〇× | テリーさん、今日は付き合ってくれてありがとうございます。 私、こういう場所は慣れてないから、助かりました。 |
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テリー・ボガード | いや、俺も、ちょうど息抜きしたいと思ってたんだ。 誘ってもらえて嬉しいよ。 |
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もうすぐ八神のライブの時間だな。 どんな音が聞けるか、すごく楽しみだ。 |
〇× | はい、私も楽しみです。 |
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テリー・ボガード | ――おっと、照明が落ちた。始まるぜ。 |
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〇× | (わあ……どの曲もすごく激しい曲だなあ。 なんだか、圧倒されちゃう。) |
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テリー・ボガード | 八神、最高のパフォーマンスだな。 この後の曲も期待できそうだ。 |
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〇× | はい……! |
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アナウンス | ――続いては、今夜だけの特別な一曲です。 セッティングをお待ちください。 |
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〇× | (特別な曲……?) |
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テリー・ボガード | ――なんだ?八神のやつ、マイクの前に立ったな。 あいつが歌うのか? |
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〇× | ……そうみたいです。 特別な曲って、そういうことなんでしょうか。 |
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(八神さんが歌うのか……。 なんでだろう、聴く私のほうがドキドキしちゃうな……。) |
(あれ?この曲、さっきまでの激しい曲と全然違う。 落ち着いてて、ちょっと切なくなるメロディ……。) |
テリー・ボガード | ……へえ。これは、アメリカの有名アーティストの曲だな。 |
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〇× | メロディがすごく素敵ですね……。 だけど、英語の歌詞なので内容がわからなくて残念……。 |
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テリー・ボガード | そうか……それは残念だ。 せっかく八神が×の前で、この曲を歌ったのにな。 |
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〇× | あの、八神さんが歌ってる歌、どんな歌詞なんですか? |
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テリー・ボガード | うーん、教えてはあげたいんだが……。 この歌詞は、自分で調べたほうがいい。 |
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〇× | そうなんですか? |
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テリー・ボガード | ああ。八神もそうだと思うぜ。 |
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〇× | (どんな意味の歌詞なんだろう……。) |
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テリー・ボガード | さてと、今日はもうお開きみたいだな。 俺は先に帰るから、×は八神に送ってもらってくれ。 |
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〇× | え?一緒に帰らないんですか? |
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テリー・ボガード | そうだな……さっきの八神の歌を聞いて あんたらの間に入るほど、俺は野暮じゃないってことさ。 |
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それじゃ、先に帰るよ。 |
〇× | あ、テリーさん……! |
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(本当に帰っちゃった。 どうしよう……八神さん、まだ忙しいかもしれないし。) |
八神庵 | ――おい、ライブは終わりだ。行くぞ。 |
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〇× | え!?八神さん? |
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(び、びっくりした。 八神さん、いつのまに後ろに……。) |
八神庵 | 何を呆けている。行くぞと言ったんだ。 |
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〇× | あ、あの、行くってどこへ……? |
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八神庵 | 道場だ。送ってやる。 |
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〇× | え?いいんですか? ……って、ちょっと待ってください! |
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〇× | (テリーさんが言ったとおり、 本当に八神さんに、送ってもらうことになっちゃった。) |
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……あの、ありがとうございます。 送ってもらっちゃって。 |
八神庵 | 構わん。 聴きに来いと言ったのは、俺だからな。 |
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〇× | いえ、すごく素敵なライブだったから、 私のほうがお礼しなきゃいけないくらいです。 |
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八神庵 | フン、俺のライブなのだから、当然だ。 |
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〇× | はい。 それに、さっき八神さんが歌ってた曲、すごく素敵でした。 |
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八神庵 | ……だろうな。 |
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〇× | でも私、英語の歌詞がわからなくて……。 |
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八神庵 | ああ。貴様にはわからないだろうと思っていた。 |
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〇× | うう……確かに英語はあんまり……。 でも、有名な曲って聞いたし、私でも調べられそうです。 |
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八神庵 | おい、有名な曲だと、誰に聞いた? |
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〇× | テリーさんです。今日は一緒に来てもらったんですけど、 八神さんの歌を聞いたら、先に帰ってしまって……。 |
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八神庵 | ……ヤツめ。余計なことを。 |
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〇× | (余計なこと?……どういう意味だろう。) |
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あの、八神さんの歌った曲の歌詞、帰ったらすぐ調べますね。 私も、どんな意味なのか知りたいし。 |
八神庵 | ……そんなことはしなくていい。 |
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〇× | え?でも、せっかく歌ってくれたのに、 どんな歌詞かわからないなんて……。 |
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八神庵 | しなくていいと言ってるんだ……! |
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〇× | え……!は、はい……! |
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(――あれ?八神さんの耳、ちょっと赤いような……。) |
八神庵 | ……わざわざ調べなくても、また歌ってやる。 |
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〇× | え?いいんですか? でも、ライブハウスでは今日だけだって……。 |
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八神庵 | ならば、貴様は特別扱いだ。ありがたく思え。 |
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