**第1話 [#story1]
#region(ネタバレ注意)
|>|ある日の昼食時――|
|リポーター|世界中で名声を轟かせる大人気俳優が&br;この度来日しました!!|
|リポーター|これを歓迎し、近日中に&br;歓迎パーティーが開かれるとされ――|
|ロバート・ガルシア|はあ、こらすごいなあ。&br;世界中のセレブが大集結やないか。|
|〇×(主人公)|きっととても豪華なパーティーになるんでしょうね。|
|矢吹真吾|演技も、普段の生活も派手好きな俳優さんですもんね。&br;どんなパーティーなのか気になるっす!|
|リョウ・サカザキ|そんなにすごい人なのか。&br;俺は聞いたこともないが……。|
|ロバート・ガルシア|そら修行ばっかりしとるリョウは&br;知らんでもしゃあないわなあ。|
|〇×|いろんな映画やドラマに出演していて、この人が&br;出れば必ず大ヒットするとまで言われているんですよ。|
|リョウ・サカザキ|ほう、それはすごいな。&br;しかしそんな奴が何故日本にやってきたんだ?|
|〇×|今度公開される映画の宣伝のためみたいですね。|
|〇×|――と、いけない。昼食の準備の途中でした。|
|リョウ・サカザキ|何か手伝えることがあればやるぞ。|
|〇×|ありがとうございます。でも、&br;あと少しで終わりますし大丈夫ですよ。|
|〇×|トレーニングでお疲れでしょうし、&br;ゆっくりしていてください。|
|リョウ・サカザキ|そうか。では、お言葉に甘えるとしよう。|
|〇×|(えっと、あとはごはんと&br;お味噌汁をよそって――)|
|テリー・ボガード|お、いい匂いだな。&br;ちょうどランチの時間だったか。|
|アンディ・ボガード|こんにちは、〇さん。|
|〇×|テリーさん、アンディさん、こんにちは。|
|テリー・ボガード|おう、×。&br;今日はみんないるか?|
|〇×|はい、&br;居間にリョウさんとロバートさんと真吾くん……。|
|〇×|あともう少ししたら、他のみなさんも&br;トレーニングから戻ってくるはずです。|
|テリー・ボガード|そうか、それならちょうどいい&br;タイミングだったな。|
|アンディ・ボガード|そうだね、兄さん。|
|〇×|何かあるんですか?|
|テリー・ボガード|ああ――。|
|リポーター|ご覧ください、さすが大物スターは&br;着るものもきらびやかですね~。|
|リポーター|歓迎パーティーでは&br;どんな装いを披露されるのか楽しみですね。|
|テリー・ボガード|おっと、もう日本に来てたんだな。|
|テリー・ボガード|実はな、この俳優の歓迎パーティーに&br;招待されたんだ。|
|〇×|えっ……!?|
#endregion
//------------------------------
**第2話 [#story2]
#region(ネタバレ注意)
|〇×(主人公)|この俳優さんの歓迎パーティーに&br;テリーさんが招待されてるんですか……?|
|テリー・ボガード|ああ、そうなんだ。俺が前にスタントマンとして&br;出演した映画で共演したことがあってな。|
|テリー・ボガード|その縁で招待されたんだ。|
|〇×|すごい! テリーさんって&br;いろんな人と交流があるんですね。|
|テリー・ボガード|ああ、だがちょっと一筋縄ではいかないことがあるんだ。&br;そこで×達に相談があってな。|
|〇×|私達に、ですか?|
|テリー・ボガード|とりあえず、×の美味いランチを食べながら&br;話をさせてもらうぜ!|
|リョウ・サカザキ|――大物俳優の暗殺だと……!?|
|矢吹真吾|暗殺って、あの、&br;こっそり殺すあれですよね……!?|
|草薙京|それ以外何があるってんだよ。&br;……で、その暗殺がどうしたって?|
|テリー・ボガード|ああ。そういう目論見が&br;パーティーの裏で動いているらしい。|
|ロバート・ガルシア|またなんでそんなことになってるんや?|
|アンディ・ボガード|彼の活躍に嫉妬した別の俳優がいるそうなんだ。&br;彼を排除したいのだろうね。|
|リョウ・サカザキ|なんて卑怯な……。同じ俳優ならば&br;正々堂々俳優として勝負すればいいものを。|
|テリー・ボガード|きらびやかに見える世界も、&br;裏では汚いものが渦巻いている……よくあることさ。|
|矢吹真吾|はぁ……お、恐ろしいっすね……。|
|草薙京|ま、暗殺者のひとりやふたり、&br;KOFで何度も見て来たし、今さらだろ。|
|テリー・ボガード|まあ、それで、暗殺者の脅威から守ってほしい、&br;って依頼がパーティーの主催者から来たんだ。|
|テリー・ボガード|ちなみに、ターゲットは、&br;自身が狙われていることを知らないらしい。|
|アンディ・ボガード|なるべく大騒ぎにならないよう、&br;秘密裏に処理してほしい、というのが主催者の望みなんだ。|
|〇×|なるほど……それで、私たちに協力してほしい、&br;というのはどういうことなんでしょうか?|
|テリー・ボガード|ああ、大騒ぎにならないようにするため、&br;普通のパーティー客のふりをして会場に潜入する。|
|テリー・ボガード|会場は広い。俺とアンディだけじゃ&br;監視の目が足りないんだ。|
|リョウ・サカザキ|なるほどな。|
|ロバート・ガルシア|そういうことなら任せてや。&br;パーティーなら慣れてるしな。|
|テリー・ボガード|助かるよ。そして×。あんたは、&br;一般人を装う俺達の手伝いをしてほしい。|
|〇×|具体的にどうすればいいんでしょうか?|
|テリー・ボガード|誰かのガールフレンドのふりをして、&br;エスコートされるんだ。|
|テリー・ボガード|エスコートする奴は、エスコートのふりをしながら&br;周囲の警戒にあたる。|
|アンディ・ボガード|女性をエスコートするときに、&br;周りを見るのは当然のことだからね。|
|ロバート・ガルシア|それで暗殺者に怪しまれずに&br;違和感なく調査ができるっちゅーわけやな。|
|テリー・ボガード|そういうことさ。|
|リョウ・サカザキ|だが、危険じゃないのか?&br;現場に〇を連れて行くなど……。|
|テリー・ボガード|それならリョウが、×を&br;エスコートする役になるのはどうだ?|
|テリー・ボガード|一番そばで見ていれば安心だろ?|
|リョウ・サカザキ|それは、確かにな……。&br;〇、あんたはそれでいいのか?|
|〇×|はい、私にできることがあるのなら、&br;お手伝いしたいと思います。|
|〇×|それに暗殺なんてひどいこと、&br;絶対に止めたいですから。|
|リョウ・サカザキ|そうか。……あんたの気持ちを&br;無下にするわけにもいかないしな……。|
|リョウ・サカザキ|わかった。エスコートは慣れていないが、&br;暗殺を止めたい気持ちは俺も一緒だ。|
|リョウ・サカザキ|共に頑張ろう、〇。|
|〇×|はい!|
|テリー・ボガード|サンキュー。あんた達に相談してよかったぜ。|
|リョウ・サカザキ|それで、当日は人員は多いほうがいいのか?|
|テリー・ボガード|あまり多すぎても不審がられるかもしれないからな。&br;ほどほどでいいと思うぜ。|
|リョウ・サカザキ|わかった。当日、都合のつく者達で&br;パーティー会場に向かうとしよう。|
|矢吹真吾|夜のパーティーってなると&br;未成年は行けないですよね。|
|矢吹真吾|みなさんの無事を祈ってます!&br;がんばってきてください!|
#endregion
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**第3話 [#story3]
#region(ネタバレ注意)
|ナギ|やあ、これがぱーてぃー、というものか。&br;キラキラしててすごいね。|
|ビリー・カーン|……おい、どうしてコイツがここにいるんだよ。|
|〇×(主人公)|あ、えっと、パーティーに興味があるそうで、&br;ぜひ行ってみたいと言われたので……。|
|ナギ|向こうに綺麗な花が飾ってある。&br;あっちには見たことのない食べ物が……。|
|リョウ・サカザキ|ナギ、あまり勝手な行動はするな。|
|ナギ|ああ、すまない。いろいろと興味深くてね。&br;気を付けるよ。|
|ビリー・カーン|ったく、気が緩むぜ。|
|テリー・ボガード|しかし、まさかビリーも来るとは思わなかったな。|
|ビリー・カーン|調べてみたら、この暗殺組織は前に、&br;ギース様と敵対してたところだってわかってな。|
|ビリー・カーン|壊滅させたはずなんだが、残党がいるみてぇでな。&br;だったら潰しておかねぇと、と思ったんだ。|
|テリー・ボガード|なるほどな。|
|ロバート・ガルシア|それじゃ、パーティーを楽しむ前に、&br;今日の作戦のおさらいをしとこか。|
|ロバート・ガルシア|護衛すんのはパーティーの&br;メインゲストの俳優。|
|アンディ・ボガード|彼を暗殺しようと企み、&br;暗殺者を手配した者がいる。|
|テリー・ボガード|俺達はその暗殺者の行動を&br;阻止するべく、会場を見張る……ということだな。|
|リョウ・サカザキ|承知した。暗殺などという卑怯な真似は&br;必ず止めて見せる。|
|ロバート・ガルシア|そんなこと言うて、変に突っ走らんよう&br;気ぃつけや、リョウ。|
|ロバート・ガルシア|お前には×ちゃんをエスコートするっちゅう&br;大事な役割もあるんやからな!|
|リョウ・サカザキ|だが、あくまでエスコートのふり、だろう?&br;エスコートするふりをしながら周囲を警戒するという……。|
|ロバート・ガルシア|はぁ~。ほんま鈍いやっちゃな。&br;ふりでもリアリティは大切にせなあかん!|
|ロバート・ガルシア|ワイはリョウの見張りもせなあかんから&br;仕事量が倍やな、ははは!|
|リョウ・サカザキ|む……ぜ、善処しよう。|
|ロバート・ガルシア|ちゃーんとお前がそこそこできるよう&br;ワイがサポートしたるさかい、安心しいや!|
|リョウ・サカザキ|た、助かる、ロバート。|
|テリー・ボガード|さて、皆準備はオーケーみたいだな。&br;×も、大丈夫か?|
|〇×|はい。何か怪しいものを見つけたら&br;すぐみなさんに報告します。|
|〇×|私はみなさんのように戦うことはできませんが、&br;その分、会場の中を注意深く観察しますね。|
|テリー・ボガード|頼もしいな。それじゃあ、行くか!|
#endregion
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**第4話 [#story4]
#region(ネタバレ注意)
|〇×(主人公)|うーん……怪しい人を探すといっても&br;なかなか難しいですね……。|
|リョウ・サカザキ|そうだな。だが〇。あんたは&br;無理をする必要はないんだぞ。|
|リョウ・サカザキ|危ないことは俺達に任せて、あんたは&br;俺の援助のためにそばにいてくれればそれでいい。|
|リョウ・サカザキ|これだけ多くの人間が来ているしな。&br;暗殺者を見つけるというのも一筋縄ではいかないだろう。|
|〇×|そう、ですね。|
|リョウ・サカザキ|だが、少しでも気になることがあれば、&br;すぐに教えてほしい。|
|〇×|はい、わかりました。|
|ナギ|やあ、ふたりとも、ぱーてぃー、楽しんでるかな?|
|リョウ・サカザキ|ナギはかなり楽しんでいるようだな。|
|ナギ|うん。初めて見るものがたくさんでおもしろいよ。|
|ナギ|ところで、おいしそうなものを&br;見つけたんだけど、これってなんなのかな?|
|〇×|それはモンブランですね。栗のケーキですよ。|
|ナギ|もんぶらん、かあ。栗はわかるけど、&br;もんぶらんは初めてだな。|
|ナギ|こっちのいい香りのする水はなんだい?|
|リョウ・サカザキ|それはワインだな。お酒だから&br;気をつけろよ。|
|ナギ|お酒かあ。お酒なら大好きだよ。&br;そうか、これはわいん、って言うのか。|
|ナギ|なるほど、ありがとう。ふたりとも物知りだね。&br;それじゃあ僕はもっとぱーてぃーを楽しんでくるよ。|
|〇×|あ、はい、行ってらっしゃい。|
|〇×|(ナギさん、マイペースだなぁ……。)|
|ナギ|わっ。|
|パーティー客の男|うわっ、スーツが……!|
|ナギ|すまない、ぶつかってわいんを零してしまった。|
|〇×|大変! すぐに拭かないと……。|
|パーティー客の男|いや、大丈夫です。これくらい、&br;自分でなんとかできますから。|
|〇×|そ、そうですか?|
|〇×|(今、不自然に手を隠そうとしたような……。&br;――あ。)|
|〇×|(今の人、スーツの袖の中にナイフを入れてる……!&br;まさか、この人が暗殺者……?)|
|〇×|リョウさん、少し耳を貸してもらってもいいですか?|
|リョウ・サカザキ|どうした?|
|〇×|実は、あの人の袖の中にナイフが見えて……。|
|リョウ・サカザキ|なんだと……?|
|テリー・ボガード|ヘイ、リョウ、×。&br;どうだい。パーティー楽しんでるか?|
|リョウ・サカザキ|テリー、丁度いいところに来た。&br;実はな……。|
|テリー・ボガード|なるほど。よく見つけたな。&br;よし、リョウと×はそいつをよく見ててくれ。|
|テリー・ボガード|暗殺者は他にもいるかもしれない。&br;何かあったら、すぐに報告を頼む。|
|〇×|はい、わかりました。|
|ビリー・カーン|おい、これはどういうことだよ!&br;腐ってんじゃねぇか、こんなものを客に出すのか、あぁ!?|
|ウエイター|も、申し訳ありません……!&br;すぐに交換いたします!|
|〇×|(……? ビリーさん?)|
|テリー・ボガード|なんか怒ってるみたいだな。&br;行ってみるか。|
#endregion
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**第5話 [#story5]
#region(ネタバレ注意)
|ビリー・カーン|ったく、しっかりしろよな。&br;美味い飯が台無しだぜ。|
|ウエイター|は、はい、気を付けます。&br;それでは、失礼いたします。|
|ビリー・カーン|…………やれやれ。|
|〇×(主人公)|あの、ビリーさん。どうしたんですか?|
|ビリー・カーン|あぁ、あんたらか。&br;体の具合は大丈夫か?|
|テリー・ボガード|何も問題ないが、×だけじゃなくて&br;俺たちのことまで心配するなんて珍しいな。|
|リョウ・サカザキ|……何かあったのか?|
|ビリー・カーン|さっき、オレが料理を片付けさせたのは&br;見てたよな?|
|ビリー・カーン|あの中に毒が入ってたんだ。臭いでわかった。|
|〇×|ど、毒……!?|
|ビリー・カーン|幸いまだ誰も手を付けてなかったから、&br;被害が出る前にどうにかしてやった。|
|テリー・ボガード|へえ、臭いだけで毒がわかるのか。&br;大した嗅覚だな。|
|ビリー・カーン|ま、裏社会で生きてると、&br;そういうのにも敏感になっちまうんだよ。|
|テリー・ボガード|それにしても、毒か……。&br;これも暗殺組織の仕業なんだろうな。|
|〇×|ですが、さっきナイフを持っている人がいましたが、&br;あれは……。|
|テリー・ボガード|殺す方法は何もひとつじゃない。&br;暗殺者となれば手段はいくらでも用意してるだろうからな。|
|〇×|そんな……。|
|テリー・ボガード|……ああ、そんな顔しないでくれ。&br;あんたを不安にさせるつもりはなかったんだ。|
|テリー・ボガード|ただ、暗殺者ってやつは、目的を達成するためなら&br;手段は選ばない。|
|テリー・ボガード|そういうものだって&br;頭に置いていてくれると助かる。|
|〇×|……はい、わかりました。|
|〇×|そういうことなら、なおのこと&br;何があるかしっかり周りを見ていないといけませんね。|
|ビリー・カーン|へぇ、度胸が据わってるじゃねぇか。|
|〇×|手伝うと決めた以上は、&br;みなさんのお役に立ちたいですから。|
|ロバート・ガルシア|テリー、リョウ、大変や。&br;あっちに拳銃隠し持っとる奴がおった。|
|ロバート・ガルシア|まだ動く気配はないみたいやけど、&br;いつでも準備万端、って雰囲気やで。|
|リョウ・サカザキ|凶器を隠し持った奴がまだいるのか。|
|テリー・ボガード|銃か……本当に手段を選ばない奴らだな。&br;いったい全部で何人いるってんだ。|
|ロバート・ガルシア|どういうことや?|
|テリー・ボガード|他にも凶器を持った奴が複数いるってことさ。&br;だから、下手に動くわけにはいかない。|
|ビリー・カーン|ひとりを押さえている間に、&br;別の奴が動いたりしちゃ厄介だからな。|
|リョウ・サカザキ|くっ……卑怯な……。|
|ロバート・ガルシア|ま、武器を持ってる以上は&br;覇王翔吼拳使っても問題ないっちゅーことでもあるな。|
|リョウ・サカザキ|ああ。使うべきタイミングを&br;見誤らぬようにしないとな。|
|ナギ|やあ、みんな。集まってなんの話をしているんだい?&br;おもしろい話なら僕も交ぜてくれないかな。|
|テリー・ボガード|そーリー、あいにくと笑うような話は無いぜ。|
|ナギ|そうなんだ。じゃあ、僕のおもしろい話をするよ。|
|ビリー・カーン|今そんな話をしている場合じゃ……。|
|ナギ|ほら、見て。これって目覚まし時計だよね?&br;部屋の片隅に落ちてたんだよ。|
|ナギ|誰かこんなところで寝ていたのかな?&br;不思議なことってあるもんだね。|
|〇×|目覚まし時計……?&br;どうしてそんなものが……。|
|テリー・ボガード|…………なあ、それ、&br;ちょっと俺に見せてくれ。|
|テリー・ボガード|おい、こいつはまさか……。|
#endregion
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**第6話 [#story6]
#region(ネタバレ注意)
|ビリー・カーン|おい、ナギの持ってきた目覚まし時計が&br;なんだってんだよ。|
|テリー・ボガード|…………。|
|テリー・ボガード|間違いない、こいつは爆弾だ。|
|〇×|ば、爆弾!?|
|テリー・ボガード|目覚まし時計のようにカモフラージュされてるが&br;時刻の表示をよく見てくれ。|
|リョウ・サカザキ|……正確な時間を指していないな。|
|リョウ・サカザキ|まだ20時にもなっていないというのに、&br;この時計は0時に差し掛かろうとしている。|
|テリー・ボガード|そして裏のフタを開けると、中には電池じゃなくて&br;火薬がぎっちりと詰まっている。|
|ナギ|……? これは、目覚まし時計ではない、&br;とういうことなんだね?|
|テリー・ボガード|目覚ましどころか、時間になったら&br;全員が永遠に眠ってしまう代物さ。|
|テリー・ボガード|おそらく、この時計が0時を示した瞬間が&br;タイムリミットだろうな。|
|リョウ・サカザキ|残り時間はあと30分もない、&br;ということか。|
|ナギ|それは恐ろしいね。&br;早くなんとかするべきなんじゃないのかい?|
|テリー・ボガード|そうだな。……ひとまず、&br;解除できるかどうかやってみるぜ。|
|アンディ・ボガード|兄さん、まずいよ。&br;ナイフを持った男が彼に近づこうとしている。|
|テリー・ボガード|くそっ、次から次へと……!|
|リョウ・サカザキ|奴は俺が取り押さえる。&br;その間にテリーは爆弾解除に専念してくれ。|
|ロバート・ガルシア|突っ走るんやないでリョウ。|
|リョウ・サカザキ|わかっている。|
|リョウ・サカザキ|……おい、そこのお前。|
|パーティー客の男|な、なんですか?|
|リョウ・サカザキ|その袖の下に隠しているナイフは&br;いったいなんだ?|
|パーティー客の男|こ、これは、今からケーキを&br;切り分けようと……。|
|リョウ・サカザキ|そうか……。だが、ケーキを切り分けるのに&br;そんなところに隠す必要はない!|
|パーティー客の男|くっ……う、うるさい!&br;なんなんだお前は! どっか行け!|
|俳優|うわっ!? な、なんだ、この&br;でかいナイフ!?|
|男A|ちっ……役立たずが……。&br;だったら俺が動くしか……。|
|ロバート・ガルシア|とりゃっ!|
|男A|ぐ……っ!|
|パーティー客の女性|きゃあっ!? け、拳銃!?|
|ロバート・ガルシア|そんなけったいなもん、没収や没収!|
|男B|……っ!|
|アンディ・ボガード|おっと、その先には行かせないよ!|
|パーティー客の男性|な、なんだ? 何が起きてるんだ?|
|パーティー客の女性|ナイフとか拳銃とか……&br;なんでそんなものを持った人がいるの!?|
|俳優|こ、これはいったい……&br;みんなを不安がらせるわけには……。|
|〇×|(いけない、このままだと大騒ぎになっちゃう。&br;なんとかしないと……。)|
#endregion
//------------------------------
**第7話 [#story7]
#region(ネタバレ注意)
|パーティー客の女性|凶器を持った人がいるなんて……&br;何が起きているの……!?|
|俳優|み、みんな落ち着いてくれ!&br;こ、これは……。|
|〇×(主人公)|(会場中が動揺してる……。なんとか騒ぎを鎮めないと……。&br;けど、どうすれば……。)|
|ナギ|やあ、これは楽しいね。|
|〇×|え、な、ナギさん……!?|
|ナギ|この間、てれびで見た、さすぺんすどらま、&br;みたいだよ。|
|ナギ|ね、ヒメ。これってそうなんだよね?|
|〇×|え、えっと、は、はい、そうですね……!&br;ドラマみたいでかっこいいです!|
|〇×|(こ、ここはドラマってことにしたほうが&br;いいかも……!)|
|パーティー客の女性|ドラマ?&br;じゃあこれは何かのサプライズってこと?|
|テリー・ボガード|あ、ああ、そうさ! これはサプライズさ!&br;だからみんな、不安になることはない!|
|テリー・ボガード|みんな、見てくれ。ここに時間の合っていない&br;目覚まし時計があるだろう?|
|テリー・ボガード|実はこれは、0時になると&br;派手な音が鳴るような仕組みになってるんだ。|
|テリー・ボガード|まるで本物の爆弾のようにな。|
|俳優|それで、それをどうするつもりなんだ、テリー?|
|テリー・ボガード|本物そっくりにパズルが仕組まれてて、&br;見事パズルを解くと時計がストップする。|
|テリー・ボガード|まるでドラマのような展開が&br;味わえるとは思わないか?|
|俳優|なるほど、つまりテリーが今から&br;その爆弾のおもちゃを止めて見せるってことか!|
|パーティー客の女性|なんだかスリルがあって面白そう!&br;テリーさん、頑張って!|
|テリー・ボガード|オーケー、任せてくれ!|
|〇×|(テリーさん、すごい……! 爆弾騒ぎにならないように&br;とっさに機転を利かせるなんて……。)|
|アンディ・ボガード|なんとかなったみたいだね。&br;さすがは兄さんだ。|
|リョウ・サカザキ|ああ。しかしナギ、お前の言葉も&br;いい判断だったと思うぞ。|
|ナギ|……? 僕、何か言ったかい?|
|ロバート・ガルシア|何かって、サスペンスドラマっぽく見せるつもりで&br;ああいうボケしたんやろ?|
|ナギ|ボケ? 僕は本当にさすぺんすどらま、&br;みたいだと思ったから言っただけだよ?|
|ロバート・ガルシア|素で言っとったんかいな……。|
|アンディ・ボガード|ま、まあ、結果オーライ、ということで……。|
|〇×|(ナギさん、本当にマイペースだなぁ……。)|
|ビリー・カーン|おい、暗殺組織の奴ら、全員締め上げて来たぞ。|
|アンディ・ボガード|締め上げて……って&br;乱暴なことはしていないだろうね?|
|ビリー・カーン|んなこと言ってる場合かよ。&br;まあ、一応手加減はしたが。|
|ビリー・カーン|口を割らせたところ、この会場にゃ&br;もう他に暗殺者はいねぇんだとさ。|
|リョウ・サカザキ|と、いうことは残った厄介なものは……。|
|〇×|あの爆弾、ということになりますね……。|
|テリー・ボガード|……よし、ここの配線はオーケーだ。&br;次は……。|
|〇×|(テリーさん……頑張って……!)|
#endregion
//------------------------------
**第8話 [#story8]
#region(ネタバレ注意)
|パーティー客の男性|テリー! 頑張れよ~!|
|パーティー客の女性|テリーさんならできるって信じてる!|
|ロバート・ガルシア|やれやれ、呑気なもんやな。&br;本物の爆弾とは微塵も思ってない感じや。|
|アンディ・ボガード|だけど、これでいいんだよ。&br;いらぬ心配をかけたくないのが主催者の望みだからね。|
|ロバート・ガルシア|せやな、まあ、何があるかわからんし、&br;念には念を入れておかんとな。|
|ロバート・ガルシア|みんな! もしものときは、&br;こっちから逃げるんやで!|
|パーティー客の女性|え? でも、おもちゃなんでしょ?&br;爆発なんてしないし大丈夫なんじゃ?|
|ロバート・ガルシア|サスペンスドラマやったら、その辺の&br;リアリティも大事にせなあかんやろ?|
|パーティー客の女性|なるほど~。その辺の設定も考えてるのね。|
|ロバート・ガルシア|(……ま、設定やなくてほんまのことなんやけど……。)|
|リョウ・サカザキ|ひとまず、テーブルを動かして、&br;大勢が一度に逃げやすい退路は作った。|
|リョウ・サカザキ|いざとなったら、覇王翔吼拳を……。|
|アンディ・ボガード|避難誘導の経路はあっち。&br;これでもしものときもなんとかなるはずだ。|
|アンディ・ボガード|兄さんの方は――|
|テリー・ボガード|……こっちの配線は切れた。次に切るのは……。|
|ビリー・カーン|こっちだ。|
|テリー・ボガード|ビリー、わかるのか。|
|ビリー・カーン|ま、ギース様をお守りするために&br;こういうことも一応頭に入れてたんだよ。|
|ビリー・カーン|もう使うことはないと思ってたが。|
|テリー・ボガード|……ふっ、どんな経験でも&br;役に立つ瞬間はあるわけだな。|
|ビリー・カーン|とはいってもこの先はわかんねェからな。&br;てめぇの力でなんとかしろ。|
|テリー・ボガード|ああ、わかった。|
|テリー・ボガード|…………。|
|〇×|(テリーさん、どんどん配線を切っていく……&br;今のところ大丈夫そうだけど……。)|
|テリー・ボガード|…………よし、この配線も無事に切れたぜ。&br;残すところはあと2本。|
|テリー・ボガード|どちらかが正解。正しい方を切れば爆発は止まる。|
|リョウ・サカザキ|……間違った方を切ったら?|
|テリー・ボガード|……ま、言わずともわかるよな。|
|パーティー客の男性|なんか、本当に爆発するわけないって思っても&br;ドキドキしちゃいますね~。|
|パーティー客の女性|ですね~。テリーさん、頑張ってくださーい!|
|俳優|みんな! もっとテリーを応援するんだ!|
|テリー・ボガード|ははっ、みんなの期待を背負ってる、&br;って感じだな。|
|〇×|テリーさん、大丈夫ですか?|
|テリー・ボガード|ああ、平気さ。みんなの笑顔を守る為にも、&br;絶対に爆発は止めなきゃならない。|
|テリー・ボガード|……絶対に、止めて見せるさ。|
|〇×|(テリーさん……明るく笑っているけど&br;少しだけ手が震えてる気がする……。)|
|〇×|(緊張しないはずがないよね……。&br;何か、私にできることは……。)|
|〇×|テリーさん、&br;私に何かお手伝いできることはありますか?|
|テリー・ボガード|……そうだな、それなら――|
|テリー・ボガード|俺の手を握っていてくれないか、&br;×。|
#endregion
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**第9話 [#story9]
#region(ネタバレ注意)
|〇×(主人公)|……え? テリーさんの手を握る?|
|テリー・ボガード|ああ。それで、一緒に配線を切ってほしいんだ。|
|〇×|に、握っているだけでいいんですか?|
|テリー・ボガード|ああ。……正直なところ、&br;どっちの配線を切ればいいかわからないんだ。|
|テリー・ボガード|けど、あんたが手を握ってくれれば、&br;どちらを切ればいいかわかる気がする。|
|〇×|な、なんだか責任重大ですね……。|
|テリー・ボガード|大丈夫、俺を応援すると思ってさ。&br;頼むよ。|
|〇×|(時計のカウントはどんどん0時に近づいて行く……&br;何が起こるかわからないのは怖いけど……。)|
|〇×|(このまま何もせずにいるよりはずっといい。)|
|〇×|わかりました。……こうでいいですか?|
|テリー・ボガード|ああ、サンキュー。&br;あんたの優しい気持ちが伝わってくるよ。|
|テリー・ボガード|みんなを守りたいっていう気持ちがな。|
|〇×|それは、ここにいるみなさんも同じだと思います。|
|テリー・ボガード|ははは、確かにその通りだな。|
|テリー・ボガード|……と、話している場合じゃない。&br;タイムリミットはもうあと1分もない。|
|〇×|は、はい……。|
|テリー・ボガード|力強い手だな。……この力に、&br;俺はよく助けられてきた。そしてこれからも、な。|
|〇×|(テリーさんの手の震えが止まった……。)|
|テリー・ボガード|…………オーケー、切るのはこっちだ!|
|〇×|――!|
|格闘家たち|……っ!!|
#endregion
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**第10話 [#story10]
#region(ネタバレ注意)
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|テリー・ボガード|…………オーケー、切るのはこっちだ!|
|〇×(主人公)|(爆弾の時計は――!)|
|>|…………。|
|パーティー客の女性|止まった……?|
|テリー・ボガード|…………。|
|テリー・ボガード|ああ、無事に止まったぜ!|
|俳優|おおお、やった! すごいぞテリー!|
|パーティー客の女性|テリーさんかっこいい~!|
|ロバート・ガルシア|やったで! テリーも×ちゃんもようやった!|
|〇×|わ、私は何も……。&br;テリーさんが頑張ったおかげですよ。|
|ビリー・カーン|ま、爆弾のすぐ目の前に堂々といた&br;度胸はすげぇと思うぜ。|
|〇×|テリーさんなら大丈夫だと&br;信じてましたから。|
|テリー・ボガード|ははっ、ありがとう、×。|
|ナギ|なんだか盛り上がっているみたいだね。&br;さすぺんすどらま、は成功したってことかな?|
|テリー・ボガード|ああ、大成功さ!|
|俳優|いやあ、やっぱりテリーの演技はすごいな!|
|俳優|前に君と共演したときも思ったけど、&br;やっぱり君は俳優に向いてるよ!|
|テリー・ボガード|いや、俺にはスタントマンがちょうどいいんだ。&br;俳優なんてガラじゃない。|
|テリー・ボガード|その代わり、スタントの仕事ならいくらでも&br;引き受けるから、いつでも連絡してくれよ!|
|俳優|つれないなぁ。まあ、そこがテリーらしくもあるか。|
|俳優|さて、サプライズも終わったことだし&br;気を取り直してパーティーの続きだ!|
|テリー・ボガード|ふう……いろいろあったが、&br;無事に終わったようで何よりだな。|
|リョウ・サカザキ|ああ。こうして笑顔でパーティーを&br;楽しんでいる人々を見るとほっとする。|
|ロバート・ガルシア|しっかし、みんなこれがほんまに&br;爆弾事件やった、なんて思ってへんやろうなぁ。|
|アンディ・ボガード|いいじゃないか、これは僕達だけの&br;秘密、ということにしておこう。|
|ナギ|あ、見てヒメ。&br;新しい料理が出て来たよ。食べに行こう。|
|ビリー・カーン|ったく、てめぇは緊張感ってもんがねぇな。|
|テリー・ボガード|だが、ナギの天然のおかげで&br;乗り切れたところもある。サンキュー、ナギ。|
|ナギ|こちらこそ、ぱーてぃー、というものを&br;見ることができて嬉しいよ。|
|ナギ|あ、ほら、早く行かないと料理が無くなっちゃう。&br;行こう、ヒメ。|
|〇×|ふふっ、はい。&br;みなさんの分の料理も取ってきますね。|
|テリー・ボガード|悪いな、よろしく頼む。|
|リョウ・サカザキ|もう、これ以上トラブルは無いんだろうな。|
|テリー・ボガード|ああ。あとはゆっくり、&br;好きなようにパーティーを楽しむとしようぜ!|
|テリー・ボガード|みんな、今日は本当にお疲れさん!&br;スリリングな夜だったぜ!|
#endregion
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