疑うことがゲームを面白くする ― ゲーム制作におけるクリティカル・シンキングの応用 ―

Sat, 09 Aug 2025 12:19:03 JST (55d)
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CEDEC2025で行われた、だらねこげーむず所属のだらねこ氏による講演。
4gamerによるレポート:https://www.4gamer.net/games/991/G999104/20250728053/
 
以下、ためになる部分を一部抜粋。

 

 ゲーム開発では,「これは面白くなるぞ!」と思って企画したものが,いざ作ってみるとあまり面白くなく,作り直してもやっぱり面白くないので,また作り直し……とやっているうちに時間とお金が溶けてプロジェクト終了という,“恐怖のあるある”が起こりうる。
 
 だらねこ氏はその原因を「現実が見えていない」からだと話した。より具体的に言えば,仕様(原因)と,感想(結果)の間で,ゲームに何が起き,プレイヤーにどんな影響を与えているのかが見えていないのだという。そこを見ずに「こうなってほしい」「なってくれるはず」という希望的観測で作っても,狙ったものになる可能性は低い。
 
 また,仕様と感想のいいつながりが見えていても,それとは別に悪い結果へのつながりがあることに気づけないと,やはり失敗しやすくなる。

 

 だらねこ氏は「考えが曖昧で甘い部分は,本人が気づいていない」と話し,疑問を持つことで考える対象になり,やがては問題の発見につながるとした。
 
 人間の思考というものはバイアスがかかりやすく,自分の意見を肯定する情報を集めがちな一方で,自分の意見を否定する情報を無視する傾向がある。
 
 これがゲーム開発であれば,最初に思いついたアイデアに固執して抜け出せなくなったり,そのアイデアのデメリットから目をそらしたり……といったことになってしまうのだ。

 

 だらねこ氏は,疑問を持たずに曖昧な根拠でゲーム開発を進めても,後の工程では役に立たず,未来にはつながらないと話す。
 
 それがコマンド式RPGの開発を例に紹介された。戦闘時のコマンドに入っている「通常攻撃」に対して,「これ,本当に必要ですか?」という疑問が上がるも,それに対して「RPGには通常攻撃があるのが一般的だから」という根拠で開発を進めたとする。そうすると,例えば通常攻撃の威力をどうするか,という問題が出てきたときに,調整がしづらくなってしまう。

 

 今回の実演は上司から部下へ疑問を投げる形だったが,だらねこ氏としては「ディレクターにこそ疑問をぶつけるべき」と考えているという。ディレクターを責めるのではなく,ディレクターの判断を助けるような形で疑問を投げられれば喜ばれやすいそうだ。

 

関連項目

カスタマーハラスメント
たとえばこんなシチュエーションがありうる
社内政治
CEDEC