缶ビールがいつまでも冷たい満月の夜。荒野のような街を歩く。
指が悴んむので始終缶を持ち替えなきゃならないのが不便。冷たさなんて感じなければ良いのに。指紋もグリップしない。
足音はいつまでも追い抜かないから、孤独じゃない気になるけど、こちらは孤独を求めているから迷惑この上ない。
緊急事態なのに世界は映画みたいな混迷を極めず、普通は日常にちゃんと折り合う。
「レジリエンス」なんて流行言葉が浮かんだ途端、コンビニの光に溶けて消える。
レジを仕切るビニルシート、消毒用のアルコール、セルフレジ。でも、酒を買うには虚構の年齢確認が必要。
入り口のゴミ箱に空き缶を捨てる。
システムはそこにある。惑星軌道の微かなブレは重力の計算で割り出せる。見えない星がそこにある。
よくできた社会は動摩擦程度じゃ止まらず、大雑把な世界に人間味はるけど、どうしても君はそばにいない。
ストロングの缶チューハイは、油断すると甘くてしんどい。