〇× | あ、向こうに座れる場所があるみたいです。 イルミネーションからは少し離れちゃいますけどいいですか? |
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アンディ・ボガード | ああ。座ってゆっくり見よう。 ここの蛍はそれだけ見ごたえがある。 |
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〇× | 本当に本物みたいですもんね。 |
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〇× | 耳をすませば水の流れる音も聞こえてきて…… ずっとこの場所にいたいくらいです。 |
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アンディ・ボガード | ああ………………。 |
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〇× | …………あの、さっき何を考えてたんですか? |
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アンディ・ボガード | さっき? |
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〇× | 蛍を一緒に見に行きましょうって話をしたときに 少し微妙な顔をしていたので。 |
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アンディ・ボガード | ……そう、だったかな。 光の具合でそう見えただけじゃないかい? |
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〇× | …………そう、ですか。 |
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アンディ・ボガード | …………。 |
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〇× | ……アンディさんがそう言うのなら、 私の見間違いだったのかもしれません。 |
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アンディ・ボガード | …………。 |
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アンディ・ボガード | ……どうして、君にはわかってしまうんだろうね。 |
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〇× | アンディさんは、蛍のような人だから。 |
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アンディ・ボガード | ……蛍? |
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〇× | 『鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』という ことわざがあるんですけど、アンディさん知ってますか? |
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〇× | 普段からあれこれ言う人よりも、言葉少なな人の方がいろいろな ことを深く考えている、という意味なんですけど……。 |
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〇× | とてもアンディさんみたいでしょう? |
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アンディ・ボガード | 〇さん……。 |
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〇× | 私……そんなアンディさんの心を、ちゃんと理解できる人に なりたいんです。 |
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アンディ・ボガード | (……僕が臆病なせいで、彼女まで不安にさせてしまったのか。) |
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アンディ・ボガード | (だけどこの想いを口にしていいのか?) |
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アンディ・ボガード | (僕は――) |
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アンディ・ボガード | ……〇さん、手を貸してくれるかい? |
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〇× | 手、ですか? あ……。 |
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アンディ・ボガード | ……あたたかいな。 |
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アンディ・ボガード | (このぬくもりを、失いたくない。 僕は、彼女とずっと――) |
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アンディ・ボガード | ……あのとき、蛍を見ながら君と未来の話をして、ふと来年の夏も こうして一緒にいられるのか不安になってしまったんだ。 |
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アンディ・ボガード | 蛍の命は短い。 この関係も、いつか終わってしまうかもしれない。 |
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アンディ・ボガード | どれだけ僕が望んだとしても、 『絶対』なんてもの、この世にはありはしないから。 |
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アンディ・ボガード | そんなことを、考えてしまって。 |
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〇× | アンディさん……。 |
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アンディ・ボガード | 君とこうして触れ合える距離を許されるようになって 僕は少し臆病になってしまったみたいだ。 |
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〇× | ……探しましょう、蛍。 |
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アンディ・ボガード | え? |
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〇× | 私たちが知らないだけで、短命じゃない蛍もいるかも しれないじゃないですか。 |
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〇× | この世に『絶対』がないなら、変わらないものが 『絶対』ないってことも、誰にも言い切れないと思うんです。 |
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〇× | 少なくとも私は、せっかく繋げたアンディさんの手を 離すつもりはありません。 |
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アンディ・ボガード | (強い瞳……そんな君だから僕は——) |
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アンディ・ボガード | 見つかるかな、蛍。 |
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〇× | こんなにたくさんの光が飛んでるんです。 きっといますよ、本物の蛍も。 |
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アンディ・ボガード | ふふっ、そうだね。 君がそう言うなら、見つけられそうな気がするよ。 |
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アンディ・ボガード | (終わらない恋を謳歌し続ける奇跡の蛍を――) |
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