矢吹真吾 | ご馳走様っすー! いやあ、今日の朝ごはんもめっちゃ美味しかったですよ! |
---|
〇× | ふふ。ありがとう。 みんなたくさん食べてくれるから、本当に作り甲斐があるよ。 |
---|
〇× | (よし、このあと片づけをしたらスーパーに行って、 猫ちゃんにミルクをあげたのが八神さんなのか確認をしてこよう。) |
---|
アナウンサー | 数日前に暴動騒ぎが起きたKOFの会場で、暴動が 起こっているようです。現場のリポーターに繋いでみましょう。 |
---|
リポーター | はい、こちら渋谷です。KOF会場前では、 朝から反対派が集まっており、抗議活動を行っています。 |
---|
リポーター | 怪我人もすでに数人出ており―― |
---|
二階堂紅丸 | まったく。嫌なニュースが続くね。 |
---|
〇× | これまでにこんな風にお客さんが暴れたことはないって 言っていましたよね。どうして今回、急にこんなことに……。 |
---|
矢吹真吾 | ん~何度考えてもわからないですね。 |
---|
〇× | (こうして毎日みなさんと食卓を囲んでいると 平和だなって思うけど、まだ何も解決していないんだな……。) |
---|
草薙京 | 考えたってしょうがねえだろ。 |
---|
草薙京 | ……にしても、やっぱり×、 単独行動は辞めた方がいいんじゃねえか。 |
---|
〇× | え? どうしてですか? |
---|
草薙京 | 忘れたのかよ。あのナギ、だったか? あいつにご指名されてんだろ。 |
---|
草薙京 | それに八神にもオレの連れってことがバレたからな。 |
---|
矢吹真吾 | え!? 八神さん? 何かあったんですか? |
---|
草薙京 | ああ。買い物に行く途中に襲われてな。 |
---|
矢吹真吾 | ええっ……そうなると、〇さんが一人で行動するのは やっぱり心配ですよね……。 |
---|
〇× | (で、でもみなさんがついて来ちゃうと、 八神さんのことを調べられなくなっちゃう……。) |
---|
二階堂紅丸 | …………。 |
---|
二階堂紅丸 | まあ、気持ちはわかるけどさ。 |
---|
二階堂紅丸 | ×ちゃんだって幼稚園児じゃないんだから いつも一緒に行動するって言うのはどうなのかな。 |
---|
矢吹真吾 | でも……。 |
---|
二階堂紅丸 | ×ちゃんもお前たちみたいなむさくるしい格闘家が ずっとそばにいたら息が詰まるんじゃない? |
---|
二階堂紅丸 | だいたい、女の子はヤローに知られたくない買い物も多いんだよ。 ね、×ちゃん。 |
---|
〇× | (紅丸さん、私が自由に出かけられるように 気を遣ってくれてるんだ……話を合わせよう。) |
---|
〇× | そうですね。 化粧品とか洋服とかを見たいと思う日もありますし……。 |
---|
矢吹真吾 | なるほどー。確かの女性の買い物は長いですよね。 ……あ! 悪い意味じゃないですよ! |
---|
二階堂紅丸 | とはいえ、×ちゃんのことが心配って言うのはわかる。 だから、出かけるのを絶対、昼間だけにしてもらうとか……。 |
---|
二階堂紅丸 | 何かあったらすぐに携帯で連絡を取れるようにしておくとか。 |
---|
二階堂紅丸 | それでいいなら、すぐに駆けつけられるよう 俺が携帯を常に気に掛けておくよ。 |
---|
〇× | ありがとうございます。 紅丸さん。 |
---|
二階堂紅丸 | ……っていうわけで、携帯の番号教えて、×ちゃん♪ |
---|
〇× | ふふふ。いいですよ。 |
---|
草薙京 | まぁ、確かにちょっと過保護すぎたか。 |
---|
〇× | いえ、京さんたちの気持ちはとても嬉しかったです。 だから、なるべく明るいうちに行動するようにしますね。 |
---|
〇× | (ええと、スーパーの道の脇のこの辺りに……。) |
---|
猫 | にゃー。 |
---|
〇× | こんにちは。今日もここにいたんだね。 |
---|
〇× | (首輪もしていないし、ずいぶん痩せているな……。 捨て猫なのかな?) |
---|
八神庵 | ……何をしている? |
---|
〇× | や、八神さん。 |
---|
八神庵 | そこをどけ。 |
---|
〇× | (ミルク! やっぱり、八神さんが猫ちゃんにあげていたんだ。 しかもちゃんと猫用のミルクで……。) |
---|
八神庵 | ……何を見ている。 なぜ、ここに来た。 |
---|
〇× | す、すみません。 この包帯と消毒薬を、渡そうと思っただけで……。 |
---|
八神庵 | 何度言わせる。不要だ。 |
---|
〇× | でも、その傷は私を庇ったから……。 |
---|
八神庵 | 何度も言わせるな。 俺には貴様を庇うつもりなど無かった。 |
---|
八神庵 | 俺は無関係な女を助けるような情は持ち合わせていない。 ……貴様の勘違いを押し付けられても迷惑なだけだ。 |
---|
〇× | 私の勘違い……そうでしょうか? |
---|
八神庵 | 何? |
---|
〇× | 八神さんは、京さんを「殺す」と言ったりして 怖い人だと思います……。 |
---|
〇× | ……だけど、猫ちゃんを助けたり、優しい部分もあって 正直よくわからないです。 |
---|
〇× | 助けたいという気持ちがなければ、弱っている猫ちゃんに 餌をあげ続けるなんてことしない、ですよね……。 |
---|
〇× | 八神さんって本当は……どういう人なんですか? |
---|
八神庵 | ふん。これは……ただの気まぐれだ。 |
---|
猫 | にゃー。 |
---|
〇× | この子はそうは思っていないみたいですよ? ほら、こんなに八神さんに懐いています。 |
---|
猫 | にゃー。 |
---|
八神庵 | ふん……。 |
---|
八神庵 | 俺は、弱いものが嫌いだ。 無力なまま朽ち果てていくものが、な。 |
---|
八神庵 | ……もし、あの会場で貴様を助けていたとしたら、 ただ、それだけの理由だ。 |
---|
八神庵 | 特別な理由など、何もない。 ……わかったら、去れ。 |
---|
猫 | にゃー。 |
---|
八神庵 | ……懐くな。 |
---|
猫 | にゃー。 |
---|
八神庵 | …………。 じゃれつくな、と言っている。 |
---|
八神庵 | いいか、次同じことをしたら貴様を……殺す! |
---|
猫 | にゃー! |
---|
八神庵 | …………。 |
---|
〇× | (……な、なんだか……困ってる?) |
---|
〇× | (八神さんってあんなに怖かったのに…… なんだか、不思議な人だな……。) |
---|
八神庵 | ……何を見ている。 |
---|
〇× | す、すみません。 仲、いいなと思って……。 |
---|
八神庵 | …………。 何故今日はそんなにじゃれつく。 |
---|
猫 | にゃー……。 |
---|
〇× | (あれ? もしかして……調子が悪い?) |
---|
猫 | ……にゃう……。 |
---|
〇× | だ、大丈夫!? |
---|
〇× | (どうしよう……。 もしかして何か変なものでも食べたのかな?) |
---|
八神庵 | …………。 |
---|
〇× | 八神さん、 早く病院に連れて行きましょう! |
---|
八神庵 | 不要だ。 |
---|
〇× | えっ……? |
---|
八神庵 | この小さな生き物の命はここまでだ。 ここまで生きたのだから、せめて最後を看取ってやる。 |
---|
八神庵 | ……生きるものは、必ず死ぬ。 その時期が異なるだけだ。 |
---|
〇× | でも……ダメです! まだ助かるかもしれないんですから、諦めるなんてダメです! |
---|
〇× | 絶対、この猫ちゃんは助けます! |
---|
八神庵 | 必要ない。 |
---|
〇× | 八神さんが行かなくても、 私が病院に連れていきますから……! |
---|
〇× | このままじゃ猫ちゃんが死んでしまうかもしれません! |
---|
〇× | 救えるかもしれないのに、何かできるかもしれないのに、 手を伸ばさないなんて……助けないなんて……。 |
---|
〇× | 私は、そんなのは嫌です! |
---|
八神庵 | しかし、その猫が持つ宿命がある。 それなら、捻じ曲げるな。 |
---|
八神庵 | ここで死ぬとしても、その猫の運命だ。 受け入れろ。 |
---|
〇× | ……嫌です! それが運命だって言うなら、そんな運命、私が変えます! |
---|
八神庵 | ……っ! 何故だ……。 |
---|
〇× | ……だって、この猫ちゃんは、 まだ生きたいと思っているから……。 |
---|
八神庵 | ……何故そんなことがわかる。 |
---|
〇× | さっきから、私に助けを求めるように 手を伸ばしています。 |
---|
〇× | だったら、私に助けを求めるのなら、 私はその手を取る……それだけです。 |
---|
八神庵 | おい、女。待て―― |
---|
〇× | (猫ちゃんはただの食べ過ぎだったみたい……。 まだ治療は必要だけど、命に別状は無さそうでよかった。) |
---|
八神庵 | …………。 |
---|
〇× | 八神さん! 待っていてくれたんですか。 |
---|
八神庵 | ふん。どうなったか結末を見届けようと思っただけだ。 |
---|
猫 | にゃー。 |
---|
八神庵 | 生き延びたか。 ……ふん、ずいぶんお節介な女に見つかって、運がよかったな。 |
---|
〇× | (八神さん、笑った……? やっぱり、八神さんは……。) |
---|
暴徒A | グルァアアア! |
---|
〇× | (っ、こ、こんな時に……! 暴徒が!?) |
---|
〇× | 八神さん! この猫ちゃんを連れて逃げてください……! |
---|
八神庵 | 何? |
---|
〇× | 私はあの人たちと戦えませんから……。 猫ちゃんを守れるのは八神さんだけです。 |
---|
八神庵 | ……貴様はどうするつもりだ。 |
---|
〇× | ……上手く逃げます。 |
---|
〇× | この人たち、私の行く先に現れるような気がするので、 どこか人気のない場所に……。 |
---|
八神庵 | ……貴様の行く先に現れる……だと? |
---|
暴徒A | グルァアアア! |
---|
〇× | 時間がありません! 猫ちゃんの世話をお願いできますか。 |
---|
〇× | 静かなところで安静にして、 この薬を毎食後一滴ずつ飲ませてあげて……。 |
---|
八神庵 | チッ。 ……こっちだ! |
---|
〇× | や、八神さん……!? |
---|
〇× | はぁ、はぁ……。 こ、ここは……。 |
---|
〇× | (もしかして、八神さんの隠れ家……?) |
---|
〇× | どうして、私を……。 |
---|
八神庵 | ここならしばらく奴らから姿を隠せる。 それだけだ。 |
---|
八神庵 | ……勘違いするな。その弱き生き物の運の尽きまで 付き合ってやろうと思っただけだ。 |
---|
〇× | (つまり、猫ちゃんの世話を してくれるっていうことかな。) |
---|
〇× | (でも、どうして私までここに……?) |
---|
八神庵 | おい。 |
---|
〇× | は、はい。 |
---|
八神庵 | この猫の世話は貴様がしろ。 |
---|
〇× | えっ? |
---|