よかったです。|
|~ロバート・ガルシア|そうそう、言い忘れとったけど、×ちゃんに、お礼を言わんとな。|
|~〇×|え? お礼、ですか?|
|~ロバート・ガルシア|親父のこと、ガルシア財団のこと、ワイが暴走したこと、&br;全部、×ちゃんなしでは、解決できんかった。|
|~ロバート・ガルシア|なんもかんも、×ちゃんのおかげや。&br;ほんま、ありがとな。|
|~ロバート・ガルシア|うちの親父も感謝しとったで。直接お礼したいこと伝えろて、&br;めっちゃしつこく言われたわ。|
|~〇×|そんな。私は目の前のことに、&br;ただ夢中になっていただけですから。|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃんは、ただただ夢中で、&br;自分の身を危険に晒してもうたってことか?|
|~〇×|はい。私は、自分がどうなるかよりも、&br;ロバートさんたちを救いたかったんです。|
|~〇×|ロバートさんが、自分のお父さんと戦ったり仲間を傷つけたり。&br;そんな悲しいこと、止めたくて。|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん。&br;ワイのために、後先考えんで力使うてまうなんて……。|
|~ロバート・ガルシア|なあ、×ちゃんは人のためにその力使うて、&br;自分の命削ることが怖くはないんか?|
|~〇×|怖くない……とは、言えません。&br;私だって本当はこの力を使うのは怖いです。|
|~〇×|みなさんには言えないですけど……、&br;逃げ出したくなることだってあるんです。|
|~〇×|ロバートさんが暴走した時、&br;運命から逃げたいって、言ってましたよね。|
|~〇×|私もそうです。避けられない運命から、本当は逃げたい。&br;私もロバートさんも、そういうところは同じですよ。|
|~ロバート・ガルシア|…………。|
|~〇×|あっ……す、すみませんロバートさん。&br;私、つい弱音を……。|
|~包|――×お姉ちゃん、どこにいるのー?&br;そろそろ出発する時間だよー?|
|~〇×|(あ、包くんの声だ……。&br;もうそんな時間なんだ、早く戻らないと……。)|
|~〇×|ロバートさん、出発の時間みたいなので、&br;早く屋内に戻りま――|
|~ロバート・ガルシア|すまん、×ちゃん。&br;ちょっとだけ、こうさせてや。|
|~〇×|ロ、ロバートさん……?|
|~〇×|(ロバートさんに、抱きしめられてる……?)|
#endregion
//----------
**16話 [#story_16]
#region(ネタバレ注意)
|>|みなさんのいる居間へ戻ろうとしたその時――|
|~〇×(主人公)|あ、あの、ロバートさん、どうしたんですか?|
|~〇×|(ロバートさんの心音が聞こえてくる。&br;どうしよう、ドキドキしてきちゃった……。)|
|~ロバート・ガルシア|ワイは×ちゃんを、特別やとでも思ってたんやろか。&br;×ちゃんの話聞いて、目え覚めたわ。|
|~ロバート・ガルシア|命削るような力持って、怖くないわけないよなあ。&br;そんなん、誰だってそうや。|
|~ロバート・ガルシア|ワイは、嫌な運命から逃げたいと思うのが、後ろめたかった。&br;けど、嫌だと思うこと自体は、悪いことやないのかもなあ。|
|~〇×|(なんでだろう。ロバートさんの胸越しに聞こえる声、&br;今にも泣き出しそうに聞こえる。)|
|~〇×|あの、私、避けようのない運命を受け入れる勇気なんて、&br;誰も最初から持っていないと思うんです。|
|~〇×|それでも、ふとした拍子に人は強くなって、&br;運命に立ち向かえるようになるんだと思います。|
|~〇×|――『ふとした拍子』っていうのが、なんなのかは、&br;まだよくわからないですけど。|
|~ロバート・ガルシア|そうかもしれんなあ。&br;ワイにもあるんかな。その『ふとした拍子』が。|
|~ロバート・ガルシア|……うん、きっとあるんやろな。&br;×ちゃんといれば、その時がきそうな気がするわ。|
|~〇×|(抱き締められた腕から、さっきより強い意志を感じる。)|
|~〇×|(……そばにいたい。ロバートさんの支えになりたい。&br;一緒に運命に立ち向かって、乗り越える。)|
|~〇×|(ロバートさんが何に苦しんでいるのか、気付けなかった。&br;でも、これからは少しでも力になりたい。)|
|~包|あー! ×お姉ちゃんに、ロバートさん!|
|~包|やっと見つけたと思ったら、ふたりで何してるの!?|
|~〇×|え!? ぱ、包くん! こ、これは、その……。|
|~〇×|(そうだ、包くんが私たちを探してるの、忘れてた!)|
|~包|ロバートさん、酷いよ!&br;×お姉ちゃんを独り占めして、抱きついてるなんて!|
|~ロバート・ガルシア|すまんすまん。これはなあ、神鏡を探しに行く前に、&br;ちょっと×ちゃんに、元気もらっとってな。|
|~包|ええー、なんだか怪しいなー。|
|~ロバート・ガルシア|本当やって、最後の神鏡を前に尻込みしてるワイを、&br;×ちゃんが、励ましてくれとったんや。|
|~ロバート・ガルシア|な? ×ちゃん?|
|~〇×|へ!? ええと、はい!|
|~包|えー、すっごく怪しい。|
|~ロバート・ガルシア|まあまあ、気にせんと。&br;そろそろ出発時間なんやろ? 急いで戻ろうや。|
|~包|あ、そうだった!&br;みんなふたりのこと待ってるよ、早く行こう!|
|~〇×|うん。ごめんね、待たせちゃって。|
|~〇×|さあ行きましょう、ロバートさん。&br;早く神鏡探しに、出発しないと!|
|~ロバート・ガルシア|ああ、わかっとる。&br;……さっきは、ほんまおおきにな、×ちゃん。|
#endregion
&aname(top){上へ戻る};
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*4章 [#chapter_4]
**17話 [#story_17]
#region(ネタバレ注意)
|~ロバート・ガルシア|(あれ? ここは極限流の道場やないか。&br;いったいどうなっとるんや?)|
|~ロバート・ガルシア|(あ、あそこにいるんは、子供んときのワイやないか!&br;懐かしいなー、これは極限流に弟子入り志願しに来た日や。)|
|~ロバート・ガルシア|(極限流で強うなって、親父に決められた人生じゃなく、&br;自分の人生を歩むんやって、飛び込んだんやったな。)|
|~ロバート・ガルシア|(そういや、あのころのリョウは、戦うの嫌っとったよなあ。&br;それが今じゃめっちゃ強うなっとる。)|
|~ロバート・ガルシア|(……そうか。ワイは、リョウが人生かけて背負った&br;極限流を、逃げ場所にしたんやな。)|
|~ロバート・ガルシア|(あ、あそこにいるんは、子供ん時のリョウや。)|
|~ロバート・ガルシア|(なあ、ワイのしたこと……謝らせてくれ……リョウ――)|
|~リョウ・サカザキ|――おい、ロバート。&br;ロバート起きろ。そろそろ沖縄に着くぞ。|
|~ロバート・ガルシア|(なんや? ああ、夢見てたんか。&br;初めて極限流に行った日の夢なんて、懐かし過ぎるわ。)|
|~リョウ・サカザキ|ロバート? ずいぶんぼーっとしているが、大丈夫か?|
|~ロバート・ガルシア|ああ。ちょっと夢見ててな。&br;ガキの頃の、極限流に弟子入り志願しに行った時の夢や。|
|~リョウ・サカザキ|なんだ、懐かしいな。&br;あのころは、お互いまだまだ未熟だったな。|
|~ロバート・ガルシア|ああ。ほんで、ワイは強くなりたくて仕方なかったわ。|
|~ロバート・ガルシア|……あのな、リョウ。ワイは、家のことや親父からの期待、&br;強くなればそういうものから逃げられると思っとった。|
|~ロバート・ガルシア|だから、極限流に弟子入りに行ったんや。&br;ワイは、お前の背負った極限流を逃げ場所にしとった。|
|~ロバート・ガルシア|お前はちゃんと、極限流の看板背負うことにも、&br;親父さんのことにも、妹のことにも、向き合っとった。|
|~ロバート・ガルシア|ワイは、お前のそういうもんも、全部自分の逃げ場所にした。&br;今更やけど、謝らせてくれ。|
|~リョウ・サカザキ|……そういえば、暴走した時に言ってたな。&br;『運命から逃げたい』と。|
|~ロバート・ガルシア|ああ。あれがワイの深層心理っちゅうやつなんや。&br;それで、逃げた先が極限流ちゅうことや。|
|~ロバート・ガルシア|みっともないし、申し訳ないわ。&br;本当にすまんかったな。|
|~リョウ・サカザキ|何を言ってるんだ。謝ることは何もない。&br;お前は家柄のことが嫌で、極限流に逃げた。それがどうした?|
|~ロバート・ガルシア|な、なんやリョウ。そんなあっさり肯定しおって。|
|~リョウ・サカザキ|あのなロバート、今さら恥じる必要も、詫びる必要もない。|
|~リョウ・サカザキ|お前はサカザキ家の家族も同然だろ?&br;俺も、うちの家族も全員そう思っているぞ。|
|~ロバート・ガルシア|そらワイかて、そう思てる。当たり前やろ。|
|~リョウ・サカザキ|あのなロバート、家族ってのは人生で苦しい時の&br;逃げ場所であっていいと俺は思う。|
|~リョウ・サカザキ|人間、安心できる逃げ場所があるから、強くなれる。&br;お前にとってそれがうちなら、俺は嬉しいよ。|
|~ロバート・ガルシア|リョウ……なんやお前、ええこと言うやん。|
|~ロバート・ガルシア|そうやな。ワイには、お前んちっていう&br;逃げ場所があったんや。|
|~ロバート・ガルシア|そんで、お前と一緒に作り上げた、&br;ワイだけの極限流もある。|
|~ロバート・ガルシア|だから、ワイは運命に立ち向かおうって思えたんや。&br;はは……なんでこんな簡単なこと忘れとったんやろ。|
|~リョウ・サカザキ|それだけ、お前が背負ってるものが、大きいってことだろうな。|
|~リョウ・サカザキ|だからロバート、また家から逃げたくなったら、&br;うちに来ていいんだぞ。|
|~リョウ・サカザキ|家族みんなで飯でも食えば、&br;ちょっとは楽になるだろう?|
|~ロバート・ガルシア|そうやな。&br;ほんまにどうしようもなくなった時は、頼らせてもらうわ。|
|~リョウ・サカザキ|ああ。当然だろう、家族なんだからな。|
|~ロバート・ガルシア|はは、おおきに。|
|~ロバート・ガルシア|ほんじゃあ、さっさと沖縄上陸して、事を片付けんとな。&br;そうせな、帰る場所にも帰られへん。|
|~リョウ・サカザキ|ああ、そうだな。必ず勝利しよう。|
|~リョウ・サカザキ|それからな、ロバート。〇だが、ずっと不安そうに&br;していてな、しっかり支えてやってくれるか。|
|~ロバート・ガルシア|ああ、もちろんや。&br;×ちゃんのことは、ワイに任せとき。|
#endregion
//----------
**18話 [#story_18]
#region(ネタバレ注意)
|>|最終決戦当日・早朝――|
|~〇×(主人公)|(変な時間に目が覚めちゃったな。&br;みんなが起きてくるまで、何しようかな。)|
|~〇×|(あれ? 窓の向こうに誰かが見える。&br;あれはもしかしてロバートさん?)|
|~〇×|(どうしたんだろう?&br;ちょっと気分転換したいし、私も外に出ようかな。)|
|~〇×|ロバートさん、おはようございます。|
|~ロバート・ガルシア|あれ? ×ちゃん、どうしたんやこんな朝早くに。|
|~〇×|なんだか目が覚めてしまったんです。&br;そういうロバートさんも、ずいぶん早いんですね。|
|~ロバート・ガルシア|ああ、ワイもなんだか目が冴えてな。&br;なんか落ち着かんから、体動かそうと思うて。|
|~〇×|そうだったんですか。&br;トレーニングを始めるところを、邪魔してすみません。|
|~ロバート・ガルシア|いやいや、むしろ話しかけてくれてよかったわ。&br;気分変えたいなあと思っとったから。|
|~〇×|(ロバートさんも、私と同じで気分転換したかったんだな。&br;沖縄に来てから、全然落ち着けなかったもんね。)|
|~ロバート・ガルシア|――ん? ×ちゃん、それどうしたんや?|
|~〇×|え? えっと、どれですか?&br;私なにか、変なところがありますか?|
|~ロバート・ガルシア|靴や靴。&br;そのスニーカー、靴紐切れとるやないか。|
|~〇×|あ、これは、ちょっと前に切れてしまって。&br;すみあせん、ロバートさんが買ってくれた靴なのに。|
|~ロバート・ガルシア|そんなんええんや。&br;こっちこそ、気付いてやれなくて堪忍な。|
|~ロバート・ガルシア|これ、歩きにくかったやろ。&br;頑張り屋さんなんはわかるけど、困ったら早よ言いや。|
|~〇×|すみません。私、日々のことに夢中になって、&br;身の回りのことがおざなりになってしまってて。|
|~ロバート・ガルシア|そんだけ、×ちゃんに負担があるってことやな。|
|~ロバート・ガルシア|どれ、ワイがどうにかしたる。ちょっとそこ座り。|
|~〇×|えっと、この階段のところですか?|
|~ロバート・ガルシア|そや、そんで靴ひも切れたほうの足、前に出してくれ。|
|~ロバート・ガルシア|ちょっと待っててな。&br;まずは、切れた靴紐外すで。|
|~〇×|あの、ロバートさん。&br;私、予備の靴紐は持ってないんです。|
|~ロバート・ガルシア|ああ、いらんで。ここに、代わりのもんがあるからな。|
|~〇×|え? その紐は?|
|~ロバート・ガルシア|これは、ワイの予備の髪留めや。&br;これなら靴紐代わりになるやろ。|
|~〇×|ええっ、そんな。大事な髪留めを使わないでください。|
|~ロバート・ガルシア|遠慮せんでええ。前も言ったやろ、足は第二の心臓やって。&br;ちゃんと靴紐結んで、歩きやすいようにしとき。|
|~〇×|はい、ありがとうございます……!|
|~〇×|……あの、ロバートさん。&br;運命ってやっぱり、絶対に逃げられないものなんでしょうか。|
|~ロバート・ガルシア|んー? どうしたんや、×ちゃん。&br;やっぱりこの旅が、しんどくなってきてもうたんか?|
|~〇×|いえ、そんなことはないです。&br;ナギさんを止めようって、今でもちゃんと思ってます。|
|~〇×|でも、とてもつらい運命から、逃げることもできないなんて&br;悲し過ぎるんじゃないかなって、考えてしまって。|
|~〇×|(ナギさんは、ナミさんを失って、たったひとりで&br;地上を見守るのが運命だなんて、つらすぎるよね……。)|
|~ロバート・ガルシア|せやな。でも、どうしたって逃れられないからこそ&br;『運命』って言うんやないかなあ。|
|~ロバート・ガルシア|やったら、しんどくても、&br;運命を目の前にしてどうするかが、大事なんちゃうんかな。|
|~ロバート・ガルシア|運命の先にある結果は、変わらんのかもしれへん。&br;けど、そこに至るまでの過程って言うんは、運命にすら縛られへん。|
|~ロバート・ガルシア|だから、運命から逃げようとあがくも、受け入れるも、&br;それを背負ったもん次第で、きっとどっちでもええんや。|
|~〇×|その運命がどんなに過酷でも、ですか?|
|~ロバート・ガルシア|そうや。運命に導かれる結果が、どれだけしんどくても、&br;そこに至る過程ってのは、必ずあるもんや。|
|~ロバート・ガルシア|だからワイはな、その過程を楽しめば&br;ええんちゃうかなって、気がしてるんや。|
|~〇×|過程を楽しむんですか?&br;それって、どういうことなんでしょう?|
|~ロバート・ガルシア|そやな、ワイの場合だったら、逃げたり迷ったりして、&br;寄り道すんのが、楽しむってことなんかなって思うわ。|
|~ロバート・ガルシア|たくさん逃げて迷って、そうしてるうちに、&br;最後は運命に負けへんくらい、強い自分になってるかもしれへん。|
|~ロバート・ガルシア|運命は変えられへん。だけど、運命と向き合う中で、&br;自分が変わることは、できるんちゃうかなあ。|
|~〇×|(私も力に目覚めて、怖かったり悩んだり、&br;いろんなことがあった。だから、今の私がいるんだよね。)|
|~〇×|(ナギさんの運命も変わらない。&br;だけど、ナギさんもなにかが変わったらいいな。)|
|~ロバート・ガルシア|ま、寄り道しまくって、最後に強うなるかもとは言うたけど、&br;そんなんはきっと、いばらの道やろうな。|
|~〇×|いばらの道かもしれませんけど、&br;それって、素敵な考えだと思います。|
|~〇×|私、ロバートさんの前向きな考えを聞いて、&br;とても励まされました。|
|~〇×|(ロバートさん、お家や自分のことで悩んだりしてたけど、&br;今はとても明るい表情をしてるな。)|
|~ロバート・ガルシア|はは、ありがとうな。でも、ワイがこう考えられるように&br;なったんは、×ちゃんのおかげなんや。|
|~〇×|え、私が……?|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃんが、ワイにたくさん&br;いい影響を与えてくれてたっちゅうことや。|
|~〇×|(少しでも、ロバートさんの力になれたのかな?&br;そうだったら、嬉しいな。)|
|~ロバート・ガルシア|……なあ、×ちゃん。&br;ワイな、あんたにもうひとつ話したいことがあんねん。|
|~〇×|はい。どんなお話ですか?|
|~ロバート・ガルシア|えっとな。&br;こんな時にこんな話したら、迷惑かもしれへんのやけど――|
|~〇×|(あれ? ロバートさんどうしたんだろう。&br;話しにくいことなのかな?)|
|~ロバート・ガルシア|――これからもずっと、ワイのそばにいてくれんか?|
|~〇×|え……?|
#endregion
//----------
**19話 [#story_19]
#region(ネタバレ注意)
|~ロバート・ ガルシア|――これからもずっと、ワイのそばにいてくれんか?|
|~〇×(主人公)|え……?|
|~〇×|そ、それはどういう……意味で……。|
|~ロバート・ガルシア|わからん?言葉のままやで。|
|~〇×|(て、手に……キス……っ。)|
|~〇×|ろ、ロバートさん……!?|
|~ロバート・ガルシア|急にこんなこと言って、びっくりするよな。&br;でも堪忍な。ワイの気持ち、聞いてほしいんや。|
|~ロバート・ガルシア|さっきは、運命の導く結果に辿り着くまで、逃げて迷って強くなるんやって、言うたやろ?|
|~ロバート・ガルシア|ワイのことやから、これからもしょっちゅう運命から逃げて悩んで、立ち止まることもあると思う。|
|~ロバート・ガルシア|だからそんな時、×ちゃんがそばにおってくれたら、どれだけいいかって、最近はずっと考えてしまうんや。|
|~ロバート・ガルシア|だから×ちゃん。&br;ワイが運命に疲れた時、逃げ場所になってくれへんか?|
|~ロバート・ガルシア|いつだって、ワイには×ちゃんがいるって思えれば、ワイは、逃げたり迷いながらでも生きていける。|
|~〇×|ロバートさん。私、その――|
|~ロバート・ガルシア|――なーんて、情けないこと言うてゴメンな!|
|~ロバート・ガルシア|ほれ、靴紐も結び終わったし、そろそろ部屋戻らんと。|
|~ロバート・ガルシア|お守り代わりや。大事につけといてな。|
|~〇×|(ロバートさんがつけてくれた大切なお守り。&br;なんだか勇気が湧いて、心が温かくなってくる。)|
|~〇×|(いつもこうして、勇気をくれた人……ロバートさんが私を必要としてくれることが、こんなに嬉しいなんて。)|
|~〇×|はい。……私でよかったら。|
|~ロバート・ガルシア|そか。はは……なんや、めっちゃ嬉しいわ。|
#endregion
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**エピローグ [#story_20]
#region(ネタバレ注意)
|>|ナギさんの主催で、改めて開催されたKOF。&br;それが無事終結したあと、私は飛行機に乗っていた――|
|〇×(主人公)|(ロバートさんにイタリアへ誘われて、ついてきたけど、やっぱりすごく緊張する。)|
|〇×|(初めて行くイタリアだし、しかもロバートさんのお父さんに会うだなんて。)|
|~ロバート・ ガルシア|×ちゃん、元気ないけど大丈夫か?&br;もしかして、飛行機に酔ってもうた?|
|〇×|え? いえ、違うんです。&br;ちょっと、緊張してきて……。|
|~ロバート・ガルシア|あ、もしかして、親父に会うんが怖いんか?&br;大丈夫。洗脳されてた時みたいな怖い顔なんてしてへんから。|
|〇×|怖いとかそんなんじゃないんです。やっぱり財団のトップの人と会うと思うと、ドキドキして。|
|~ロバート・ガルシア|そんな緊張することないやん。親父はナギの洗脳から解放してくれたお礼がしたいって言うとんのやから。|
|〇×|だ、だってそのお礼として、パーティーを開いてくれるだなんて。|
|〇×|(ガルシア財団総帥主催のパーティー。やっぱり、想像しただけで緊張しちゃう。)|
|〇×|私、社交界のマナーって言うんですか?そういうの、全然わかってないんです。|
|~ロバート・ガルシア|ははは、そっか。でもそのへんのことは、ワイがちゃーんとサポートするから、大丈夫やで。|
|~ロバート・ガルシア|それにな、緊張すんのはワイも同じなんや。親父と一緒のパーティーに出んのは、久々やからな。|
|~ロバート・ガルシア|お礼受けに来た×ちゃんに頼むのもなんやけど、ワイが逃げ出さんように、そばにおってくれたら嬉しいで。|
|〇×|……わかりました。&br;緊張しますけど、ちゃんとロバートさんの隣にいますね。|
|〇×|で、でも、本当にマナーとかのことは、ロバートさんが助けてくださいね!|
|~ロバート・ガルシア|わかったわかった、ワイに任しとき。|
|〇×|(やっと着いた。日本からこんなにかかるなんて。イタリアって、本当に遠い場所なんだなぁ。)|
|~黒服の男|ロバート様、×様、お待ちしておりました。こちらの車にお乗りください。|
|~ロバート・ガルシア|なんや、着いた早々迎えが来とる。×ちゃんに、ろくに観光もさせられへんのかいな。|
|〇×|(わあ、テレビでしか見たことないような車が、飛行機のそばに停まってる。)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、飛行機に続いてまた座ることになるけど、ここは大人しく乗っとこか。|
|〇×|はい。ロバートさんのお父さんも待ってるかもしれませんし、そうしましょう。|
|>|私たちが邸宅に着くと、ロバートさんのお父さんは大歓迎で迎えてくれた。しかし――|
|~◯×|(想像以上の大邸宅に、ロバートさんに貰ったドレス。周りも、着てる服も豪華で、落ち着かないなあ……。)|
|~◯×|(ロバートさんも緊張してるって言ってたし、しっかりしてないといけないのに。)|
|~◯×|(……それにしても、ドレスを着てこの部屋で待ってるように言われたけど、いつまで待ってればいいんだろう?)|
|~メイドA|――やっぱり、今回の騒動でのガルシア家は、判断を間違えたとしか言えないわ。|
|~◯×|(あれ?扉の向こうから声か聞こえる。ガルシア家のことを、話しているみたい。)|
|~メイドB|本当よね。ご主人様も、どうして中止するようなイベントに、大金を出したんだか。|
|~メイドA|そうそう。おかげでガルシア家を追い落とそうって連中が、ガルシア家は社会的信用を失ったって騒いでるらしいよ。|
|~メイドB|はあ……。ガルシア家はどうなっていくんだか。|
|~◯×|(ロバートさんのお家、KOFのことで、まだ悪く言われてるんだ。)|
|~◯×|(ロバートさん、ガルシア財団の後継者として、こんな中でどうしていくんだろう。)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、ワイや。部屋に入ってもええかな?|
|~◯×|あ、はい。大丈夫です。入ってきてください。|
|~◯×|(ガルシア家のこと、私は何もできない。今は、笑顔でロバートさんのそばにいよう。)|
|~ロバート・ガルシア|おお!やっぱりそのドレス、×ちゃんに似合うなあ。ワイの見立ては、大正解やったな。|
|~◯×|すみません、ロバートさん。こんな素敵なドレスを頂いてしまって。|
|~ロバート・ガルシア|ええんやって。ワイが×ちゃんにドレスを贈りたかったんやから。|
|~◯×|そう言ってもらえて光栄です。ドレス、大切にします。ありがとうございま――|
|~ロバート・ガルシア|ちょい待ち!まだ×ちゃんにプレゼントがあるんや。|
|~ロバート・ガルシア|ドレスだけじゃ、コーディネートは完成せえへんで。ほら、これも受け取ってえな。|
|~◯×|わあ、綺麗な白のハイヒール。これを、私に?|
|~ロバート・ガルシア|そや、サイズは、前に×ちゃんの靴を買った時に覚えたから、ばっちりやと思うで。|
|~◯×|ありがとうございます……すごく嬉しいです!|
|~ロバート・ガルシア|喜んでもらえて、ワイも嬉しいで。さ、座って。今回もワイが履かせたるわ。|
|~◯×|(このドレスじゃ、靴を履くのは大変そうだし、ちょっと恥ずかしいけどロバートさんにお願いしようかな。)|
|~◯×|……じゃあ、お願いしますロバートさん。|
|~ロバート・ガルシア|うんうん。ちょい待ってな。|
|~◯×|(ロバートさんが靴を履かせてくれると、初めて靴を贈ってくれた日のことを思い出す――)|
|~ロバート・ガルシア|これでええ。どうや、サイズぴったりなんちゃう?|
|~◯×|はい。とても足に合ってるみたいです。靴もドレスも……本当に素敵なものをありがとうございます。|
|~ロバート・ガルシア|当然やって。今日は×ちゃんをたくさんの人に見てもらうんやから。めっちゃええもん着てもらわんとな。|
|~◯×|(うう……そうだった。これからパーティなんだもんね。考えたら、また緊張してきちゃった。)|
|>|いよいよパーティーが始まり、来賓のみなさんが見守る中、私はロバートさんと一緒に壇上へ上がった――|
|~◯×|(こんなにたくさんの人の前に立ってる上に、ガルシア家を救った人物だって、紹介されちゃった。)|
|~◯×|(そのせいか、会場中の視線を感じる。もう、立ってるだけで冷や汗が出てくるよ……。)|
|~司会の男|それでは続きまして、ロバート・ガルシア様よりご挨拶を頂きます。|
|~◯×|(あ、ロバートさんが話す番みたい。)|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん。悪いんやけど、隣立っててくれるかな?|
|~◯×|はい。ちゃんと隣で、ロバートさんのこと見てますからね。|
|~ロバート・ガルシア|そりゃ百人力やな。ほな、いっちょやったるか。|
|~ロバート・ガルシア|……みなさん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。|
|~ロバート・ガルシア|本日は、ガルシア家の恩人である、◯さんをご紹介したいという趣旨でお集まりいただきました。|
|~ロバート・ガルシア|しかし、みなさんが本当に聞きたいと思っていることは、『ガルシア家の行く末』である。それは理解しております。|
|~ロバート・ガルシア|ですので、この場をお借りして、私の想いをお話させてください。|
|~ロバート・ガルシア|今、ガルシア家の行く末を不安に思っている方は、内外含め少なからずいることと思います。|
|~ロバート・ガルシア|その中には、ガルシア家への社会的信頼を、疑問視する声もあります。|
|~ロバート・ガルシア|私は、父と共に、我々が自ら招いたこの困難に、立ち向かっていく覚悟があります。|
|~ロバート・ガルシア|今一度、我々は社会に対し、責任を果たさなくてはならない。|
|~ロバート・ガルシア|ここにお集まりのみなさん。是非、私と父にお力をお貸しいただけないでしょうか!|
|~◯×|(私の肩を抱く、ロバートさんの手が少しだけ震えてる。)|
|~◯×|(ロバートさん、ガルシア家の跡継ぎとして、必死に運命に立ち向かってるんだ。)|
|~ロバート・ガルシア|は〜〜〜〜!緊張したわ……。ほんま、あんなん心臓に悪くてかなわん。|
|~◯×|ふふ、私も……実はすごい汗をかいてました。|
|~ロバート・ガルシア|今日のところはこれで一息ってところやけど、また明日から頑張っていかなならんな。|
|~◯×|そうですね。今日パーティーに来てたみなさんも、ロバートさんに、期待していたみたいですし。|
|~ロバート・ガルシア|そやなあ。ガルシア財団の跡取りとして、期待裏切るような真似、できへんもんな。|
|~◯×|ロバートさん、私にも何が手伝えることはあるでしょうか?|
|~ロバート・ガルシア|え?なんや×ちゃん、さっき隣におってくれるだけでよかったのに、これ以上なんか望んでええんか?|
|~◯×|もちろんです。私に出来ることだったら、お手伝いさせてください。|
|~ロバート・ガルシア|それじゃあ、頼みがある。×ちゃんにしか、できへんことなんや。|
|~◯×|私にしか出来ないこと?……って、ろ、ロバートさん!?|
|~◯×|×ちゃん、真剣にワイとの将来、考えてくれへんか?|
|~ロバート・ガルシア|×ちゃん、真剣にワイとの将来、考えてくれへんか?|
|~◯×|しょ、将来って。つまり、その……|
|~ロバート・ガルシア|プロポーズや。一世一代のな。|
|~ロバート・ガルシア|今すぐにってわけやないけど、この先ずっと一緒にいるって、約束だけでもさせてくれへんか?|
|~ロバート・ガルシア|あんたに出会って、初めはほんま可愛い子やなって思ってただけやったけど……。|
|~ロバート・ガルシア|自分の運命と向き合うその強さに、眩しさに目を覚まされてどんどん惹かれていったんや。|
|~◯×|ロバートさん……。|
|~ロバート・ガルシア|ワイはな、この先×ちゃんがいない人生なんて到底考えられへんって思うようになったんやで。|
|~ロバート・ガルシア|返事は急がんけど――|
|~◯×|……ふふ、ロバートさん。私、そのことなら、前にお答えしています。|
|~◯×|『私でよかったら。』……喜んで。|
#endregion
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